住宅ローン繰上げ返済(期間短縮型)を理解する

住宅ローンの繰上げ返済をテーマに解説しているサイトは山のようにあります。
概ね共通していることは、時間短縮型と返済額軽減型の説明が主流です。
FJマンション管理士事務所では、ちょっと違った内容で説明をします。
例を用いて繰上げ返済を考えてみましょう。(すべてこの条件で説明をします。)
例:ローン条件
借入金 3,000万円
金利タイプ 全期間固定金利
利率 1.42%(年利)
借入期間 35年
元利均等方式
ボーナス併用なし
10年後200万円返済をした場合(期間短縮型)
期間短縮型とは、繰上げ返済後も毎月の返済額を変えずに、払い続けます。
結果として支払期間が短くなり、支払利息総額を減額する方法です。
上記条件でローンを組んだ場合の返済計画を「当初返済計画」とします。
返済開始10年後に200万円を繰上げ返済した時の借入残高の推移を比較したグラフです。

繰上げ返済を10年目の120回時に行ったケースです。
大きく借入残高が減額されていることがわかります。
また、支払回数が当初の420回払いから35回減少して385回払いになったことが確認できます。
その結果、支払利息総額を807,981円減額することができます。
繰上げ返済の期間短縮型とは支払期間を短くすることによって総返済額を減額する方法のことです。
繰上げ返済の時期と効果
繰上げ返済は家計に余裕が出来た時に行うことが一般的です。
では、繰上げ返済を行う時期とその効果について考えてみましょう。
次の表は繰上げ返済金200万円を5年、10年・・・20年で行った時の総支払利息額を計算して結果です。
繰上げ返済時期 (返済額200万円) | 総支払利息(円) | 差額(円) | 支払利息減少率 (%) | 繰上げ効果*1 (%) | 返済回数 | 短縮効果 |
なし | 8,332,636 | ー | ー | ー | 420 | ー |
5年 | 7,294,725 | 1,037,911 | 12.5 | 51.9 | 387 | 2年9カ月 |
10年 | 7,504,463 | 828,173 | 9.9 | 41.4 | 390 | 2年6ヵ月 |
15年 | 7,700,006 | 632,630 | 7.6 | 31.6 | 392 | 2年4カ月 |
20年 | 7,882,246 | 450,390 | 5.4 | 22.5 | 394 | 2年2カ月 |
*1繰上げ効果とは一時返済額200万円に対する減少した支払利息の割合
グラフに示すと次のようになります。

結果は至極当たり前の結果ですが、これを意識されている方は多くはありません。

繰上げ返済は出来るだけ早い時期に行うほど支払利息を減らす甲があり、返済期間の短縮も大きくなる。
例えば同じ200万円をローン開始後5年で行うと200万円の繰上げ返済は総利息支払額を100万円以上減らすことができますが、20年後に行うと44万円程度を減らす効果しかありません。

小まめに繰上げ返済を行う効果
次に繰上げ返済を効果的に利用する方法を確認するために5年毎に50万円を4回繰上げ返済した場合、10年毎に100万円を2回繰上げ返済した場合、10年後に200万円を繰上げ返済した場合、20年後に200万円を繰上げ返済した場合を比較します。

繰上げ返済時期 (返済額200万円) | 総支払利息(円) | 差額(円) | 支払利息減少率 (%) | 繰上げ効果*1 (%) | 返済回数 | 短縮効果 |
なし | 8,332,636 | ー | ー | ー | 420 | ー |
5年毎50万円返済 | 7,595,041 | 737,595 | 8.9 | 36.9 | 391 | 2年5ヵ月 |
10年毎100万円返済 | 7,693,119 | 639,517 | 7.7 | 32.0 | 392 | 2年4カ月 |
10年後200万円 | 7,504,463 | 828,173 | 9.9 | 41.4 | 390 | 2年6ヵ月 |
20年後200万円 | 7,882,246 | 450,390 | 5.4 | 22.5 | 394 | 2年2カ月 |
*1繰上げ効果とは一時返済額200万円に対する減少した支払利息の割合
もっとも効果的な繰上げ返済は10年後に200万円を返済した場合ですが、同じ200万円でも繰上げ返済をする時期と金額によって返済する利息総額に大きな違いがあることがわかります。
借入金の返済曲線を比較します。

10年後に100万円、その後20年後に100万円を繰上げ返済した方が20年後に200万円を繰上げ返済した時よりも繰上げ返済の効果が大きいことが判ります。
例えば「200万円貯まったら返済しよう!!」と考えている方がいればそれは損をしていることになります。
手元にある一定額を出来るだけ早く繰上げ返済すること支払う利息額を少なくする効果が生まれます。
これは保管しているお金が金利で増加する額を大きく上回ることがことがわかります。
では、次に50万円を5年毎に4回に分割して繰上げ返済した場合を考えてみましょう。

このケースでも50万円を早めに返す効果は大きく、20年で10万円程度の利息の支払いを減らすことができます。
このように繰上げ返済の効果を大きくするためには、出来るだけ早い時期に小まめに繰上げ返済を行うことが重要であることがわかります。

100万円を25年後に140万円にする
繰上げ返済の効果は利息の支払額を少なくすることです。
現在、住宅ローン返済を開始して10年後、家計の余剰金(目的、使い道がないお金)が100万円あったとします。
これを繰上げ返済した場合と複利の投資商品に投資した場合を考えてみましょう。
繰上げ返済時期 | 総支払利息(円) | 差額(円) | 支払利息減少率 (%) | 繰上げ効果*1 (%) | 返済回数 | 短縮効果 |
なし | 8,332,636 | ー | ー | ー | 420 | ー |
10年後100万円返済 | 7,905,241 | 427,395 | 5.1 | 42.7 | 405 | 1年3ヵ月 |
運用 | 貯金額 | 預入期間 | 運用利率(%) | 元金合計 | 利益 | |
100万円を年利1.45%複利運用 | 1,000,000 | 25年 | 1.45 | 1,433,000 | 433,000 |
運用については利益に課税される税金は考慮していません。
繰上げ返済をした時の支払う利息は427,395円減額になります。
一方、ローンが完済する25年間で減額分の利益を出せれば、繰上げ返済と同等の効果はあると考えられます。
複利1.45%、積立年数25年の商品に100万円を投資た場合、ほぼ同等の額の利益を得ることが出来ます。

複利1.45%は現在の金融商品ではそれほど高いハードルではありません。
現在、世の中は投資ブームです。
ネットで複利商品を検索すれば目標運用利率5%、7%と言う商品はすぐに見つかります。
ただし、投資は将来に何ら保証のない商品です。
最悪、元本割れの危険性もあります。
これに対して繰上げ返済は返済を行った時点で確定します。
どちらを選択されるかは皆さんのリスクに対する考え方です。
投資が成功すれば、繰上げ返済以上の効果を得る方もいるでしょう。
逆に失敗して手持ち資金が目減りする方もいるでしょう。
ただ、無理のない繰上げ返済は確実に将来の利息支払額を減額できる方法であることは確かです。
一つの考え方として余剰金を繰上げ返済と投資に分散させることも考えられます。

繰上げ返済の方法については以下で確認してください。
繰上げ返済の回数制限
どの銀行も繰上げ返済に回数は設定を設けていません。
ローン返済中であれば何度でも繰上げ返済が可能です。
繰上げ返済の最低返済額
金融機関によって異なりますが、多くの金融機関は1万円としています。
中には1円から可能と言う金融機関もあります。
ただし、フラット35については金融機関の窓口で手続きする場合に100万円以上の返済が必要になります。
繰上げ返済の手数料
繰上げ返済は金融機関によっては手数料が必要になります。
ただし、現在の銀行では窓口で手続きを行うと手数料が発生します。
インターネットでの返済であれば、ほとんどの金融機関は手数料の発生はありません。
年末の繰上げ返済には注意
住宅ローン減税を利用している方は、年末の繰上げ返済は避けるべきかもしれません。
住宅ローン減税の対象評価額は年末のローン残高です。
12月に返済するとこの額が少なります。
焦って12月に繰上げ返済をせずに翌年の1月に返済手続きを行う方が減額効果がアップします。
まとめ
住宅ローンの繰上げ返済を説明しました。
繰上げ返済の効果は出来るだけ早い時期始めること、金額は少なくても一定額を貯めるよりも効果を得られやすくなります。
繰上げ返済に返済額制限(1万円以上)や回数制限を気にする必要はありません。
また、インターネットでの返済を利用すれば、手数料も無料です。
金額が少なくても回数を重ねると支払利息を大きく減額することができます。
ただし、繰上げ返済の絶対条件は家計の負担を大きくしないことです。
あくまでも返済するお金は余剰金(用途が定かでない現状余っているお金)です。
定期預金に置いておくだけなら繰上げ返済をお勧めします。
また、繰上げ返済の効果は投資でも同様の利益を出すこともできますが、将来へのリスクはまったく違います。
リスクの考え方はひとそれぞれです。
ご夫婦でリスクをよく理解した上で、選択してください。
次回は繰上げ返済(返済額減額型)を説明します。
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