住宅ローンの金利って誰が決めるの?

今回のテーマは住宅ローンの金利がどのように決められているかの話です。

前回、住宅ローン金利の3タイプの説明しました。

全期間固定金利タイプ、固定金利選択タイプ、変動金利タイプは理解できていますか?

各金融機関が発売している住宅ローン商品には、金利がそれぞれに設定されています。

「これってどうやって決められているの?」と思ったことはありませんか?

「そもそも、金利って誰が決めてるの?」

「なぜ、固定金利もその年代で変わるの?」

その疑問の答えを知ることができれば、住宅購入のタイミング、効果的な借り換え、変動金利の上昇への備えなどに賢く対応することが出来るはずです。

金利の動向は、住宅購入前の方、買った後の方では利用方法が異なります。

住宅購入前であれば購入のタイミングを知るひとつの要素になります。

金利が上昇傾向であれば、早めに住宅購入の決断を決めるひとつの理由になります。

逆に金利が下降傾向であれば、もう少し自己資金の増加期間とする理由になります。

 

すでに住宅を購入している方にとっては、金利の下降傾向は効果的な借り換え時期を検討すべきタイミングになります。

金利が上昇傾向であれば、変動金利や固定金利選択利用者にとっては返済額の増加への対策を行うべきタイミングになります。

 

住宅ローンの金利の決め方はかなり難しいことを理解する必要があります。

出来るだけ分かり易く説明します。

 

固定金利の決め方

まずは固定金利の決め方です。

多少なりとも住宅ローンを勉強した方は固定金利が新規10年国債の動向とリンクしていることは聞いたことがあると思います。

新規10年国債と固定金利がリンクしていると言われますが、固定金利の代表格であるフラット35の金利をこれと比較するとリックしていることをはっきりと確認することができます。

新生銀行HPより
CFPファイナンシャルプランナー金子千春氏作成の記事はこちら

非常によくわかるグラフです。

国債は国が発行する債券ですが、国債は発行市場と流通市場があります。

住宅ローンとリンクする金利は流通市場です。

では、国債の金利は誰が決めるのでしょうか。

国債は国が発行する債券です。国は毎月、金利を定めて一般投資家に発売しています。

新発10年国債の金利とは何か?
国債の2つの市場と日銀の立ち位置を理解する

流通市場では各金融機関や投資家が10年先の利回りを予想して売買を行います。

そのため、国債の金利は市場の未来への予測により決定されます。

インフレ、デフレ、景気の先行きなど様々な要因を考慮して投資家が判断します。

財務省HPより

個人向け国債の金利に下限・上限はありますか。 基準金利が低くなると、適用利率(固定債は利率)がゼロパーセントやマイナスになるなど、著しく低くなるケースが出てきます。 そこで、個人の方に、安心してご購入していただくために、最低でも0.05%(年率)の金利は保証することとしています。

銀行の定期預金の金利は10年定期で0.01%です。同じ10年お金を預けるなら国債の方が有利と言えますが、現金の流動性(自由に現金化する)と言う点では定期預金と言うことになります。

2022年になり新発10年国債利回りは上昇傾向にあることがわかりますが、0.25%付近の水準で留まっていることがわかります。

本来、国債の金利は市場に任せられているはずです。

なぜ、このような現象が起きたのでしょうか。

実は、0.25%は日銀が市場介入により抑え込んでいることによって発生して現象です。

日銀は国から直接国債を購入することはできませんが、市場で売買は自由にできます。

そこで、10年国債金利の上昇傾向が顕著になった段階で国債を無制限に一定期間買い入れる「連続指し値オペレーション」を初めて実施しました。(2022年6月)

投資家のみなさんの売買動向に関わらず、0.25以上の金利にならないように国債を日銀が買うことにしたわけです。

このような長期金利の上昇抑制へ強い意志を示す異例の措置で国債の長期金利は現在まで0.25%を超えない範囲で推移しています。

と言うことは、住宅ローンの固定金利が新発10年国債とリンクした挙動を示すことも固定金利は日銀の介入によって決定され、現在は低い水準で推移していることになります。

本来、国債の金利は投資家の動向で決定されます。

しかし、現在はその状況でにないと言えるでしょう。

詳しく知りたい方は、こちらの記事がお勧めです。PR TIMES

と言う訳で固定金利タイプを利用している方、これから利用を考えている方は次のことを頭に入れておく必要があります。

変動金利の決め方

変動金利の決め方は公開されています。

短期プライムレート+1.0%(大手金融機関の住宅ローンの変動金利)

この決ま方を理解するためには「政策金利」を理解する必要があります。

政策金利とはなにか?

政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、日本銀行が設定する短期金利(誘導目標金利)のことです。

何?って感じですが、皆さんも日銀がインフレに誘導して物価上昇率2%を目指すと言っていることは聞いたことがあると思います。

まんが

これを実現するために行う政策のひとつが政策金利になります。

一般的に政策金利は、日銀が金融機関に向けて融資を行う際の金利を指します。

日本銀行が物価や通貨の安定を目的として行う政策で具体的には「無担保コール翌日物」の「誘導目標」を政策金利としています。

「無担保コール翌日物」とは「明日返すから貸して」と言うあれです。

皆さんも経験ありますよね。

あれを銀行同士で行う時に担保を取らずに貸す金利のことです。

銀行間の信頼があればこそ、成立する取引ですが銀行は企業にお金を貸す仕事です。

そこで信用がある会社にお金を貸す時にもこの金利を参考します。(無担保コール翌日物と連動している言われる)

この時に企業に貸す金利が「短期プライムレート」と言われます。

当然ですが貸す相手の企業には条件があり、業績が良い、財務状況が良いなど、貸し出すうえで問題がない企業に貸し出す金利です。

短期プライムレートと日銀の政策金利のイメージ

と言うことは、短期プライムレートは日銀が示す政策金利よって決められていることになります。

日銀の政策は景気の動向によって金利を誘導します。

では、実際の短期プライムレート(略名 短プラ)の動きを確認してみましょう。

日銀ホームページより作成

2009年から現在まで最低値1.475~最高値1.725で推移していることがわかります。

注目はここ10年以上、短プラに変動がないことです。

では、住宅ローンの金利の動向を住宅金融支援機構が発表しているグラフで確認しましょう。

住宅金融支援機構HP出典

赤のラインに注目ですが、2009年以降、一定の2.475%であることが確認できます。

短プラ(最低値最適値+1%=1.475+1.0=2.475%

短プラの挙動と一致していることがわかります。

現在の政策金利は「ゼロ金利政策」「マイナス金利政策」に代表されるように2016年1月19日以来-0.1%です。

と言うことは、変動金利タイプを利用してローンを組んでいる方、これから変動金利タイプでローンを組もうとしてい方は、次の点に注目することになります。

固定金利選択の決め方

えっ、固定金利と違うの?と思われるのも同然ですが、新発10年国債とは異なります。

スワップと言う新しい言葉を理解する必要があります。

スワップは「交換、入れ替える」と言う意味ですが、円と円を入れ替えることを円円スワップ・・・嘘ではありません。

スワップには為替スワップ、金利スワップなどいろいろな取引があります。

固定金利選択の金利は円金利スワップレートを基準としています。

円金利スワップは円建ての借入金同士の金利の交換する取引ですが、具体的に説明します。

ある会社Aは固定金利でお金を貸しましたが、将来的に変動金利が利下げされ変動金利優位になる見込みと判断しました。

変動金利には将来的に上昇するリスクはあるが、目先の支払額を減らすには変動金利にしたいと考えます。

イメージとしては

ある会社Bは変動金利でお金を借りましたが、将来的に変動金利が上昇して固定金利が優位になる見通しと判断しました。

金利上昇に対するリスク回避をしたいと考えます。

イメージとしては

金利スワップは、取引所を通さずに当事者間で直接取引をする店頭取引(相対取引)によって行います。

交換する期間や条件などは当事者間であらかじめ取り決めることになります。

イメージ図は30年と長い期間としましたが、実際の取引では交換する期間を両者で決めることになります。

スワップレートは固定金利が基準になり、レートは同等の価値と銀行が決めた掛け率のこと
この図では店頭取引を銀行が行う。

交換時のレートは将来の変動金利と固定金利の動向を読み、AとBが相談して決めます。

対象となる商品はたくさんあり、住宅ローンも商品のひとつですが、個人間、企業間で行われます。

金利スワップのイメージは理解できましたか?

 

それでこれがなぜ固定金利選択の金利とリンクするのか?ですよね。

一定期間の返済を固定金利で返済しますが、その期間を過ぎると金利を選択することができる方法が固定金利選択タイプです。

次の返済利息を固定金利タイプ、変動金利タイプを選択するのは契約者です。

次に選択する固定金利と変動金利の選択は、言い換えるとリスクと金利(返済額)の選択とも言えます。

金利スワップも固定金利と変動金利の交換はリスクと金利(返済額)の交換です。

固定金利を基準として変動金利の挙動を考え点では一致しています。

そのため、金利スワップレートの動きにリンクすることになります。

 

ただし、金利スワップレートを一般の方が調べることは難しく、新発10年国債や短期プライムレートのように行きません。

しかし、金利スワップレートは、「今後、長期金利が上昇する」と見込まれる期待が高まれば、スワップレートは上昇します。

逆に「今後、長期金利は下落する」という予想となればスワップレートは下がる傾向があります。

そこで、確認すべきは長期金金利の動きと言うことになります。

長期金利は長期プライムレートで確認できます。

 現在の長期プライムレートはみずほ銀行が自主的に決定・公表した金利のことで、日銀ホームページにも掲載されています。

なぜ?みずほ銀行と思われる方が多いと思いますが、以前は長期信用銀行(改称、合併等でみずほ銀行が継承)が発行する「5年物金融債の利率+0.5%」が基準でしたが合併等でみずほ銀行が継承したため現在はみずほ銀行がその役目を担っていると言う訳です。

以上のことから、固定金利選択タイプで住宅ローンを契約されている方は、日銀ホームページの長期プライムレートの推移を確認することで固定期間後の金利の選択の参考にすることができます。

金融の世界の「短期」「長期」は一般と基準が違います。

金融の「短期」は1年以内に取引が完結する貸し借りのことです。1年を超える場合は「長期」になります。

最後に各金利タイプの契約者が気を付けるべき指標をまとめました。

金利タイプ連動する指標決定要因
固定金利新発10年国債金利市場の投資家の未来展望(期待)
変動金利短期プライムレート日銀の政策金利
固定金利選択金利スワップレート長期プライムレート(みずほ銀行)
各金利タイプ別連動指標

参考にしてください。

最後に金融機関が皆さんに提供している商品の金利設定時に考慮している項目について面白い調査結果があります。

2021年度 住宅ローン貸出動向調査(住宅金融支援機構出典)

各金融機関も今回説明した連動金利やレートを金利設定時に考慮していることがわかりますが、多くの金融機関がもっとも考慮する項目として同業他社の金利動向と言う面白い結果です。


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