電気料金がマンション管理収支計画に影響した時

今年になり電気代の高騰により収支計画に大きな差異が発生しているマンション管理組合があります。

特に共用部分に多額な電気やガスを使用する施設を保有するマンションでは大きな問題になっています。

最近、この問題の相談が多くなりました。

マンションによって会計期初が異なるため、すでに高値の予想して収支計画(予算)を立てたマンション管理組合は問題を回避できる可能性がありますが、これから会計年度末(期末)を迎える管理組合では会計処理に工夫をする必要があります。

予備費や前期までの管理費の余剰金が少ない、あるいは余裕がない管理組合では今後大きな問題になります。

今回は予算に対して電気代が大きく増えた場合の会計処理の注意点を説明します。

一般的な収支予算計画書の期中報告書(2022/6)の一部を抜粋します。(必要ない数値は記載しません)

*20~30戸の小規模マンションの例を用います。

〇〇マンション管理組合 収支予算計画書 2022年2月~(2022/6月)

科目前期実績予算案〇〇実績消費率(%)備考
管理費
専有使用部分使用料
駐車場使用料
駐輪場使用料
受取利息
雑収入
収入の部
科目前期実績予算案~6月実績消費率(%)備考
管理委託料
エレベータ保守料
排水管清掃費
定期清掃費
連結送水管点検費
法定建築設備点検費
法定建築物
定期調査報告書費
外注費合計
共用部電気料466,524500,000214,70943.1
共用部水道料26,76827,00011,15341.3
損害保険料120,588120,58850,24541.7
共用部分費合計
町会費
管理運営費
防犯
カメラレンタル料
備品購入費
消耗品購入費
銀行手数料
雑費
管理諸費計
収支合計
支出の部

*通信費は管理会社負担

 前期実績予算案~6月実績消費率(%)備考
当期余剰金124,45018,520
前期繰越金-50,48873,962
余剰金合計73,96292,482
繰越

多分、科目名称や表の構成に違いがあると思いますが、内容は同じではないかと思います。

電気料金の値上げは、期中報告書(月次報告書)に明確に現れてきます。

科目前期実績予算案~6月実績消費率(%)備考
共用部電気料466,524500,000215,70943.1
支出の部

一般的にマンション共用部分の電気料は夏場や安くなり、冬場は高くなる傾向にあります。(点灯時間が夏場の方が短いため)

この組合では月の使用料が38,800円程度で実績から今期の電気料の予算額を500,000万円と計上しています。

現在までの実績では消費率が42.9%でそれ程大きな離反は確認できていませんが、6月実績が年度末まで継続したと推測して算出すると次のようになります。

現在の電気代が維持されたと仮定しても2023年1月に予算額を超え赤字が発生することが確認できます。

このような状態になった時に重要になるのが「予備費」の計上と「余剰金」の存在です。

1、当期余剰金をチェックする

元々、当期余剰金は管理費を多めに集めていることで発生するお金です。

当期余剰金が電気代の不足分を超えている場合は、収支予算計画全体で赤字になる可能性は低いことがわかります。

例で示した管理組合は今期の余剰金予定額が18,520円です。

これに対して電気代の赤字予想額は43,302円です。(赤字額は表より)

残念ながら予算案の当期余剰金ではカバーできないことがわかります。

 前期実績予算案~6月実績消費率(%)備考
当期余剰金124,45018,520
前期繰越金-50,48873,962
余剰金合計73,96292,482
繰越

2、予算計画に「予備費ある場合」

予備費がある場合は、これまでの電気代の推移から期末までの赤字額を推定して予備費の使用を検討する必要があります。

今回のような電気代の値上げは緊急事態と言え、理事会の運営努力ではどうすることもできない事案です。

組合員も同意せざる得ないと言えます。

例に示したマンションでは「予備費」を計上していないため突発的な出来事には対応できません。

予備費の計上がないマンション管理組合では、全体の収支計画が赤字になる可能性が高くなります。

その際に余剰金を利用して会計処理することになります。

3、「余剰金」がある場合

余剰金があるマンション管理組合は赤字でも期末会計で赤字分を余剰金を取り崩す方法で処理します。

ただし、電気代の高騰が一過性であれば問題ありませんが、今後の続くようであれば管理費の値上げを検討する必要があるでしょう。

例で示した管理組合の場合は次のような収支報告書になります。

 前々期実績前期実績予算案
当期余剰金124,450-24,782(電気代赤字分)××××××
前期繰越金-50,48873,96249,180
余剰金合計73,96249,180××××××
来期の収支報告書のイメージ

当期余剰金はマイナスになり、前期余剰金を取崩す結果になります。

3、「余剰金」が少ない、あるいはない場合

推定した電気代が前期余剰金を超える場合は、管理組合の資金がショートすることになります。

こうなると他の科目へも影響を与えることになります。

対処方法は管理費の値上げ、あるいは一時金の徴収は必須になりますが、すぐに管理費の値上げや一時金の徴収を総会に上程することは日程的にも難しいと思われます。

そこで、各項目に多少の上乗せをしている「備品購入費」「消耗品購入費」「雑費」でカバーできれば良いですが、今期購入を予定していた備品や消耗品購入を来期以降に持ち越す方法も考えられます。

また、管理会社と契約している定期清掃や植栽工事の時期を遅らせる等の調整も試みてみると良いでしょう。

いずれにしても、最終的には管理費の値上げ、あるいは一時金の徴収で管理費の会計を建てなおす必要があります。

実施の調整と並行して臨時の総会の準備も進める必要があります。

4、決してやってはいけないこと

修繕積立金の取崩しはやるべきではありません。

管理費の不足時の対応は区分所有法、標準管理規約でも管理費の値上げ、一時金の徴収が原則です。

また、管理費への充当を目的とした借入も行うべきではありません。

5、まとめ

電気代の予期せぬ値上げは、理事会の責任と問題視されることはありませんが、マンション管理組合の会計がマイナス収支になることはできるだけ避けたい事態です。

予定していた修繕等を一期遅らせる、支払を遅らせる、待ってもらえることができるのであれば、管理費の値上げ時期を担保して調整すべきです。

帳簿上は、財務が悪い運営記録は残りますが、それも要因が明確である以上受入れるべきでしょう。

電気代の値上げが将来的に継続するか、一過性な事象かは難しい判断で正確に予測することが出来ない以上、リスクを回避するためにも値上げは継続、あるいは今以上の値上げも有り得ると考え管理費の値上げ額を決めるべきでしょう。

電気代は個々の家計も直撃していることなので各組合員も大変だとは思いますが、乗り越えるしかありません。


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