NTTコム、オンラインNPSベンチマーク調査では、管理会社契約の区分所有者に対してのアンケートで、管理会社のリプレース経験者の割合、その時のリプレース理由について質問、その結果が報告されています。

その結果から管理組合が管理会社のリプレースを行う理由について考えます。

1、管理会社との契約

前章で管理会社を継続契約する理由についての調査結果から「区分所有者が評価する管理業務とは何か?」を考察しました。

その結果、区分所有者の皆さんは、何かにひとつに特化した理由ではなく、「ストレスのない住環境」、「納得できるコストパフォーマンス」、「実感できる信頼できる会社であること」、「将来への安心感」、「危機管理への対応」の5項目のバランスを考えて契約相手を決定していることがわかりました。

一般に分譲時には分譲会社が管理会社との管理委託契約を締結した状態で販売されます。購入者の皆様は、当然に(選択肢はなく)管理会社との管理委託契約を引継ぎます。これは販売のシステム上、仕方ない方法です。

管理会社のサービスを実際に体験するのは入居後になります。入居後、管理組合は存在はしますが、運営の主導権は管理者である管理会社です。これは標準管理規約で1回目の総会開催までの短期間には認めていることです。

区分所有者の皆さんは、しばらくはマンション内の状況も把握することは難しいでしょうが、1カ月、3カ月、6カ月と日々の生活が安定するに従い、管理会社のサービスを肌で感じ、改善して欲しい点などにも気づき始めます。

購入、入居後、最長で1年未満に1回目の管理組合、総会が実施されます。この時から区分所有者主導の管理組合の運営を始めることができます。(中にはこの状態を継続することを希望して管理会社が管理者のまま運営する管理組合もあります。)役員の選出、理事長の決定など運営に必要な人事が決定され、管理組合の区分所有者による運営がはじまります。

役員に選出(立候補を含めて)されてもほとんどの区分所有者の方ははじめて経験される立場です。頭では何となくイメージができても月に1度程度の理事会で報告される管理会社からの月次報告書だけでは細かなことまで把握することは難しいはずです。

さらに役員在任期間ですが、短くて1年、長くても2~3年ではありませんか?慣れた頃には任期が終了してしまいます。このような運営ですが多くの管理組合では問題も起きずに継続契約が行われています。

多くの管理会社は、誠実に契約に則った業務を行い、区分所有者からの要望やクレームに対応をします。これを何年も繰り返し区分所有者からの信頼を得、契約更新(継続契約)が行われます。

区分所有者が管理会社の業務に不満が無ければ、管理会社を望む声は起きません。管理会社をリプレースする作業は、それなりに大変な仕事になります。それ相当の覚悟と熱意がないとなかなかうまくいきません。また、管理組合全体として変更に意志を統一する必要もあります。そこまでの決意を区分所有者に起こさせる原因とは何か?考えます。

2、管理会社のリプレース経験の割合は?

NTTコム、オンラインベンチマーク調査が公表しているレポート(以下NPSレポート)では区分所有者へリプレースの経験についてのアンケートをまとめています。

NPSレポート れプレースの経験

結果から2割弱の方にリプレース経験があるようです。「分からない」と回答された方は、管理組合の無関心なのか、中古物件購入者でしょう。

2割弱が多いか、少ないかはそれぞれの判断でしょうが、このアンケートでは物件の分譲時期がわからないのではっきり言えませんが、2003(平成15)年4月に国土交通省が「マンション標準管理委託契約書」を公表する以前には、管理会社と管理組合の揉め事は数多くあったと聞きます。

それまでは、管理組合から預かる管理費等(管理費、修繕積立金、その他使用料)と管理会社の資産を混在管理する方法が一部の管理会社で行われていたため、厳格な資産管理ができていなかったそうです。

「マンション標準管理委託契約書」が公表された後は、資産管理の方式も明確化され分別管理が当たり前になり、不透明な会計を原因とするリプレースは激減しました。

この経験をされた方が含まれている可能性もあり、18.7%が多いか少ないかは判断が難しいところですね。注目すべきは60%強の方が初期の管理会社が継続契約していることです。

正直、60%強の管理組合では管理会社と一定の信頼関係を維持しながら運営が行われていることに安心しました。

3、管理会社のリプレースをする理由とは?

NTTコム、オンラインベンチマーク調査が公表しているNPSレポートではリプレースの経験のある区分所有者に対してその理由についてもアンケートを行っています。以下結果になります。

尚、下記表はNPSレポート掲載のグラフを表にまとめなおした結果になります。

もっとも多かった理由は「管理会社に支払う費用が高い」でした。

管理会社の契約継続の理由では2位でしたがリプレースでは1位。

いずれの結果も区分所有者の方は納得できるコストパフォーマンスを求める傾向が強いようですが、これは理解できます。

分譲時に契約されている管理会社は、分譲会社と交渉して決定された価格です。区分所有者の皆さんは一切の価格交渉を行っていません。しかし、更新時に価格交渉はできることから価格が折り合わなかった結果、あるいは価格に見合う管理をしていないと判断されたのでしょうね。

2位は管理会社の「提案やアドバイスが不十分」。

契約継続ではそれほど上位の理由には挙げられていなかった項目です。

これにつながる理由としては「ルールを守らない住民」(7位)「管理費を払わない住民」(8位)への対応が不十分と感じてリプレースを行った管理組合もあることがわかります。

マンション現場の従業員に問題があったことを理由にリプレースが行われたこともはっきりわかります。

*コンシェルジュはクリーニングサービスなどの付加価値サービスのことで、ホテルのフロントをイメージしてください。管理員とは明確に差別化されています。

管理会社のリプレースを行った理由

5位に長期修繕計画に不満があったことが理由になりました。継続契約の理由(前章で解説)では将来の安心感に分類した項目で5位にランクされていました。やはり、決断して手に入れた我が家ですから大切にしたいと思うのは当たり前です。

でも・・・確か、管理委託契約には長期修繕計画の立案業務は含まれていないはずです。どういうことなのでしょう?

4、管理会社/フロントが原因でリプレースする理由

リプレースの理由にされた項目を業務の担当、業務フロー別に分類してみましょう。(合併やその他、わからない項目は除いて考えます。)

4-1、実務サイクルで起きる理由

管理会社/フロントに起因する理由の中で実務サイクルで起きる業務は、長期修繕計画(2位)、会計が不明瞭(6位)があります。

先ほども少し書きましたが、管理委託契約には長期修繕計画の立案業務は含まれていないはずです。

そこで、長期修繕計画に関係する業務が不十分とした理由を考えてみましょう。

長期修繕計画の立案は国土交通省から公表されている「標準管理委託契約書」では次のように記載しています。(基幹業務の別表に次のように記載されているだけです。)

別表第1 事務管理業務

一 乙(管理会社)は、甲の長期修繕計画の見直しのため、管理事務を実施する上で把握した本マンションの劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事の内容、実施予定時期、工事の概算費用等に、改善の必要があると判断した場合には、書面をもって甲に助言する。

二 長期修繕計画案の作成業務及び建物・設備の劣化状況などを把握するための調査・診断を実
施し、その結果に基づき行う当該計画の見直し業務を実施する場合は、本契約とは別個の契約
とする。

赤アンダーラインに示したように管理委託契約に長期修繕計画の立案業務は含まないことが一般的です。

その理由は、分譲開始時に分譲会社は建設会社が作成した仕様書(見積書を含む)を保有しています。この基礎データがあって初めて修繕計画が立案出来ます。そのため、区分所有者に配布される規約には分譲会社が作成した修繕計画が記載されていることが一般的です。

しかし、中には長期修繕計画を作成せずに分譲を行う会社もあります。この場合、管理組合は自費で長期修繕計画の立案費用を負担することになります。概ね管理組合設立後、3~5年以内には準備すべきとされています。

長期修繕計画は5年ごとの見直しを基本としています。5年ごとに防水や外壁などの劣化状況を確認する調査・診断が実施され、その結果から長期修繕計画の見直しを行います。(この期間は特に決まりはなく、目途として国土交通省が指針内で示しているだけです。また今後この期間は変更される予定です。)

この見直し業務は管理委託契約には含まれず、その都度、管理会社、あるいは調査会社と別契約を締結することが必要になります。

管理会社は長期修繕計画の修繕積立金の推移状況については報告をしますが計画そのものの見直しは行いません。しかし管理会社は管理委託契約書内で設備等の修繕等の保全に関する業務を担当するため、マンション内の劣化状況をある程度把握しています。そのデータを基に理事会に修繕時期等のアドバイスを行います。

この業務は、基幹業務のひとつで、組合員の資産、住環境の維持に重要な業務であり、サポートサイクルに分類されます。

この業務が不十分であればリプレースの理由として十分な理由になります。

長期修繕計画が不十分とは恐らく、躯体の不備や設備等の修繕・保全について適切なアドバイスを実施せずに放置したこと、あるいは実施が必要と気づきながら報告を怠り、修繕費が多額になってしまった等の原因と考えられます。修繕計画の立案を実施しなかったとは区別して、勘違いすべきではありません。

せっかめメモ
不動産、マンション豆知識

実務サイクルって何?

実務サイクルは当サイトで命名した管理委託契約書に記載されている基幹業務の中で年間収支計画書に従い日々ルーティンとして処理される業務のことです。

実務サイクルイメージ

理事会(理事長)の指示により管理会社が決まった手順で事務処理を行い、毎月月次報告として報告を行います。

サポートサイクルって何

サポートサイクルも当サイトで命名した実務サイクルとは異なる支援業務を中心にした業務です。

決まった業務はなく、アクシデントや問題が発生した時に管理会社が提案、あるいは理事会の指示によって調査、報告を行う業務です。

サポートサイクルのイメージ

管理会社の実力を問われる業務で、主に管理委託契約の理事会の支援業務に含まれます。

実務サイクルとサポートサイクルの本質的な違い

両者の違いは実務サイクルは成果物を定めていますがサポートサイクルは管理会社のスキルに依存するため、理事等の求めている結果と管理会社が提供するサービスが一致しないケースが多々あることが違います。

そのため、管理会社がこの程度で大丈夫だろうと業務を行っても理事等は物足りないと判断することになります。

次に会計が不明瞭についてですが、会計は管理組合の基本で正確性が求められる業務です。

国土交通省も資産の分別管理、キャッシュフローの正確さを担保する方法を丁寧に説明しています。決して不明瞭であることが許されない基幹業務です。

しかし、残念なことに分譲時から継続契約を続ける会社の中には、区分所有者の管理への無関心につけ込み、いい加減な管理を行っている会社があるのも事実です。この場合、管理会社の責任は当然ですが、その状態を放置していた管理組合にも一定の責任があります。

管理会社から毎月報告される月次報告書には、年間収支計画、実施状況、バランスシート等の会計表が添付されているはずです。また、総会では口座残高の証明書の添付をはじめ幾つかのチェックできる書類はあります。

特にいい加減な会計を行っていると年間収支計画の改ざんや不透明な計画とのずれ(費消率)が生じます。そのようなことが見つかった場合は管理組合として納得できる説明を求めると同時にマンション管理業協会などに相談する等の毅然とした態度で臨む必要があります。

理事会には理事長の他に会計担当の任命も必須項目とされています。日常の生活の中で管理組合の会計を精査するのは大変な作業ですが、不審な点がある時は、管理組合だけで何とかしようとせずに第三者の力を借りることも大切です。

いずれにしてもこのような状況になっている管理会社とはすぐに契約を打切り、リプレースすべきです。

4-2、サポートサイクルで起きる理由は?

管理会社/フロントに起因する理由の中で実務サイクルで起きる業務は、「提案やアドバイス」(2位)「ルールを守らない住民」(7位)「管理費を払わない住民」(8位)への対応が不十分なことです。

いずれも基幹業務に含まれていない業務になります。どんな意味を含んでいるのでしょうか。サポートサイクルの業務フローに合わせて考えてみましょう。

管理業務の業務フロー
サポートサイクルの影響

標準管理規約で規定している理事会の職務は理事長、会計担当を任命すること、理事等を相互に監督すること、管理組合の意志を集約することの3項目です。マンション管理の実務は委託契約した管理会社に指示を出すことで執行を委託しています。この業務フローの中でマンション内で発生する様々な事態に対して管理組合は適切に対応する必要があります。

とは言え、理事会の理事等は経験も浅く、法的な知識、設備や施設の知識も管理を行うには不十分です。

そこで管理会社(この場合はフロントが担当)が解決するためのアドバイスや調査、提案を行います。これがサポートサイクルです。

例えば、他のマンションの実例や組合員への意識調査を目的としたアンケートの実施を実施することもサポートサイクルです。設備的な問題になった箇所の検証を行いアドバイスすることもサポートサイクルです。これ以外にも様々な業務が考えられます。

この業務は、調査能力、データの解析能力はもちろん、相手に結果を伝えるプレゼン能力も必要です。皆さんの管理会社の担当者はどうですか?

以上のことより、2位に挙げられた「提案やアドバイスが不十分」とはサポートサイクル業務で理事等が希望する内容に応えることが出来なかったために不安感や不信感を持ったために契約の変更に至ったと考えられます。

実務サイクルは、ルーティン業務が中心で管理会社による差が表面化しずらく、サポートサイクルは管理会社の総合力を示すため、サポート体制、フロント人材の資質(知識、経験、コミュニケーション能力等)など管理会社で実力差が出やすい業務になります。

この点は管理契約を継続した理由(6章)で示された「ストレスのない住環境」につながり、もっとも重要視された項目でもあります。

「ルールを守らない住民」(7位)「管理費を払わない住民」(8位)はなかなか難しい問題を含んでいます。

特に「ルールを守らない住民」は提案やアドバイスを含むことが多く、規約の目的でもある良好な住環境の維持には不可欠な業務になります。

標準管理規約には「ルールを守らない住民」ついては、第2節 管理組合の業務(業務)第32条 「管理組合は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。」の中で12項に「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」が適用されます。

また、管理委託契約書には下記のような文面で記載されています。

(有害行為の中止要求)
第十一条 乙(管理会社)は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲(管理組合)に代わって、次の各号に掲げる行為の中止を求めることができる。
一 法令、管理規約又は使用細則に違反する行為
二 建物の保存に有害な行為
三 所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為
四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為
五 組合員の共同の利益に反する行為
六 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
2 乙が、前項の規定により中止を求めても、なお甲の組合員等がその行為を中止しないときは、乙はその責めを免れるものとし、その後の中止等の要求は甲が行うものとする。

この原文をそのまま実際の管理委託契約に記載している例は少なく、各社とも出来るだけ自社の責任が免責されるような条文に変更していますが、内容はほとんどかわりません。業務フローは次のようになります。

ルールを守らない住民」への管理委託業務フロー
「ルールを守らない住民」へのサポートサイクル業務フロー

フローからも分かりますが、当事者に注意するのは管理員です。この時も行為の中止をお願いする程度で強制力はありません。

中には逆切れをする住民の方もいます。この作業は管理員に多大なストレスを与え、中にはこれが原因で職を離れるか方もいるほどです。

同じ行為を繰返す場合は、フロントに相談、フロントは理事会に対処をお願いします。管理組合は検討を行い、意思決定、フロントに指示を出す流れになります。一般的には館内に注意喚起を掲示します。

それでも同じ行為が行われる場合は、個人を特定し理事会が個別に注意します。大抵の場合はこれで収束しますが、それでも繰返す場合は覚書や誓約書と言った書面による約束を取り付けます。

管理員は、「ルールを守らない住民の存在」を出来るだけ記録に残します。最近では館内に設置されている防犯カメラの映像も重要です。これらの事実に基づいて理事会は、常習性、危険度、迷惑の加減などを考慮して最終的な判断をくだします。

今回、リプレースをした原因として指摘された内容はサポートサイクルが上手く働かず、理事会、住民の期待に応える対応が出来なかったことが推測できます。

しかし、最終的には住民のモラルに依存しているため、手に負えない場合もありますが、その時は法的制限を加える方法もありますが、管理組合の共同利益に反する行為に認定する必要があり難しい問題です。

「管理費を払わない住民」(8位)については管理規約に規定している管理費の支払いへの期日遅延、管理組合に対する債務不履行になります。「ルールを守らない住民」への業務フローと同様な流れになりますが、滞納者への対応は一定のルールがあります。

まず、管理委託契約書には下記のような文面が別表2に記載されています。

② 管理費等滞納者に対する督促

一 毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。
二 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、支払期限後○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。
三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。

管理会社は電話、訪問による督促以外は管理委託契約外としています。

多くの場合、口座の残高不足による一過性のミスで翌月には解消されることが普通ですが、3カ月以上滞納状態が続くと督促業務が進められます。

督促は管理委託契約範囲内は実務サイクルですが、督促にはノウハウがありサポートサイクルも重要な割合を占めます。

訪問・督促の期間は、債務者の事情や心情を踏まえて一定期間の猶予期間の延長と考えますが、6カ月以上の未納が続けば理事会も事務的な法的手続きに入ります、この期間は特に決まりはなく、理事会の裁量により決定されます。

督促や訪問を全く行わない管理会社は問題ですが、債務が解消しないことは債務者の問題であり、管理会社が責任を負うべきことではありません。

債務の取立てには一定のルールがあり勅使・経験がないと法的ペナルティーを受けることもあります。また、法的手続きを行う際には督促等の履歴は裁判で重要な証拠になるため、督促履歴の記録を残すことも重要な業務になります。

「〇月〇日まで待ってください。」など支払う意志を示している時は口約束ではなく、覚書や誓約書等の書面に残し記名を貰うことも重要です。

債務の解消を求める業務と並行して最悪のケースを想定して準備についてアドバイスすることフロントの重要な業務です。さらに令和3年に新民法が施行され、時効の名称や期間に変更がありました。当然、理事会にその概略を説明する程度のフォローはサポートサイクルに含まれると考えられます。

また、内容証明の発行を管理会社に依頼する場合や弁護士等の専門家に相談、依頼する場合は管理委託契約以外に別途契約が必要になります。

管理会社のリプレースの原因が債務者の債務履行が行われなかったことが原因とは考えられません。管理会社が督促等の要請に誠実に対応しなかった、あるいは理事会が求めるアドバイスを提示できなかったことが原因と推測されます。

せっかめメモ
新しく変わった民法を勉強しよう!!

督促(催告)と内容証明は何が違うの?

時効は皆さんよく知っていますよね。

借金(債務)にも時効があります。

時効の大前提として、債権者も債務者も債務の存在を互いに主張しなかった期間が一定期間を超えると債務を免除する権利が債務者に発生します。このことを消滅時効と言います。(実際には借金をした事実がなくなります。)

ただし、勝手に借金が消えることはありません。必ず債務者が裁判所に時効の援用を申出る必要があります。これが認められると消滅時効が成立します。

債権者にとっては迷惑な制度ですが法律で認められた債務者の権利でもあります。

これを阻止するのは、代表的な方法に2つ方法があります。

1、債務者が債務を認めること

2、債権者が催告(返済請求)を裁判所に申立てること

催告は債権者が「支払ってください」と請求する行為ですがその行為を誰も証明してくれません。催促状を渡しても債務者が破棄してしまえば受取っていませんと言われれば請求した事実の証明はできません。そのため裁判所に申立てる必要があります。

これを郵便局から内容証明により通知すると郵便局のその内容は10年間保管され、配達した記録も残ります。相手が受取りを正当な理由なく拒否した場合は保管期間を過ぎると受取ったと同じ効果が発生します。これで請求の事実を証明することができます。

催告をした時点から時効はリスタートになるため、裁判所に返済の申立てをすれば最終催告日が消滅時効のスタートが認められます。一定期間ごとにこれを繰返せば消滅時効の成立を防ぐことになります。

内容証明の有効期間は6カ月で、その間に裁判所に返済の申立てをすれば消滅時効を一旦停止することができます。

債権会社(カードローン会社等)からの普通郵便等の督促状には法的に証明する書類にはなりませんが、内容証明で行う督促行為はカードローン会社がこの債務者は請求しましたと法的に証明する資料になります。

新民法で何が変わったの?

成人が20歳から18歳に変更されたことは知っている方も多いですよね。新民法ではその他にもたくさん改正されました。ここでは皆さんに関係が深い管理費等の債務に関する改正点を説明します。

1、法定金利の改正

旧民法では延滞金の延滞利息は特約契約が無ければ年利5%でしたが、改定後は年利3%に変更になりました。(この金利は3年に一度見直されます。)

多くの規約には特約で別途定められていると思います。そのため、規約に定めた遅延利息で計算され、請求額が決まります。

2、消滅時効の期間

旧民法では債務の時効が成立する期間は債権の発生原因によって異なりましたが、今回の改正で見直され債権一般について2つの基準に統一されました。

ア、権利を行使できることを知ったときから5年

イ、権利を行使できるときから10年

組合管理費等は債権の性質上5年です。(これも旧民法時と変わりありません。)

3、時効の完成の猶予

民法特有の言い回しですが、「時効の完成の猶予」とは時効を一旦、停止させることです。

時効の完成を阻止する方法には幾つか決められたルールがあります。

継続している消滅時効の時間をゼロに戻す方法と中断させる方法があります。消滅時効の時間をゼロに戻す方法には債務者の債務の承認(借金を認めた時)と債権者の催告(返済を裁判所に申し出た時)が代表的例です。

これに対して継続している消滅時効の時間を中断させる方法があります。例えば1週間後に時効が成立するような場合に早急に消滅時効の時間をストップさせる必要があります。

今回の改定ではこの方法に債務について債権者と債務者が話合うことを書面に残した時、一旦時効は停止することが加えられました。

話合いの結果後に時効は継続するか?債務が消滅するかは決まりますが話合いをすることで合意できれば時効をストップができます。

以上3つが皆さんに関係する改定です。

今後もいろいろなところに「せっかめメモ」は登場します。是非、参考にしてくださいね。

5、マンション内従業員が原因でリプレースする理由

管理員、清掃員の対応について不満があり、それが原因でリプレースしたことはわかりますが、管理員、清掃員の対応の何が問題だったのでしょうか?

私は管理員の経験もありますが酷い管理員がいたことは知っています。また、以前の勤務先の管理員室の床に数多くの煙草の焼け跡があったことに驚いた経験もあります。それ以外にも月次報告書や住民からの投書に管理員に対するクレームを数多く見たことがあります。

管理員・清掃員が指導を受ける主な内容

一般的に管理員は配属前に業務研修と併せて管理員としての禁止事項などの研修を受けます。この他に関係法令に関する研修もあり、マンション管理に関する一通りの教育を受けた上で各職場に配属されます。

特に、日ごろの挨拶、言葉使い、事務所の整理整頓、丁寧な接客の指導、居眠り、さぼり、スマホいじりは注意するように事あるごとに言われます。

これは当然のことで管理員は上司の目が届かないところで仕事を行います。住民の目があると言え管理員室がありさぼるつもりがあればさぼれる環境で仕事をする以上、本人の自覚は絶対に必要です。その上、管理員は、日々居住者と接するポジションにあり、評価の対象になりやすい故に勤務態度は管理会社の評価に直接に結び付きます。

清掃員も同様で掃除後の床が濡れていたり、館内にゴミや汚れが頻繁に目立つようであれば、クレームの対象になります。特に床掃除はいい加減な仕事は転倒事故につながることもあり丁寧さが求められる仕事です。

管理会社も両者には教育の徹底、研修の充実化など最大限努力はしますが、監視の目が行き届かないこともあって、さぼる人はさぼります。

清掃のように技術的なスキルも求められる場合もあり、多くの会社が専門業者と外注契約の上で業務を行うケースも少なくありません。

管理員も清掃員も世の中では老後の簡単な仕事のように見られている面もありますが、皆様が考える以上にスキルを求められる仕事です。

住民から信頼を得た管理員は定年を過ぎても、住民から勤務の継続を求められ70歳を過ぎても元気で働いている例もあります。

しかし、管理組合からクレームがあれば管理会社やフロントにとって管理員や清掃員は容易に交換が出来る人員です。リプレースの直接的な原因になるとは考えにくく、管理会社が彼らの存在を重要と考えずに、教育も何も行わずに現場を担当させ、クレームに対しても大した改善も実施しなかった場合などの特殊なケース以外は思いつきません。

このような管理会社が存在していたのは昔の話だと思っていたのですが、まだ一部に残っているとすれば管理会社をリプレースするには十分な理由です。

6、NPSレポートの結論からの考察

区分所有者が管理会社の継続に求める要素

管理会社を選択する時に重要と考える項目

NPSレポート(無料版)に掲載されている管理会社をリプレースする理由等について考えました。

前章で説明した区分所有者が管理会社との継続契約を判断する時の要素と重複する要素が多く、一番重要視している要素はコストであることが確認できました。

これは従来から言われていることでしたが、区分所有者の管理業務に関するコストの意識が非常に高く、コストパフォーマンスが悪いと感じれば管理会社の変更に踏み切るがはっきりと示されています。

コストパフォーマンスは実感できる信頼感とストレスのない住環境とのバランスにより決定され、各マンションの組合員の意識にも大きく左右されるはずですが、どの組合でも実務サイクルをただマニュアル通りに行うだけの管理業務には満足していないことも示されていたのではないでしょうか。

また、サポートサイクルで示させる提案やアドバイスがコストパフォーマンスの判断基準に重要な要素になっていることも推測できたのは収穫だったと思います。

管理員の経験で各マンションの担当者のスキルが管理会社の評価に影響していることは感じていましたが、組合員の皆さんも同じ認識だっとは本当に良かったと思います。

近年、管理会社別のランキングが公表され、ネット等でいろいろな評価がされていますが、私の経験と一致しない内容が多く「なぜだろう?」と思うことも度々でしたが、今回のレポートから管理会社全体で評価する以前に担当者レベルで評価が必要であることが原因だったとわかりました。納得です。

さらに、ストレスのない住環境には、管理員や清掃員のマンション内の日常業務が重要な評価のひとつになっていることも確認でき、この点も組合員の皆さんは正しく評価されていると思います。

長期修繕計画のサポートも重要なポイントであり、マンション内の躯体や設備の経年劣化の状況を知る管理会社には長期修繕計画に積極的に関わって欲しいと望み、この要望に対応できない会社もリプレースの対象となることがわかりました。

長期修繕計画は区分所有者の資産を保全する将来への安心感には欠かせない項目であり区分所有者の方も重要性を理解していることに安心しました。


今回、NPS無料レポートの結果の利用については、NTTコム オンライン様の承諾を得て使用しております。

次にマンション内で起きるトラブルについてのアンケートをNPS無料レポートは報告しています。

➡ 3章 マンション内トラブルの経験に関するレポートに続く