元々、管理委託契約は、不正防止や資産の安全性は管理業務主任者が重要事項説明において行いますが、詳細な中身の十分な理解をしない状態で契約を結ぶことがなく、与えられた契約のイメージがあります。そのため、「こんなもんなんだ」「これでいいんじゃない」と思ってしまいます。
その後、生活も安定し、特に大きな問題もなく日常を過ごすうちに、この状態が普通であり、当たり前に感じてしまうように慣らされてしまいます。
何か大きな問題が起きて気づく方が多く、いざ検証すると管理費の減額ができることがわかった管理組合はたくさんあります。これは、自分で確かめ納得していた管理費だから妥当に思えるのです。
これは前月の特集のまとめでお話しした内容です。まだ読んでいない方は是非、先に読むことをお勧めします。➡特集2021年3月号 マンション管理費を高く感じる訳
経費削減は管理費の経費を節約することですが、今の管理費を幾らにしたいと思っていますか。大抵この質問をすると「少しでも多く・・・。」と答える方がほとんどですが、残念ですが「この方は節約ができないな」と判断することにしています。実際問題、管理費を全く支払わない状態はあり得ません。
電気・水道の基本料金は設備を導入した段階で毎月必ず発生する経費です。
共用部の電気、水道をすべて使用しないとエレベーター、水道もポンプ式の場合はまったく使用できません。それ以外にも館内も薄暗く、夜になると外周灯も点灯しないマンションになります。ほぼ震災等の停電、断水状態で日常生活を送るのことになります。
これは決して皆さんも望んではいないことです。必要な経費は支払うことに異論はないでしょう。
では、節約とは何か?と言えば「必要経費」を確認して、それ以外に皆さんが望むサービス選択、それに対して適正な価格を支払うことです。
家計の節約と考え方は変わりません。「必要」「不必要」「欲しい」「欲しくない」「高い」「納得できる価格」をそれぞれのサービスについて選択することです。
管理費の経費削減とは、現在の費用発生の理由を確認して、それえぞれを見直す作業と管理委託契約の中身を見直し、それぞれの価格を決める作業になります。
1、マンション管理委託契約は絶対ではない

マンション管理委託の契約までの経緯は、これまでの当サイトで扱ったテーマです。その中で初期の分譲マンションでは不慣れな組合員をアシストするために必要な業務委託ではあるが過剰な業務契約や組合員へ不利益な契約になる可能性があることを説明しました。
元々、マンション標準管理委託契約は必須ではなく、管理組合がすべてを行う自主管理も認められています。あくまでも指針として公開されているだけで義務化されていません。これは経費削減を行う上で非常に重要な意味を持ちます。
過剰な業務契約は組合員が望む以上のサービスを実施する契約がされている場合です。管理員の常駐時間や定期清掃の回数などが考えられます。
組合員への不利益な契約とは委託した管理会社が業務を再委託するケースがこれに当ります。再委託は管理会社が主導で業者の選定を行い、組合員には委託会社名だけが公開されますが、実費価格は非公開であり管理会社がマージンを乗せた費用が契約書に記載される為、ブラックボックスになり不利益を受けている可能性があります。
これらを精査することが経費削減の方法のひとつになります。
2、管理委託契約から経費削減を考える
国土交通省が公開している「マンション管理委託契約書」に記載されている契約項目から必要性と業者選択権についてまとめた表を次に示します。

自主管理はすべて独自の理事会を中心とした管理組合が行うため対象になりません。
マンション管理委託契約を一部、全部契約を行っている組合が対象になります。
「基幹業務」に指定されている管理費等の徴収、出納業務、及び法律で決められている法定検査については必要度を認めます。また、共用部の施設で照明、吸排気、給排水、エレベータについても通常生活に不可欠な費用になり必要度を認めました。
その結果、基幹業務以外の業務契約はマンションによって選択権があることが明確に分かります。
本当に組合員が望む業務が必要な量提供されているかは皆さんが決めることです。過剰なサービスや不要なサービスを削ることで業務はスリム化でき、これにより経費削減が出来ます。これがポイントです。
次に各業務の委託、再委託を含めて管理会社に任せる場合の委託先の業者選定の選択権についてはすべて管理会社にあることがわかります。
すべてのマンション管理業務を委託する全部委託方式をほとんどの組合は採用されていると思います。このような場合、委託費用として支払う金額の総額で高い安いを評価することになりますが、多くのブラックボックスが含まれていることがわかると思います。しかし、ブラックボックスについては契約書内で各費用明細を公開する方式が推奨されています。もし、管理組合がブラックボックスの詳細を精査した時はどんなことがわかるのでしょうか。
これが経費削減のポイントの2つ目になります。
3、必要なサービスを見極める
皆さんが望むサービスはどのようなサービスか?それを知るためには住民の意識調査が必要不可欠になります。そこで用いられる方法はアンケートです。
すべての業務について住民に意識調査を行うこともできますが、アンケートの量も膨大になりアンケート参加率が悪くなる可能性が大きいと言えます。
では、有効な方法は何かと言えば、「住民への参加意識の向上」を促すことです。
3-1、理事会が意思表示すること
経費削減を牽引する役目は理事会、特に理事長になります。これは輪番制を採用されている組合ではなかなか難しい問題ですが、誰かが声を挙げなければ削減はできません。「管理会社に頼めば・・」はNoです。管理会社はブラックボックスを作った本人です。中身は決して明かしたくない立場です。
経費削減で理事会が意思表示をすることがもっとも高いハードルになります。これは当事者の皆さんなら実感できることでしょう。
逆に言えば誰かが先頭に立って牽引役になれば案外、経費削減はスムーズに進むケースをたくさん知っています。
理事会の意思表示のタイミングは新規理事の就任です。次期役員の選出は通常期末の1~2カ月前に行われます。同時に業務引継が行われ来期の活動方針を決め、管理会社が収支計画案を作成する流れが一般的でしょう。
このタイミングで住民に対してアンケートを実施することが意志表示になります。アンケートの一例をご紹介します。これは複数の120戸の中規模マンションで実際に使用されたアンケートを一部抜粋したものです。

アンケートを突然に実施するより事前告知を行った上でアンケートを実施した方が回収率は良くなることを経験上感じています。
以前の特集でも述べましたが、アンケートでは実施目的を明確にすること、結果を公表すること、不利益になる可能性があることはすべて記載した上で行うことが基本になります。
告知を出すことでマンション内では理事会の存在意義や活動内容を周知する意味もあり、併せて今回は組合員に記名式であること示し、無関心者のあぶり出しにもチャレンジしています。
注意事項に個人の特定による不利益は発生しないことを明確にした上で、不参加は無関心者として扱われる可能性があることも示し、回収率のアップを目指しています。
また、アンケートの回答内容によっては、作業負担が増えることも示し、今後実施するアンケートへの参加も促しています。
この要旨は各戸に戸別配布以外に掲示板やエレベーター内にも掲示することで周知を促します。
次に行うことはアンケートの作成になります。
1回の質問数は最大でも10問程度にするべきでしょう。何でもかんでも質問するのではなく理事会が方針を決めるために最低限に限定します。
アンケートの作成を管理会社に頼む管理組合も多いようですが、少なくとも今回のアンケートについては管理会社も契約内容に関わります。当事者に作成させることは不適当でしょう。アンケートだけは理事会で作成し、印刷や配布などの作業は管理会社に依頼します。
管理会社にはリプレースが目的ではなく、管理費実費の削減が目的であり、管理会社への報酬などはアンケート対象ではないことを説明すれば協力は得られやすいと思います。また、各業務への満足度は管理会社も知りたい情報です。もし、それでも非協力的であれば管理委託契約の「理事会の支援業務」の一環と説明すれば反論は出来ないでしょう。この程度に協力できない管理会社はリプレースを考えても良いかもしれません。
3-2、アンケート内容をどうするか?
アンケートは理事会内で話合いますが原案は次のような項目にすることをお勧めします。「アンケートの実施」と同じ組合で実際に実施された内容を参考に編集したものです。

実際の大きさはA4サイズの1枚です。回答者が負担になる量ではありません。このアンケートでは95%以上の方から回答を頂きました。結果は各組合で異なるますが、組合員の皆さんの管理業務に対する意識調査には十分な内容のアンケートでした。
アンケート作成時に議論された内容は、もっと質問数を増やし具体的に無駄や過剰なサービスの項目(管理員の資質、清掃回数)を入れた方が良いのではないかと言う意見が多くありましたが、今回のアンケートの目的が理事会の姿勢を明らかにすることであり、管理委託契約の中身の理解度は個人差が大きいことから経費削減への賛否と管理費への意識調査に絞るべきであり、今後のアンケートの意義を持たせるためにも簡素で分かり易くすることになりました。
3-3、アンケートの結果公開
アンケート結果の公開に余計な考察は必要ありません。結果をグラフ等にまとめ視覚的に分かり易く見せることが重要です。
アンケートの集計作業は管理会社に依頼します。公開用資料作成は理事会で行うケースがほとんどでしたが、管理会社が公開用資料作成まで実施したケースもありました。担当者のスキルが十分あり理事会から強い信頼を得ていた方でしたね。
これまでに同様の内容のアンケートを行った組合の結果を経験的にまとめると次のような結果に集約できます。

ただし、あくまでも私見です。定量的な結果として集計した結果ではありませんが体験から得た意見としてお読み頂ければと思います。
経費削減に反対する人はほとんどいません。ただし、何か仕事をする必要があるかを気にされる方はいますね。
現在の管理費に不満はない方は組合でかなりに違いがありますが、半数以上は適正だった判断されていたことには驚いたことを覚えています。しかし、彼らを含めて「安くなること」は望んでいることも判りましたね。
サービスへの無駄や過剰については、「わからない」と回答がもっとも多かった組合もあり、どの組合も一定の割合存在していました。管理委託契約をよく理解していないことが原因です。与えられるからそれで良いと思っている人たちです。これは想定通りでした。「過剰」と答える人もいますが、いずれも具体的に何が過剰なのかは自身でも理解しているわけではなく、何となくイメージとして過剰だと思っている方がほとんどでした。
結果としてアンケートを実施した組合では、賛成多数で経費削減は理事会の方針に採用され実施されました。効果の大きさに差はありましたが、組合員への管理費への意識は実施前とはまったく違い、組合全体の問題として考えることが出来るようになった点は同じでした。
組合員の同意が得られれば、次期理事会の運営方針を具体的に決定することになります。
4、理事会の目標を設定する
アンケートにより「経費削減の可能性を検討すること」を次期理事会の運営方針にしますが、この時は目標を分かり易く公表することが重要です。
推奨する方法は、項目別目標の設定とタイムテーブルを決める方法です。期間は1年です。項目は次の表を参考にします。



「必要度」の△を示した業務から「管理員」「日常清掃」「定期清掃」「植栽」に注目します。「日常清掃」「定期清掃」は清掃業務としてテーマにします。
この項目を選択した理由は日々の生活で必要性をもっとも実感できる業務になり、組合員だけでなくご家族も判断や意見を言いやすいと考えられるためです。
一つのテーマに割く時間は3カ月とし、1年間で3つテーマに結論を出します。その結果から来期の管理委託契約に反映させることを目標にします。結果として管理費の減額ができる可能性も明確に示すことができます。
年間の理事会運営のタイムテーブル、各テーマは同じタイムテーブルで処理を行います。
具体的にはアンケート中心に行い、「アンケート実施の周知」➡「アンケート作成」➡「実施」➡「回収・集計」➡「結果報告」➡「決定事項報告」に手順になります。
「アンケート作成」、「決定事項報告」は理事会が中心になって行いますが、他の作業は管理会社に任せる方法が良いでしょう。
各アンケートの設問数は各テーマ10問程度として最大でも20設問まででしょう。あまり設問数を多くすると面倒になり回収率が減少する傾向があります。
アンケートで組合員に聞きたいことは現在のサービスの必要性と満足度の2つがポイントになります。アンケートの作成には管理員業務、清掃業務、植栽に精通している必要があります。本来、適任者は管理会社ですが利害関係者(契約を縮小される可能性がある)ため、適任ではありません。
管理員では出勤日、勤務時間、勤務態度、挨拶、接し方、ごみ集積場の清潔度、館内の清潔性、対応の迅速性、対応の的確性などを中心に設問を構成します。清掃業務は側溝やドレインの清掃、腰壁の汚れ、天井の汚れ、期清掃前後の清潔度の違いなどから住民の皆さんの意見を聞きだします。このような「アンケート作成」の基本的事項をまとめた資料を当サイトで会員の皆様に提供しています。
実際、「管理員」「日常清掃」「定期清掃」「植栽」のサービスについてアンケートを実施した管理組合では管理員の出勤日と勤務時間を変更することが出来たケースもありました。また「定期清掃」では、回数を減らした組合、清掃箇所を変更して住民の満足度がアップした組合もありました。「植栽」についても落葉樹から常緑樹に植替えが行われ側溝や管理員の清掃負担が減少し、結果として管理員が他の業務に充てる時間が増えたことによりサービスの満足度がアップしたケースもありました。
このように住民にサービスの必要性を再確認することは、管理費の減額以外にも満足度のアップも見込むことができます。
5、結果を公開することの重要性
3カ月毎に結果を公開することは住民のモチベーションを維持するためには非常に重要なことです。
自分が関わったことで何かの結果が出ることでやる気や面白さを実感することが出来ます。多くの組合は理事会方針を年度単位で決め、月に1回事務処理的な資料としてマンション誌などを報告することが一般的ですが、面白みのない事務的資料では組合員への関心は広がらず、一部の熱心な方だけが決定に関わることになります。結果として無関心者の増加や非協力的な組合員を増やすことにつながります。
どのマンションにも無関心者は一定の割合で存在ますが、彼らに関心を持たせることは出来ないと割切って考えます。無関心者ではないが積極ではない組合員に関心を持ってもらえるようにすべきです。

アンケートは記名式を採用しています。記入式も部屋番号に留め個人名を記入する手間を無くします。それだけ・・と思われる方もいると思いますが抵抗感は名前を書くよりぐっと低くなります。何度かアンケートを繰返すと無関心者はすぐに特定できますが、何か特別なリアクションを取る必要はありません。その絶対数が組合全体でどの程度の割合を占めるかをするだけでも貴重なデータです。
以前の特集で無関心者の割合が20%を超えると特別議決が出来なくなる可能性が高いことを示しました。( 特集2021年1月号 マンション管理がうまくいかないわけ 3章 マンション管理を左右する要因について(3))
理事会が無関心者の割合を定期的に知ることが出来れば良いのですが「あなたはマンション管理に無関心ですか?」と質問する訳にもいきません。そのため、定期的にアンケートを実施することはどの程度、存在するかを知る目安としても重要な意味を持ちます。
先程も示しましたが、結果を肌で感じれれば次の参加も期待できます。これを繰返すことでアンケートの実施が定例作業のように住民に浸透します。このことがマンション管理では非常に重い意味を持ちます。住民の意見集約がし易い組合とあり、普通議決、特別議決や大規模修繕工事でもスムーズに実施ができるようになります。以前の特集記事で国土交通省の調査結果から「住民の無関心、非協力者の存在がマンション管理の障害になる」ことを取り上げましたが、この問題を解消することが出来るわけです。
管理費の削減は重要な案件ですが、アンケートで広く意見を集めることはマンション管理への住民参加意識、契約の精度向上、満足度の向上など様々な波状効果が期待できます。
アンケート結果を公開することの重要性を理解して頂けたでしょうか。
6、管理委託契約書に反映する
年間を通して実行された理事会の活動は、管理委託契約に反映させることで完結します。
管理委託契約は年単位で更新されることが一般的です。追加業務は別契約になります。そのため契約中に内容を変更することは難しく、更新時に契約内容の見直しを行う方法になります。
アンケートの実施の事務処理は、管理会社が関わっているため、結論については事前に管理会社も把握しています。管理会社は更新ではなく新規契約の準備を行うことができます。結果として契約終了の3カ月前に書面で申入れる更新はではなく、新しい内容による新規契約になります。
理事会の活発な活動は管理会社の活動にも大きな影響を与えます。管理会社は「この程度やっていれば来年も更新は大丈夫かな~」と思っている節(ふし)があります。元々、事なかれ主義の管理会社は波風が起きることを嫌い、無気力で言いなり状態の管理組合がもっとも都合が良いわけです。(すべての管理会社がそうだとは言ってません、悪しからず)皆さんは言い換えれば「眠れる獅子」なのです。
獅子が起きた以上、管理会社は対応せざるを得ません。中途半端な対応はこの管理組合には通用しないと少しでも思わせることで従来の姿勢が変わります。
一般のマンション管理組合では自主性を重んじる傾向がありことは国土交通省の調査でも示されていますが、行動力はあまり発揮することが出来ない集団であるとも言われています。その点を補う役目が本来、管理会社に求められるべきなのですが、管理会社がその弱点を上手く利用し、マンション管理業務のパターンにはめ込むことで業務量の軽減をしているケースが多く、管理組合に行動力があれば管理会社もそれに合わせた対応が必要になります。
そのため、今回のような経費削減や管理委託契約の見直しを行うことは管理会社にとっては困った面が多くあり、まして管理会社から提案と言った業務が発生しにくい状況を生み出すひとつの原因になっています。
住民の意見に基づいた管理委託契約は、組合員にとっては自主性を活かした契約内容になっています。新しい管理委託契約の重要事項説明会が開催されますが、参加する組合員の管理業務に対する意識が違います。これまでの決められた書面を棒読みして質疑応答を済ませるだけでは終わらないことも多く、活発な質問や要望が増えることになります。
ここまでが必要なサービスの見直しによる管理費軽減の手順になります。しかし、一期だけで管理費軽減は終了しません。次期の理事会にも継承する必要があります。
7、来期の理事会に引継ぐ
1年で理事の半数が入れ替わり、残留理事の中から理事長を互選する制度が一般的です。期末の3カ月前には新しい理事が選ばれ引継ぎが行われますが、現在の理事会は来期以降に道筋をつけて引継ぐことをお勧めします。

次の見直し対象は、管理委託契約の「メンテンス」「理事会・総会関係業務費」「大規模修繕工事関連業務費」になります。
「メンテンス」はマンション内の設備が対象になります。メンテナンス対象の設備は管理会社が把握しています。一覧表の提出を求めるます。同時に再委託を行っている場合は会社名と費用もリストに加えてもらいましょう。
その上で住民の各施設の利用状況、利用上の問題点、使いやすさについてアンケートを実施します。
設備数が多い場合や規模の大きな駐車場、機械駐車場、駐輪場がある場合は、検討に時間がかかることが多く、3カ月ではなく6カ月程度の猶予期間を設けることも考えるべきです。
「理事会・総会関係業務費」は理事会の支援業務になります。理事会業務で不十分と感じていることを過去の理事経験者や監事経験者にアンケート実施します。また住民が感じている理事会の存在意義や要望を聞くことも重要です。
「大規模修繕工事関連業務費」は大規模修繕工事の時期や経験回数で変わります。また修繕工事における管理会社の関わり方によっても変わります。理事会全体で経費削減項目から外すことにします。
目標の設定が出来れば、それに合わせて前期同様にアンケートを実施、結果を公開する手順で進めます。どの理事会も不安に感じるのはアンケートの内容を上手く作れるかと言うことです。アンケートの内容については、各マンションの実情に合わせて作成する必要がありますが、基本は「そのサービスは必要ですか?」「今のサービス内容に満足していますか?」「足りないサービスは何ですか?」「どうすれば良いと思いますか?」を聞くことを忘れなければ見直しに必要な情報は集まります。
もし不安であれば経験のある専門家に聞くことも選択肢のひとつですが、あくまでも人任せはせずに自分たちが出来るだけ考える姿勢が重要です。
このように行うことでおおよそ、2年で「必要度」が△で示された業務については、管理委託契約の内容を精査、管理費の減額の可能性を検討することができます。
しかし、管理費の削減は契約の見直しだけでは終了しません。
8、まだ経費削減はできる
これまでの経費削減の対象は管理委託契約に基づいて提供されるサービスの量について実施しましたが、経費削減はこれだけではありません。
管理委託契約には記載されないことでも管理費の実費を削減することは可能です。また、価格を据え置きでサービスの質を向上することも経費削減と考えることが出来ます。
具体的には共用部分の光熱費の軽減、消耗品類の仕入れ先の見直しによる経費削減、再委託先の価格重視による業者選択などたくさんの可能性があります。また、サービスの向上には事務的なマンション誌を住民向けに分かり易い紙面構成にする要請を管理会社に行うことも考えられます。
マンション管理業務に主婦の皆さんが日常普通に行っている節約と非常に似た考え方をマンション管理業務に取入れることになります。
次章ではこの点を中心に経費削減を考えます。
1章では管理費の削減を行うための量の削減を中心に出来るだけ具体的に説明を行いました。
「できるかな~」「わかるけど、やれる自信がない」と思う方がほとんどではないかと思います。実際この話をしてもほとんどの管理組合では「なんで俺が理事の時にやるの」「今のままでもいいけど」と答える方の方が圧倒的に多いことを経験しています。
やるやらないの判断は、各理事会、各理事の皆さんの決断で決定されることなので私は成功事例をお話ししただけで無理に勧めることには積極的ではありません。幾ら牽引しても当事者がその気にならなければ成功しないことが明白だからです。
会社組織のように利益を求める集団であればトップダウンで行うことは難しいことではありません。削減が出来なければ自身の給与にも大きく関わることですから当事者も抵抗なく受入れることができます。
一方、マンション管理組合は利益を生む集団ではなく、あくまでも自身の生活環境と資産維持が目的の集団です。しかし、考え方を変えれば組合員は経営者の要素も含んだ立場でもあります。従業員を住民に置き換え、経費削減はマンションを守るために必要なことだと思えるのではないでしょうか。
今回の特集記事で一人でも多くの方がマンション管理業務を考え直すきっかけなれば幸いです。
次章では主婦感覚をマンション管理に取入れる方法について説明します。
➡ 2章 主婦感覚の節約を取入れるに続く