修繕積立金とマンション売買価格の関係(1)

分譲マンションを売りたい人、買いたい人から良く聞かれることに修繕積立金の取扱いがあります。
分譲マンションを購入すると管理組合に入ることになりますが、入会後は毎月、管理費と修繕積立金を支払う義務があることは皆さんもご存じだと思います。
管理費は管理組合の運営費、共用部分の維持管理費に使用されます。
修繕積立金は躯体や共用部分の劣化を修繕する費用として毎月、それぞれの専有部分の床面積の比率によって金額が決められています。
永住する場合、そのお金は自分の住むマンションのために使用されるお金ですから毎月の積立には異存はないはずです。(金額的に不満がある方は多数いると思いますけど。)
しかし、人生何があるかわかりません。
永住するつもりだったけど売る必要に迫られている、思ったより不動産価格が上がったので郊外にもっと広めのマンションを購入することにしたなど様々な理由で売る決意をする方がいます。
その方々が気にすることのひとつに修繕積立金の扱いです。
一度納めた修繕積立金を売却を理由に返還を求めることはできません。
では、この積立金を売買価格に転嫁することはできるのでしょうか。
この点についてお話ししたいと思います。
修繕積立金は概ね13~18年程度で繰り返し実施される大規模修繕工事の原資となります。
そのため、管理組合が保有している修繕積立金は工事の前後で大きく減少します。
逆に言えば、工事予定年度に合わせて必要な金額を積み立てていると考えるべきでしょう。
そのため、総修繕積立金額が工事費に不足する場合、区分所有者はその権利によって一時徴収や借入金により不足分を補填することになります。

では、売却を希望するマンションを例に考えます。
都内築25年、3LDK(40㎡)、30戸のマンション、立地も同じAマンションとBマンションを例にします。
ともに角部屋で日当たりや専有部分床面積も同じです。
修繕積立金の総額以外はすべて同じと考えてください。
Aマンションは次回の修繕工事の計画通り修繕積立が実施されています。
Bマンションは元々修繕積立金が少なく、次回は一時徴収や借入金の必要性が高いマンションです。
では、AとBで売却価格にどの程度の差があるのでしょうか。
売主としてはAマンションの方が収めている積立金額が多いので価格も当然高くなると期待します。
売却希望価格はおそらくAマンションが高くなるでしょう。(希望価格はあくまで希望です。)
AマンションとBマンションの実売価格(実際に売れる金額)はAマンションの方が高値で売却される可能性が高いですが、それ程大きな違いはないと思われます。
その理由のひとつはマンション販売価格の決定方法にあります。
マンション売買は取引事例比較法が基本です。
この方法は、同じ立地で似た不動産価格の売買価格を参考に価格を決定する方法です。
この方法はあくまでも過去の売買取引を参考に価格を導き出すますが、その際に修繕積立金の状況は加味されていない傾向が強いためです。
もちろん実際にはAマンションは将来に向けた修繕工事の金額的なリスクは少なく、Bマンションはリスクが大きいことは確かですが、将来のリスクは買う側にとってはそれ程価格大幅に左右する差には感じないと言うことです。
例えば、ABともに契約書を交わす前に仲介業者の担当者(宅建士)が重要事項説明を行い、その説明の中には管理組合の修繕積立金の額も項目にあり、それぞれに4320万円、1220万円と説明を受けますが、その金額を実感として「多い=安心」「少ない=不安」と判断できるだけの材料を購入する側がっ持っているケースは少なく、またAとBを比較する機会があれば違いを実感できるでしょうが、一般に人にしてみれば「1000万円も積立金があるんだ、安心だ」と思う人がほとんどではないでしょうか。
修繕工事費の総額を把握している購入者は多くはないのではないでしょうか。
国土交通省が240円程度/㎡が安全ですと公表していますが、これから購入するマンションがそれと比較して高い?安い?を判断できるだけの知識を持っている人もそれほど多くはないでしょう。
仲介業者は売れれば手数料が入るため、このマンションは将来、修繕工事の時に一時金を徴収される可能が高いですとはなかなか説明してくれません。
管理組合が多大な借入金があってもそれを説明する義務は宅建業者にはありません。
と言うかそこまでのマンション管理の知識を持ち合わせていないのが現実でしょう。
そのような理由で、Aマンション、Bマンションの売却価格に大きな差は発生しない可能性が高いと言えます。
では、次回は修繕工事時期と売買価格の関係について考えてみます。

次回に続く
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