管理業務を主に行うフロントと言われる皆さんの各マンションの担当者である管理業務主任者です。
管理業務主任者についての問合せも多く寄せられる質問のひとつです。
特に頻繁な担当者の交代や若い担当者、女性の担当者への不安やあまり積極的でない担当者についても不安を抱いている方は相当数いるように思いますね。
確かに管理業務主任者の能力、経験は管理業務の善し悪しに大きく影響します。
そこでこの章では管理業務主任者について考えてみましょう。
管理組合の方は管理委託契約を締結する前に管理業務主任者の資格証の提示を受け「重要事項説明」を受けたことがあるはずです。
説明した人がそれぞれのマンション管理組合の担当者になっていることがほとんどです。
理事役員の方は月に一回、理事会で顔を会わせますよね。
さて、管理業務主任者とは普段どんな仕事をしているのでしょうか。

せっかめも管理業務主任者の資格は有しています。
管理業務主任者の登録も済ませています。
そのため、どこかの管理会社に就職して変更届を出せば、重要事項書の記名押印や説明も行うことができます。
管理業務主任者としての実務経験はありませんが、管理員として担当者の業務の内容は良く知っています。
はっきり言って、皆さんが思うよりも何十倍も大変な仕事です。
最近では女性の担当者も増えていますね。
性別、年齢の違う複数の上司に仕えてきましたが、性別、年齢による差はあまり感じたことはありません。
個人の優劣の差は本人の努力と仕事への情熱によって決まると思います。
それ以上に違いが発生するとすれば管理会社の担当者へのバックアップ体制ですね。
1、法的な資格等について
管理業務主任者は、現行のマンションの管理の適正化の推進に関する法律制定にともないマンションの委託契約に関する重要事項や管理事務の報告を行うために設けられた国家資格のひとつであり、マンション管理業を営む際に設置が義務付けられる。従って管理業務主任者はマンション管理業務上、その諸問題に精通していなければならない。
以下の業務は管理業務主任者がおこなわなければならない。
- 委託契約に関する重要事項説明および重要事項説明書(72条書面)への記名押印
- 管理委託契約書(73条書面)への記名押印
- 管理事務の報告(77条)
管理会社は国土交通省へ業登録の際において、事務所ごとに30管理組合に一人以上の成年者である専任の管理業務主任者を置かなければならない。
これらの業務は管理業務主任者であれば専任の管理主任者でなくとも行える。(以上ウィキペディアより)
管理業務主任者の説明を示しましたが、管理業務主任者は業務独占資格に該当します。
また、この資格は独占業務があり、この資格を持っていないと実施することができない業務のことです。
以下3つの業務が該当します。
1)重要事項説明および重要事項説明書(72条書面)への記名押印
管理委託契約を締結する前に組合員の皆さんに契約内容を説明する仕事です。
説明会の前に重要事項説明書を区分所有者全員への交付義務がありますが、説明書に記名押印することも必要になります。
2)管理委託契約書(73条書面)への記名押印
重要事項説明が終了後、管理委託契約が締結されます。
その契約書にも管理業務主任者の記名押印を行う義務があります。
3)管理事務の報告(77条)
管理者等は、1年間を1期として必ず区分所有者への報告を行う必要があります。
これと同じように管理委託契約書には1年間の委託管理業報告書を管理者等に説明する義務があります。
報告は必ず管理業務主任者の資格者が行うことが義務付けられています。
これが、管理業務主任者の業務です。
独占業務とは?
国家資格には4つの資格があります。「業務独占資格」「名称独占資格」「設置義務資格」「技能検定」です。「業務独占資格」とはその資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができる資格のことです。
代表的な資格は医師、弁護士です。
管理業務主任者もそのひとつです。
また、管理業務主任者は「設置義務資格」にも該当します。
不動産業界の資格
不動産業界には幾つもの国家資格があります。
有名な資格は宅建士です。
昔は宅地建物取扱士とか言われていました。
それ以外にも管理業務主任者、マンション管理士、2021年から賃貸管理業に設置義務が施行される賃貸不動産経営管理士。
土地家屋調査士、鑑定士、測量士、測量士補など。
皆さんの生活の基盤を支えるためにいろいろな資格者が日々働いています。
不動産ではよく使います
72条書面や73条書面って?と思われますが、法律の条文で指定されている書面のことを指します。
不動産の売買契約でも32条書面、33条書面と言われる重要事項説明書や売買契約書があります。
各条文で書面の意味を定義、国土交通省が「標準●●契約書」などの定型書式を指針として公開。その情報を不動産資格者や関係者が参考にしてそれぞれの書面を作成しています。そのため、書式は違うけど中身はほとんど変わりません。
意外に思われるかもしれませんが、法律上の独占業務は3項目だけです。
また、重要事項説明の前には必ず資格証を提示することが決められていて、忘れると・・業務停止や罰金などの罰を受けます。
管理会社は管理業務主任者を事務所ごとに1名以上在籍させる必要があり、5戸以上の管理組合を1組合と数え、ひとりの管理業務主任者は30管理組合まで担当することができるとマンションの管理の適正化の推進に関する法律に規定されています。
そのため管理業務主任者は設置義務資格にも該当します。
この数は、今後重要になりますから覚えておいてください。
では、管理業業務主任者の日常業務とはどんなものなのでしょうか。
2、普段の仕事は?
管理業業務主任者は、重要事項説明、管理委託契約に携わった管理組合の窓口として日々の管理業務を行っています。

その多くは事務処理です。
出納の伝票処理や支払処理をはじめ、毎月の月次報告書の作成、理事会の議事録の作成、他に契約に従ったメンテンアスや法定検査の業者の手配、定期清掃の業者手配、植栽等の業務の手配などたくさんの仕事を行っています。
この他、管理者等からの問合せやクレーム対応も含めてとにかく日々、仕事に追われています。
また、これ以外に管理組合ごとに月に1回の理事会があれば数時間は拘束されます。
理事会の開催前に月次報告書の作成、理事会終了後に議事録の作成があります。
ひとつの管理組合だけでも大変な仕事量です。
マンションの住民の皆さんは、管理員の働く姿はよく見かけると思いますが、管理業務主任者に直接会うことは月に1回程度(理事会に出席)です。
何をやっているかイメージできない人も多いと思いますが、日々、見えないところで皆さんの安心な生活の基盤を支えています。
資格証は普段から携帯しています
宅建士も管理業務主任者も資格証は仕事の時は携帯しています。
特定の業務前には相手に表示する義務があるためですが、それ以外にもお客さんから提示の要請があった時は提示する必要があります。
専任の管理主任者って何?
管理会社は事務所ごとに管理業務主任者を設置する必要がありますが、誰をいつから設置するかを国土交通省に届ける義務があります。
登録が認められると管理業務を行えますが、この時に登録した管理業務主任者を「専任の管理業務主任」と呼びます。
独占業務は必ず専任の管理主任者なの?
違います。管理会社に登録されていなくても管理業務主任者の資格を有していれば、独占業務はできます。
パートさんでも資格さえあれば、重要事項説明書への記名押印、重要事項説明を行うこともできます。
また、重要事項説明書へ記名押印した管理業務主任者が必ずその説明を行う必要もありません。
管理委託契約書の記名押印も同じです。
管理委託契約書に記名押印した管理業務主任者が必ずそのマンション管理業務の担当になる必要はありません。
とは言え、ほとんどの場合、同じ人が担当になりますね。
3、統計から読む管理の実態
ひとりの管理業務主任者が複数の管理組合を担当することは当たり前のことです。
国土交通省、一般社団法人マンション管理業協会から公表されているマンション管理業務者、登録件数から管理業務主任者の業務負担を考えてます。
平成27年度末時点でのマンション管理業の登録業者数(管理会社)は、2,185社です。(国土交通省資料より)
平成13年から始まった管理業務主任者の制度ですが令和2年時点で119,581人が合格しています。
合格者全員がすべて登録を行い、管理業務主任者として活躍しているわけではありません。
(私のようにマンション管理士になっている場合もありますし、資格だけを取得する方もいます。)
実際、実務にどの程度の合格者が登録を済ませ、従事しているか正確な数値はわかりませんが、毎年4,000人程度の増加しています。
分譲マンションの数、管理組合の存在数は正確な数は不明ですが、一般社団法人マンション管理業協会の調査で、協会に登録している管理会社数は358社、その会社が受託しているマンション管理組合数は、令和2年99,586組合と公開されています。
大胆な計算ですが、これまでの管理業務主任者が全員で管理組合の受託を受けたと仮定すると一人1.2組合となり、だいぶ余裕のある数値が得られます。
管理会社の平均受託件数は287.1組合と計算でき、30組合/人のルールから各社最低でも10名以上の管理業務主任者を設置する必要があることもわかります。(ただし、5戸以下の管理組合を考慮せず)
しかし、一般社団法人マンション管理業協会の調査報告書には、管理業務主任者は人手不足が明記され、これを裏付けるように求人サイトには管理業務主任者を求める求人広告が多数あります。
推察するには、毎年一定数の管理業務主任者は増加するが、業務に従事する人は一定数に限られ、マンション管理業界全体では人で不足の傾向にあるのは間違いはなさそうです。
特に求人情報からひとりの管理業務主任者が担当する管理組合数は、10~15組合が好条件としてアピールする求人が多いことよりも、実際はそれ以上の担当をもつことが常であるとも推測できます。

皆さんの管理会社のフロントは、幾つの組合を担当しているのでしょうか。
女性が台頭
近年、管理業務主任者に女性の進出が多くなりました。もともと、管理業務主任者はマンション管理業に従事する社員が国家資格を取得、そのまま管理業務主任者として働くケースが多く、管理事務のサポートとして働いていた方のステップアップでした。
優秀な女性が増えていることが最大の要因ですが、日々の忙しい業務の中で国家試験の準備をすることは至難です。
特に民法などは大学までそれほど真剣に学習する機会がなかった人がほとんど。その上、管理業法、消防法、建築基準法、都市計画法など法律の知識も必要になります。
地道な努力なくして受かる資格試験ではありません。日々の努力を続ける才能が男女で差があるとはあまり思いません。
管理業務主任者にはコミュニケーション能力も必要であり、女性ならではの繊細さが良いのかもしれませんね。
最近では土木工事現場や建築現場でも女性の姿はよく見かけます。いろいろな意味で男女雇用機会均等法や働き方改革でこれまで男性の職場とイメージいた場所にも女性は進出しています。
資格取得に全面サポートする会社も多い
管理会社の多くが資格の取得を推奨、社内教育の一環として通信教育費の補助や合格後のお祝い金などの制度を取入れています。中には試験前の1週間をお休みにする会社もあるようです。
不動産資格の中では比較的難易度が低いと言われていますが合格率は20%程度で簡単に取得できる資格ではありません。
4、求められる支援体制
実際、仕事量はマンションの規模に大きく左右されます。
150戸以上の大規模マンションを1つ担当するのと40戸以下の小規模のマンション管理組合を複数担当するのではまったく仕事量が違います。
(その意味では、担当組合数よりも担当戸数を確認する方が良いかもしれません。)
管理業務主任者の経験、能力にもよりますが、どのように担当を割り振るかは会社の姿勢によります。
このあたりの考え方は、管理会社の経営姿勢により決定されます。
元々、管理業務主任者の独占業務は、マンション管理業務の業務内容について一定の知識を有した資格者が契約内容に関する責任を明確にすることです。
マンションの管理業務の実務の知識は個人差が大きく、管理業務者のスキルに大きく影響します。
実務の経験は必要なく、法律上定められた業務を遂行できる知識を持つ資格者であり、管理業務主任者が日々行う業務で必要になる能力とは必ずしも一致していません。
また、一致する必要も求められていません。

特に管理業務主任者が日々、行う業務は事務処理、スケジュール調整、交渉、企画、助言などコミュニケーションと解決能力などかなり幅広い能力を求められます。
会計、経理、保険などのファイナンシャル知識、建築、設備知識、法的知識など業務を遂行する上で求められる知識も広範囲ですべてを網羅することはほとんど不可能です。
特に日々発生するマンション内の案件に対応することは、精神的ストレスを強く感じる業務も多く、事務的仕事量以上に負担となります。
マンション管理組合も個性があり、管理業務主任者にとって優良な組合がほとんどですが、中には不条理なクレームが多い組合もあるのは事実で、その担当になることは何倍もの負担になります。
これを解決するためには、管理業務主任者の負担を減らす努力を会社全体で行うことが求められます。
しかし、最低賃金の高騰による人件費の負担増、業界全体の管理業務主任者の人で不足、消費税増税、コロナによる経済的なダメージなど管理業務費の値上げが必要な環境でも管理組合の同意を得ることもなかなか難しい現実があります。
管理費の値下げを望む管理組合も多く、業界全体で決まった数のマンション管理組合の取り合いに拍車がかかり、その結果、不毛な価格競争になっている現状があります。
このような環境で負担が増すのは、現場で接する管理業務主任者や管理員です。
その結果として、管理組合への業務の質の低下も避けられなくなり、不満の要因になっているようです。
定着率が悪いと言われます
管理業務主任者は転職者が多いと言われる職種です。入社直後から資格者ではなく、管理業務主任者の下でサポートから始まり、数年で資格を取るのが一般的です。
元々、管理会社は契約マンション件数に対して配置義務があり、どうしても一人一人の担当者の負担が大きくなりがちで、そのため激務と言われていました。その結果、条件の良い管理会社を移る人が後を絶たないと言われています。
流石に管理会社もせっかく、育てた管理業務主任者が離職することはマイナスになると気づいたのでしょう。待遇の改善が急務となり、人手不足が増したと言われています。
私が受験した時も若い男女の受験生が多かったことを覚えています。
クレーム対応がしんどい
管理業務主任者も管理員もマンション管理の中でもっともしんどい業務と言われるのが組合員からのクレーム対応です。
99.9%の方は常識のある方なのですが、一人でもマンション内にクレーマーが居ると業務は激変します。
常識は通用しません。
「俺が法律!」「俺の言うとは絶対正しい!」と言う態度で接しますので一切の理論が通用しません。
特に自分の所有物である自宅で起こっていることであり、どうしても「自分が一番」と考える方の気持ちも理解できますが、常識の範囲を逸脱する方もいるのも事実です。
これが嫌で管理会社を辞める人も一定数います。
マンション管理士や弁護士でも関係なく、クレームを言ってきます。ただし、筆者の経験ではクレーマーの方は一般的に攻める時は強いのですが、守りが弱い傾向になると感じます。
5、管理業務主任者は実務サイクルに追われる
もう少し管理業務主任者の日常業務を考えてみましょう。
管理業務主任者は、日々、管理委託契約の基幹業務の遂行に時間を取られます。
管理費等の徴収、日々の出納記録、各メンテナンスと法定検査の調整です。
一人で10件の管理組合を担当すると仮定するとどれだけの作業量かは想像できます。
他に月次報告書作成、理事会への参加、議事録作成が基本的の月内業務です。
これらは、管理委託契約では基幹業務に該当する項目で当事務所では実務サイクルと呼んでいます。

管理業務主任者がルーティーンとして行う業務になります。
実務サイクルは、マンション管理組合の質や躯体の老朽化によらずに発生する業務になります。
これ以外に当事務所でサポートサイクルと呼んでいる日常に突発的に発生するトラブルや理事会から要請によって発生するクレーム処理、修繕・修理、管理員からの日々の報告への対応などサポート業務に追われています。
このような状況下で多くの管理業務主任者は、担当数によっては日々発生する実務サイクルに追われ、事務所から離れられない状況になりやすい現状が見えてきます。
その結果として担当マンションを訪問する機会も少なく、現場の状況を自分の目で確認することが出来ず、管理員からの説明や報告に限定されてしまいます。
コロナの影響
昨年からのコロナはマンション管理にも大きな影響を与えました。
理事会や総会の開催中止、管理員の勤務自粛による管理業務主任者の現地作業の増加などいろいろな面に影響が出ました。
また、外守自粛の影響でマンション全体にストレスが充満してしまい、これまでなら気にならなかった些細なトラブルの多く発生しています。
管理員は、リモート勤務ができません。
さらに高齢者が多いこともあり、基礎疾患のある方は勤務へ消極的であり、その上、自分がマンションに感染を広める最悪の結果への精神的な重圧も加わり、住民とのコミュニケーション不足、トラブルの増加による業務の増加やコロナ対策など業務自体の負担が増しました。
フロント担当者は、日々の業務はリモートで可能ですが、理事会や総会と言った定期報告実施のために複数のマンションを移動する業務があり、コロナの感染からいち早くため理事会や総会の中止を求める声が上がりました。
結果、国土交通省も各関係機関を通し理事会、総会の中止を認める発表を行い、結果として2021年にはリモートによる理事会、総会の運営を法律に組込む事態に至っています。(2021年はじめ)
管理会社関係者が感染したマンション
マンションに直接勤務する管理員には早朝の体温チェックと発熱時の対応のマニュアルが管理会社から早急に行き渡りました。
また、接触機会の低減からゴミ出し業務に限定した管理組合もあったと聞いています。
それでも筆者の知る限り管理室でコロナの感染した案件は数件ありました。
幸い、管理員は単独行動が多く濃厚接触者を生みにくい仕事のため、管理室と共用部分のの徹底的な消毒で済んだと聞いています。
代行制度も確立している管理会社が多く、業務にも支障は発生しなかったとも聞いています。
管理会社内でも幾つかの感染例はあったようですが、マンション全体への感染にはならなかったと聞いています。
いずれも人伝に聞いたことであり信ぴょう性は測りかねますが、管理会社担当者から聞いた内容であり管理会社からの感染拡大が起こっていればマスコミもほっとおかないでしょう。
住民が感染したマンション
住民は感染したマンションの対処方法について現在でも国、地方自治体、関係機関からきちんとしたマニュアルの公表はありません。
コロナにより不要なバッシングが話題になるぐらい疑心暗鬼による差別が起きた事実が公表されるにつれ、個人保護の観点から安易なマニュアルの作成はできないと判断しているのでしょう。
個人でもわざわざ差別を受ける情報を積極的に発信する人はいません。
管理会社としても組合員から報告を受けても共用部分の消毒以外に手は出せません。
そのため、個人レベルの情報管理が主流になっています。
6、それが何か?関係ありません。
管理業務主任者の負担の大きさはお判りいただけたと思いますが、管理組合からすれば「それが何?」、だから私たちは我慢をしなければいけないの?と言われます。
当然のことです。
管理会社の都合は、管理組合にとっては迷惑な話です。そんなに大変なら受託件数を少なくして私たちの管理にもっと熱心になってと思うはずです。
管理会社の選択肢はたくさんある現状ではそこまで今の契約に固守する必要はありません。
しかし、初期の管理会社は組合員の意志に無関係に契約を受入れたケースがほとんどです。さらに他のマンションの管理の実情を知る機会は少なく、受入れた環境を当たり前と感じるため、疑問に思うことも少ない現実があります。
一般社団法人マンション管理業協会は協会会員、非会員のマンション管理組合に関わらずマンション管理に関する様々な相談に対応しています。その相談内容を毎年、統計的に公開しています。
そのデータを見てみましょう。(詳細データはこちら⇒一般社団法人マンション管理業協会)
かなり小さな表ですみません。
注目すべきは、次の3つの相談数です。(相談件数には管理会社からの相談も含まれています)
相談内容 | 件数(割合%) |
管理会社への不信感 | 337(4.9) |
管理会社の不法行為・脱法行為 | 23(0.3) |
契約上の苦情一般 | 68(0.9) |
管理会社への不信感が全体相談数の5%近くあります。
それ以外にも0.3%の不法行為等を行っている会社があること自体が驚きです。
いずれにしてもかなり多いと思いませんか?
業界団体に寄せられる相談内容

マンション管理業協会に寄せられた質問の項目別の一覧表です。
規約や使用細則、マンション適正化法に関する法的な質問が多いようですね。
専門的な知識がないと正確な解釈が出来にくいことも多く当然の質問内容ですな。
別に協会の組合員でなければ質問が出来ない訳ではありません。何か不明な点があれば連絡することをお勧めします。
親切に担当者の方がお話を聞いてくれます。
相談の詳細な内容までは公表されていませんが、満足度を得られていない管理組合は5%程度はいることはわかました。
管理会社の実態と併せて考えると委託契約を国土交通省がいくら整備しても実務が伴わない会社があることはこれではっきりしました。
もちろん、管理業務主任者の負担が大きいことだけが、これらの結果を起こす原因だとは思っていません。
しかし、ひとつの要因になっている可能性はあります。
なぜなら、管理組合が不信感を感じる場所は、共用部の管理状況の乱れ、理事会等の機能不全にあることは確かで、その接点は管理業務主任者、あるいは管理員(清掃員)に限られるからです。
フロントの交代
どんな業種の会社でも配置転換は発生します。管理会社も同様で一定期間(3~5年が多い気がします)で配置転換をする会社もあります。長期の担当は、理事等との信頼関係が出来やすいメリットもありますが、両者の関係が不明瞭(なあなあの関係)になり特に大きな金額を扱う組合では不正につながることもあり、理事長とは一定の緊張感を持った関係が重要になります。その観点からも一定期間での配置変えは必要です。
7、結局はフロント、管理員の資質
いろいろとお話ししましたが、もうひとつ重要なポイントはサポートサイクルです。
サポートサイクルはマンション内で発生する管理委託契約の基幹業務以外の業務のひとつです。
具体的には共用部分の設備や施設の故障・修繕、あるいはマンション内のトラブル、管理費等の見直しを含む値上げなどがあります。
この業務の特徴は、担当者、管理員のスキルに大きく依存していることです。
実務サイクルの様に定まった成果物がないため管理会社の対応が理事会、組合員の満足度によって左右されます。
一般的に基幹業務のような実務サイクルは明確な成果物があるため、管理会社で優越の差が出にくく、委託費の高低差が評価とされるケースが多くなりますが、サポートサイクルは顧客満足度が評価になるため価格だけではない要素を多く含む業務になります。
満足度の高いマンション管理に関するアンケートでは次のような項目が上位に挙げられています。
- 管理員のコミュニケーション能力、業務遂行能力が高い
- 理事会を導く経験、知識、資料力がある管理業務主任者を配置している
- 区分所有者等の積極的な管理業務への参加を促す情報提供、広報活動を積極的におこなっている
- 建築、設備、施設、会計の専門家が管理業務主任者、管理員をサポートできる体制が確立されている
- 基幹業務を中心とした業務は指針に従い管理されている
フロント担当者、管理員の能力が示されており、さらにそれをバックアップする会社の体制も影響することを示す結果でした。
このようなことからの皆さんの担当者のスキルのは皆さんの満足度に大きく影響していて、担当者の業務の忙しさも含めて皆さんにとって重要な要素のひとつであることを覚えておきましょう。

担当者が頻繁に変わる管理会社とは管理業務主任者を増やす過程でよく見る現象です。
比較的運営が安定している管理組合は経験が浅い担当者でもバックアップ体制を整えれば経験を積ませるにはもっとも良い環境になります。
逆に手間がかかる管理組合にはベテランを配置し対応を間違えないようにする傾向があるようですね。
ただし、どの管理会社もフロント担当の支援にはベテランの上司を配置しています。年齢や性別に関わらず案件に窮している場合にはベテランが最終的には対応に当ります。
頻繁に担当者が変わるケースではそれ自体をクレームとして管理会社に伝えることも決してできない訳ではありません。
今回のレポートは、皆さんの管理会社のフロント担当である管理業務主任者についてお話ししました。
如何だったでしょうか。
年齢や性別に関わらず管理会社のバックアップを含めて管理業務主任者のスキルが重要であり、その担当者は複数のマンション管理組合を掛け持ちして担当していること、その日常業務は、管理委託契約の基幹業務中心であり、それ以外に理事会や総会など忙しいことが少しでも理解して頂ければ幸いですが、決してそこに同情する必要はなく、皆さんは正当な要求が出来る契約者であることも忘れないでください。