住宅ローンの繰上げ返済のリスクって何?

住宅ローンの繰上げ返済の説明には必ずリスクに関する項目がありますが、本当にリスクはあるのでしょうか。

各家庭には預貯金、有価証券等の資産と住宅ローン、自動車ローン、クレジット等の負債があるはずです。

ファイナンシャルプランナーが良く用いるバランスシートですが、家計の純資産を把握する時に便利です。

純資産はすべての資産、負債をその時点ですべて清算した時に手元に残るお金と考えると判るでしょう。

住宅ローンの繰上げ返済は、資産の預貯金の一部を住宅ローンに充当することで、将来に支払う利息を軽減することが目的になります。

繰上げ返済に使用する資金は多くの場合は預貯金から支出されます。

一般的に預貯金は目的があり、その金額を貯めるために積立てる、あるいは貯える資金です。

これを預貯金の目的別管理と言い、多くの方は口座を変えるなどして管理をされているはずです。

無意識でもそれぞれに目的ごとに目標額などを設定されているのではないかと思います。

また、中には預貯金ではなく投資資産(保険商品を含む)に転換されている方もいますが、投資も最終的には目的別資金に振分けされ支出されます。

予備費とは何?

予備費は突発的な事態が起きた時に解決(目途が立つまで)に資金的ショートを起こさないための資金のことです。

例えば世帯主の死亡が代表的ですが、生命保険への加入が一般的でしょう。

残された遺族が生活基盤を維持するため、子供たちへの教育資金を想定して保険金を決定します。

住宅ローンでは団体生命保険は有名ですが、ローン商品によっては必須としていない商品もあり、その場合は住宅購入者が自ら加入する必要があります。

これ以外に最近ではコロナ禍による収入の減少、物価高騰による家計のひっ迫などにも予備費が重要な役目を果たします。

予備費はいざと言う時の資金であり、簡単にゼロにすることが出来る資金ではありません。

 

老後資金と教育資金は同時期に貯める方もいますが、多くの方は教育資金の必要がなくなり、老後資金の準備をされるのではないでしょうか。

老後資金を準備する時には予備費は、概ねその役目を終え、老後資金に振替えられます。

予備費は使わないことを前提するお金で保険(終身、養老)のような資金になります。

予備費の作り方

予備費はそれぞれに目的をもって貯められる各資金の振分けや残金を原資にするケースが多い資金です。

例えば住宅購入資金です。

貯めた住宅購入資金をすべて頭金にする方もいますが、多くの方は一定額を手元に残します。

この資金を購入後の家の家具や電気製品の購入資金として考える方もいますが、あまりお勧めはしません。

住宅ローンの月の返済額の最低でも3カ月、予備費としては6カ月~12カ月は手元に残すべきです。

こうすることでリストラ、賞与のカットなど家計をひっ迫する状況になった場合にも対策をとる期間を持つことができます。

そのため、予備費はすぐに現金化できる状態で保管する必要があります。

 

教育資金では私立を前提に積立てたいた場合、公立進学になれば余る資金があります。

このような場合、子供が留学を希望したりする場面に対応できるように予備費として貯蓄することになります。

子供が独立した時は教育資金は役目を終えますが、残金は子供の結婚、出産等のお祝い金として予備費に保管します。

 

このように予備費は起きるか起きないかわからないが、万が一起きた場合に家計への影響を最低限にするための資金です。

そのため、予備費を住宅ローンの繰上げ返済の資金にすることは大きなリスクがあります。

余剰金とは何?

企業では繰越金と言い、翌期に持ち越すお金です。

家計でも毎月の収支が終わり、今月の残金を翌月の生活費に加えて考えることはよくあることです。

毎月の家計の締め(給与の入金日)毎に発生する余ったお金が余剰金です。

企業では内部留保金とも言い、会社が多額な余剰金を持つことが多くなり、野党などはこれに課税を行い実質的な増税をすべきと主張しているので皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。

家計では主婦のへそくりの財源はこのお金になります。

余剰金の特徴は支出先が明確でないことです。

目的別管理とは全く異なった性格のお金と言えます。

そのため、家族旅行等の家族のイベントに使われることも多くあります。

また、取崩しに罪悪感が伴いにくい資金でもあります。

 

余剰金の用途して多いのが投資に利用することです。

近年の預貯金の金利を考えると銀行に預けるよりは国債、地方債、投資信託を始めとする投資商品に替え、資産を増やそうとする方がたくさんいます。

余剰金を原資として資産増額を狙う方がです。

この資金は目減りしてもすぐに家計を圧迫することはありません。

その意味では例えゼロになっても後悔はしますが、生活自体に影響を与えないお金と言えます。

 

余剰金は家計の余り金です。

このお金が住宅ローンの繰上げ返済の資金になります。

繰上げ返済のリスクとは

繰上げ返済にリスクがあるとすれば余剰金以外の資金を用いて繰上げ返済をする場合です。

余剰金以外の資金を繰上げ返済に充てると家計のバランスを崩すリスクが大きくアップします。

教育資金や老後資金の様に明確な目的がある資金を取崩すことには「不安と罪悪感」が伴うため躊躇しますが、予備費は万が一の時の資金です。

「万が一の事態なんて起きる訳がない」「きっと大丈夫」「また貯めれば大丈夫」と言った自分を肯定できる理由を見つけやすく「何とかなる」の気持ちで繰上げ返済に充当する方を多く見かけます。

住宅ローンは非常に長い期間の返済が必要な債務です。

しばらくは大丈夫かもしれませんが、コロナ禍、物価高騰による賃金の目減りなどの先の読めない事態に襲われた時に対応することが出来ず、自宅を手放す方、ローンの組換えを余儀なくされる方・・・たくさん見てきました。

今後も世の中はどんな事態になるかはわかりません。

だからこそ、予備費は必要な資金であり、決して無くすべき資金ではありません。

金融機関のサイトで繰上げ返済の紹介で必ず書かれている「無理な返済はリスクがあります。」とは予備費を取崩してまで繰上げ返済はすべきではないと言うことを示唆しています。

繰上げ返済は儲けを確定する投資

繰上げ返済より投資を推奨する方もたくさんいます。

「支払う利息ぐらい投資で稼げる!!」

確かに最近の投資商品を見ると利回り3%台はざらにあります。

不動産投資に至っては7%を打ち出している投資商品も多数あります。

一方、繰上げ返済は利率に計算するとそれ程高いわけではありません。

1%の利回り程度かもしれません。(繰上げ額によって変わります)

それでも繰上げ返済にはリスクはありません。

繰上げ返済を実施した時点で将来に支払う利息を減額できることが決定します。

投信に伴うリスクがないことが繰上げ返済です。

リスクの考え方はひとそれぞれです。

繰上げ返済がベストだは言い切れません。

最近の円ドル差益の儲けや金の高騰で住宅ローンそのものを一括返済した人も知っています。

それでもそれは、結果が良かっただけで、返済するまでには大きな投資リスクがあったことは事実です。

皆さんには、予備費の大切さと余剰金の利用方法を知って頂き、賢く住宅ローンの返済を行って頂きたいと思います。

まとめ

住宅ローンの繰上げ返済のリスクについてお話ししました。

目的を持った預貯金を取崩して繰上げ返済に充当することのリスクをイメージして頂ければ幸いです。

特に予備費は目的が万が一の事態となるため、一見貯蓄する意味と目的を忘れがちになり、繰上げ返済の効果(支払う利息の軽減、返済期間の短縮、毎月の支払額の減額)の魅力に負け、取崩してしまうケースがあります。

これにより家計のバランスを乱すリスクは大きくなり、社会情勢や景気の動向によってはローン返済を維持できなくなる事態がここ数年増加しています。

繰上げ返済自体はリスクはありません。

確実に支払う利息を減額する効果があります。

しかし、繰上げ返済に使用するお金を間違えると大きなリスクを抱え込むことになることを理解してください。

予備費はNG、繰上げ返済に使用するお金は余剰金です。

これをしっかり守れば、繰上げ返済は将来に支払う利息を減らす有効な方法になります。


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