今回の特集は制度的に確立しているマンション管理組合の運用方法ですが、組合によってはうまく機能しないケースもあるようです。

なぜ?管理組合が機能しないのか?上手な管理ができない?その要因は何かを考えます。

1、「なぜ機能しない」を解析

区分所有者の意志を反映できる制度によって共用部の管理が行われていることはこれまでの特集記事で確認できましたが、運用するのは区分所有者の皆さんです。

しっかりした制度があっても使い方次第で成果は異なります。

多くのマンション管理組合は、この制度の中で上手に管理をされています。

しかし、一部の管理組合では制度を上手く利用できていない実態もあるようです。

国土交通省は5年おきに「マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」をマンション管理組、区分所有者に対してアンケートを行い、その集計結果を公開しています。近年では平成30年(2018)に公開されています。(PDF:国土交通省ホームページ

これから紹介する資料は、国土交通省が2006年に公開した「マンション管理の現状について」です。16年ほど前の古いデータですが、非常に面白い調査を行っています。最近はこの質問は実施されていないようですが、現在のマンション管理にもつながる重要な内容が掲載されています。

質問は管理組合の理事に対して「マンション管理がうまくいっていない理由」(複数回答)について聞いたアンケート結果です。

次の統計結果をご覧ください。

平成18年、国土交通省「マンション管理の現状について」より出典

まず、選択肢の項目に注目します。

選択肢はいくつかのグループにまとめることができます。

理事等への質問の選択肢のグループ化

うまくい機能しない要因として3つの問題に大別することができます。

* 選択肢「管理費の額が不適切」については、恐らく管理会社のコストへの不満だと思いますが、管理費は管理組合が了承して決定します。また、管理会社の変更をする権利も有しています。そのため、コストへの不満は管理組合側の問題と判断しました。

* 選択肢「管理組合が機能していない」については、組合を機能させる助言を行うことが管理会社に求められる要件とも言えます。確かに区分所有者にも問題があるのでしょうが第三者を利用するなど解決する方法は幾つも思いつきます。これを解決できないことは管理会社の責任と考えました。

各設問を要因に分けたグループの累積回答数は次のようになります。

理事への質問の選択肢別のグループの割合

理事等の皆さんの約60%以上が管理組合内に原因があると考えているようです。

また、管理会社に原因があると考えている方も3割弱程度いることがわかりました。

ひとつひとつ考えてみましょう。

2、管理組合内の問題

全体の6割が管理組合内部の問題と思っていることがわかりますが、回答が多かった順番は次のようになります。

3、非協力住民の存在

管理組合は区分所有者から構成されています。各区分所有者は自宅を取得する目的で集まった人々です。何かを達成する目的をもって集まったわけではありません。

そのため、居住スペースである専有部内の汚れや傷みには敏感ですが、所有権の実感がない共用部にまで意識を回すことをしない方がいることも事実です。

選択肢の「住民の一部が非協力的」は抽象的でいろいろ状況が想像できます。しかし運営がうまくいかない理由として挙げている以上、管理運営に支障をきたす意味と考えられます。

想定されるケースを次の表にまとめました。

想定される非協力想定される影響
総会等に参加せず、法的に有効な総会
が開催できない場合
管理組合としての決定が出来ず何も決めることができない
理事が理事会に参加せず、
法的に有効な理事会が開催できない場合
理事会として決定が出来ず何も決めることができない
重要な議案への議決数が集まらない
(代理、議決権執行書不提出)
議題は否決される
予算案の承認や修繕工事等が出来ない場合
は大きな障害になる
組合主催の催物、アンケートに参加者が少ない管理運営上は特に問題はないがクレーム等が
多くなる可能性がある
検査日程、工事日程、注意喚起などを
無視している
違反行為、迷惑行為を繰返す
理事等の役員への成り手がいない理事会など運営母体を維持することができなくなる
特定の人に負担が集中し組合員間に不公平感が生まれる
想定される非協力者の影響

特に議決が成立できない場合、重要なことを決めることが出来ず機能不全になる可能性が高くなります。

この状態になると問題の先送り状態です。区分所有者等は問題を把握しながらも解決しない状態で定常化すると各住民毎に自分勝手なルールで使用し始めたり、設備を有効に利用できずマンションの価値の低下を招き、マンションそのものの市場価格にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

3-1、理事等を引き受けない理由

何らかの理由で理事就任の要請を断る人の理由についてのアンケート結果です。

断る人の1/3以上が「区分所有者の自覚がない」と判断できる結果には驚きました。

本人が病気、あるいは介護等の事情がある場合、高齢であることの理由については一定の理解はできます。

「あまり関心がないから」「めんどくさいから」と答える方も2割弱いることにも驚きます。

この人たちが、総会などへの参加をしているのか確認したいと思いますが、その結果は残念ながら記載がありません。せめて管理組合の運営に協力的であって欲しいと望みます。

国土交通省が公開している資料

3ー2、賃貸人の増加傾向

近年、政府の低金利政策により法人が賃貸投資を目的に購入するケースや個人投資家が価格の増加を見込み購入する傾向が続いています。

非協力的な住民になりやすい組合員として投資物件として購入する人たちの存在です。

管理員としての経験でも空き物件になる専有部は増加傾向にあると感じます。以前は転勤や子供との同居などによる転出が多く、空き物件もすぐに次の区分所有者が入居する状態でしたが、最近は空き物件のまま半年以上放置される専有部も多く、また法人が区分所有者になるケースも増加しています。

特にコロナ後から徐々にローン返済に苦労されている方からファイナンシャルプランナーとして相談される件数も劇的に増えています。参考に各データをご覧ください。

政府も対策は講じていますが、コロナの長期化によりこの傾向は増々増える傾向にあり、家計を考慮した場合、ローン残高が残ったしても第三者に差押えられる前に自己売却を進めるアドバイスをする機会が多くなっています。

特に近年マンション購入者の年齢層が若年化しました。30~40代で小さな子供が複数人のご家庭が賃貸から購入に踏み切った方が増えました。その影響も大きく表れていると考えています。

コロナ禍でも増益する会社の中に不動産業者があります。長期的な低金利政策で超低金利な借入金が可能な現状で安く借りて高い利回りで運用をすることで収益を出す。あるいは安く仕入れ高く売る。売れる物件も以前とは異なり、リモート出勤の普及により東京で言えば郊外、あるいは都内の比較的専有面積が小さな物件は好調な売上を上げています。

このように社会背景としてこの傾向は今後2~3年は続くと思われ、区分所有者が投資会社や投資家になる傾向は増加すると推測しています。

3-3、住宅ローンの破綻者の影響

組合員に不動産会社や投資会社、個人投資家が増えると組合の運営はどのようになるのでしょうか?

住宅ローンの破綻は、管理費や修繕積立金の滞納が伴うことがほとんどです。

その意味で購入者に経済的に安定的している法人が組合員になることは滞納の解消、リスクの低減になります。

一方、管理組合の無関心住居者の割合は増加します。

しかし、すべての法人所有者が無関心ではなく、あまり積極的に参加する意思を持たないだけです。法人所有者も賃借人から家賃収入を得る必要があり、管理がずさんな組合運営は空室率に影響します。

特に清掃状態が悪く、メールボックス近辺の散乱、館内の蛍光灯切れ、ゴミ室の臭いや乱れは新規賃借人希望者に敬遠される為、賃貸物件オーナーが最も嫌います。

その意味では、きちんと説明をすれば少なくとも一定の協力を引出すことはできます。

理事会は管理会社の力を借りて法人区分所有者、あるいは個人投資家に現状を報告し、議決権への協力を要請すべきです。

3-4、有効な解決方法はあるのか?

これらの問題の根底にあるのは、区分所有者の共用部への意識の低さがあります。

解決法は指導力のある管理会社、あるいは熱意のある理事長等による牽引力が必要になりますが、一般に指導力のある管理会社はコストも高く、なかなか住民の賛同を得ることができません。

また、理事長の牽引力は理事長の熱意に依存するため難しく、結局、有効な手立てがない現状です。

3-4-1、書面議決権行使書の利用

議決権行使書は多くの管理組合は実施されていると思います。念のため手順を簡単に記載します。

総会、理事会開催は事前告知原則です。そのためすべての区分所有者へ書面での通知義務があり、この業務は管理会社の担当することは委託契約からも推測できます。

この時、開催のお知らせ以外に「書面による議決権行使ができる用紙」(書面議決権行使書)の添付も一般的で理事会は事前に出席者数を想定します。

必要出席数に未達の場合は、開催日の延期や電話や戸別訪問で出席や書面議決権行使をお願いをします。このようにして総会を開催します。

電話や戸別訪問で出席依頼は理事が行うことは少なく通常は管理員が行います。ただし、日中不在のご家庭は管理員の出勤日や駐在時間によりできないケースもあるようです。

3-4-2、無関心な区分所有者が多い時の実行事例

総会が成立しないケースに立会ったことはありませんが、総会への参加率が低い管理組合へアドバイスを行ったことがあります。

事例

その管理組合は、現在、法人所有の賃貸物件として利用される専有部数が7戸あり、その他2戸が海外赴任のため賃貸に利用していました。他は在住の区分所有者です。(総数64戸、区分所有者、議決権共に64)

この組合では総会はこれまで24回経験があり、普通議決の承認はこれまで特に問題は発生していません。総会の成立要件は32以上の参加(出席、代理、書面行使の総数)です。しかし3年前、規約の改定を行った時は総会議決数は足りましたが、3/4以上(48以上)の承認を得るのに議決数が集まらずかなり苦労した経験があり、当時の年度に民泊法の追加、宅配ボックスの使用方法について規約追加、使用細則の改定を行う必要があり、何か改善する方法はないかと相談を受けました。

これまでの総会の集計結果を集計すると一度も参加せず、代理、議決権を行使していない区分所有者が8名確認されました。ここ5年行使していない方も5名確認しています。また、海外の方は連絡先は赴任先の住所は届出ありますが時間的な問題もあり当てにできません。法人所有の区分所有者もこれまで一度も参加した実績はありませんでした。

その結果、議決権を行使しないと想定される方が、法人7戸、海外2戸、無関心者最大13戸の合計22戸と判断しました。最悪の場合議決総数が42で足りくなります。

実施方法

このケースの場合、最悪の場合、議決数扶桑による規約の改定ができない可能性がありました。

そこで「開催のお知らせ」に工夫をしました。封筒の表面に「マンション管理に関する重要なお知らせ」を赤字で印刷、同封の案内書類も管理組合の現状を伝える内容を法人向けと参加実績の無い区分所有者向けにそれぞれ書面を作成しました。(正確な文章は掲載しませんが伝えたかった内容です。)

半信半疑で行った工夫でしたが、幸い効果があり結果、法人所有者から6、無関心者と判断していた方から10の議決権行使書の提出があり、無事、規約、使用細則の改定ができました。

その後の総会にも法人所有者、無関心者の方が一定数参加されています。

「えっ!!こんなことで」と思われると思いますが、意外に効果はあります。

無関心者の方の多くは、他に任せておけば大丈夫と安易に安心しています。自分の身に何か降りかかる可能性があれば決して無関心では居られません。

法人所有者も同様で「宅配ボックス」は賃貸物件のセールスポイントになる設備です。その使用に制限がかかるとなると死活問題です。当然、協力的になります。

非協力的な区分所有者の存在はどのマンションでも一定数はあると思われますが、理事会、管理会社が工夫すること、日頃から管理組合の活動(共用部への意識)の興味を持ってもらう努力をすることで解決できる可能性があります。

地道な努力を行うことで劇的に改善したマンション管理組合があることも事実です。

3、役員の経験不足の影響

次に理由の2番目に多かった「役員の経験不足の影響」についてです。

管理組合役員の経験不足については、これは当たり前です。誰でもはじめて担当する責任ある立場です。マンションの規模にもよりますが一般的に任期は2年、輪番制の場合、10~15年に一度、あるいは一度も経験しない方もいるかもしれません。その上、仕事ではなく、あくまでも生活の良好な住環境の確保が目的な私的な活動です。どうしても義務感を感じてしまいます。

理事の経験不足を補うために経験者と未経験者の任期を重複させる方法が一般的に採用されています。さらに、理事会、総会等の運営には管理会社のサポート業務(サポートサイクル)があります。

しかし、管理会社のサポート内容は会社によりばらばいです。国土交通省の指針にも詳細な定義はなく、標準管理委託契約書でも曖昧な抽象的な表現です。実際は管理会社のスキル、担当者のスキルに依存している現状があります。

アンケート設問の「管理業者がよくない」にも関連される部分で、理事等がこの原因を組合側、管理会社側のいずれに感じているかによって評価が分かれたとも言えます。

管理業務委託契約がどこまでのサポートを想定しているのかは、管理会社、管理組合(理事)の契約の捉え方によっても異なるでしょう。

いずれにせよ理事、役員は未経験者であることは当然であり、そのことを原因にするには無理があり、いかにうまく管理組合を機能させるかは管理会社の指導力、あるいは理事の熱意と住民の協力が不可欠だと考えられます。

特に初期の管理組合は管理会社主導で運営が行われることを考えると管理会社のサポート体制が今後の管理組合の道筋を立てるべき重要なポジションです。

管理会社のスキルがマンション管理の様々な問題を発生させる根底にある問題の1つだと考えています。

4、管理費等の滞納者

管理費の滞納問題は3つのタイプに分かれます。

ひとつはうっかりタイプです。区分所有者のモラル的な要素もあると思います。多くの方は引落口座の残高不足で当月の引落がされず、翌月には入金されますが、数カ月間支払がないと理事会として対応が必要になります。

管理員を経験した方はわかると思いますが、日常がだらしない生活態度の人となぜかうっかり滞納する人が一致する傾向にあります。(あくまでも私見です)

もうひとつは、経済的に困窮してしまった場合です。困窮理由も以前は離婚問題、リストラ、病気など限定でしたが最近はコロナによる収入の減少が多くなっています。

事情を聞き一定期間(半年~1年程度)は理事会も配慮をすべきでしょう。ただし、あまり長期化すると債務額が大きくなり、両者に良いことはありません。

最後が問題になる確信犯タイプです。このタイプは生活も普通以上でありながら長期の滞納を継続するタイプです。支払わない理由にはいろいろあるのでしょう。

支払い請求に対しても「あっ忘れてました」「今手持ちがなくて」「来月には支払う」「管理組合に不満がある」「今の管理には納得できないから支払わない」「相続物件なので知らない」など様々です。

このような場合は、管理組合として毅然とした態度をすべきです。一定の説得期間は必要ですが何もためらう必要なく支払い請求を時間軸に合わせて行うことが重要です。理事会は内容証明までは行いますが、その後は早期に弁護士に委任することをお勧めします。

弁護士が前面に出ることは、理事会の本気度、相手へのプレッシャーも相当です。ほとんどの滞納者は不払いに負い目があります。意外なほど短期間で解決する例も少なくありません。

もし相手に理由があるとしても、相手が裁判に訴えれば良いだけです。もちろん、理事長に負担はかかりますが、「ごねれば支払わなくても良い」と他の組合員に少しでも思われるようなことはマンション全体に悪影響を与えます。

また、規約等には明確に滞納について利息を明記し、各請求時に追加額をきっちり相手に認識させることで滞納は損になることを知らせることが重要です。

管理費等の支払い義務をもう一度確認します。区分所有者には管理費、修繕積立金を支払う義務を管理規約に定めています、皆さんはそれを購入時に承諾しています。(相続、中古物件の購入者もこの義務を継承しています。)何も臆することはありません。

4-1、滞納の影響

管理費は管理会社に支払う管理費の他、施設修理費、共用部で発生する備品等の費用に使用されます。一般的に管理費は余裕がある設定にされていますが、長期に一定額の管理費の滞納が続くと不足する状況になりかねません。その上、管理費は修繕積立金の転用、借入を禁止ているため、不足した場合には他の区分所有者が補充する必要があります。

また、一部の未払い者の存在は、履行者の公平感を無くし、管理費への責任感を失わせるきっかけにもなります。

管理費は修繕積立金と同様に引落等で徴収されますが、管理費の支払いをしない場合、修繕費も未収になることがほとんどです。

4-2、管理組合の権利

未払いの管理費は管理組合に対する負債であり、債権者は管理組合になります。当事者に支払い能力が無いと判断すれば金額に関わらず物件の売買等(動産も含みます)により補填することも法律上は認めています。

しかし、実際には購入物件は金融機関の抵当設定がされ登記登録も終了していることが一般的です。このような場合、抵当権より先に権利を行使することはできません。(登記がなければ優先して回収することができます。先取特権と言います。)

回収には多大な能力、費用が必要なります。(費用は債務者から回収できますが、時間もかかる上、自己破産や勝訴しても返済能力がなければ泣き寝入りです。)

最終的に債務者が所有する専有部には債務が継承され、売却されればその相手に未払い債務は遅延損害金と併せて支払いを請求ができます。

管理費に余裕がある限り焦らず対応しても良いでしょう。

ただし、債務者の事情を考慮するあまり、債務額を大きくすることは両者にとって良いことではありません。一定時期で見切りをつけて、少額訴訟、法的督促などの事務的手続きに移行すべきです。

滞納の回収方法などは今後、特集で詳しく扱う予定です。

4-2、大規模修繕工事費の借入にも影響

管理費ばかりではなく修繕積立金の未納は大規模修繕や耐震工事、共用部の大規模な変更ができなくなる可能性も含んでいます。特に管理組合の健全、不健全のひとつの指針になるのが滞納率です。この滞納率は金融機関等の融資条件でもあり、滞納率が高いと金利が高くなる、あるいは借入金額に制限がある、最悪の場合、借入ができないケースも想定されます。

一例として皆さんが耐震工事や共用部の工事等をに利用できる住宅支援機構では下記のような借入条件があります。

・・・・・のいずれかの方法において算出した滞納割合が、10%以内※となっていることが必要です。(一部抜粋)

住宅支援機構ホームページより

*積立金の滞納率の計算方法は人数割合ではなく、予算に対しての達成率で評価します。

4-3、滞納者への対応

家計困窮者に対しては本来、速やかに退去(売却)をすべき勧めるですが、管理会社、理事会の仕事ではありません。やはり専門家を紹介するべきでしょう。

この時、注意すべき点は専門家と言うとすぐに弁護士を紹介する方がいますが、相手へのプレッシャーはかなり大きく、再建の道は残したいと債務者は思っています。その意味ではファイナンシャルプランナーのような資格者を紹介することが良いでしょう。

これに対して悪質な滞納者へは毅然な態度で臨むべきです。彼らは規約に遅延損害金を定めても払う気がないため、プレッシャーに感じないことが多く、有効な方法は法的請求以外にはありません。弁護士に依頼すべきです。これで理事会の本気度、相手へのプレッシャーも相当です。ほとんどの滞納者は不払いに負い目があります。意外なほど短期間で解決する例も少なくありません。

先ほども説明しましたが一定の説得期間は必要ですが、それ以上、支払を期待することは決して良い解決方法ではありません。出来るだけ早めの対応を検討すべきです。

具体的な請求手続きは特集内で説明します。お待ちください。

4-4、滞納者の実名の公開

滞納理由に病気等の配慮すべき点がある場合は実名の公開は慎重に行うべきです。

しかし、悪質な滞納者が6カ月以上、支払い請求を行っているにも関わらず不履行の場合はマンション内に掲示や会報による実名の公開は問題ありません。

実名を公開した場合、心配されるのは相手からの不法行為に基づく損害賠償請ですが、これまでの判例では6カ月以上滞納をしているケースではほとんどの場合で請求は破棄されています。

4-5、施設使用料の滞納者への対応

管理費、修繕積立金以外の滞納として駐車場料金などの施設使用料の滞納者です。

額が管理費等に比べて定額のため放置するケースが多くなりますが、組合員の負担の公平性から速やかな対応が必要です。

訪問、書面による催促後、3カ月を過ぎても支払ない状況が続く時は、督促と同時に使用制限を行います。

債務額が60万円以下であれば少額訴訟が有効な手段です。理事長が裁判に出席する必要はありますが、安価で弁護士にも相談する必要はありません。多くの場合、裁判所から送達が届いた段階で支払いに応じます。

私も個人で少額訴訟を行ったことがありますが、裁判所が親切に教えてくれます。

並行して駐車場契約の解約、または次回以降の契約の中止を理事会で決定します。

駐車場や駐輪場などの使用権を制約することです。これは規約、使用細則に定めることで可能です。使用細則の設定例は以下の通りです。

駐車場使用者が法令、規約、この細則又は駐車場使用契約書の規定に違反した場合において、その是正及び原状回復の請求に応じないときは、理事長は、理事会の決議を経て駐車場使用契約を解除することができる

この文面は、駐車場だけでなく、他の施設等についても設定することができます。

滞納が発生してからでも定めることは可能ですが、滞納への抑止力も含めて事前に定めておくべきです。

5、管理費の額の影響

「この価格なら仕方がない」、「こんなに高いのにこんなサービスなの」

思ったようなサービスの提供が受けられない、思っていたのと違うなど業務管理の評価はむずかしく、特にコストパフォーマンスの意識が強く働きます。

これは管理業務委託契約に限ったことではなく、事務処理の履行を行う委託契約ではよく発生するトラブルです。契約者同士が契約前に十分に意見を交わすることが重要です。

その回避方法として国土交通省は区分所有者に対してマンション管理委託契約の重要事項説明書の発行と説明義務を課し、契約の担保として管理業務主任者に書面への記名押印、説明義務を課しています。

しかし、契約には管理業務の支援と言った曖昧さを含む表現で契約が締結されている以上どこまでを契約範囲内であるかを明確に示すことは難しいと思えます。

標準管理委託契約書には各費用項目と管理報酬を明確に分けて表示する方法を基本としていますが、管理報酬を各項目に含ませることも認めているため、管理会社によって異なります。

また、全国平均の管理費費用も公表されていますが、一方で管理費の傾向は販売価格(高級マンション程)に比例して管理費も高い傾向があり、求めるサービスに合わせて額が異なるため、すべての平均数値にあまり意味はありません。

さらにデベロッパー系の管理会社は、初期から管理組合と契約関係にあり、一般的に管理費は高く、サービスも良質であると評価されます。独立系は価格重視の管理組合に受入れられる傾向があると言われています。最近は管理会社も2極化が進んでいます。

管理費の価格の構成については2020年9月特集 8章 標準管理委託契約を知る -定期委託業務費ーをご覧ください。

最終的な管理費の価格は、組合員が金額に見合ったサービスが提供されているかどうかの判断に依存しています。コストへの意識は2020年9月特集 7章 標準管理委託契約を知る ーここがポイントーで詳しく説明しています。

今回の調査結果に管理費の額が管理がうまくできない理由になっていることも不思議で、不満があれば他社にリプレースすることも管理組合は可能です。

事実、最近はリプレースが盛んに行われデベロッパー系から独立系に乗り換える組合も多いようです。

恐らく、この選択肢を選んだ理事の方は現在の管理会社のサポートが不満であり、支払う管理費に見合った内容ではないと感じている方々と想像できます。

6、まとめ

2018年、国土交通省から公表された「マンション管理の現状について」から理事の皆さんがマンション管理がうまくいかない理由について回答した結果を考察しました。

その結果、管理組合と管理会社、外部要因が原因であることがわかり、今回は管理組合自身の問題について考えました。

管理組合に非協力的な住民の存在が一定数を超えると重要な議題の議決ができなくなることが考えられ、賃貸物件の増加、空き家の増加、無関心組合員の存在が大きく影響していることがわかりました。

解決案として理事会は管理会社の協力を得ながら、組合員に日頃から共用部管理の大切さを認識させる意識改革が必要であり、法人所有者への同様のアプローチを行うべきであることがわかりましたが、実際の方法がなかなか見つけられない実態も推測できました。

次に役員の経験不足による管理業務への影響も大きな問題ですが、管理会社のサポート能力が問題を解決する鍵であり、管理会社の責任が大きいことも推測できました。

非協力者とも大きく関係する管理費等の滞納に苦労している管理組合も一定割合存在していることがわかり、対策として規約に滞納の歯止め条文を定めること、また、悪質な滞納者への毅然とした対応が求められることも確認しました。

同様に一定割合で管理会社への報酬に疑問を感じている理事等もいることも確認できました。しかし、この点については、管理費のコスト意識は管理会社への満足度の現れとも言えると推測でき、うまくいかない理由として考えるには無理があるように感じています。

次の章では管理がうまくいかない理由に管理会社を上げた理由について考察します。

せっかめメモ
不動産、マンション豆知識

規約の改定等に必要な議決権

規約の改定等は議決権の3/4以上の賛成が必要になります。

50名の区分所有者が一人一戸の専有部を所有し、敷地利用権も同じとします。

その場合、議決権の総数は50、区分所有者数50になります。それぞれに38以上の賛成が必要になります。

賃貸物件の増加傾向

賃貸物件として提供される専有部には2つのパターンがあります。1つは所有者が転勤や介護と言った事情で一時的に貸出す場合です。もう一つは分譲マンションを購入し、賃貸物件として貸出す企業、個人投資家です。後者は最近の好景気、低金利政策により増加傾向にあります。

個人の事情で貸し出している場合、組合員として総会等に参加する、意思表示をする人も多く特に問題にはなりません。

他方、投資目的として購入された場合、購入者は長期に所有する目的はなく、一定の利益を得た段階で売却することを含めて購入しています。

当然、煩雑な組合活動に興味はなく、管理費や修繕費の値上げも賃料に加算すれば所有者に影響はありません。

賃貸物件は新築が好まれる傾向があり、新築後3年程度は賃料も高く設定できます。

不動産のホームページのマンション売買欄を見ると表面利回りの記載がある物件があります。これが投資家向けの情報です。

投資家は無関心

一般的な投資物件は、経年劣化と共に賃料が減少します。

引用元:経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由|レポート・コラム【株式会社三井住友トラスト基礎研究所】
出所)アットホーム株式会社のデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所算出
※2001年〜2011年の理論賃料指数を築年数ごとに平均化した数値。

投資家は金融機関からの借入で資金を賄います。投資家が利益を算出する際、購入物件は減価償却の対象となり経費として認められます。しかし、減価償却の期間は築年数が経つにつれ減少され、一定の年数を過ぎると0になります。投資家はこの前後に他の物件を追加購入、あるいは物件の売却をすることで減価償却を確保する方法を用いて利益を確保します。一般的にその期間は10年から15年(購入時の築年数により変わる)です。

このような理論でマンションを購入する方は、管理組合の活動には無関心なことがほとんどです。

家の価値の考え方がまったく居住目的に購入する方とは違っています。

投資家の考え方

土地活用プランナーの仕事もしていると投資家から「良い物件ない?」「儲かる物件を探して欲しい」と尋ねられます。

特に低金利政策が続く昨今、金利が低い資金を借りて賃料で儲けようとする投資家、あるいはこれまで投資経験がない人も参入しています。

実際、上手く運営しているお客様もいます。これまでその方々からマンション管理についてお話を伺ったことがあります。

どなたも管理は住民の方が適当にやってくれればいいからとお考えの様です。投資家が不動産投資を選ぶ理由として一度賃借人が決まってしまうと余計な手間がかからず、副業としてできるメリットがあるからです。(余計なコストが必要ない)

そのため、管理組合への関心は低く、総会へ参加通知もほとんど返信をしません。私たちプランナーも相談を受けますが「理事長に代理権」で返信するようにアドバイスはしますが、どこまでオーナーが実行しているかは知りません。

プランナーの中には「ほっといても大丈夫です」とアドバイスする人もいます。

そんなわけで組合への参加、特に総会への参加はオーナーはほとんど興味がありません。

投資家は空室率に敏感

1年は12カ月ですが物件のオーナーは12カ月すべて家賃収入が欲しいと思っています。しかし、購入してすぐに貸出すことはできません。専有部のリノベーション、清掃、不動産への契約依頼など一定の期間は貸出せない期間があります。また、賃借人の交換時期には数カ月、空室になり家賃収益がなくなります。

この期間を12カ月で割った率が空室率になります。

例えば家賃10万円、空室率0%で年間120万円の家賃収入になりますが、部屋が埋まるまで2カ月要した場合は空室率が16.7%になり、100万円の家賃収入になります。

物件購入計画時には空室率は20%程度に設定します。(金融機関で借入れる時は30~40%で計算する金融機関もあります。)

投資家は購入時の修繕積立金の実績は気にします

マンション購入時に利回りの他に大規模修繕積立金の実績は気にします。

潤沢な積み立て状況であれば、修繕時の一時金徴収や借入はありません。しかし、不足していると購入後に負担金が発生する可能性があります。

いずれも経費で処理できますが、自己資金を圧迫する可能性があります。投資家はとにかく数字を大切にします。余計な支出には敏感です。

投資家は修繕直後の物件を好む

賃貸物件では外観(見た目)は空室率に大きく影響します。誰でもきれいなマンションに住みたいですよね。

そのため、新築後12~15年で1回目の大規模修繕工事直後の物件を好んで購入します。逆に近い将来工事が実施される予定のマンションは慎重に見極める傾向にあります。

投資家にとって管理員は便利な存在

不動産会社が賃貸物件を契約すると賃借人からのクレームに対応する必要があります。しかし、管理委託契約があるため館内のクレームはほとんどは管理員経由で解決できてしまいます。その意味でも手間がかからない物件です。

管理費の値上げもあまり影響しない

法人区分所有者は貸出す際に賃料とは別に共益費を請求する契約形態を取れます。(賃料に含めることもできます)多少の値上げであれば、更新時、あるいは賃借人の交代時に賃料等を値上げすれば利益には影響しません。

リゾートマンションは大変

リゾートマンションはセカンドハウス、あるいは別荘として所有する方が多いですよね。

リゾートマンションは元々がセカンドハウス、あるいは別荘として購入するため管理組合を運営すること自体が難しく、ずさんな管理になるケースが多く、管理会社がほとんど管理者に委任されています。

もちろん、日々の生活とは異なるため管理組合の参加には消極的です。特に管理費や修繕積立金の値上げ以外には興味はほとんどないでしょうね。

ただ、そこで老後生活や居住目的で購入されていると厄介なことが多くなります。

セカンドハウスと別荘は別

セカンドハウスの定義は定住地以外の居住地ですが別荘は非日常的な保養のための住宅です。

いずれの住民税、固定資産税は支払う必要がありますが、セカンドハウスとして認められると、固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けることができます。一方、別荘の場合はこれらの軽減措置を利用することはできません。

ローンの滞納が急増

本当に相談件数が増えました。各家庭で節約はしていますが、収入減の影響をカバーできるだけの節約は難しい現状が続いています。

パートなどの仕事を増やしたくてもなかなか思ったほどの収入は得られない状態の家庭が増えています。

元々自己資金割合が少なく、ぎりぎりの計画で購入をしたケースはもちろんですが、自由業のような不安定な仕事をしている方、コロナの影響を直撃した仕事に従事している方などそれぞれの家庭で事情も様々です。

返済計画の変更は本当に役立つか?

返済特例、一定期間返済特例、ボーナス返済の中止など金融機関は支援対策を用意しています。

返済特例はローン計画の組換えです。返済年数を長くし毎月の返済額を少なくします。

一定期間返済特例は一定期間だけ返済金額を少なくする方法です。

ボーナス返済の中止は年2回増額月を失くし返済計画を組みなおす方法です。

いずれの場合も返済総額は増えます。コロナの影響が無くなりすぐに景気が回復すると思われている方も多いと思いますが、庶民レベルまで景気の回復の効果が表れるには早くても2年、遅ければ4年以上と考えるべきであまり楽観できる状態ではありません。また返済総額が増えることも後々、負担になる可能性を含んでいます。

ここまで増加している空家率

国土交通省が公開している資料ですが、古いマンション程空家が増加する傾向は続いています。

築年数の古くなるほど管理組合の維持が難しいことが予想できます。

古くなると売買も難しい

不動産会社から評価すると古いマンションは売買物件の対象としてはあまり魅力はありません。特に築25年以上になると建物の耐久年数との兼合いでローン年数が長く設定できないこと、売買価格が安いなど不動産会社としてはあまり儲けがでる対象とはなりません。

今は終の棲家として購入

高度成長期時代はマンションは買替を前提とした住宅でした。それ程収入の増加が見込めた時代だっとと言うことでしょう。8%を超える成長なんて普通でしたからね。

しかし、最近は終の棲家としてマンションを購入する方がほとんどです。

法人は理事になれないの?

理事長を含めた理事等の役員になれるか?

区分所有法では管理者に資格は設けていません。区分所有法上、法人も理事になれると考えられます。しかし、一方、標準管理規約では条文から法人は自然人に限定されていると読みとることもできるため、マンション関係者でも議論が分かれています。

ただし、最近では法人格の所有者でも理事等になれると解釈されています。条件として、規約や使用細則に「理事及び監事は、組合員(組合員が法人である場合には、当該法人の職務命令を受けた同法人の役員または従業員を含む。)のうちから、総会で選任する。」と言った記載をすべきとされています。

法人格を理事にする場合は、会社の役員や任命された従業員が参加すべきであるとなります。

役員に報酬を払うことはできるの?

はい出来ます。

規約、使用細則、あるいは総会で報酬額を決めて管理費から支払います。

国土交通省の「平成25年度マンション総合調査結果」に役員報酬についてデータが記載されています。その結果では20.6%が役員全員に、1.2%が理事長のみに役員報酬を支払っています。

役員報酬の平均額はどのぐらいなの?

国土交通省の「平成25年度マンション総合調査結果」によると各役員一律の場合の報酬平均額は2,600円/月です。一方、役員報酬が役員一律でない場合の報酬平均額は、理事長が9,200円/月、理事が4,400円/月、監事が4,100円/月となっています。

マンション管理士に理事を依頼するよりはかなり安価であることは確かですね。

実際の活動実績では、理事長以外に報酬を支払う必要性は感じないですね。役員のなり手を増やすと言う意味で一定の効果はある方法とだとは思います。

法人区分所有者だけ管理費を高くすることは可能なの?

むずかしい問題です。一定の要件を満たせば可能ですが単純に法人だからと言った理由で管理費に差をつけることはできません。

一般的には「具体的なその差異が合理的か否かである」で判断されます。

例えばマンション内に居住していない区分所有者に対して一定の割合で負担を求めることは出来るとされています。これは、理事等を含め管理組合の運営を第三者(居住する組合員)に一任していることは不公平になり、その意味で一定の差をつけることは合理性があると判断されています。

どのような理由でも必ず規約に定める必要性があることは覚えておいてください。

役員の就任を断った人にも高くすることはできるの?

可能と言えます。役員就任は区分所有者の一定の義務と考え特定の人がやむを得ない理由以外で役員就任を断る場合、管理組合に対する協力金の名目で負担を求めることは可能です。

一般的には役員就任が義務であり組合員同士に不満感が大きくなった場合に活用する方法です。

しかし、この方法は逆の意味で「協力金」を払うことが免罪符のような効果を与える場合もありあまりお勧めはできません。最低限、総会の議決権行使書の提出だけは行うことを条件にする必要はあると思います。

この場合も必ず規約に定める必要性があることは覚えておいてください。

どの程度の差は認められるの?

具体的な倍数を規定ているわけではありません。あくまでも社会通念上の判断とされています。

実際に裁判で争われているケースも多く、その額も裁判によって異なり、格差を違法と判決している裁判もあります。

法人所有者が増える傾向にあるマンションでは議論されることも多いのですが、どこも一歩踏み出せていないのが現状でしょうね。

コメンタールマンション区分所有法

区分所有法の専門書です。逐条解説書と言うらしいです。法律の解説書です。条文の意義・要件・効果等について解説が掲載されています。

この本で「区分所有者に特別な影響がある場合」の判断基準が示され、その考え方が広く用いられていますね。

8,000円以上する高価な本です。図書館にあると思います。組合で保有する図書ではありませんが参考まで。

総会の成立要件は議決数の半数です

区分所有法で規定されている成立要件は半数以上です。間違えないでください。

議決については普通議決で過半数以上、特別議決で3/4です。

理事長が15年以上同じ人

小規模なマンションで稀にあります。別に違反ではありません。非法人管理組合の理事等の任期は規制がありません。

この組合は理事長が組合発足当時から変わっていません。管理会社と信頼関係も築かれていて運営も上手くいっているマンションです。すでに一度大規模修繕工事も済ませています。20戸程度で組合員同士もまとまりがあります。

理事長の人柄もあり、他の組合員も甘えているのか特に問題は発生していません。理事も変更がなく、理事会はほぼお茶飲み会の様相です。でもしっかりやることはやられています。

そんな管理組合もあると言うお話です。

はじめての理事さんからの質問

管理員が長くなると初めて理事さんに就任する方からよく聞かれる質問があります。

「理事って月にどれぐらい時間を取られるの?」

「理事会って月一回だよね」

初めてですから仕方ないですよね。

マンション管理士宛てに届く質問でもっとも多い質問はちょっと違います。

「理事に就任するのですが何か準備しておくはありますか?」

「理事会を欠席したらどうなりますか?」

「理事会は議決権行使書は使えますか?」

「理事になったのですがメールアドレスの情報を聞かれましたが教える必要はありますか?」

いろいろと不安になる気持ちはわかります。そんな時こそ丁寧に説明しています。

滞納者のどこまでの事情を知る必要があるのか?

むずかしい問題ですね。事情を聞いても理事長や理事が個人的に対応できることではありません。まして管理会社がそこまで立ち入ることは適当とは思えません。ただし、FP(ファイナンシャルプランナー)や弁護士等を紹介することは問題ないと思います。

理事会が知りたいのは「支払うことがいつまでに可能になるか」この一点です。

理事長から滞納者の相談はマンション管理士である私にも最近増加しています。その結果、FPの資格もあるため、滞納者の方と面談することも多数あります。

しかし、現実は厳しく管理費等の未払いまで進んでいるとほとんどの場合、手遅れが現状です。もう少し前に相談してくれればと思うことが度々です。

絶対に訪問記録、督促履歴は残す!!

管理委託契約の履行項目になっているため、訪問記録、督促記録は通常は管理会社が記録を残します。

これは裁判所に支払い請求をする時に証拠になります。これ以外にも内容証明を送達した時の記録も理事会は保管します。決して忘れないことです。

口約束は信用してはいけません

滞納の支払いのお願いで訪問や電話をすると大抵「もう少し待ってください、来月末には必ず・・・」

嘘とは思いたくありませんが、確実な返済見込みがあり返答しているケースはほとんどありません。

必ず本人に覚書書、あるいは約束書などを書いてもらってください。それだけでも債務の存在を認めた証拠になります。

管理員や管理会社の担当者はここまでの業務義務は負っていません。理事長ができれば行って頂きたい、マンション管理士は平気でやります。

規約に滞納利息を取決めることの重要性

規約に定めることで支払日の翌日から利息は発生します。利息は債務不履行に対する金利(債権者が得ていたら利益が見込まれる金額)を加算して請求できます。これ以外に債権の回収に使用して費用も請求できます。

滞納利息は遅延損害金、利息などいろいろな言い方をされますが同じ意味です。

規約に滞納利息に記載がない場合については、法律家でも意見が分かれている様ですが、余計な混乱を起こさないためにも事前に定めておくべきでしょう。

遅延損害金の金利の上限は?

国交省のマンション標準管理規約(単棟型)コメント[平成28年3月改訂版]は、「滞納管理費等に係る遅延損害金の利率の水準については、マンションの日々の維持管理のために必要不可欠なものであり、・・管理組合による滞納管理費等の回収は、専門的な知識・ノウハウを要し大数の法則が働く金融機関等の事業者による債権回収とは違い、手間や時間コストなどの回収コストが膨大となり得ること等から、利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定することも考えられる。」と書かれています。

各管理組合で考え方はいろいろありますが、一般的には利息制限法などから考えても年10%~18.25%程度が妥当かな~と思います。

滞納請求の経費はどこから支出するの?

管理費から支出します。また回収した金銭は管理費に充当されます。

離婚調停中の債務者は大変です

離婚は増加傾向にあり、調停や裁判に持ち込まれるケースもあります。

多くの場合、ローンの返済中であり、物件は売却する方向で話が進むようです。

裁判の結果が出されるまで債務が支払わない状態が継続します。この時は当事者から覚書や念書を取るべきです。

裁判の日程連絡の義務、裁判結果の報告義務、裁判決定後の支払期日の約束が書かれていることが重要です。出来れば弁護士に依頼すべきです。

債務者の家族に督促できるの?

できません。違反行為になります。

債務者(区分所有者)以外への請求は同居する家族に行うことは禁止されています。

管理費等の請求先は区分所有者です。旦那さん側、あるいは共有資産であれば両者に支払う義務があります。

ただし、債務者の所在が不明であれば家族に連絡先を聞くことは行います。伝言を頼みます。それ以外にも債務者の実名が公表されれば当然、他の住民にも知れます。そうなるとかなり住みにくい状態になります。子供でもいれば尚更です。

この意味合いも含めて債務者の実名公開は債務者へのプレッシャーになるとされています。

他から借金を勧めることも違法行為

管理費等を支払うために金融機関などへの借入を勧めることは違法行為になります。決して行ってはいけません。

自主的に本人が借入て支払うことは問題ありません。

給与保証の保険はないの?

あります。疾病保険の特約として休職時の給与の減額分を保証する保険、あるいは就業不能保険として単独で契約できる保険はあり、各社から色々な商品が発売されています。

保険料は月に2,000~3,000円程度です。

「就業不能保険」で検索するとすぐに見つかります。

会社が倒産しても慌てない

会社が倒産すると給与も支払われなくなります。当月から生活が困難になります。失業保険に加入してれば手続きをすれば翌月から一定額が給付されます。(契約期間で給付額は異なります。)

まずは慌てず、しっかりと家計を見直すことです。そのためにも日頃から蓄えは当然ですが、毎月必ず支払う必要がある金額を算出すべきです。

光熱費、管理費等、ローン返済額、教育費、食費、保険料、医療費、通信費を個別に月毎の支払額を把握します。その上で、節約できるものを算出します。

通信費、食費、保険料、光熱費は工夫次第でそれなりの減額はできます。

重要なことはひとりであれこれ悩まずに専門家に相談することです。

債務者の所在は必ず一定期間ごとに確認すること

管理費の請求で一番困るのが債務者が所在不明になることです。連絡届出先の勤務先は退社、実家も連絡がつかないとなると理事会に出来ることは限られます。

専有部に立ち入ることもできません。専有部の売却も金融機関が主導権を握り、債務が支払われても100%返還されることはまずありません。

競売が上手くいき次の所有者が決まれば負債の請求ができますが、売却先が決まらなければ最悪、長期間の空家になります。

当然ですが、管理費は支払われません。

これを防ぐためにも債務者の所在は最低でも月に1回、できれば毎週連絡を取り、近況を含めて所在を確認してください。

夜逃げって本当にあるの?

働いていたマンションでは夜逃げは一度も経験がありません。

仲間内からも耳にしたことはありません。でも、現在のコロナの影響を考えると増える可能性はあるのかもしれませんね。

少額訴訟って何?

1回の期日で審理を終えて判決をすることを原則とする特別な訴訟手続で60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り利用することができます。

裁判所ホームページより出典

費用は印紙代、予納郵券代(切手代ですね)を含めて12,000円程度です。勝訴すればこの費用も回収できます。

最大の利点は管理費等の滞納を少額訴訟で行う際には総会の承認は必要なく、理事会で決定できることです。

その上裁判が1回で済むこと、相手の屁理屈に対応する必要がないことも利用したい利点です。

特別送達って何?

送達は裁判所が被告(債務者)に正式な書類を送ることを言います。特別送達は告訴状、呼出し状(裁判開催日、場所が記載)、答弁書の書き方が同封されています。

特別送達を受取らないことはできるの?

出来ません。不在の時は不在票が投函されます。送達は郵便局が一定期間保管しますが、期間内に連絡がない場合、送達は届けられたと見なされます。

逃げることは出来ないと言うことです。受取らない場合でも裁判は行われ、相手の訴えがそのまま認められてしまいます。

答弁書って何?

訴えられたことに不満や事実と違うことを申立てることが出来る書面です。

「これは借金ではない!!」とか言い分、申し開きをすることが出来る機会です。送達到着後2週間以内に回答する必要がありますが、提出しなくても裁判は行われます。そこで争うことも可能です。

裁判に相手が来なかったらどうなるの?

自動的に訴えは認められ債務額が確定します。以降は差押えの手続きに進むことが出来ます。

駐車場の契約中でも解約できるの?

使用細則にその旨定めることで可能です。

規約違反は理事会の決定だけのできるの?

可能です。規約や使用細則への違反行為の中止命令は理事会で決めることができます。

契約の解除も違反行為へのペナルティーとして設けているルールです。理事会の決定で可能です。

修繕積立金の平均額

国土交通省の平成30年の調査結果

毎月の一戸当たりの修繕積立金の額(使用料・専用使用料からの充当額を除く)は、平均で11,243円となっていますが、マンション完成年次別でみると、平成27年以降完成は6,654円、昭和44年以前完成は26,356円でした。

価格優先の管理会社の今後

小規模マンション(50戸以下)が増えたことでここ10年ほどで低価格で管理を請負う会社が多くなりました。

その背景にはマンション管理士制度の充実化、あるいは管理会社の営業体制の強化、ネット環境の急速な普及により管理の情報も簡単に入手できるようになったことが大きくあります。

これによりマンション住民のコスト意識も変わり、分譲開始時の管理会社の見直しを積極的に検討する管理組合も増加しました。

もともと小規模マンションの特徴は最低限の設備の場合が多く、管理員も清掃を中心とした業務であり常駐する時間も短時間です。管理費は低く抑えることが可能であり、そのことに気づいたためです。

その結果、管理会社間では激しい価格競争が起き業界の再編も進みつつあります。

他方、この動きとは別にサービスの充実化を求める管理組合も増えています。

これが管理会社の二極化が進む結果になりました。

2021年に公開された顧客満足度の調査では低価格管理会社の台頭にも陰りが見え、サービスの充実化を求める管理会社が顧客満足度が高く評価される傾向が強く表れ始めていると評論されています。

二極化の傾向は今後も進む方向にあり、管理組合も組合員の意向に合わせた管理を求められることになると推測しています。


⇒ 2章 マンション管理を左右する要因について(2)に続く