管理組合の理事等に「管理がうまくいかない理由」についての解析を続けます。

この章では管理会社側に問題があると答えた方の意見について考えます。

国土交通省「マンション管理の現状について」より出典
理事への質問の選択肢別のグループの割合

以上は3章に掲載した内容と同じです。

1、管理会社への不満

管理会社に問題があると回答した結果を多い順番に示した表です。

「管理業者が良くない」と回答した人がもっとも多いわけですが、この資料ではその具体的な理由までは言及していません。そこである程度推測することにします。

まず、管理会社と管理組合の業務体制の関りについて整理しましょう。

管理会社がマンションに派遣する者は窓口担当者と管理員・清掃員です。日常清掃等はマンションの規模と関係していて、ほとんどのマンションは管理員が兼務することが多いようです。

この2者の対応に問題があれば当然に管理に支障をきたします。

担当者(管理業務主任者)について考えます。管理会社の代表者であり皆さんの担当となります。そのため、担当者(管理業務主任者)の評価は管理会社の評価に直結します。

担当者は管理委託契約に基づき業務を行います。管理委託契約の主要な項目は3つです。ひとつひとつ確認しましょう。(主要項目については2020年9月特集 4章 管理組合の事務管理(管理委託)とは何?を確認してください。)

主要項目の1つは会計業務で管理費・修繕積立金の徴収、出納管理はお金の管理であり、そう方法についてはルールが決められていることからも理事等が不満に感じるケースはほとんど考えられません。万が一不正や不備があれば管理会社の資格を失うことにもなるため、厳正な管理が行われている推測できます。

2つ目の設備保全は予算計画に従い実施される保全を手配、検収、記録の保管です。法定点検は結果の報告が義務とされています。またメンテナンスの実施も記録に残します。

突発的な事故や故障への対応が遅い等の問題は考えられます。設備の修繕が遅くなれば委託契約の目的である良好な住環境が得られず、管理会社の評価は低下するでしょう。

3つ目は支援業務です。前章でも説明しましたが契約内容が曖昧な支援業務です。

2、管理実務の業務タイプ

各業務はいずれも原則として理事会と管理会社の業務の流れの中で行われます。

出納管理、点検業務、理事会、総会の開催準備などの通常の業務は実務サイクルに従い実際されます。(当サイトではこの業務を実務サイクルと呼んでいます。)

実務サイクル内で発生した場合や理事会への報告が不十分な場合、管理はうまくいかない評価につながりますが、予算計画で設定される業務は一般的な内容であり難易度はあまり高くはありません。

実務サイクルが機能しない場合は、管理会社がいい加減な実務を行っていると推測できます。この場合はリプレースにより管理会社の変更を実施すべきでしょう。

実務業務の流れにはもうひとつあります。次の業務フローシ図をご覧ください。

実務中に問題が発生した時、あるいはマンション内で案件が発生した時に行う業務です。

注目すべきは緑の矢印で示した部分の業務です。発生した問題の状況を調査、必要があれば住民へのアンケート等を行い解決策の提案を行う業務になります。言い換えると理事会が解決を決定するための準備を行う業務です。(当サイトではこの業務をサポートサイクルと呼んでいます。)

実はこのサポートサイクルが、委託契約中の曖昧な文章で記載されている部分です。管理委託契約では理事会支援業務に分類され曖昧な表現がされています。

言い換えると突発的なトラブルに対応する能力がサポートサイクルになります。予算案中心に行われる実務以外の部分です。

この結果により理事会は意思決定を行い、管理会社に指示を出します。指示を受けた管理会社は実務サイクルを実行します。

トラブルの内容にどれだけの解決能力を発揮できるかは経験や行動力、コミュニケーション能力など複合した要素で決定されます。また、サポートサイクルは管理会社で実力には差があり、また同じ会社でも担当者する管理業務主任者のスキルによっても違いがあります。

窓口担当者の多くは国家資格取得者である管理業務主任者ですが、管理業務主任者の専任業務は管理委託契約の内容を理解し保証する能力であり、またその内容を契約前に説明すること、契約終了後に結果を報告することです。

管理業務主任者は区分所有法や管理業務について知識はありますが、管理組合の運用について何かノウハウを持っているとは限りません。

また、管理会社によっては資格者以外の担当者を配置しているケースもあります。特に入社後資格取得まで期間の実習を兼ねているケースが多数あります。

そのような場合は、サポートサイクルを上手く発揮できず理事会の機能も低下します。実務サイクルは通常通り行われていてもマンション内の問題が一向に解決しない状況になります。

サポートサイクルの特徴は、理事会の思惑(期待感)に担当者が答えることができるかも評価に大きく関わる点です。安易に解決策を提案しても理事会が求めるレベルとかけ離れていると評価は低下します。

この状態になると理事等は「管理会社が良くない」「管理組合が機能しない」と評価をするのではないしょうか。

管理会社も管理業務主任者に適切な研修等の教育は行いますが、それを実際のフィールドで活用できるかどうかは本人次第です。その意味では管理業務主任者をバックアップする能力を含めて評価された考えられます。

実務サイクルとサポートサイクルの関連を次の図にまとめます。

「管理会社が良くない」「管理組合が機能しない」と回答した理事等の経験者は、サポートサイクルを今く機能できない管理会社の対応に不満を持たれた可能性が高いと考えています。

3、管理員への不満

管理員への不満も管理がうまくいかない理由に挙げられています。

管理員の仕事内容や求められるスキルを実務サイクル、サポートサイクルごとに整理しましょう。

管理員の業務と求められるスキル

管理員は日常、住民の方と接する機会が多く、各種申請の申込の窓口であり、実務サイクルの現場執行者でもあります。

挨拶、言葉使い、清掃状況などもっとも住民から評価されやすい立場にいます。

しかし、管理員は実務サイクルを執行はしますが管理業上の意思決定を行うことはありません。

あくまで総会、理事会で決定された指示に基づき現場(マンション内)で実務サイクルを実行する立場です。実務サイクルを行う時に求められるスキルは管理業務主任者に求められるスキルとは大きく異なっていることがわかります。

実務の手順はほとんどの業務はマニュアル化されています。管理員が独自に手順を変更する場合も必ず管理業者の承認を受ける必要があります。

挨拶をしない、言葉使いが乱暴、怠慢(怠けや休憩が多い)、清掃状態が悪いなどに不満があれば当然にクレームとして管理会社に連絡があります。担当者は注意を含めて教育を行います。

一般にはこれで改善されるはずですが、改善がされない管理員は仕事を失うことになるでしょう。

管理がうまくいかないと判断される管理員が該当する場合とは、マニュアルを逸脱した業務方法、管理会社への連絡の怠慢等に伴う業務の停滞がもっとも考えられますが、一般ではなかなか想像できません。

多くのマンションでは住民と管理員のコミュニケーションは良好であり管理員が運営がうまくいかない理由になることは想定できにくいと思います。

次に実務サイクル以外で発生する業務における管理員の役目を考えましょう。

次の図はマンション内のトラブルが発生した時の業務フローです。

トラブル発生時の業務フロー

トラブルの窓口は管理員になります。(管理員が駐在していない場合、あるいは不在の時間帯は担当者に直接連絡します。)

管理員は管理業務主任者に連絡、あるいは事前に用意されたトラブルマニュアルに従い対応します。

この時に重要なことがひとつあります。

対応に緊急性がある場合は、理事会への報告前に管理会社が独自の判断で対応することが管理規約に認められています。例えば、水漏れや火災、生命に関係する猶予する事態です。

このような場合は、事前に用意されたマニュアルに従い管理員の判断で応急処置が行われ、事態が収拾後に管理業務主任者、理事会に報告します。(理事長が在宅している場合は相談や承認を受けます。)

それ以外に騒音の苦情などは一時対応が行われることも多いようです。

その後、管理業務者から理事会に事後報告が行われます。

理事会は報告を受け、理事会で判断できることか?あるいはサポートサイクルを利用して解決するかを相談後、管理会社に指示を行います。

騒音への注意喚起掲示やペット飼育者への注意喚起掲示などもこのような手順を追って実施されます。

しかし、注意喚起等だけで解決できる問題は少なく、内容によっては理事会、管理会社の能力と無関係に住民側のモラルが大きくかかわる部分があり、すべての解決を求めるには限界があります。

このように管理員はマンション住民の様々な問題に対する仕事になります。

管理員の業務は理解できましたか?

では、管理員が管理がうまくいかない理由になる原因を考えてみましょう。

管理員に実務の意思決定権はありません。不満を持たれる理由はトラブルの解決までの時間や解決する能力ですが、これに管理員はほとんど関与できません。

また、不満があれば管理会社に管理員の変更を要請することも可能です。

恐らく、この選択肢を選んだ方は管理業務の停滞が管理員によるものと判断されてたのでしょうが、管理員も管理会社が派遣する要因であり、管理会社への不満と考えて良いでしょう。

4、管理組合の機能不全と管理会社

管理会社が行うマンション管理委託契約には国土交通省が定めてた手順によりい実施される「基幹業務」と未確定な要素を多く含む「支援業務」があります。

管理実務の業務方法は国土交通省が決めた手順で行われる実務サイクルと理事会の要望による臨機応変な対応が求められるサポートサイクルがあることを説明しました。

「基幹業務」と「支援業務」と実務サイクル、サポートサイクルの関係は次のようになります。

基幹業務、支援業務と実務サイクル、サポートサイクルの関係

理事会の実務が意志決定、指示だけに限定されその他の業務を管理会社が行うポジションがよくわかると思います。

「基幹業務」は管理会社で統括するシステムが異なりますが、実務の内容に大きな違はありません。

これに対して「支援業務」はトラブルやマンション内の問題を解決するために理事会から要請される業務になります。

支援業務は管理会社、管理業務主任者ごとで重要性への認識が異なり、中には契約外と考える会社もあるようです。

また、サポート業務の内容は多岐に渡り、法律、民法、建築、設備、アンケートの制作能力、解析能力など管理会社の総合力によって理事会が望む要求内容に応えられるかは決定されます。

そのため理事会のニーズに応えられない時管理会社は不安感や不信感を招く要素になっています。

管理会社の総合力がサポートサイクルに与える影響

その結果、トラブルや問題点の解決にも支障をきたし管理事務がうまくいかない状態を引き起してしまいます。

「もっと積極的に関与してくれると思った」、「何もやってくれない」と言った理事の声はこのような事態から発生します。当然、理事等の管理会社への評価にも影響します。

これまでいろいろな組合の現状分析を行うと基幹業務には問題がないのになぜかマンション内の問題やトラブルの解決が出来ていない組合を経験しています。

その多くはサポートサイクルを上手く利用できない、あるいは管理会社に十分なサポートをする実力がない原因に辿り着きます。

管理会社の実力はここにでる

4、まとめ

2018年、国土交通省から公表された「マンション管理の現状について」から理事の皆さんがマンション管理がうまくいかない理由について回答した結果を考察しました。

今回は管理会社の問題について考えました。

これまでの特集で管理委託契約の実務は「実務サイクル」と「サポートサイクル」の2つの業務の進め方タイプによって実行されていることがわかっています。

「実務サイクル」はマンション管理適正化法、標準管理委託契約に進め方が示され、ルールに則って実行される為、管理会社による差が生まれにくい業務であること、これに対して「サポートサイクル」は管理会社の担当者のスキル、担当者をバックアップする管理会社の体制により大きな差が生じる業務であることがわかっています。

「管理会社がよくない」と回答した理事等から推測できる結果として、「サポートサイクル」の実力差が評価に現れている考えられます。

「管理組合が機能していない」と回答された理事等もありましたが、管理組合が機能しないことは管理会社の指導力不足としか考えられません。委託契約委は支援業務が含まれます。支援業務は「サポートサイクル」に含まれ管理会社によるスキル差が大きく、そのため管理組合が機能できない理由も管理会社に責任が大きいと判断できます。

前出の「管理会社がよくない」と答えと同じと考えて構わないでしょう。

「管理員が良くない」については、管理員は管理会社が責任を持つべきことであり、交換も含めた改善はそれ程難しいことではありません。管理がうまくいかない理由としては考えにくいと考えています。

マンション管理能力の不足の管理会社へ委託契約した場合、組合運営がうまくいかなくなる可能性が高いと言えるでしょう。

せっかめメモ
不動産、マンション豆知識

管理会社の評価とは何か?

一言で言えば組合員の満足度です。管理会社も多様化しています。管理費が安いことをアピールする会社、サービスの充実化をアピールする会社もあります。選択肢はたくさん準備されています。

管理組合がどの会社を選択するかによって評価されるべきです。

最低限のサービスと低価格を求めれば、それを満たす会社と契約すべきです。最高のサービスを求めれば当然価格は高くなります。

そのため、管理会社の評価は組合員の満足で決まるとお話ししています。

一概に委託料や業務だけで管理会社を評価することはできません。

最低限のことはチェックすべき

管理会社のサービスが多様化、価格帯も幅広くなりましたが、最低限必要なことがあります。

それが基幹業務です。基幹業務を適正に行っていない会社はマンション管理登録制度(マンション管理適正化法)に違反している可能性が大きいと判断される為です。

最低限に何を確認すればいいの?

  1. 管理費等の分別管理
  2. 帳簿と銀行残高の一致
  3. 法定検査の実施履歴

上記の3点をまずチェックすべきです。細かな業務の進め方は後回しで大丈夫です。特に会計関係に必須です。皆さんの財産管理に関することです。毎月の報告書に会計資料(収支報告書、賃借対照表)の添付は絶対に要求してください。また、年度末には口座残高証明書、保険証書、金融証書(スマイル債など)は添付必須です。

もし、疑念があればどうするの?

直ちに、専門機関に連絡してください。マンション管理業協会、マンション管理士協会が相談に乗ってくれ調査も実施てくれます。

協会?大丈夫なの?

はい、大丈夫です。

マンション管理業協会は管理業主任者の資格講習等を国土交通大臣から委託されています。また、問題が発生した時は、国土交通大臣に代わって管理会社に立入検査や資料提出を要請する権限があります。

応じない場合は罰金や業務停止、登録の抹消が行われるケースもあります。

今時そんな会社あるの?

残念ながら業務停止は数件あります。業務改善命令は必ず公告されます。「マンション管理会社」「業務停止」あるいは「行政処分」で検索すると会社名と理由はすぐにわかります。

想像より多いことに驚くと思います。

もし違反があった場合は?

管理委託契約をすぐに解除することが出来ます。

まずは管理会社に預けている金融機関等の通帳等、保険証書、金融証券の返却を請求してください。その上で内容を確認してください。口座の残高もすぐにチェックしてください。

もうひとつ重要なことはマンション内の鍵の数を早急に確認してください。1個のマスターキーの紛失は多大な費用が必要になるケースがあります。

違反があっても次の管理会社への引継ぎ義務はあります。その点は安心してください。

管理委託契約に納得できない時は?

契約書に記名押印している管理業務主任者に質問してください。契約書の内容を保証しているのは管理業務主任者です。

業務内容が契約と異なっている時は、管理会社の担当者に改善請求を理事長を通して行ってください。あるいはマンション管理業協会、マンション管理士協会に質問しても対応してくれます。

大規模修繕は別な契約です

大規模修繕工事に関する契約は管理委託契約には含まれません。別途契約することが原則です。

修繕積立金についても計画に対しての実績を報告する業務は含まれますが計画に見直し業務も管理委託契約には含まれません。

サポートサイクルの実例を教えて!

幾つか実例を紹介します。

マンション共用廊下に私物を置く違反行為が発生したとします。管理員から管理会社担当者、理事会に報告され理事会で対策が検討されます。

一般的には掲示板やエレベーター内に注意喚起の掲示物を貼ることが決定されます。

それでも違反が続くような場合は、管理員に戸別訪問による注意喚起を促すことを決定することもあるでしょう。(本来は理事長が行うべき行為です。)

これらは実務サイクルの一環で行われます。

共用廊下に放置されている私物の種類を確認、例えば自転車の放置、エアコンの室外機がもっとも多かったと調査結果が出たような場合、共用廊下の幅が消防法で規定された避難経路として十分確保していれば、エアコン室外機の設置を認めることを使用細則に定める提案を理事会に行います。また、自転車であれば敷地内の駐輪場の数を確認、契約件数との数から駐輪場の数が不足している現状を確認して、玄関前に置くことを有料で認める提案を行うなどいろいろなケースが想定されます。

これらがサポートサイクルになります。

次のケースはマンション内の騒音問題が起きた時の対処方法です。

一過性であれば特に注意喚起で済みますが、夜間の洗濯機の使用、掃除機の使用など頻繁に発生する場合は、注意喚起と併せて会報等で消音マットを紹介する提案を理事会に行います。

掃除機の使用についても夜10時以降の使用を禁止する使用細則を提案します。その上で住民へのアンケート調査を行う等のサポート業務が発生します。

これらがサポートサイクルです。

設備保全にもサポートサイクルのあるの?

あります。設備等を入れ替える業務が年間計画にあるとします。

この際の業者選定を行うための調査がサポートサイクルになります。

既定の会社に見積りを取寄せ理事会に提案することも業務ですが、複数の会社から見積りを取寄せ、価格、各会社別のメリット、デメリットを見易い資料としてまとめることも可能です。

理事会はその資料を基に最終的に発注業者を決定します。

どちらも委託契約には違反していませんし、業務としては目的を達成しますが、理事会の受ける印象はまったく違います。

サポートサイクルの本質とは顧客満足を高く保つことと一致しています。

サポートサイクルは簡単ではない

サポートサイクルを高いレベルに保つことは担当者のスキルに依存します。

先ほどお話しした設備の見積や比較表の作成は単純なものではありません。見積りの内容を吟味し理事等が分かり易くまとめる必要があり、設備への知識、見積りを読みとり知識が必要になります。

また、騒音問題、共用廊下の私物放置の問題も共用廊下に私物を置くことを禁止している理由は避難経路の確保が最大のポイントです。十分な広さが確保できる状況であれば解決案の提案もできます。

これ以外にもマンション内にはゴミ問題、駐車場の問題などたくさんの案件が常時発生しています。

案件ごとにマンションの事情を考慮した最適解に近い提案を出す能力は経験、知識が必要です。

そのため、管理会社の担当者のスキル、管理会社の総合力がサポートサイクルの評価につながり管理組合の満足度を決定する要因になっています。

入社数年の若い担当者がとても数年で身に付くスキルではありません。管理業主任者の資格を持っているだけでも不十分です。

アンケートの設問ひとつにも工夫が必要です

マンション内の意見を集まる時に用いられるアンケートですが、大抵、管理会社が作成、配布、集計を行い理事会に報告します。

アンケートの設問によって結果が変わることはよくあります。担当者も工夫をする人、ストレートに聞く人、答えを誘導するような設問を用意する人と担当者の個性と仕事に対する熱意がわかる仕事です。

修繕工事費の見積のお話

余談になりますが、㎡工事費は見積りでよく見かけますよね。例えば工事費100万円の見積が出されました。内訳の記載は工事一式と書かれています。

素人ではどの会社も同じに見ますが、担当者に話を聞きながら比較表を作ると次の表になることがわかりました。

会社施工費
A社6.7万円/㎡
B社8.3万円/㎡
C社10万円/㎡

実は図面から面積を算出する際の面積の取り方に違いがあったことがわかり、A社は実際に施工する面積を基準に算出、B社は法定床面積、C社は専有面積から算出していました。(えっーズル~い)

これが建設や設備会社の見積です。比較できる基準が見えない場合が「一式」に隠れていることが多くあります。

今回示した例は免責ですが、実際の工事では人員(職人数)や工事日数が複雑に計算されます。これを正しく比較することの難しさはご理解頂けますよね。

簡単な設備交換ではあまり気にする必要はありませんが、工事終了時に使用量等から調整が入る可能性がある工事費は要注意です。

注意が必要な担当者ってどんな人?

もっとも重要視すべき点は、対応速度です。

一般的に担当者は複数の管理組合を担当します。平均で15~20組合ぐらいです。マンションの規模によって違いますが、戸数にすると450~550戸前後ですかね。

そのため、担当者は実務サイクルの業務に追われ、事務所で作業する時間が多くなります。月末には各月次報告書の作成、理事会の開催手配、開催通知の発送、理事会の開催と大忙しです。

その業務中も各管理員から連絡が入り対応します。

とにかく、忙しい!!仕事です。

しかし、管理組合から見れば「それは関係ありません」と当然に思います。無理な業務は結局は対応の遅れとなって現れます。

迅速な対応をしてくれる担当者は安心できる評価ポイントになります。

必要と思えば依頼することです

各組合員は日々気づいたことは管理員や担当者に伝えるべきです。不満をそのままにしておくべきではありません。

「〇〇汚れてたよ」「天井灯切れてるよ」「ゴミ室の臭い何とかならない」

管理員にとっては貴重な情報になります。何でも結構です。管理員は担当者に連絡します。担当者は理事長と相談して必要なことを実行します。

担当者が若いが大丈夫ですか?

年齢だけで評価すべきではありません。本人次第です。また、管理業務主任者の資格を持たない担当者には後方支援として重要事項説明を行った者がサポートしています。年齢だけで不安になる必要はありません。業務態度やあなたが感じる評価を大切にすべきです。

最近は女性の担当者も増えています。優秀な人材が管理業務業界に進出していることも理由の人ですが、気遣いができるサポートは女性に向いているのかもしれません。

若い担当者の場合は、彼らを育てるぐらいの気持ちで接してあげてください。

管理員に高齢者が多いのはなぜ?

一番の理由は低賃金でしょう。65才以上になると年金を受け取ることができます。(以前は60才でした)しかし、年金だけで暮らせる人は少なく、多くの人は生活費を稼ぎ必要がありますが、65才を超えて就職先を探すとなかなか見つかりません。

あるとすればビルの清掃や管理員、警備員と言った限定された仕事で、パート契約がほとんどです。

時給も1,000~1,300円(最近、最低賃金のお陰でこの額になりましたが、都内でも900円台はあります。)

比較的若く管理員になった人は、契約社員で契約しますが常駐時間の長い規模が大きな管理組合に配置されます。

多くの場合、午前中だけの勤務になりますね。

そのため、月の収入が60,000~80,000万円程度になり年金と合わせると生活保護費とほぼ同額程度になるようですね。

最近は75才を過ぎても働いている管理員さんを見かけることも多くなりました。

しかし、管理員も多くの方が思っている以上に大変な仕事です。また、年齢的に病気になりやすいこともあって離職率も高いと言われています。

管理員は簡単になれるの?

比較的求人は多い業種です。定着率もあまりよくありません。理由は思ったより大変と感じる人が多いようですね。

管理会社によって採用基準は違います。特に管理員を重要視している大和ライフをはじめとする大手は慎重です。

採用後の管理員の教育も管理会社によってバラバラです。1週間程度の研修を受ける必要がある会社もあれば翌日から勤務に就く会社もあります。

ただ、優良な管理組合にはベテランの管理員を配置することだけは確かです。(ここで言う優良とは利益率の高い資金に余裕がある組合のことです。)

管理員は社員証を持っていますか?

管理員を含めた管理会社の従業員は社員証を携帯することが義務です。社員証には記載事項も決まっています。携帯していない場合は管理会社にクレームを言いましょう。

行政指導の対象になることもあります。

管理員や清掃に不満があればすぐに連絡

管理員は、直行直帰で働くケースがほとんどです。

業務に何か問題があるようであれば本人に直接伝えることも重要ですが、何度も繰り返すようであれば管理会社の担当者に連絡すべきです。

管理員の勤務中は裁量に任されているため、さぼることもできます。多くの管理員は真面目に仕事を行っていますが、中には管理員室に籠り死角で休憩をする人もいます。

5分~10分の休憩はあっても良いでしょうが、新聞や雑誌を読む、携帯を私用で使うなどの行為を繰返す場合は注意をすべきです。

管理員の業務は結果で評価されます。マンションの共用部は仕事は山のようにあります。暇があるなら管理員室の整理整頓、書類の整理でも行うべきです。

住民ひとりひとりが厳しく見る目も持ってください。

極端に暇そうにしている場合は、駐在時間の見直しも考えるべきです。

「ご苦労さま」が励みになります

管理員は終日ひとりで作業します。夏場も草むしりや外周の掃除、見回りなど動くことが多い仕事です。

住民の方からの「ご苦労さま」の一言がとても励みになります。

管理会社は余計な作業を嫌う

「事なかれ主義」とよく言われますね。

必要以上の作業は出来るだけ簡単に済ませる傾向にあるのは確かです。トラブルやミスを徹底的に嫌いますね。

委託契約の継続が管理会社(担当者)の必須業務です。リプレースの事態になったら大変です。そのためには平穏無事、余計な提案もせずに日々同じ作業を同じように実施することが最大の目的と考えていると感じることが多々あります。

反面、責任が及ぶことには過敏です。危険な箇所の注意喚起などには敏感です。また台風等の自然災害に対する注意喚起も必須の業務になります。

狭い業界です

マンション管理業界は思ったよりも狭い業界です。「〇〇会社の××マンション管理がリプレースされたらしい」と言った情報はすぐに広まります。

リプレース合戦で管理会社も大変です。また人材確保のため業界内を渡り歩く管理業務主任者もいるようです。

特に各社とも気にしている情報が毎年公開される「マンション管理顧客満足度ランキング」ですね。

あのランキングの上位に選ばれることはステータスであり、ランクが大きく下がることは業績に直結すると言われています。

マンションの住民の皆さんも結構気にしている様で、理事長さんたちからも上位の会社の評判を聞かれます。


次章では管理会社が理事長を兼務しているケースについて考えます。

⇒ 3章 マンション管理を左右する要因について(3)に続く