前章では管理組合の理事等の意見から管理運用を左右する管理組合の要因について考えました。

この章では1、2、3章で取上げた国土交通省の資料「マンション管理の現状について」に集計されている管理会社が管理人(理事長)になっている時の当事者(管理者)に「管理で困っていること」を質問した結果に注目します。

管理会社はマンション管理に専門家です。彼らが理事長になると管理組合をどのように運営するのでしょうか。

1、管理会社でも困っている

国土交通省の資料「マンション管理の現状について」には大変興味深いデータが掲載されています。

管理会社が管理者(理事長と同じ立場)になっている場合に当事者(管理人)に「管理で困っていること」を質問しています。

理事会をサポートする立場の管理会社が理事長を兼務するとどんなことが起きるのでしょうか?

以下管理者(管理会社)が困っていることとして挙げたコメントを集計した結果を示します。

色々なコメントがあってわかりにくいデータですが、これを1、2章で行ったグループ化に当てはめます。

国土交通省「マンション管理の現状について」出典(再編集データ)その2(グループ仕分け)

その結果、管理会社、居住者、契約に集約でき、管理組合・管理会社の双方に問題があると考えられるコメントもあり4つのグループに仕分けすることができました。

また、各グループごとにアンケート数を集計、割合を算出した結果は次のようになります。

管理人(管理貴社)、困っていることのグループ化

これ以外にも資料にはその他のコメントとして次のような意見があったと記載があります。

  • 管理組合方式への移行を検討しているが理事になる人がいない
  • 総会出席者がいない
  • 区分所有者の組合運営に対する意識が低い

いずれも管理組合側に問題があることを示唆するコメントです。(データに含めていません)

いかがでしょうか。

管理会社が理事長と同じ立場になっても理事達が感じていたことと大差ないことで困っていることがわかります。ひとつひとつ確認しましょう。

2、管理会社の問題

もっとも多くのコメントを集めた「管理会社」の問題については、管理会社が理事長と同じ立場で管理を行っても自らに問題があると気づくことがあることを示しています。

理事等が「管理会社」に問題があると感じている場合の理由について比較すると次のようになります。

理事と管理会社が理事長になった時に「管理会社」に問題があると答えた割合比較

立場が異なると回答の内容も変わります。

管理者(管理会社)が感じる困る点は、理事会の意見が管理者の意向と一致しない、あるいは同意が得られにくい状況にあることがわかります。では、なぜこのような状態になるのでしょうか。

2-1、管理者(管理会社)と理事会の関係とは

管理会社が管理者(理事長)を兼務した場合の理事会との関係性は次のようになります。

実務サイクルとサポートサイクルの2つの業務はすべて管理者が行い、結果、あるいは方針の打診を理事会への報告を行います。

(各サイクルの説明は特集2020年10月号 マンション管理の基本を知る7章 標準管理委託契約を知る ーここがポイントーを参照してください。)

この時に調整が難航すると問題点を挙げていることがわかります。

実務サイクルは、承認済みの収支計画書に従い実施されることから理事会との調整が難航することは考え難いでしょう。

突発的に発生する問題を解決するサポートサイクルですが管理者は理事会に対して問題解決、業務執行について方向性を提示(打診)します。これに対して理事会が同意することで方針が決定されます。

管理者が示す解決の方向性に理事会が同意できない状況、あるいは同意するまでに時間がかかることが問題になっていることになります。

2-2、理事会との調整が難航する理由は何か?

管理会社に発生した問題を解決した経験や知識があれば、相手を説得することも可能でしょうが、マンション内で起きる問題は、区分所有者の生活環境や生活への意識の違いから同じ状況はほとんどなく、どれも複雑な要素が絡んでいることが一般的です。

サポートサイクルが難しいと言われ、管理会社によって実力に違いがでる理由でもあります。

考えられる理由としては担当者、管理会社の実力不足、あるいは努力不足です。

元々、管理会社が管理者に就任する管理組合は、自主性があまりなく、面倒なことを嫌う傾向があります。そのため、要求が難しい、無理難題を押し付けている場合もあるでしょうが、その場合もそれを否定するための説明は必要になるでしょう。それも含めて実力です。

教科書に載っている対応で説得できるほど、マンション管理は甘くありません。当事者の置かれた環境を理解した上で、意味のある提案(決定)をしなければ容易に同意は得られるはずがありません。

そのことを知るべきではないかと思います。

2-3、採算が合わなくなる

これまでの説明通りであれば、担当者である管理業務主任者、管理会社の負担も増えます。

当然、管理会社は想定以上のコスト(能力)がかかります。

管理への実力不足、バクアップ体制が未熟、管理委託料を安く抑えることでリプレース(管理会社の変更)に成功した管理会社等では対応できずに管理業務に滞りが発生することも容易に想像できます。

その結果として「採算が合わない」と意見が挙がると考えれば管理会社の不満も辻褄が合います。

しかし、もともと共用部の管理の目的は「利益の増進」と「良好な住環境の維持」です。住民自らが行うと業務負荷が大きくなる。そのために決められたルールを作り、その作業を管理会社が代行することで目的を達成する方法が管理委託の基本です。

管理会社は手間(時間)を提供する、これに対して区分所有者は対価(お金)を支払う。

理事会が自分たちの利益や良好な住環境を求めることは決して契約に違反したことではないはずです。

手間暇がかかりコストもかさむことは、住民の要望を叶えるためには管理会社が負担すべきです。

コストが見合わなければ、管理費の値上げや業務範囲の明確を管理組合に打診するか?管理委託契約を辞退する以外に方法はないと思まます。

3、管理組合の問題

次に管理会社が管理者の立場になった時に、管理組合(区分所有者等)の対して困ったことについて考えます。

理事と管理会社が理事長になった時に「管理組合」に問題があると答えた割合比較

これまでの理事等の意見(1、2、3章)と答えが似ていると思いませんか?

各項目について確認します。

3-1、管理費等の滞納

管理者、理事等も「管理費等の滞納問題」を挙げています。

管理実務を行うために経費は必要でありその費用を納めないことはマンション管理の骨幹に関わります。この点で理事等も管理者等も同じ認識の様です。

ほとんどの場合、引落口座の残高不足による短期的な滞納であり、1カ月程度で対応は収束します。責任は感じるべきですが、性格的な生真面目さが影響するため滞納を繰返す人には事前通知などによりある程度は改善できます。

問題は数カ月(3カ月程度)以上事態が改善されないケースです。この場合はうっかりではなく意図的であると考えるべきでしょう。

管理費等(管理費+修繕積立金+施設使用料)の滞納が発生した時の業務の流れや対応方法については、(詳しくは本特集 1章 マンション管理を左右する要因について(1)を参照してください。)

実際、マンションの訴訟事案の中で騒音と併せて上位にランクされる行為です。

皆さんもご自身のためにも滞納をせずに納めてください。

3-2、マンション住民のモラル

次は、住民のモラルに関することです。マナーはマンション管理で最大の難問です。

規約や使用細則でルールを設定することはできますが、それは制度上のことであり、それを守るかどうかは当事者のモラルで決定されます。

いろいろなマンションを訪問する機会がありますが、至る所に注意喚起を促す掲示があると住民のモラルの低さを感じてしまいます。

マンションは組合集団ですが警察や裁判所のように取締ること、審判する機能はありません。あくまでも住民の善意によて良好な住環境が保たれています。

管理会社が管理者になっても理事会制で管理していても、違いはなく最終的には住民のモラルで決まることです。最終的にルールを守ることの重要性を知ってもらう方法は地道な啓蒙以外に方法がないのが現状でしょう。

しかし、仕方がないとあきらめる前に日頃から周知徹底をする努力をすべきことは確かです。コミュニケーションや会報による啓蒙活動や意識の共有により徐々に改善した管理組合があることも事実ですが誰が管理者になっても即効性のある有用な解決方法はありません。

3-3、意外に多い自己中心的考え

自己中心的な主張はモラルとはちょっと違うかもしれません。

自己的で常識を外れた要求をする方がこの項目に該当するのは当然ですが、意外とこの行為はマンション内で見られます。

一例として自転車の違法放置があります。管理員として勤めていた頃、違法駐輪を注意すると「ちょっとぐらいいいでしょう」「少しの時間だけだよ」「それぐらい・・・」と言い訳される住民方がほとんどですが、「ちょっとぐらいって何分ですか?」「少しの時間って何分ですか?」と聞きたくなります

ある人は面倒でも必ず所定の場所に駐輪する方、5~10分なら良いと思う方もいます。ひとそれぞれの「ちょっと」があり、それは自分の置かれた状況で変わります。30分ならどうなのでしょうか?

この意識が自己中心的な主張につながります。

これは共用部のどこにでも当てはまります。玄関脇に物を置く行為、小さいなもの1個ぐらい、明日の朝までぐらい、すべて自分が都合よく考えて判断しています。

これらの行為を厳正に管理を行うためには「OK」「NO」を明確に取決める以外に方法はありません。

先ほどの自転車の一時駐輪は違法駐輪でも同じです。

私が体験した相談では、理事会で検討を重ね買物用のカートを3台(100円返却式)を導入することに決定しました。これにより違法駐車、違法駐輪は劇的に減少しましたが、新たにカートの未返却の問題が発生しました。また、違法駐車には警告カード、違法駐輪には管理員に許可なしにの移動の権限を与えることで解決を図りました。

一般にはここまで規約、使用細則に規則化することはありません。設定すれば生活が窮屈になってしまいます。

出来るだけモラル、ルールの住民間の共有化で対応すべきです。

この点は管理会社が管理者になっても理事等が行っても同じことです。

モラルの解決方法と同じでコミュニケーションによる共通意識の共有以外に解決する方法はありません。

4、管理会社、管理組合の問題

管理会社が管理者に就任した時に感じた困ったことには、「管理会社、管理組合の両方」に原因があると考えられる意見がありました。

管理会社が管理者になった時に「管理組合」「管理会社」双方に問題があると答えた割合比較

事態はかなり深刻な状況にあると思われます。住民の良好な住環境の維持、区分所有者の財産の保全ができない事態です。

マンション管理のプロである管理会社が管理者に就任してもこのような事態が起きていることは驚くべきことです。

それぞれの原因について考えます。

一部、本特集  1章 マンション管理を左右する要因について(1)で扱った内容も含まれています。(区分所有者等の協力が得られにくいなど)参考にしてください。

4-1、管理規約の改定ができない

管理規約の改正は総会の議決が絶対に必要になります。これは規約等に別途で定めることはできず法律で手順、要件は細かく決まっています。

1、事前告知の義務(1週間以上)

2、総会出席者(書面、代理を含む)が区分所有者の半数以上の参加

3、議決権総数の3/4以上の賛成

1~3をすべて満たすことで規約の改正は可能になります。

規約の改定が必要になるケースは、ほとんどは住民からの要望、クレーム、提案などから始まります。(法律の改正による場合もあります。)

改定業務の流れは管理者制度、理事会制度に関わらず変更案(議決案)が作成され、総会で議決され承認により定めることができます。

管理者制度で出来ないケースを想定すると次のような場合が考えられます。

4-1-1、改定ができない原因を調査する

管理者の怠慢、組合員への意見集約ができない、あるいは下部組織に理事会がある場合、理事会の開催ができない、理事会の意見がまとまらないなどいろいろなケースが考えられます。

管理者が勝手に議決案を作成しても住民の意見を取入れなければ総会での承認は得られないでしょう。

そのため、規約の改定等の議決案の作成は、アンケート等の事前調査によりマンション内の意見状況を確認する作業が伴う方法が一般的です。

アンケート回収率、アンケートの集計結果から規約の改定ができない原因を推測することができます。

無関心者が多い場合、アンケートの回収率は低く、議決数を得ることができない可能性があると考えられます。このような場合は、規約改定の重要性、必要性をもう一度住民に説明する必要があるでしょう。

集計結果が3/4以上の賛成が得られない場合、賛同を得られる提案が出来ていないと考えることができます。管理者は議決案の見直し、戸別訪問を含めた説得も必要になります。

これらの業務は管理者(管理会社)が主導します。この業務が管理委託契約内に「理事会、総会の支援業務」で表現され、当事務所で考えるサポートサイクルであり、重要な業務になることはこれまで何度も説明しました。

しかし、実際は反対勢力であれば、説得や妥協案を探すことも考えられますが、無関心は興味がないため、意識を変えることも難しく、多くの管理者、理事長が苦慮されています。

どんなに経験が豊富で高いスキルを持つ管理会社の経験があってもそう簡単にことはありません。

私も経験がありますが、結果、無関心者を除く組合員で議決をまとめて成立させる以外に手はありませんでした。

何か解決する方法はないのでしょうか。

4-1-2、無関心者へのアプローチ

無関心者に議決権の執行をお願いすることは非常に難しいことです。

特効薬はありません。では何が効果的なのか?

日々の管理の状況を上手に広報する以外に方法はないと考えています。効果も不明で、相手が応えてくれるかどうかも不透明な方法であることは十分理解しています。

具体的な方法としては、理事会が開催されると理事会報や運営だよりのような広報出版物を利用します。

収支計画の履行状況、修繕の日程計画、マンション内で発生する問題と解決結果など日々の運営状況を精力的に広報している組合、何もやっていない組合(年に1回の総会だけ)と様々です。

いろいろなマンションを見てきましたが、広報誌に力を入れている組合は比較的、無関心者の数は少ないと感じています。

言い方を変えると広報を上手に行えば、「いざ自分に関係することには敏感に察知する」と言うことです。

規約の改定はほとんどの住民に関係することです。それに無関心でいることがもしかすると自分に不利になるかもしれないと思わせることができれば、参加する意思も持つのではないでしょうか。

管理員時代に住民の方に総会で決まったことで注意喚起すると「知らない、聞いてない、いつ決まった?」と言われることが多々あります。

このような事態は、広報活動が上手く機能していないためと考えられます。

広報誌は管理会社に任せている管理組合が多いようですが、会社組織の議事録のような内容が多く、誰もが興味を持つかと言われると「・・・・」と感じます。改善するにはインパクトのある広報誌の発行を検討すべきではないかと考えています。

もちろん、手間暇はかかります。組合や理事会の負担が増えますが、管理会社に要請することもできるはずです。(100%難色は示しますが・・。多少の委託費の値上げ要請があるかもしれません)

理事会内に会計担当のように、広報担当を創設しお願いすることもできるのではないでしょうか。

この方法は、無関心者への効果はわかりませんが、組合員の意識改革にも十分な効果は見込め、議決権の執行率が高くなることは理解して頂けるはずです。

知らないことは損になる、意思表示することの大切さを一人でも多くの組合員に知ってもらうことです。

4-1-4、賛成数が不足する

賛成数が得られない以上、議案は否決されます。

賛成数が得られない理由は、提案された議案に賛成できないことです。

管理会社が管理者になるケースでは管理者が生活を共にしていません。これに対して理事長は組合員から選出されます。そのため、家族や近所からマンション内の生活情報に日々接することができます。

管理会社が管理者になると実感がない人が作る議決案になりやすいと言えます。

特にクレーム等から規約の改正を勧める場合、一方の意見ばかりを聞き、反対者の意見を十分に拾うことなく作成されることもあります。

このような事態にならないために、事前調査を十分に行う必要があり、改正が必要な理由を明確に組合員に説明することが求められます。

担当者のスキルが大きく関わる部分で管理会社の腕の見せ所と言った業務になります。しかし、力不足の場合、業務が滞り管理業務がうまくいかない結果を招きます。

4-2、修繕工事は財産の保全行為

次に修繕工事が実施できない理由について考えます。

まず修繕工事を理解しましょう。

修繕工事は義務ではなくあくまでも共同の利益と良好な住環境の維持のために行われます。その結果、区分所有者の財産の保全にもなります。

これはマンション特有の話ではなく、一軒家(持家)であっても屋根や外壁の改修は不動産価値の維持保全で必ず必要になります。一軒家は修繕時期を所有者が単独で決定できますが、マンションの躯体は共同の所有物のため区分所有法に従い区分所有者の意志で決定されます。

雨漏りや漏水など実損の症状があれば必然性もありますが、修繕は防止も含めた処置です。区分所有者の中にはまだ早いと判断される方がいても不思議ではありません。

そのため、国土交通省は修繕の必要性を確認した上で、修繕工事を行う方法を提案しています。5年ごとの修繕計画の見直し、事前調査であり修繕箇所や時期など部位を期間を詳細に明示しています。

検査員にも資格制度を導入することで一定のレベルを確保しています。

この検査で修繕の必要があると判断されれば修繕が必要と判断できます。

一般的な修繕の流れは次のようになります。(修繕方式で異なるケースがあります。)

大規模修繕のタイムスケジュール例

4-2、修繕工事のポイントは修繕検討委員会

修繕方式には設計管理方式、責任施工方式、管理会社委託方式、コンサル方式があります。今回は修繕工事の流れを知って頂くため、設計管理方式の修繕会社が設定されるまでを確認します。

修繕工事には決定過程に5つポイントがあります。

修繕工事の躯体等の調査が終了するまで

4-2-1、修繕検討委員会の設置

1つ目は修繕工事を検討する修繕工事検討委員会(以下委員会)の設置です。修繕予定の前期、前々期の総会で検討委員会の設置の予算化を行い、収支予算計画に含めた上で総会の承認を受けます。

予算に従い理事会は、委員会を設置します。この委員会には設計士やマンション管理士等の専門家を加えることが重要です。また、修繕履歴をもっとも把握している管理会社も加わります。

4-2-2、調査会社等の選定

2つ目のポイントは、委員会が現状のマンションの劣化状況を調査するため、調査会社等の選定を行いその結果を理事会に報告、管理組合が承認後、調査会社と躯体等調査委託契約を締結します。

躯体の調査を含めてコンサルティング会社と契約する方法もあります。また、管理会社に依頼することもできます。いろいろな方法があります。

費用が各社で大きく異なるため十分な比較検討が必要になります。

4-2-3、大規模修繕工事基本計画案を作成

3つ目のポイントは、調査会社の調査報告書から委員会は修繕箇所と規模を決定し、大規模修繕工事基本計画案を作成します。

いずれのポイントも修繕に関する知識が必要になります。そのため建築士の有識者である設計士(あるいは設計会社)、大規模修繕の経験があるマンション管理士などが委員会に必要になります。

積立金の額に見合った修繕を行うこともできます。借入金まで考えるか?あるいは一時金を徴収する方法もあります。多くの組合が悩んでいますね。(修繕ができない理由のひとつにもなります。)

参考までに2018年国土交通省の資料から修繕積立金の現状について報告があります。

4-2-4、修繕会社の選定作業

4つ目のポイントは、委員会が作成した大規模修繕工事基本計画案を理事会に上申します。この結果を受けて理事会と委員会は修繕工事を施工する修繕会社の選定作業に入ります。

修繕会社の選定作業は新聞等での公募や設計士の紹介、管理会社の紹介などいろいろな方法がありますが、一般には複数の修繕会社に見積り、工事の進め方などのプレゼン等を依頼します。

提出された見積りや会社の修繕実績等と修繕積立金の状況等を加味して、修繕会社を決めます。

決定した修繕会社と工事の進め方(日程)や仕様書の材料、工法などを打合せた後、総会で承認を受けるための大規模修繕計画案を作成します。(この案は修繕施工会社が作成します。)

修繕工事の修繕工事施工会社の決定まで

4-2-5、総会の承認

5つ目のポイントは、理事会あるいは、修繕施工会社が主催する管理組合員向けの修繕工事の説明会が実施されます。その後、総会による議決が行われ承認を受けます。

大規模修繕計画が承認されるまで

理事会、修繕検討委員会の役割分担はそれぞれに組合で異なりますが、概ね一般的流れになります。

ここまでが修繕の進め方です。

4-3、修繕工事が実施できない理由とは

大規模修繕工事が出来ない理由には2つ理由が考えられます。

1、修繕積立金がない、あるいは不足している

2、区分所有者の協力が得られない

修繕積立金はほとんどのマンション管理組合は分譲時に規約に設定され実施されています。

積立方式には均等積立方式と階段増額積立方法があり国土交通省は均等積立方式を推奨していますが、多くの管理組合は階段増額方式を採用しています。(方式の説明はせっかめメモ➡)

均等積立方式
段階増額積立方式

国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」より出典

修繕積立金の積立額の算出は、分譲時の大規模修繕工事予定金額から算出されます。

均等積立方式は、一定額を積立期間で均等割りしているため、時系列での増額が原則ありません。(実際は増額が必要になることがほとんどです。)これに対して、階段式積立方式は分譲時に修繕積立基金を徴収、一定期間(概ね5年)ごとに積立額を増額するため時系列で区分所有者の負担が増えることを前提にした計画です。

増額幅は、5年ごとに行う予定の長期修繕計画の見直し時に行われますが、負担増を伴うため先送りしする管理組合も多いようです。また、増額をするためにはその度に総会の議決(普通議決)が必要になりますが合意が得られない組合も多いようです

しかし、先送りを繰返すといざ、大規模修繕が必要になった時に修繕金が不足する事態に陥ります。

修繕金が不足した場合、金融機関からの借入、一時金の徴収以外に方法はなく、これについても総会の議決が必要になります。ここでも議決が得られなければ修繕ができない事態になります。

修繕積立金が不足するケース(階段積立方式)

この状態に陥ると管理者が管理会社であろうが、理事会だろうが大規模修繕を行うことはかなり難しくなります。

当然、このような管理組合では大規模修繕の検討委員会等の設置も難しいでしょう。

修繕が出来ないマンションの不動産価値は極端に下がります。売りたいけど思った価格での売却ができない、最悪、買手が付かないことになりますが、固定資産等の支払いは続きます。結果、負の資産になってしまいます。

国もこのような状態のマンションの存在を看過できず、2022年度から管理計画認定制度の導入を決めています。これにより、市場価格への影響、保険料の引上げの見込みと言われています。

専有部のリノベーション(改装)は個人の意思で決定できますが、建物は区分所有者の合意が必要になります。

修繕積立金の重要性を認識せずに、目先のお金に気を取られた結果ですが、このような組合では財産を保全する意識が低下している状態になっていると言えます。

このような事態を招かないためにも日頃から適切な広報活動を通して組合員が協力できる環境づくりを行うことは管理組合、理事長、管理会社の責任ではないでしょうか?

特に管理会社が管理者と就任する場合は、他人任せの感覚が強く修繕工事が区分所有者の財産の保管には必要なことを理解してもらう以外に方法はありません。

管理者が率先して住民への啓蒙活動を行い、マンション全体で建物を守る意識を持ってもらうことです。

5、契約の問題

管理会社が管理者に就任した時に感じた困ったことには、契約に原因があると意見がありました。

管理会社が管理者になった時に「管理組合」「管理会社」双方に問題があると答えた割合比較

そもそも、管理会社、理事会、理事長、管理者の関係は分かりずらくなかなか正しく理解している方は少ないのではないしょうか?

5-1、管理者と理事長の違いはあるのか?

次の条文は区分所有法に示されている皆さんが必ず所属する区分所有者団体の定義です。

(区分所有者の団体)第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる

条文からわかるように管理者は絶対に必要な役職ではありません。管理者がいない場合は、マンション内で何かを決める時は全員が集まって決めることになります。これでは利便性に欠け、区分所有者の負担も多くなります。

例えば集合郵便受けにゴミ箱を置きたい、そのたののゴミ箱を買おう!!と誰かが提案すると「おーーぃ、全員集合!!」となり、賛否をとり決定します。これが共用部等内で発生することすべてに必要になります。無理ですよね。

そこで全員の代表者を決めてその人に任せようと考えたわけです。

しかし、すべてを管理者に任せてしまうとでたらめなことを行う可能性があります。

それを防止するために区分所有者が不正に気付いた、あるいは怠慢じゃないのと思った時は管理者の解任請求権利を与えました。

それが次の条文に示してあります。

(選任及び解任)第二十五条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。

 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる

その上で管理者が行う仕事の内容を次のように定めています。

(権限)第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。

 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。

 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。

管理者に任せることを規約に決めた行為に限定した上で権利と義務を持たせました。

管理者のとは?

不正や怠慢については解約請求権を与えましたが業務を正しく行っているかを確認する必要がありますが、年に一度報告だけの報告は義務化されていますが、期中のチェック機能がありません。

特に管理費や修繕積立金は皆さんの資産管理を行う立場です。不安は感じますよね。

管理者のマンション内での役目がわかりましたか?

では「理事会」「理事長」とはどこで規定しているのでしょうか。区分所有法では理事の存在を管理組合法人の中で定義していますが、未法人の管理組合については特段に定義はしていません。

「理事会」「理事長」は国土交通省が公開している標準管理規約、第35条で「理事」「理事長」を規定しています。

(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。
一 理事長
二 副理事長 ○名
三 会計担当理事 ○名
四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
五 監事 ○名-
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。

その上でそれぞれの役職の役目を第38~40条で規定しています。

(理事長)
第38条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各号に掲げる業務を遂行する。
一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職務として定められた事項
二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。
理事長は、区分所有法に定める管理者とする。
3 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
4 理事長は、○か月に1回以上、職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。
5 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任することができる。
6 管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。

(副理事長)
第39条 副理事長は、理事長を補佐し、理事長に事故があるときは、その職務を代理し、理事長が欠けたときは、その職務を行う。

(理事)
第40条 理事は、理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当する。
2 理事は、管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を監事に報告しなければならない。
3 会計担当理事は、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行う。

複数人の理事は理事会を形成し管理組合の業務を担当します。理事の代表者は理事長で、管理業務を総括します。

注目すべき点は理事長は管理者と同じ立場であることを明記している点です。

管理者と理事長の違いは何か?

ただし、区分所有法は法律ですが、標準管理規約はあくまでも国土交通省が示している指針です。そのため、管理組合ごとに運用は様々です。

では、管理会社が管理者になった時とはどんな状態なのでしょうか。

5-2、管理会社が管理者になることとは

先ほどの図に管理会社が管理者になった状態を示します。

管理会社が管理者になった時のイメージ

管理者がもつ権利も義務も、管理実務もすべて管理会社が行うことになります。

区分所有者への報告義務は年に1回、この場合は理事等の役員はいません。管理委託契約の制約は受けますがかなり好き勝手な管理が出来る可能性があります。(監視役として理事会を設置する場合もあります。)

えっーーこんなこと許されるの?と思われる方もいると思いますが、この状態はほとんどの管理組合が分譲後の一定期間(初回の総会が行われるまでの期間)は当然に発生し、区分所有者も承知の上で購入しています。

皆さんに配布された管理規約の中に以下のような条文が設定されています。

附則

(暫定措置)区分所有者は理事長が選任されるまでの期間、〇〇管理会社株式会社が区分所有法25条に定める管理者になることを承認する。

皆さんはこの規約を認めることに承諾しています。(記名押印しましたよね)

正常な管理組合は、標準管理規約に示されている理事を選任し理事長を選出して暫定措置は終了します。

標準管理規約はあくまでも指針であり区分所有法のように尊守する必要もありません。そのため、区分所有者が理事になる必要もない気楽な立場を選択して暫定を継続している管理組合があります。

管理会社がしっかりしていればまだ管理は正しく行われますが、もし・・悪質な会社やいい加減な担当者が担当していれば想像通りにずさんな管理が行われている可能性があります。

このような立場にある管理会社が管理者になった時に困ることについては次のことを意味しています。

5-3、管理会社のコメントが示す意味とは?

もともと理事長を選出していない管理組合は、管理への意識が低くすべて管理会社に依存する傾向があります。

管理会社が管理者になった時に「管理組合」「管理会社」双方に問題があると答えた割合比較

何でもかんでも管理会社に任せればいとでも考えているのでしょう。このような場合は管理会社の困っていることに挙げているような状態になると想定されます。

標準管理規約は理事長が管理組合の代表になることを想定しています。その役職を管理会社が兼務した場合は、兼務に関する契約が行われるべきですが、ほとんどの組合は初期の管理規約の状態が継続されているケースです。

このような状態に陥る原因はマンション管理で発生する様々な業務の役割を明確にしていないためであり、管理会社、管理組合の両方に責任があります。

管理会社が理事会制度への要請を行っても、組合員たちにその気がなければ実施は無理です。

建物の不具合も同じです。組合員がすべて任せておくけば良いと考えれば、管理会社は実施か放置する以外に手段はありません。

いずれにしても、管理会社は理事長の設置を区分所有者に求め、正常化したマンション管理に戻すこと以外に根本的な解決は難しいでしょう。

せっかめメモ
不動産、マンション豆知識

管理会社が理事長を兼務するとは?

分譲開始後の初期の管理組合で導入される方法で、一般的には1年以内に組合員から理事を選出、理事長を選び管理組合方式に移行します。

管理会社が管理者の立場で運営を行う状況です。

全国ででが継続されている管理組合です。

「理事長」=「管理会社」となり、理事会は存在するケースとしないケースがあるがあります。

平成30年マンション総合調査結果(国土交通省HP)

管理会社が管理者(理事長)に選任されている割合は6.0%となっています。

何が違うのかもっと具体的に教えて!!

意思決定権が異なります。

一般的な管理方法は次のようになります。

これに対して管理会社が理事長を兼務すると次のようになります。

組合員から理事長を選んだ場合の決定権は皆さんにありますが、管理会社が管理者(理事長を兼務)した場合は管理会社が決定権を持つことがわかります。

理事会を設置することも可能ですが、この時の理事会は監視機関として機能します。

同じ意識を共有することのむずかしさ

区分所有法で定めている管理者に就任資格はありません。住民以外から管理者を選ぶ場合、住民と同じ目線で運営できるかは大きな問題となると想定できます。

日々の生活を共同で行うから見えてくる問題があります。管理会社が管理者になるとこの点は欠如します。

サポートサイクルでは、共通認識、同じ意識を持った対応が求められことが多く、杓子定規に事を運ぶと住民から反感を買うこともあります。

管理会社が理事長を兼務するメリットは?

理事長はもっともマンション管理で業務が多いポジションです。管理会社が兼務すれば皆さん(組合員)に業務負担はなくなります。

皆さんは煩わしい業務をしなくても良いことになります。これが大きなメリットです。

他にも管理会社はマンション管理の経験が豊富であり、スムーズな運営が期待できます。

管理会社が理事長を兼務するデメリットは?

管理会社が主導権を持つことで組合員の意思を無視した運営が行われる可能性があることでしょう。

そのため、組合員は管理会社から報告される業務報告を監視する必要があります。特に管理費の用途(会計業務)には厳しいチェックが必要になります。悪質な運営がされれば、管理費はマンション管理費以外に使用されることもあります。

悪質な管理をする管理会社はあるの?

はい、あります。

修繕工事や点検等を関連会社に優先的に発注し、マージンを稼ぐ方法や自社で使用する消耗品を購入して流用するなど、方法はいろいろあります。

そのために、組合員は適正な運営を行っていることを評価、監視する目を養う必要がありますが、皆さんにはマンション管理の経験がありません。

その結果、何年も後になってその事実に気づき、リプレースを行う管理組合があります。

管理業務の答えはひとつではない

マンション管理士などのコンサルティング業務を行っていると同じ案件でもまったく異なる結論で納得されることは良くあります。

コンサルティングを依頼する方の多くは、結論をある程度持っている方とまったく解決の糸口が分からない方に分かれると言えます。

コンサルティングとはまず、相手の考え、置かれた状況を調査することから始まります。

何を悩まれているのか?何が原因で事態を招いているのか?問題点は何か?

当事者と同じ目線で考え、何がもっとも良い方法なのかを複数提案することがコンサルティングです。

管理会社はコンサル会社ではない

管理会社は実務実行を行う代行業です。決してコンサルティングを行う実力があるとは限りません。(もちろん、実力がある会社がほとんどです)

管理委託契約のサポート業務には多くのコンサルティングする業務が含まれています。そのため、実力差が明確に現れます。

その意味で管理委託契約に支援業務、助言業務を加えることには違和感を感じます。基幹業務のように明確に成果物を提示した契約をすべきです。

マンション管理士と顧問契約する目的は何か?

管理会社にコンサルティング能力が無いとすれば、専門家が必要になります。これがマンション管理士の存在意義になります。

マンション管理士と顧問契約をする管理組合はこのことを十分理解していると言えます。

スポットで必要な時に相談料を支払う方法もありますが、日々管理の状況を知っている専門家は皆さんの強い味方になります。

管理会社の評価が顧客満足で表される理由

これまでお話した通り、サポートサイクルに成果物はありません。管理会社が提案した内容が住民の期待にどれだけ応えているか?信頼できる内容だったかにより評価されます。

そのため、管理会社の評価は顧客満足度で示されると考えると分かり易いと思います。

管理業務主任者以外が担当者ですが大丈夫ですか?

管理業務主任者は国家資格者ですが、マンション管理士とは違い、コンサルティング能力については技量が認められていません。

当然、管理業務主任者資格者はマンション管理士になりたいと思います。マンション管理士の試験では5点のアドバンテージが与えられますが、それでも毎年合格率は合計で10%程度しかありません。

管理業務主任者は委託契約の契約内容を保証する実務について資格を与えられています。管理業務の執行実力とは無関係です。

その意味では資格がない担当者であっても本人の熱意と管理会社のバックアップがあれば問題はありません。

採算が合わないとどうなるの?

新興勢力である管理会社は利益よりも受託実績に重きを置いていると言われます。多少の赤字であれば受注する時代もありましたが委託価格競争の結果、多くの会社が吸収、廃業しました。

結果、採算が合わない場合、契約を回避する会社が多くなりました。また、あまりにも無理難題、価格交渉がひどい管理組合は見切りをつけられ、管理会社もそのレベルにあった会社との契約に追い込まれるケースも増えているようです。

あまり足元ばかり見て交渉すると外れくじを引かされることもありますね。

マナー問題の本質は何か?

育ってきた環境、生活環境、生活レベルなど単純な問題ではありませんよね。

私にも明確な答えはありませんが、管理員の経験で言えばマンション内には性善説は通用しないことでしょうね。

「人間の本性は基本的に善であるとする倫理学・道徳学説、特に儒教主流派の中心概念。」(ウィキペディアより)

日頃、ルールに厳しい方も状況やその時に気分で変わります。驚くほど豹変することがあります。

外国人問題

最近は外国人の入居者も増えてきたことで、日本的なルールに慣れていない外国の方が問題になることもあります。

話し声が大きいやルールを守らない、常識がないと言われることもあります。しかし、日本的なルールが世界共通なわけではありません。彼らも母国を離れ、寂しい想いをしています。

順応してもらうように管理組合も努力は必要で管理会社も支援すべき業務です。

外国人向けの日本的なルールを中国語や韓国語、英語に訳したパンフレッドは地方自治体やNPOで準備しているケースもあります。

慎ましい、控えめの文化はない

中国や韓国の区分所有者の方とお話をする機会もあります。彼らは「慎ましい、控えめ」であることが美徳と感じる文化はなかなか理解できないようです。

自分の意思(意見)を強くアピールする社会であり、慎ましいや控えめ態度は、意思がない人(どちらでも良い、あるいは意見がない)と思われる文化です。

相手の国の文化をある程度知らないと解決しないことも多くあります。

違反する人は繰返す

何度、注意をしても違反行為を繰返す人は繰返します。恐らく、それ程重要な違反を認識していないからなのでしょうね。

喫煙問題はここ数年で大きく変わった

受動喫煙の考え方はマンションにも大きく影響しています。条例の制定、共用施設や職場の禁煙も広く浸透しました。

マンションもベランダでの喫煙者が一時期多くなりましたが、規約の改定で共用部の禁煙化が進む、これも抑えられています。

マンション敷地内に喫煙所を設けるマンションは少なく、自宅(専有部)内での喫煙に限定されることが多くなっています。

専有部での喫煙も問題になることがある

窓を開けて喫煙をすると臭いや煙が外部に出ます。(換気扇の下で吸う人も多数います)

これも規制して欲しい要望はありますが、専有部内の行為を規約等で規制することは難しいです。

理事会ができることは、空気清浄機の勧めや臭いがないタバコの紹介程度ですね。

形骸化する注意喚起

あまりにも館内に注意喚起の掲示が多いと大切なことが目立たなくなります。

最低限必要な注意喚起を的確な場所に掲示することが重要です。

注意喚起の書き方も重要です

禁止!!注意!!を書くことも大切ですが、書き方ひとつで相手への印象は大分かわります。

よく言われることは褒めながら行動を抑制する方法です。例えばペットボトルのラベルとキャップを外して廃棄するルールですが、あれも書き方ひとつで変わると言われています。

「いつも正しい分別廃棄ありがとうございます。

ペットボトルキャップ、ラベルがないことを回収業者の方が褒めていました。」

こんな掲示をすると正しく分別されることが多くなります。(経験談です)

アルミ缶の金属缶の区別

アルミ缶の主流は、缶ビール、酎ハイ缶です。コーヒー缶もありますよね。

金属缶は缶詰が代表的です。どちらも金属ですが押し潰すと簡単につぶれるアルミ缶です。

あれを無差別に廃棄する人・・・意外に多いです。

管理員は原則、資源ごみはチェックします。回収業者も不適当なゴミは回収しません。

未洗浄の缶類はコバエの大好物

夏になるとゴミ室は虫(コバエ)が大量に発生します。生ごみから生まれてくるコバエですが、発酵臭が大好きな彼らです。酒、甘味系のジュースがそのまま放置されるとコバエが寄ってきます。

ちなみにコバエの寿命は1~2カ月、移動距離は数kmもあります。数日で死んじゃうと思っている方いませんか?

その上、産卵期間が短く一回で数百も生んじゃうんですよ。

家の中に一匹でもいると気になりますよね。マンションのごみ集積場所が発生源は皆さんも困りますよね。

缶類は洗ってから捨ててください。

ゴミひとつが複数のゴミを呼ぶ

いつもきれいにしているとそこにゴミを捨てることを躊躇(ちゅうちょ)します。

粗大ごみをひとつ置くと自然に粗大ごみが集めりごみ捨て場になる現象はよくあります。公園でもゴミ箱以外にひとりが捨てると次の人も同じ場所に捨てる現象です。

タバコの吸殻もそうですよね。一人が捨てると「あっ、捨ててある、なら俺も・・ポイ」

経験ありませんか?

注意喚起よりもいつも綺麗で清潔に保つことは何よりも効果のある方法になります。

規約にあるか確認すべき条文

標準管理規約はこれまで何度か改定されています。またマンション管理に関する法令も改定されています。分譲が古いマンションでは当時の規約をそのままにしている管理組合があります。

是非、下記の内容が条文に記載されているかを確認して、記載がない場合は追加を検討すべきです。

「管理費等の滞納遅延金、弁護士費用等の請求権」

管理費等の徴収が義務化されている規約ですが、滞納を続ける人がいることはマンション管理の悩みのひとつです。

防止の効果があるかどうか定かではありませんが、延滞金の支払い義務を記載しておくと実際に延滞者が出た時に請求する権利が明確になります。

*条文が無くても延滞金の請求はできますが、延滞するような人は1円でも多く支払いたくないと思っています。利息の支払いを拒否する裁判もあるぐらいです。

啓蒙活動に有効的な方法はあるのか?

管理員時代にメールボックスに配布した理事会報がゴミ箱に無造作に廃棄されている現場をよく見かけました。残念なことです。

興味がないのか、関心がないのかわかりませんが、少なくとも目を通すぐらいの行動はして欲しいと思ってしまいます。

投げ込み広告は皆さん目にしますよね。ポストに勝手に放り込まれるチラシです。

効果がどの程度あるのか知りませんが毎日、飲食、不動産のチラシが投函されますよね。皆さんはあれをどうしてますか?コロナ禍になり、出前や宅配が多く利用されるようになり保管しているご家庭も多いのではありませんか?

どんなチラシも見る人の気を引くために様々な工夫がされていますよね。(キャッチーな言葉やカラーリングなど)

あれを広報誌に取入れることが重要です。

皆さんは定期に発行される区報(市報もあります)を知っていますか?かなり工夫されています。

管理員の情報は貴重

管理会社でもっとも住民のみなさんと接する機会があります。

マンション内の問題は多くの場合、管理員が詳細を知っています。

管理士として理事会に出席する時は管理員さんからヒアリングを行います。

当事務所では管理士報を発行しています

当事務所と顧問契約など理事会への参加依頼があった場合、必ず理事長の承認を頂き、管理士報を発行しています。

大抵、理事会への参加要請がある場合は、ほとんどがマンション内に問題や案件を抱えているケースです。

マンション管理士の立場で感じたことを出来るだけ分かり易く、皆さんに知ってもらうために発行する資料です。そのため、時にやさしく、時に厳しい内容になりますが、住民の皆さんからは意外に好評です。

管理者制度では値上げの議案は特に苦労する

管理会社が管理者の場合、管理費や修繕費の値上げは理解が得られにくい議案になります。

共に普通議決で了承されれば、実施可能ですが、実際に行うと反対が多く、否決されるケースがあると聞きます。

原因は、管理者が管理費を支払う当事者ではなく、組合員から見ると自分たちのお金を支出する側の人に感じます。

「値上げの前に削減できる支出はないのか?」「もっと報酬を減らせないのか!」など否定的な意見が多く寄せられます。

余程、しっかりした値上げ理由と必要性を説得する材料が求められます。

修繕積立金がいきなり数倍になるケースも

分譲時に修繕積立金が低額に設定されている管理組合では15~20年(1回目修繕後)で数倍に値上がりする場合があります。

1回目の修繕は外壁工事を行う時期で10年程度で積立てた修繕費をすべて使うとゼロから積立を行うことになります。

2回目以降は外壁工事に給排水系の交換、屋上防水が加わるため一般的に高額な修繕費が見込まれます。そこで修繕積立金の増額が必要になります。

特に階段式増額積立方式を採用し、低額に抑える期間が長いと(適正な増額をしなかった場合)一気に数倍になることは良くあります。

段階増額積立方式

修繕資金需要に応じて積立金を徴収する方式であり、当初の負担額は小さく、多額の資金の管理の必要性が均等積立方式と比べて低い。問題点としては将来の負担増を前提としており、計画どおりに増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する場合がある。

修繕の遂行方法に決まった方法はない

修繕方式には設計管理方式、責任施工方式、管理会社委託方式、コンサル方式があると説明しましたが、この方式で行うことが義務化されているわけではありません。

修繕会社もこれとは別な方法を提案しているケースもあります。

いずれの方式を採用するかを決める時には、管理組合として決めておくべきことがあり、方針を明確にすれば自ずと適切な方式は見つかります。

以下3つの項目を示します。

1、ある程度の修繕業務の発生による負担は覚悟していますか。

2、修繕積立金は計画以上ある、あるいは工面ができる準備がありますか。

3、修繕工事で重要視することは費用、工事への信頼性のどちらですか?

負担への関与を少なくしたければ、管理会社委託方式が良いでしょう。(別名丸投げ方式と言われます。)予算が潤沢であれば、どの方式を選ぶこともできますが、少ない予算で行う必要がある場合は、コンサル方式などが良いと思います。

管理組合として方針を決めれば、それに見合う修繕会社も見つかります。

修繕検討委員会には女性の参加も必要です

女性と言うと語弊があるかもですね。マンション内の状況を良く知っている人です。主婦がもっとも適していることが多いですね。

家計のやりくりも得な方が多いですかね。

使い勝手や気になることは外で仕事をしている人より家事や子育てを行う人の意見は重要です。主婦層の情報網はばかにできません。

修繕工事は大手が良いとは一概に言えない理由

大手は技術力と信頼性が魅力です。大型施設や公共工事などを手掛ける実績からも出来れば、大手に依頼すれば安心と考える理事の方も多くいます。

しかし、一概にそうとも言えません。一つ目の理由は、修繕費が高くなることです。大手が受注しても多くの場合は下請け、孫請けと実際の修繕工事は関連する会社が行います。中間業者が増えれば当然、費用は高くなります。もちろん、最終的な責任は大手にあるため、安心感はあります。

二つ目の理由は、下請け会社によって得意、不得意がある。建設会社と言っても工事内容(工法)によって得意とする仕事は分かれています。そのため、大手に頼んでも期待したほどの仕上げにならないこともあり得ます。

同じ規模、同じ工法で行った実績を重視して、会社の規模、予算との兼合いなどから自らが決断した会社を選ぶべきだと思います。

職人のスキルの依存する作業は要注意!

修繕工事に塗布防水やリシンやスコッタ等の塗装が伴う工事は十分注意してください。

養生も含め、仕上げが職人のスキルでまったく異なります。修繕会社に職人のスキルを確認することをお勧めします。特に最近は海外労働力を利用するケースも多く、工事後、塗装むらや浮き、ひび割れ、また養生不足による汚れが確認され、後日クレームになるケースが多く報告されています。

塗布面は素人が見てもはっきり善し悪しがわかります。修繕会社が実際に過去に行った物件を教えてもらい見学してくるのも良いでしょう。

管理会社委託方式の利点、欠点

日々のマンション運営を委託している会社に大規模修繕も依頼することは利点が多い方式です。

何より修繕履歴を把握していることは、最大の利点になります。工事中の管理、修繕後のクレーム等への対応でも新規の会社よりも安心感があります。

その上、マンション管理で深めた信頼関係もあればお願いすべきパートナーと言えます。

では、なぜ管理会社委託方式がもっとも良い方法と推奨されないのか?それは工事への不安を払拭できないためと言われています。

1、積立額を把握されているため、発注額が割高に設定されている不安がある

2、工事内容(品質管理)を監視することが出来にくい

これを防止するために設計士や業者選定を行う設計監理方式の導入が一般的な方法となります。

実際、修繕会社の選定で相見積もりに管理会社も含めるケースが多くありますが、管理会社が受注しないケースも多くあります。

管理会社への信頼度が高く、多少不安があっても一任したいと考える管理組合にはお勧めです。

修繕工事にも材料のランクはある

修繕工事の工費(人件費や足場の設置費)は修繕会社によって単価がかわります。そのため見積りを取り比較をします。これ以外に材料費(建材)のランクを選択することでコストを圧縮する方法もあります。

建材の価格は性能、耐久性、デザイン性により決まります。性能や耐久性のランクを下げることはお勧めしませんが、予算が少なければデザイン性は諦め、汎用性の高い低コストの材料を選択する方法もあります。

予算と材料費、工費のバランスを上手に複数提案してくれる設計士を選ぶことが大切です。

修繕工事は出来れば全員の合意形成が望ましい

どのような案にでも反対派います。それぞれに独自の考えをお持ちのであることは決して悪いことではありません。

しかし、工事中に何か問題が起きた時、必ず反対者が大きな声を上げます。これを事前に防止するためにも反対である理由を把握し、設計士や修繕施工会社に「反対者からクレーム等が起きないような十分な配慮」を要請すべきです。

住民説明会は非常に重要です

住民説明会の主催者は修繕会社になります。

安全第一で行う工事説明を施工会社に求めることはもちろんですが養生の範囲、材料置場、廃材置き場、作業者の休憩場所、トイレも重要なことです。

特に騒音や臭いや埃が発生する日時と事前周知の方法、クレームが起きた時の連絡先や対象方法についても説明を求めます。

大規模修繕工事中は住民の方は不自由を生活になります。騒音、臭い、埃、プライバシー、足場工事が伴う場合は洗濯物も気を使いながら行うことになります。少しでも不安があれば遠慮せずに質問して納得できる回答を得ておくべきです。

説明で不安を払しょくしても実際に工事が始めると想定外のトラブルは発生します。そのことを踏まえた理事会、管理会社がサポートできる体制を準備してください。

大規模修繕の記録や経験者は貴重な財産

大規模修繕を行った経験はマンション管理組合の貴重な財産です。

修繕工事が開始されるまでの5つのステップについて修繕検討員会は打合せの議事録、決定過程、苦労した点を記録保管してください。

議事録の作成は設計事務所、あるいは管理会社に依頼してください。必ず十数年後に大規模修繕は繰返す必要があります。その時に役立つ資料になります。

また、一度修繕検討員会に参加した人には、次回も参加をお願いすべきです。多少の礼金は支払っても参加をお願いしてください。体験者の経験は何者にも代えがたい知識になります。

管理費に余剰金が出来た場合は「すまい・る債」の購入がお勧め

「すまい・る債」とは独立行政法人である住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫)が、修繕積立金の計画的運用の為に発行する債券で、住宅金融支援機構債券(マンション債券)等の愛称。

すまい・る債を保有すると万が一修繕金を住宅金融支援機構から借入れる時に金利の優遇を受けられます。

一口50万円です。手数料なしに現金化が出来ます。金利は0.12%(10年満期、税引き前)

余剰金を銀行に貯金しておくよりはお勧めです。

マンション共用部分リフォーム融資について

修繕積立金が不足している時に管理組合が利用する住宅金融支援機構が行う融資制度です。

工事は共用部の修繕工事に限定されます。

融資額は1戸150万円(耐震工事は別途500万円加算)ですが、毎月の修繕積立金総額の80%以内を毎月返済することが条件になります。(10%以上の滞納者がいる場合は条件が変わり、20%以上の滞納者がいる場合は原則利用はできません)

固定金利、最大融資期間は10年です。

保証人や担保は必要ありませんが(公財)マンション管理センターの保証を受けることが必要です。

住宅金融支援機構資料(PDF)

(公財)マンション管理センターとは?

元国土交通省管轄の機関です。マンション管理適正化法に示されているマンション管理を支援する業務を行います。

マンション管理士の親玉的存在です。マンション管理士の登録、更新などの業務も行っています。

マンション管理についての適切な指導、相談、情報の提供を行うとともに、大規模修繕に必要な支援に関する事業、総合的な調査研究を実施している公益法人になり理事長や理事会を支援することを行う機関と考えてください。

(公財)マンション管理センターでは、管理組合を対象にした「マンションみらいネット」を運営しています。これに申し込むとマンションみらいネットのデータベースを利用することが出来、管理状況や図書類を保管していつでも閲覧することが出来ます。第三者に公開して問題点を聞くこともできます。

管理組合にネット環境を整備するとそれなりに費用が掛かりますよね。これを(公財)マンション管理センターのシステムを利用できるサービスです。

また、「マンションみらいネット」に参加すると住宅支援機構の融資の保証時に保証料が安くなるメリットがあります。

ちなみに利用料は年間20,000円です。

毎回、修繕工事を借入金で行うことは可能か?

可能ですが、利息の支払い分負担は多くなります。

また、借入の条件は滞納者の割合が20%以下です。これは修繕計画総額に対しての履行率となり、滞納者の人数ではありません。

大規模修繕に借入金を利用した場合、金融機関は返済計画を作成し提示します。(家のローンと同じです。)それに従い返済することが必須になります。

多くの皆さんは住宅ローンの返済もあります。これに修繕積立金のローンも支払うことになります。

しかし、修繕積立金が少ない場合、融資額も少なくなるため、修繕費が高額になれば修繕積立金も高く設定しなければ借入はできません。

理論上は可能ですが、やはり毎月の積立をしっかりと行い出来るだけ無借金で行うことを考えるべきです。

宅建士として相談される中古マンションの評価

宅建士の資格を持っているから何ができると言う訳ではありません。不動産売買の重要事項説明への記名押印、説明責任を行う資格があるだけです。管理業務主任者とよく似た業務です。

不動産屋さんは不動産の知識をたくさん持っています。その中で物件の価値を見抜く力が不動産屋さんの実力で宅建士の資格とは違います。資格が無くても年収何千万も稼ぐ人がいます。

中古マンションを評価する時、立地条件、近隣の同程度の物件の売買価格などを調査します。これと併せて売主から規約、総会議事録、理事会議事録、管理委託契約の重要事項説明書を取寄せます。

チェックするのは管理組合の財務状況です。(賃借対照表と収支決算報告書)管理組合の財務状況は買手にとって非常に重要です。物件がいくら綺麗でも管理が適正に行われていなければ購入後の負担が増えるばかりです。

組合員の皆さんは安住の地としてマンションを購入されていますが、いざ売ろうと思っても予定額で売れるとは限らない、その原因のひとつに管理組合の運営状況があることを忘れないでください。

地元の不動産屋が利用されるわけ

賃貸を借りる時の物件の探し方は地元の不動産屋を訪問する方法から情報誌に代わり、現在はネットが主流になっています。

しかし、賃貸人が賃借人を探す場合は、今でも地元の不動産屋に依頼する方法が主流です。

理由は土地の事情を良く知っていること、大家さんの性格も理解しています。わざわざ新規の不動産屋に依頼する必要性がないと感じている人が多いようですね。

その上、不動産業者同士は貸し物件の情報を共有するシステムがあり、地元の不動産屋に依頼すれば全国に物件情報を開示することもできます。

区分所有法はマンションだけを規定していない

区分所有法では物件の用法を居住用に限定していません。オフィスビルでも各専有部があれば法人所有者だけであっても区分所有法の対象となります。

これに対して標準管理規約は用法を居住用に限定することも視野に入れて住民主導による管理を行うことを前提に設計されています。

「規約に別段の定めがない限り・・・」について

区分所有法で幾つか使われる表現です。

意味としては規約に定めれば、区分所有法に定めた以外のことを取決めても大丈夫と言うことです。

規約に定めるためには組合員の議決権の3/4以上の賛成が必要になるため、「規約に別段の定めがない限り・・・」は次のように読み替えることが出来ます。

「組合員の3/4の合意があれば、区分所有法に定めた以外の方法で運用することができる」となります。

規約以外に区分所有法では議決でも定めることができる項目も幾つかあります。

管理組合の自主性を重要視していることがわかりますよ。

理事長の義務も明確に明示

区分所有法で理事長(管理者)の業務は明確に示されています。

  • 職員を採用し、又は解雇すること
  • 区分所有法に定める管理者となること
  • 前会計年度の業務の執行に関する報告を行うこと
  • 他の理事に職務の一部を委任すること
  • 利益が相反する事項では代表権がないこと

それぞれの業務を行う際の制約も定めることで理事長の暴走に歯止めを行っています。

理事会の職務とは別です。注意してくださいね。

逆に全部の権限を与えることは・・

規約にすべての権限を理事長に与える条文を定めることも可能なように思えます。

しかし、組合員の資産の用途、躯体の変更、権利の処分等の決定には必ず総会の議決が必要になる法的定めがあり、例え規約で全権を与えられていてもその点については無効になります。

利益相反って何?

管理組合に必要な業務の発注先が理事長が関係する会社である場合などがあります。

理事長が経営する会社に修繕工事を頼むと利権の確保を誘発する可能性があるため、理事会の議決権と発注元(組合)の代表者になれないと定めています。

注意して欲しいことは、契約することが出来ない訳ではなく、決定過程に参加できないとしていることです。理事会が納得できる内容であれば契約することはできます。また、その際の代表者は監事になります。

理事長が理事に職務を委託するとは何か?

この条文だけを読むと、理事長を互選後、他の理事に委任すれば理事長の名前貸しが可能になります。しかし、委任には理事会の承認が必要になるため一部業務についてと限定されています。すべての業務を委託(包括的にと表現します)することは出来ません。

しかし、病気や事故などの特別な事情がある場合には副理事長が代わりを務めることも定まているため名前貸しは出来ないと考えてください。

それだけ管理組合には莫大な資産管理を行う可能性があり、その代表者の責任は重いと考えています。

耐震工事と修繕工事は別です

耐震は建築基準法に定められています。地震が多い日本では大きな震災がある度に建築基準法の改正が行われています。その度に改正以前に建てられた建物が法律に違反した状態になるケースが発生します。これに対応するために設けられた制度が既存不適格建築物です。

特に地震は一定の確率で発生することが予測されているため出来るだけ多くの既存不適格建築物が基準に適合するために税制制度や建築基準法の特例が施行されています。

国や地方自治体は震災が発生した時に影響が大きい(震災発生時の交通路の確保)幹線道路沿線の建物や対策室設置予定の建物などを指定して耐震工事の義務化を行い報告義務も定めました。

一般住宅について、国の目標は2020年95%の耐震化率、2025年でほぼ解消と定めています。

マンションも1981年以前(築40年以上)が既存不適格建築物となっているケースが多くあります。耐震工事を円滑に進めるために区分所有法を改正、耐震工事の議決権を特別議決から普通議決に変更することも可能にしました。

国の調査では2018年で共同住宅で耐震化率は94%で順調に推移していますが、依然140万戸で耐震不足と公表しています。

耐震工事は大規模修繕とは異なり、地震の際に倒壊をしない工事を目的にしています。工事の内容もまったく異なっています。

耐震化工事をまだ実施していない築40年以上のマンション管理組合は一日も早い耐震化工事の実施をして頂きたいと思います。

1981年以後に建てたマンションは耐震診断は必要なの?

設計時に耐震基準はチェックされているため必要ないと考えますが、あくまでも設計時であり施工内容に問題(ずさんな施工)があれば耐震基準を満たしていないケースもあります。

竣工当時は外観から判断することは出来ません。しかし、マンションは3年ごとに躯体の法定検査を受け、躯体や地盤の影響を確認しています。

異常があればその都度、報告や勧告があります。

また、柱や壁に亀裂やヒビが入っている現状が見つかれば構造上、あるいは施工上の問題が潜んでいる可能性もあります。早めに専門家に一度確認をお願いすることをお勧めします。

どうすれば管理会社の悪質な管理を見つけることができるの?

技術的に難しくはありませんが、賃借対照表と収支決算書の読み方を覚える必要があります。

知識がある人がチェックすれば、即座に気づくケースもあります。

また、少し勉強すれば独学でも見つけることはできますが、経営を知っている人(銀行の投資部に所属している方や投資プランナー、ファイナンシャルプランナー1級、税理士など)に相談すべきです。

先ほど紹介した(公財)マンション管理センター「マンションみらいネット」に登録して専門家の意見を聞く方法もあります。(月2万円費用)

悪質な管理会社は不正を冒してでも隠す方法を用いる場合もあり、出来るだけ専門家のチェックを受けることをお勧めします。

ご意見番の存在

組合員の中には何か一言、言わないと気が済まないご意見番的存在の方が居たりします。過去に理事長を経験、実績を挙げている方に多いかもしれません。理事長、理事会、管理会社の担当者も上手に利用すれば良いのにと思うのですが、疎ましい、厄介な存在に感じてしまうようですね。

最近は「老害」なんて言葉も聞きますが、時代に合わない意見もありますが、役に立つ発言もたくさんあります。従う必要もありませんが、意見は意見として聞くことは何かの時に役立つこともあると思いますね。

私的意見でした。


以上が管理会社が管理者に就任している管理組合で発生している問題について考察した結果になります。

特殊な状態の管理組合ですが、理事長を設置している管理組合等でも同じ問題意識を持つ項目があることもわかりました。

これらの結果から、マンション管理業務に重要な項目がはっきりしてきたのではないでしょうか。

次章からこれまでの結果を踏まえて、管理を上手く行うために必要なことを考えます。

➡ 5章 マンション管理を上手く行うために(1)に続く