節約術の定番は、スーパーをはしごして卵10個を1円でも安く買う、セール品を積極的に買う、安売りに行ってまとめ買いする等々、主婦の節約術はいろいろあります。これ以外にも出来るだけ小まめに電気を消す習慣を身につける、水道の流しながらを止める、トイレタンクにペットボトルを沈め1回の使用量を少なくするなど使用量を減らす方法も節約術です。また、贅沢品の購入を控える、あるいは携帯のようにサービス会社を変えることで価格帯を安くするなどもありますね。

各家庭で家計の状況も異なるため、節約には無縁と言う方もたくさんいます。特にマンション購入者は社会的な成功者とも言われます。そのため、まったく考える必要のない管理組合もたくさんあると思いますが、それ以外の方もいるはずです。2章ではそんな方を対象にした管理費の軽減方法を紹介します。

1、主婦の節約術を取入れる

家計を預かる方は、今の収入が幾らで月にどの程度の食費が必要で、保険料は幾ら、教育費は幾ら、積立は幾ら、電気代はこのぐらいなど概ねの概算額を把握しているはずです。これはどの家庭でも同じでしょう。それぞれの支出の内訳も大体は把握していますよね。このデータがあるからこそ節約の必要がある時、優先順位を決めて支出を抑える方法を考えるわけです。

管理組合は各期の初めに収支計画を作成します。しかし、各費用の内容は前年度を踏襲するため、精査されないことが一般的です。主婦の節約術を取入れるとは各項目の中身を知り、経費の削減が出来ないかを検討することになります。

主婦の知恵による節約は「仕入れの節約」「使用量の節約」「付加価値の選択」の3つに分けることができます。

「仕入れの節約」とは消耗品の節約に利用します。掃除用具や紙代などの日常業務の実費が皆さんの管理費に含まれています。管理会社に委託する場合は、管理会社が仕入れを行い、請求額が決まります。支払いは請求書により行われる為、管理会社のマージン等は原則発生しません。ただし、仕入れ時の価格交渉や安いものを選択されているかは不明です。

例えば、紙代です。理事会資料や総会資料など規模の大きさによって使用量は違いますが、主要なネット通販サイトで比較しても紙質や色などで価格帯は一定の幅があります。組合員の皆さんは紙質に拘りますか?拘らない方がほとんどですよね。そこで最安値の紙を使用するように管理会社に依頼します。使用量によっては5年、10年で大きな価格差を生みます。また、印刷に使用するインク代も純正品とリサイクル品では大きな違いを生みます。このように仕入れ価格(購入価格)を安くすれば節約額もはっきり知ることが可能です。これが「仕入れの節約」の考え方です。

「使用量の節約」とは消耗品の節約でも仕入れではなく使用量そのものを減らす方法です。総会資料は全組合員にすべての資料が配布される組合もあります。中には印刷会社に別発注している場合もあります。しかし、皆さんはその資料を各家庭に保存していますか?、年に何度も見直すことがありますか?総会資料の印刷は原本の数冊に抑え、後は要約した内容で足りるのではありませんか。多くの総会はプロジェクター等を利用して説明を行われるため手元に資料は必要ありません。原本は管理室に保存されます。必要であれば閲覧する権利もあります。もし売買時に必要になれば当事者が費用を支払い手に入れる手段まで「マンション管理適正化法」には記載されています。

これ以外にも共用部の天井灯のLED化、センサー設置による点灯時間の短縮や電灯の間引きなどが出来る項目になります。これが「使用量の節約」の考え方です。

「付加価値の選択」とは皆さんが希望するサービスの選択です。前章で行った管理委託契約の見直し以外に法定検査やメンテナンスを再委託する業務が多数あります。その再委託費用を見直すことが「付加価値の選択」になります。

また、設備や施設の故障時は業者による修理が必要になりますが、この時の業者の選択に意見を述べ参加することで修理費の削減の可能性もあります。このように従来管理会社に一任していた業者選択に口を出すことにも含まれます。

「付加価値の選択」の考え方がお分かり頂けましたか。

このように節約は、住民の総意があれば組合だけでも出来ることはあります。

2、家計簿(出納記録)を取寄せる

考え方は理解して頂けたと思いますが、何から始めるかわかりませんよね。まず、最初にすることは管理会社にある出納記録を提出してもらうことです。家庭で言えば家計簿を見直し、各費用を精査するための資料を揃えます。

出納記録は「科目」によって整理されています。科目の名称は各管理会社により多少違いますが管理員室で使用するコピー紙、インク代、コピー機のリース代などは「消耗品」「雑費」などで仕訳がされています。

各科目ごとに出納記録を3年分取寄せれば基本資料は揃います。あまり深く考えず各品目別に「コピー紙の月別購入額が知りたい」と要求すれば対応してくれます。

管理会社によって出力形式も異なるため、購入先や単価がどの程度の紐付(関連情報)として扱っているかは違いますが、次のような項目を各月毎の購入費がわかる資料として提出要請すればそれ程時間は要せず提出できるはずです。(この時、提出を拒む、あるいは難色を示す管理会社は不正の可能性があります。)

管理会社にとっては、管理委託費とは無関係な支出になるため要請は受けやすいと思いますが、業務の増加につながるためあまり良い顔はしないでしょう。しかし、管理組合にとっては正当な請求であり気にする必要はありません。

取寄せた資料は今後の節約業務の基になります。

提出された資料は各品目ごとに整理します。会計業務に精通していないとできない仕事ではありません。しかし、簿記3級以上の資格者、あるいは会社の経理経験者が組合員にいれば手助けを求めても良いでしょう。会計資料整理は管理組合の節約の可能性を示す重要な仕事です。理事会として手伝ってくれた方に日当程度の出費を用意することも検討しても良いでしょう。

精査すると色々なことがわかります。例えば光熱費は冬場は高くなり、夏場は安くなります。(日照時間との関係)水道料金は定期清掃や給排水設備の清掃月は高くなるなど一定の傾向を把握することが出来ます。年間でどの程度の消耗品を購入するか、発注はどのように行われているか、各価格は適正かどうかなど様々です。

3、ネットと管理会社をフル活用する

各消耗品の使用量と購入単価が判れば、ネットで同様の商品が幾らで購入可能かを調べます。アマゾン、楽天、ヤフーなどネットショップや文具であればアスクルなど法人向け店舗の価格も調べます。PCがなくても携帯でも調べることは可能ですよね。

この時、購入品の質も検討します。住民に配布する紙にどの程度拘りますか?理事会で話合いを行い方針を決定します。また、インクリボン代なども再生品を利用している組合員へのアンケートを行い問題点を聞くことも良いでしょう。

住民が多ければそれだけ情報源も多いことになります。組合員をリソースと考え出来るだけ協力を要請しましょう。

リース機器もネットで相場を調べれば現在の価格の値ごろ感も判断できます。もう一歩進めてコピー機の使用頻度から現在の1枚のコピー代を求めることも可能です。(印刷枚数はリース会社がカウントしています。)もしかすると割高な器械を借りている可能性もあります。

この時、コピー機を主に使う管理員からの意見を聞くことも必要になります。A3やB4の印刷の必要性が判れば機種を安価にすることもできます。

このように細部にわたり価格を検討することで年間でどの程度の支出を削減できるかが分かります。

この結果を基に管理会社へ価格の見直しや契約の見直しを依頼します。

4、1円を馬鹿にしない

節約を実行すると組合員からは「この程度なの?」と言う声は必ず上がりますが気にする必要はありません。人の努力を小馬鹿にする人は無視します。1円の節約が出来ない者に大きな節約が出来るはずがありません。こつこつと小さな削減を積み上げることが重要です。

皆さんは町内会や子供会の廃品回収をご存じですよね。各自治体が資源ゴミとして回収することが一般的ですが、各町内会は別に資源ごみを現金に換え、活動費として使用しています。実際、マンション管理組合でも古紙回収業者やアルミ缶回収業者に買取依頼を行い年間で数万円の収入をえているケースもあります。

このように1円でも出費を抑える努力は、今後の何十年も続くマンション管理では大きな価値に代わります。また、節約自体に意味はあることは言うまでもありませんが、組合員に理事会活動を感じてもらうこと、組合員、住民に節約意識、マンション管理業務への関心を持たせる効果も重要な派生効果です。

さらに、どうしても管理費の値上げが必要な事態に陥った場合にも組合員の納得感が絶対的に違います。消費税の増税時に「増税は仕方ないと思うけど有効に使って欲しい」と思いましたよね。理事会が努力している姿を日ごろから知っていれば「ここまで節約を検討しているにも関わらず値上げが必要なのか。」と納得しやすい環境になります。

そのためにも結果の大小に関わらず住民に報告することが重要です。前章のアンケートの実施でも述べましたが「目的、実施、結果」を1つのサイクルと考え繰返すことが基本になります。これを忘れないことが大切です。

5、モラルは金銭に置き換わることを周知する

マンション住民のモラルは大きな課題のひとつです。時に大きな騒動に発展することもありますよね。

実はモラルを周知することは金銭に置き換わることをご存じですか。幾つも例はありますが管理員の経験で感じたことをお話しします。

管理員はゴミの搬出やゴミ室の清掃を行います。また日々の清掃も業務になります。

これは実際にやったことがない人にはわからないことですが、可燃ゴミに不燃ゴミが含まれていた時、管理員はゴミの分別を行う必要があります。これが実に時間がかかる作業になります。取りだし、再び詰め直し搬出します。一般に管理員は時間で契約されているため一定時間内に出来る仕事を実施します。

余計な業務が発生するとその分、本来すべき仕事をやらずに終了することになります。あるいは残業を申請することになります。結果、掃除が雑になったり十分に出来ない事態や残業費を請求することになります。これは皆さんにとって大きな損失です。

資源ゴミでもよくあることでアルミ缶と金属の分別、未洗浄、未開封の瓶や缶の廃棄でも余計な時間がかかります。

清掃業務でも同じで共用廊下に私物が多く放置している場合、私物を退かして清掃を行いますがこれも時間のロスになります。

このようんいモラルは金銭に置き換わると周知することは結果として大きな節約にもなります。

どうしても節約や経費削減と言うと現金の支出と思いがちですが考え方を変えると節約は色々なところで可能だと気づくはずです。

6、住民の参加意識を引出す

皆さんのマンションには「意見箱」「投書箱」などは設置されていますか?住民が理事会に要望や問題を投書する仕組みです。

「投書なんてあるの?」と思われる人も多いと思いますが、投書はそれなりの数あります。もちろん、苦情や文句もたくさんありますが、中には大きな変化を生んだ投書もあります。馬鹿にはできません。

と言ってもいきなり「意見箱」「投書箱」を設置しても誰も見向きはしません。タイミングが重要です。これまで説明した節約を実施するとマンション管理への意識はマンション全体として高まります。理事会の活動が軌道に乗った段階で設置します。

設置目的は「マンション生活の向上のため皆さんの知恵を貸してください」とでもします。住民の皆さんから節約や生活環境のアイデアを募集します。これまでの経験で「自転車用空気入れの設置」「ベランダ洗浄用の高圧洗浄機」など住民の皆さんからの要望で組合が購入、好評を得たケースはたくさんあります。

もちろん、すべての投書が実現したわけではありませんが、どんな投書でも重要なことは相手に検討したことと結果をきちんと公開することです。

小さな規模のマンションではコミュニティーが形成しやすく管理員とも意思疎通が取りやすいため直接伝える方法も可能ですが、その場合も管理員➡管理会社➡理事会➡検討➡結果報告のサイクルは行います。

多くの管理組合は理事になると住民に要求することが多くなりますが、要求した以上、それに対して結果を報告する義務があります。「住民や組合員が非協力的で上手くいかない」と多くの役員の方から聞いた言葉ですが、何をやりたいか、何を手伝って欲しいかは聞きますが、その結果を報告する義務があることを忘れがちになり、独りよがりの主張になっているケースがたくさんあります。

是非、役員の皆さんには結果を報告することの重要性を理解して頂きたいと思います。

住民の「やる気スイッチ」は必ずありますが、それぞれスイッチの場所は違います。全員のスイッチを一気にオンにする都合の良い方法はありません。ただ、ひとつ共通していることは何かを達成した時の満足感はスイッチをくすぐる効果があることだけは間違いありません。


2章では理事会が中心になって理事会単独で実施が出来る身近な節約についてお話をしました。

どの方法もひとつひとつ別々に実施が出来ます。出来れば1章で説明した管理委託契約の見直しを先行実施することをお勧めします。

これ以外にも共用部の電気契約の変更やLED化による光熱費の削減などいろいろなサイトで扱っているテーマも考えられますが、年間の電気使用量、電球の購入額など専門的な計算が必須になり、理事会が単独で実行することは難しく、実施には専門家が必要になります。

大きな費用が伴うため、十年単位で評価される必要がありますが導入後の成果を検証する組合は皆無でしょう。導入時の提案書には15~20年で採算が合う計算だったと記憶しています。その間にもっと省エネ技術が進むのではないかな~と思わなくもありません。経済的効果については懐疑的です。もちろん、温暖化対策として実施するならば大賛成です。

潤沢な管理費や修繕積立金を保有する管理組合であれば、それも良いと思いますが、今回はあくまでも理事会が単独で出来ることにこだわり、管理費等の出費を減らしたいと考える理事の皆さんに向けた情報です。

次章では管理会社からの提案業務について経費削減が出来ないかを考えます。

➡ 3章 担当者は有能ですか?に続く

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