国土交通省が平成30年に「平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」を公開していますが、その中には外部役員の選任意向を調査した結果が示されています。(表1参照)
現在検討している組合は0.9%と少ない結果でしたが、将来的には状況によっては検討すると回答した組合は25%を超えています。
また、検討する理由についても調査結果を掲載しています。(グラフ1参照)
回答割合 | |
検討している | 0.9% |
将来的に必要ならば検討したい | 27.5% |
必要が無いので検討しない | 44.2% |
わからない | 24.8% |
無回答 | 2.7% |
(国土交通省平成30年マンション調査より)N=928

結果より役員のなり手不足、区分所有者の高齢化を理由に挙げた管理組合が多いことがわかります。一方、マンション管理のノウハウ不足、大規模修繕の実施、滞納者への法的措置と言う管理上に必要で明確な理由があって専門家を役員に選任することもわかります。
経験上ですが、明確な理由がある場合は、役員に選任するケースは稀でほとんどは短期(問題が解決するまでの期間)で委任契約やコンサルティング契約により組合運営に係る方法を選択しています。
では、外部役員(単発の契約を含む)として選任をお願いする人とはどんな人なのでしょうか。
1、外部専門家とは
これについても国土交通省の調査結果から読み取ることができます。
選任理由 | 選任理由の割合 | 選任した資格者 |
大規模修繕の実施 | 43.3% | 建築士 マンション管理士 |
知識ノウハウの不足 | 33.9% | マンション管理士 管理業主任者 |
管理費の滞納等への法的措置 | 32.0% | 弁護士 |
(国土交通省平成30年マンション調査より再編集)
組合が解決したい問題によって専門家が異なることは明白で、大規模修繕工事ではどうしても建築知識が必要になります。そのため建築士に顧問契約等で大規模修繕前後のアドバイザーや顧問契約を依頼することになります。
同様に管理費の滞納等への法的措置も専門家である弁護士に訴訟等を依頼します。
マンション管理の知識・ノウハウ不足も専門家であるマンション管理士、あるいは管理業務主任者の資格を持つ専門家に依頼すると言うことです。
専門家の活用方法も役員として理事会の一員として迎えることも可能ですが、理事会が設置することが出来る外部専門委員会等を設置してそのメンバーに迎えることもできます。
これに対して役員のなり手不足や区分所有者の高齢化は、組合の運営自体に影響するため、活用方法も管理組合の役員に限定されることになります。
では、役員として管理組合に迎える場合にはどのような方法があるかを説明します。
2、国土交通省の指針
国土交通省はマンション管理について、法律として区分所有法とマンション管理適正化法を公布し、標準管理規約を指針として公開していますが、特に標準管理規約では役員不足に対して外部専門家を活用する方法として3つの方法を指針内のコメントで説明を行っています。

現行標準管理規約によるマンション管理組合の組織図を示しましたが、区分所有法で示されている管理者が標準管理規約では理事長と同じであることを示しています。(左図は標準管理規約、別添1より出典)
管理業務の執行機関である理事長、理事からなる理事会があり、管理組合は意思決定機関である総会から構成されていることがわかります。
理事、監事は総会で選任され、理事の互選により理事長が決定されます。
役員は区分所有者(在住の有無に関わらず)から選ばれることが原則になります。
組織図で示す事業者は外部の会社等を示しています。
管理会社を始めとして外部に仕事を依頼する場合のすべての相手が事業者になります。
これが一般的に標準管理規約に沿った運営を行うマンション管理組合になります。
では、外部専門家はどのような役職に就くことができるのでしょうか。
2-1、理事・監事外部専門家型

塗りつぶしで示した副理事長、理事又は監事として迎える方法です。
従来通りの組織体制に専門家を一員として迎えますが、理事長は区分所有者の代表者を配置します。
国土交通省の指針では、運営面の不全の改善(マンション管理士等の専門家)を目的とする場合や計画的な大規模修繕等の適切な実施、耐震改修・建替え等の耐震対策等(建築士等の専門家)の専門的知見が必要な場合を想定しているとされます。
いずれの場合も立場としてはアドバイザーとして機能します。
理事会の原則も多数決による意思決定になるため、多数を占める区分所有者がアドバイザーの意見や知見を参考に意思決定を行い、最終的に総会で組合員の議決を得た上で業務を遂行します。ただし理事である場合、理事会の議決にはアドバイザーも参加します。
一定の成果を達成した後は、理事を退きその後、必要であれば顧問契約などで理事会のメンバーから外れた立場でアドバイザーに就任するケースが想定されます。
2-2、理事長外部専門家型

外部専門家を理事長として迎えるケースです。
理事長は対外的な契約においてはマンション管理組合の代表者になります。
理事会でも司会を担当し、理事会運営の中心者です。
当然、会計にも大きく関わることから、監事を含めた他の理事の監視が重要になります。
特に銀行印を預かり、出金指示を発行する立場になるため最悪のケースを想定した十分な準備を想定する必要があります。
そのため、標準管理規約でも理事長に外部専門家が就任する場合の体制について多くの項目を求めています。