管理組合の理事等に「管理がうまくいかない理由」についての解析を続けます。
この章では賃貸住戸に問題があると答えた方の意見について考えます。

1、近年の賃貸住戸の状況
平成30年マンション総合調査結果(国土交通省)から分譲マンションの賃貸住戸の割合について次のような報告があります。
完成年次 | 全戸数の20%以上 を占める管理組合 | 全戸数の10~20%を 占める管理組合 | 0%の管理組合 |
昭和54年以前完成 | 31.6 | 55.6 | 5.3 |
昭和55~平成元年完成 | 30.3 | 53.0 | 4.7 |
平成2年~平成11年完成 | 16.4 | 62.6 | 9.6 |
平成12年~平成21年完成 | 8.3 | 61.5 | 14.7 |
平成22年以降 | 19.4 | 54.7 | 22.4 |
国土交通省は築年数が古いマンションほど賃貸戸数が占める割合が多くなる傾向があると結論づけています。
平成元年以前に建てられたマンションでは3割の管理組合が30%以上の専有部が賃貸物件として利用されています。
しかし、比較的新しい築年数のマンション(H22年以降)に限定すれば賃貸戸数が全戸数の20%以上を占める管理組合が19.4%と高くなっていることが気になります。
築年数が古くなると賃貸物件に利用される理由には転勤や同居に等の生活状況の変化による物件の貸出し、買い換え、資産売却による法人所有者(個人投資家を含む)への所有権の移行、相続等による遺産分与による売却などが考えられます。
区分所有者が変更になることに問題は発生しませんが、賃貸物件に提供されると居住者は組合員ではありません。また、区分所有者は管理組合に興味を示さず「無関心な組合員」になる可能性が高くなります。
2、賃貸不動産会社が購入する訳
分譲マンションを賃貸物件として利用する一番の目的は不動産投資です。彼らは物件を貸出し収益を継続的に上げ最終的に売却することを前提に購入します。

購入時の築年数にもよりますが、早ければ10~15年、遅くとも20年では売却する計画で投資を行います。
賃貸不動産会社が自社で賃貸物件を1棟所有するケースも多くありますが、賃貸管理の業務が発生するため煩雑になり必要な経費負担が大きくなります。その点、分譲マンションであれば管理組合が安価な費用で代行してくれます。さらに災害等で不動産が被害を受けた場合、1棟をすべて所有していると最悪、建替えが必要になるリスクがあります。その点、分散投資は被害を最小限に抑えることができます。
いずれにしても賃貸物件に提供する区分所有者が管理組合の運営にどの程度関与するかによって管理組合運営に大きく影響する可能性があります。
3、20%の意味するものとは何か?
国土交通省が示した資料は、全戸数の20%以上で統計を分けています。これにはどのような意味があるのでしょうか?20%を超えると管理組合の運営にどのような影響がでるのでしょうか?

いずれの場合も総会成立はそれ程影響がなく、普通議決(意思表示者の過半数以上)も賃貸戸数に関わらず実施できます。
しかし、規約の改定等に必要な特別議決3/4で計算した結果では、50戸の管理組合の場合で居住する区分所有者の95%が総会に賛成の意思表示を示さないと特別議決は承認されないことがわかります。
マンションの規模が大きくなっても議案決定に必要な賛成数(意思表示)は徐々に低下しますが、かなり際どい状況が発生することを想像できる結果であることがわかります。
また、建替え等の特別議決4/5では、居住者の100%が賛成しなければ議決は承認できないとわかります。
この結果を踏まえて皆さんの総会で通常の意思表示率はどの程度ですか?また、議案についてすべての方が賛成していますか?
おそらく、ぎりぎり、あるいは否決される可能性があることがわかるはずです。
このように国土交通省が示した賃貸戸数20%には大きな意味があることがわかります。
また、この計算には空家を考慮していません。空家はどの程度あるのでしょうか?
4、分譲マンションの空家の傾向
平成30年マンション総合調査結果(国土交通省)から分譲マンションの空室状況について次のような報告があります。
完成年次 | 全戸数の20%以上 を空室が占める管理組合 | 全戸数の10~20%を 空室が占める管理組合 | 空室が0%の管理組合 |
昭和54年以前完成 | 4.4 | 64.4 | 24.0 |
昭和55~平成元年完成 | 2.1 | 54.3 | 30.3 |
平成2年~平成11年完成 | 0.2 | 38.6 | 48.6 |
平成12年~平成21年完成 | 0.2 | 20.7 | 63.2 |
平成22年以降 | 1.5 | 21.9 | 60.7 |
築年数が古くなると空室の割合も増える傾向にあることがわかります。
経年と空き室の関係は、区分所有者の永住意識の変化による影響もあります。

昭和54年以前は、分譲マンション購入者の60%が買い換えを前提にしています。この傾向は徐々に薄れ、現在ではほとんどの人が終の棲家として購入を行っています。
買換えを行った区分所有者は、新築マンション、あるいは戸建てに代わると推測すれば、空き物件は中古物件として市場に流れます。
一方、新築マンションの供給は近年頭打ちになりましたが、それまでは毎年増加していました。マンションを希望する購入者が新築物件を好む傾向はいつの時代も変わりません。その結果、中古物件は賃貸不動産会社のターゲットとなりました。
あまりにも古くなった物件は、買手が付かずそのままの状態で放置されている数が増えたと感がられます。
また平成22年以降、空室の状況は増加していると読みとれます。近年の分譲マンションの過剰供給に原因があると言われています。結果として未使用のまま新築期間である1年間を過ぎてしまう物件が多くなっています。

しかし、分譲マンションには原則、必ず区分所有者が存在ます。売れ残った場合は分譲会社が区分所有者として所有者になります。
5、連絡先不明の空家
国土交通省の資料より管理組合へ所在住所や区分所有者名簿の提出がされていない物件の割合を示した結果が公開されています。(注意:不動産権利としての調査結果ではないことに留意)

築年数に限定しない場合、総戸数の20%を超える所在不明区分所有者がいる管理組合の割合が2.2%、1戸以上~20%未満の割合が1.7%で所在不明区分所有者が確認された組合は3.9%になります。
この状態の管理組合に賃貸不動産所有者がいると想定すると特別議決の可決はほぼ見込めない状況であることがわかります。
実際には不動産資産としての区分所有者は存在してるはずですが、これを管理組合が調査することはほぼ不可能です。
平成30年マンション総合調査結果(国土交通省)には築年数別も結果が公開されています。

築年数が古くなると連絡先不明の区分所有者が増える傾向あることはわかります。
意外だったのは、平成22年以降に建築されたマンションでも2割強で連絡先不明の区分所有者が存在すること、その割合は近年増加する傾向にある可能性も推測できます。
2010年(平成22年)は、リーマンショックと東日本大震災の間に位置する時期以降に建設されている物件で、築年数10年程度の比較的新しいマンションです。すでに連絡先不明の区分所有者がいることは驚くべきことだとも言えます。
連絡先不明の区分所有者は、議決権を行使する術がありません。管理組合の議決には不参加になります。過去に建てられたマンションの動向を見ると経年により賃貸戸数の増加も予想でき、理事会は組合運営が増々難しくなることが予想できます。
6、連絡先不明が出る理由
古くなったマンションで連絡先不明の区分所有者が増える理由は、物件の価値の低下による流動性の低下、相続による所有権譲渡の不履行などが主な原因でしょう。
買換えや高齢化による同居など様々な理由でマンションを離れる時、古くなったマンション負の財産になる可能性が高くなります。
古くなったマンションは、一定の水準を下回ると賃貸不動産会社も投資物件として魅力を感じなくなり手を出しません。買手もこれだけ新築マンションがある中で築40年を超える物件を進んで購入する人は極端に少なくなります。これが流動性がなくなった不動産です。
しかし、所有者は利用価値がなくなった不動産に毎年、固定資産税、都市計画税を支払う義務があります。また、管理費や修繕積立金の支払い義務もあります。所有しているだけで支払いが発生する状態です。
売れなければ賃貸物件にと思います(固定資産税、都市計画税程度回収できれば良いと考える)が、賃貸不動産会社も手を出さない物件は借り手がほとんどなく、利用価値もなくなります。また、賃料を安く設定すればと思いますが、不動産屋は手数料により儲けを確保します。同じ地区であればより新しく賃料が高い物件を紹介します。
結果として空家となります。それでも管理費等、租税を支払う人がほとんどです。

しかし、悪質な例では専有部を引っ越す際に義務としては、届出を提出する必要はありますが、罰則があるわけでもありません。未提出のまま住所を連絡しなければ管理費や修繕積立金の支払いを逃れることができます。(引っ越す前に売却について不動産会社相談をします。そこで売買が難しいことははっきりとわかります。)
理事等も住民票等を調べてまで所在地を突き止め請求をすることは滅多にないでしょう。結果として連絡先が不明の空家になります。
固定資産税、都市計画税は逃れることはできませんが相続が発生するとどうなるでしょうか。
負の資産に陥ることが目に見えている物件を相続するでしょうか?他に多大な資産があれば相続の可能性もありますが、相続人は相続を放棄するケースで年々多くなっています。
結果、登記の更新も行われず、権利関係がわからない不動産が生み出されます。
放棄された不動産、これ以外にも子供がいない夫婦が亡くなった場合は相続管財人が処理しますが、管財人を裁判所に請求する関係者がいなければそのまま放置されます。
国庫への帰属を請求する人が相続管財人になります。選任されなれば国庫に帰属されることはありません。また、帰属されたとしても管理費を国に請求することはできないと考えられます。
このように築年数の長くなるにつれ、連絡先不明の区分所有者が増え傾向になります。
7、賃貸戸数所有者の参加が必要
賃貸不動産会社や連絡先不明の区分所有者の増加に対して管理組合はどのような対応をすべきなのでしょうか。連絡先不明の区分所有者に対しては国の制度的改善が必要ですが、賃貸不動産会社については本特集の1章でもお話ししましたが、議決権行使を促すことはそれ程難しいことではありません。
からくりは次のようになります。
賃貸不動産会社がもっとも気にするポイントは、賃貸物件の空室率を低く抑えることです。そのためにマンションには綺麗で清潔な環境を求めます。この点で管理組合の運営方針と一致します。
規約の改定等の決定も賃貸不動産会社の権利、賃借人へ不利な条件以外は賛成も反対もしません。また、管理費や修繕積立金の増額もないことに越したことはありませんが、賃借人への転嫁もできるため本気で反対の意思を示すことはほとんどありません。また、管理費は経費として処理できることも無関心な態度になる大きな理由です。
以上のことから、賃貸不動産会社に無関心であることが管理に悪影響を与える可能性が高くなっていることを示せれば、積極的ではないまでも一定の協力は得られます。

そのためには、理事会、管理会社が丁寧な説明、あるいは分かり易い資料を提示する必要があります。
この業務はサポートサイクルに分類され、賃貸不動産会社の実情を理解した上で対応するスキルが求められます。
8、空き家対策
買手、借手があれば不動産は他の区分所有者に譲渡されます。
空き家対策の根本策は適正な修繕工事を行い、マンションの資産価値の低下を防ぐことです。
市場が必要とする物件であることが空き家を発生させない!!ことを各区分所有者が認識することで老朽化に伴う増加を防止、あるいは遅れさせることが可能になると考えています。
4、まとめ
この章では賃貸戸数の増加に伴うマンション管理運営がうまくいかない理由について考えました。
理事会は全戸に対する賃貸戸数の割合が20%を超えると特別議決への影響が大きく表れる可能性があることに注意しながら管理を行う必要があること。さらに賃貸不動産会社(法人所有者)に対して事情を説明し協力を要請することも事前に考える必要があると言えます。
この業務は委託契約内のサポートサイクルに含まれ、管理会社のスキルも求められるため、管理会社の能力を正しく評価して委託契約を締結することも重要であるとわかりました。
これ以外に所在不明の区分所有者も管理運営に厄介な存在であり、管理費の未払い、修繕積立金の不足を招く可能性が高くなります。所在不明の区分所有者を完全に把握することは難しいことを前提に適正な修繕工事を実施し、物件の価値を低下させないことで「流動性のない不動産」にならないようにすることも重要な対策であることを知る必要があります。

不動産投資の現状
土地活用プランナーの仕事を行っていると投資家の皆さんとお話しする機会が多くなります。
「儲かる物件ないの?」「良い物件有ったら教えて」と挨拶代わりに交わされる言葉です。
一棟建て替えを個人のオーナーに提案することもありますが、大手建設メーカーの営業のような力はありません。もともと、私の場合は近所の方から相談されたことがこの仕事への進んだ経緯があり、ほとんどは営業を行わずに個人の口コミで仕事を受けています。
ここ数年で近隣の古い一軒家は新築賃貸マンションに建替えが進み、今でも下町(墨田、江東、台東)あたりには建築計画の看板を多く見かけます。
土地オーナーさんも老後の安定した生活基盤のために賃貸物件の経営に乗り出す方が増えています。
しかし、近年は普通のサラリーマンの方も投資物件を買いたいと相談されることが多くなりました。
近所の賃料20万円台のマンションに若い人が住んでいるのを見ると稼いでいる人は稼いでいることを実感しますね。
最大の理由のひとつは、政府の金融政策ですね。借りないと損と言った金利設定で以前のような厳しい審査がなくても購入物件に抵当権を設定すれば賃貸不動産を入手することができる環境ができたことでしょう。
せっかめにも数名の投資家のお客様名がいます。多い方で20戸以上の分譲マンション専有部を分散投資しています。
私の周りの状況を考えると区国土交通省が公開している賃貸戸数の増加もうなずけます。
貧富の格差がどんどん広がり、金融政策が今後も低金利で進め環境であればこの傾向は変わりそうにもありません。
儲かる物件の条件は?
何といっても立地条件です。都内であれば交通の便が良く、広めのワンルーム(25㎡以上は必須)。
築年数が古くても大規模修繕を実施していれば優良物件になる可能性が高いですね。
専有部内はリノベーションで新築のようなすることは問題なくできます。
皆さんが賃貸物件を探す時とほとんど変わりません。ただし、ペット可、宅配ボックス完備など設備面の条件もあります。
滅多にでませんが、相続による譲渡物件では中には表面利回り15%と言った化け物のような優良物件があったりします。ほとんどは市場には出回りません。不動産の横のつながりで売買されます。
宅建士の資格が必要になったのも不動産売買情報をいち早く知るためだったりします。
土地活用プランナーの仕事は、物件を紹介後、売買が成立した後の収益管理のアドバイス契約です。
空室率の改善や物件案内などが主な業務になります。
新築から3年間は特別価格
賃貸物件では、新築から3年間は同一地区の同じ間取りの物件よりも高い賃料の設定が出来ると言われています。
立地条件等の利回りが良ければ、最初から賃貸物件として購入するケースもあります。
管理組合に参加することはあるの?
オーナー宛に「総会の案内」は毎年届きます。投資家の皆さんは最低でも5戸以上の物件は所有されています。大抵は分散投資(別々の棟に1戸を投資する方法)です。すべての総会に参加することはありません。
部外者の代理人は認められませんから私が参加することもできません。そのため、議決権行使書で対応します。
オーナーから「これやってください。」と預かることも度々あります。議案提案書を確認して賃貸物件に関係ない場合は無視することが多いですね。
管理費や修繕費の値上げは反対しないの?
ほとんどする反対することはありません。理由は簡単です。賃料や共益費に上乗せして対応が可能です。管理組合の意向に反対しても仕方ありません。
最終的には売却します
賃貸物件の利用価値は賃貸収益です。空室率(借り手が見つからない)が高くなると最終的には売却します。
この売り時を見極まるのもプランナーの大切な仕事になります。
不動産投資には税制制度を利用したからくりがあります。購入物件の建物は減価償却が出来ることです。賃料と運用経費がとんとん(利益0円)でも減価償却費分を経費に上乗せできるため、物件の借入金残高は減少したことになります。
工法 | 耐久年数 | |
戸建て | 木造・合成樹脂造・住宅用 | 22年 |
マンション | 鉄骨鉄筋コンクリート造・ 鉄筋コンクリート造のもの・住宅用 | 47年 |
ただし、減価償却できる期間は、建物の構造で決められているため、その期間を過ぎる前に売却し、新しい物件を購入することになります。
また。耐久年数が短くなると融資返済期間も短くなるため一定以上を経過すると流動性が悪くなります。
これらすべてを購入前に計算して資産家に提案、購入後の運営を行うことがプランナーの仕事のひとつです。
売れ残ったマンションはどうなるの?
土地開発会社等が建設したマンションは、分譲会社により買取られ販売されるケースと土地開発会社等が所有権を有したまま複数の不動産会社から販売される方法など様々ですが、売れ残ったマンションの区分所有者にはその時の所有者がなります。
不動産の税金は毎年1月1日の所有者に対して課税されます。これは土地開発会社も分譲会社も不動産取得税の納付義務があり、そのため、各会社の営業は必死になった販売を行います。
最悪の場合、関連会社の賃貸部門、第三者の賃貸不動産会社に売却することもあります。
規約に記載される免責条項
土地開発会社等が売れ残った物件の区分所有者になると不動産取得税以外に一時金、管理準備金、管理料と修繕積立金の支払い義務も発生します。これを防ぐために規約には「未販売物件の免責事項」が記載されている場合があります。
免責する費用は各社によって対応がまちまちですが、一時金、管理準備金の支払い義務を免責する内容を規約に定めているケースが多いようです。
これ以外にも賃貸物件流用、売買の権利、社宅等への利用なども可能にする定めを別途、記載しているケースがあります。
分譲マンションが賃貸マンションに変更になるケースも増えている
竣工まで分譲マンションとして建てたが、需要がなく完売が難しいと判断すれば、一棟ごと賃貸不動産会社に売却されるケースも増えています。
ほとんどの会社は金融機関から借入れで建設費を賄います。借入金の返済計画の遅れは利息額を増やすため、少しでも早く借入金を返済する必要があります。そのため、想定よりも儲けが少なくても売却を優先するケースが増えています。
不動産賃貸会社は売却できないと負の資産になる
空室率が上がり、収益が出なくなると少しでも早く売却する必要があります。不動産は所有しているだけで固定資産税、都市計画税が毎年課税されます。
さらに先ほども話しましたが耐久年数の残り年数により融資返済期間にも影響するため著しく流動性が悪くなり、売れにくい物件になります。
そのため、適時に売却できないと負の資産となり賃貸不動産会社の財務を圧迫する原因になります。
管理組合の状況は気にします
物件を売買する時に、問題になるのが管理組合の財務状況です。管理費は足りているか?修繕積立金は不足していないか?これはプランナーも大いに気になる点です。賃貸会社も同じです。売買価格にも大きく関わってきます。
平成22年ってどんな経済だったか

リーマンショックの影響から脱し、急速に景気が回復している時です。しかし、翌年東日本大震災が起き日本全国が自粛した時代でもありました。
その後、復興のため建設リソースが不足、オリンピックの設備工事も始まり、資材の高騰や建設従事者不足が大きな話題になりました。
他人の不動産を調べる方法
不動産の権利関係は登記登録されています。(ただし、所有権の登録は任意です。)登記情報の所有権については誰でも取寄せることができます。
余談ですが不動産会社の広告が投げ込まれる原因もこれにあります。不動産の所有権等の権利関係は意外に簡単に調べられます。
しかし、マンション管理組合がそこまですることはありません。区分所有者名簿の設置も管理規約には管理組に更新義務が記載されていますが、あくまでも区分所有者の自主性に依存しています。
新築物件の定義
不動産業界では未使用、竣工後1年間を新築と定義しています。
不動産広告には「?」と思う表現があるケースがあります。注意が必要です。
コンクリートマンションの耐久年数は?
47年が法定耐久年数ですが、躯体(建物本体)は現在では100年程度大丈夫と言われています。(修繕を正しく行った場合)では、なぜ47年なのでしょうか?
これにはマンションの設備の老朽化が大きく関わります。給水管、排水管、ガス管、電気設備など躯体表面には見えない工法で建築は行われます。多くの施設は地中に埋蔵する方式です。各管に使用される材料の耐久年数は10~40年程度であり、館内に設置された施設の交換も含めると多大な費用が必要になります。そこで建て替えとのコストを考えると耐久年数が47年と算出されています。
しかし、近年のマンションは従来と考え方を変え、各施設の交換も可能な工法を取り入れています。そのため、耐久年数は100年以上とも言われています。
老後の終の棲家
長年住み馴れたマンションを老後の終の棲家として考えている方が多いことはわかりましたが、老後は田舎で暮らしたい、地元に戻りたい、もう少し狭い家に代わりたいと思う人もおられます。
もっとも有名な制度は「リバースモーゲージ」ですがマンションは対象にはなりません。
あまり知られていませんが「マイホーム借上げ制度」があります。これは一般社団法人「移住・住替え支援機構」(略してJTI)が推進する制度です。
対象は50歳以上の方で、自宅を賃貸物件としてJTIに借上げてもらう方法です。最大の特徴は物件の所有権を失わずに一定の収入を確保できる点です。
いろいろと問題があり、利用率も知名度も低い制度ですが、一考してみる価値はあります。
国の空き家対策
平成26年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
内容は簡単に説明すると空き家の情報データベースを作ること、放置すると危険な場合は撤去を含めた行政措置が出来るようなったこと、空き家を別用途に使用する場合に交付金等を出すことが示されました。
しかし、どれも戸建て、木造アパート等の空家対策であり、区分所有物件の空き家については特に何もない状況です。
2024年、相続登記の義務化制度
不動産の所有者は相続で取得した者は、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産の名義変更登記をしなければならない制度が施行され、違反すると10万円以下の過料の対象となります。遺言などの遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)者も同様です。
また、法改正以前から相続登記をしていない不動産についても適用され3年以内に登記の義務があります。
主に土地の所有権を明確にする目的ですが、マンションについても対象になり、相続放棄が増える心配もあります。
所有権が不明の専有部の管理組合による買取制度も検討されている
空き家対策として組合が買取る制度も国は検討しています。もしこの制度が成立すると管理組合がオーナーになり賃貸物件を貸出すことも可能になります。管理費の未納物件として競売を行い同時に買取も行うことになります。
抵当権やローン残高の支払い方法などまだまだ検討段階ですが、解決の選択肢は1つでも多い方が良いでしょう。是非、議論を進めて欲しいと思っています。
空き家物件を購入してもらうために管理組合ができること
所有者の所在が不明の空き家(専有部)から管理費や修繕積立金は未納になります。その期間が長くなれば延滞金は大きな額になります。売買で人気がない理由のひとつに購入時にその債務を支払い義務が伴うことがあります。
この債務を免除、あるいは減額できるのは債権者(管理組合)です。損して得とれではありませんがそんなこともアイデアのひとつとして考えられます。
次章では管理会社が理事長を兼務しているケースについて考えます。
⇒ 4章 管理運用は管理会社でも困っているに続く