マンションの台風対策(雨対策・専有部分編)

前回は風対策、雨対策組合編を別々にアップしましたが、今回のテーマは専有部分編です。

専有部分の雨対策は限られているため、風/雨対策を同時にアップします。

管理組合編と重複する部分がありますが、専有部分でも重要な対策です。

防災の教科書に載っている対策とはちょっと違います。

管理員時代に実際体験したことがベースになっています。

絶対に忘れてほしくないこと!

台風対策ですが、災害全般で忘れて欲しくないことがあります。

これだけ頭に入れてくれれば十分です。

命があれば家財はまた一からでも作り上げることはできます。

貴方の、家族の命を守ることを一番に考えてください。

次に怪我をしないこと、災害時の怪我は守る側から、守られる側の立場になります。

あなたが元気に動けるから家族を守る行動ができます。

その時を想像する

マンションは木造一軒家のような作りとは違い躯体強度はあります。

建物のそのものが倒壊する事態は台風や大雨では考える必要はありません。

お住いのハザードマップを確認してください。

マンションの各階の高さ(階高と言います)は二重床、二重天井で2.8~3.0m程度です。

東京23区でも東側に位置する江東区、墨田区、葛飾区は場所によっては3mを超える浸水が予想されている地域もあります。

お住いの地域の地形によっても想定浸水高さは異なります。

自分が住んでいるマンションはどの程度の浸水被害を受ける可能性があるかを知ることで対策も異なります。

特に1階、2階に住んでいる方は浸水による被害を受ける可能性が高いことを認識して対策を検討する必要があります。

その際、家族全員でで確認することが大事です。

浸水予想高さが50㎝未満でもそのことを確認しておくことが大切です。

更に幾つかの想定をしながら家族で話合います。

家族全員が家にいた時の行動

学校や会社にいた時の行動

家から離れた場所にいた時も必ず「帰宅よりも連絡、連絡よりも命の確保」を互いに認識します。

ハザードマップは近隣の道路からの高さで表示されています。

避難場所への移動経路も確認します。

浸水下では普段の道の判断が出来ません。

特に水路に近くは避けて目的地に移動する道順を確認することが重要です。

避難訓練が重要と言われるのは災害が発生した時にパニックにならないために一度仮想経験することです。

これを繰返すことで細かな点も頭と体に沁み込みます。

その前提を知ることが自分、自分の家族が遭遇するかもしれない災害を想像することになります。

 

それでは、マンションに住む方が台風や大雨に晒された時の防災についてです。

自分のマンション建物の特徴を知ること

雨対策で必要になる特徴は次のポイントです。(管理組合の対策と重複する部分があります。)

確認する事項チェックする点浸水時の現象
停電になる可能性電気室、電気設備の高さと推定浸水高さ推定浸水高さが電気室設置高さを超えると停電
断水になる可能性給水ポンプ使用の有無電気室が浸水するとポンプ使用の場合は断水
排水逆流の可能性(1)排水ポンプ使用の有無雑排水、汚水の専有部分(トイレ、風呂など)の逆流
トイレの使用不可
排水逆流の可能性(1)雨水排水管の排出口の高さ雨水排水管の能力低下に伴い上階共用部分の浸水
マンション1Fの浸水の可能性エントランス、1F部分の床の高さ玄関前の道路が冠水するとマンション内が浸水
マンション1F専有部分の浸水の可能性1F専有部分の床の高さ床上浸水は、生活圏・家財損失
ベランダからの浸水の可能性ベランダの形状腰壁に覆われた構造は要注意
マンション住民がチェックすべき浸水対策

停電や断水は本来管理組合が調査した上で居住者に周知すべき事項ですが、組合によっては防災対策を行っていないケースがあり、その場合は各自が確認する必要があります。

電気設備の設置場所と高さ

マンションの台風対策(雨編-2) | FJマンション管理士事務所 (cabcs.website)

管理組合が行うべきことはすでにお話ししました。

管理組合が防災を行わない場合は皆さんが自己責任で行う必要があります。

電気の供給はマンションが一度一括で全体で使用する電気を受電する設備があることが一般的です。(皆さんの専有部分から電柱に繋がっている電線はありませんよね)

この受電設備が浸水すると全館で停電が起こります。

館内の蛍光灯(非常灯を除く)、エレベーターが停止するだけでなく、給排水ポンプを利用しているマンションでは、断水や逆流と言った事態を招くことがあります。

まず、自分住むマンションの電気設備(受電設備)がどこにあるのか?

電気設備の設置高さがハザードマップで示された浸水ラインに達した時、無事稼働できるのかを確認することです。

2F以上に設置されていればほぼ安心できますが、1F、あるいは地下に設置されている場合は停電が起こる可能性があることを頭に入れ、それに備える必要があります。

特に敷地面積が小さな小規模マンションは、設計段階でより効率的な間取りが優先される為、道路と同じレベルに受電装置が設置されていることが多くあります。

また、特に電気設備が地下に設置されているマンションでは、マンション1Fのエントランスが浸水した段階で水が流れ込むことが想定される為、より危機感を持った対策を行う必要があります。

ただし、電気施設が浸水するレベルは個人だけで対策が出来るケースは少なく、個人が出来ることは停電が起きた時に備えることだけになります。

その意味でも電気設備への浸水はマンション全体、管理組合として対策を行う必要があります。

停電で起こる影響

*電気設備が浸水する可能性があるマンションの住民の方は停電の影響を知る必要があります。

電気室はマンションに電気を供給する設備です。

停電が起きれば、共用部分の蛍光灯、エレベーター、自動ドアは停止します。

また、お部屋の電気も止まります。

それだけではありません。

ライフラインである水の供給も止まる可能性があります。

これを確認するためには皆さんのマンションの給水方式を知る必要がありますが、少なくとも4階以上のマンションであればどこかで給水ポンプを使用していると考えるべきです。

高所タンク方式(屋上にタンクがある)であればすぐ断水することはありませんが、屋上に設置されているタンクの水がなくなれば断水します。

現在のマンションでは停電=断水を考える方が良いでしょう。

テレビ報道で災害による断水を経験された方の多くが「水のありがたみを実感した」と言います。

特に飲料水よりももっとも困ることがトイレの使用ができないことです。

最近は防災グッズも普及し簡易トイレも手軽に手に入りますが、準備されている家庭は少ないと思います。

経験に勝る知識はありません。

平時に一度、断水や停電が起きた想定で簡易トイレを経験しておくことも立派な防災です。

意外と役立つ日常用品

ペット用おしっこシート、高齢者用紙おむつ、生理用品は断水時意外に役立ちます。

ビニールに吸水性のあるシート(新聞紙も一緒に入れると効果大)を多めに入れ、排尿します。

一袋で数回の排尿には対応可能です。

その後しっかり口を縛り大きなゴミ袋で保管する。

大便でも使用は可能です。

雨水や川の水を使う時の工夫

トイレを流す水は水道水以外でも使用できます。

お風呂の残り湯もそのひとつですが、それ以外に川の水や雨水も使用できますがゴミを一緒に流すと詰まることがあります。

トイレに汚れた水を使う時は家庭にあるザルで一度濾(こ)した後に使用すると詰まりは起きにくいです。

恐ろしい汚水の恐怖

マンションから出る排水は雨水、雑排水(生活用水)、汚水(糞尿)に分かれます。

自治体の下水道設備は主に雨水を別にする分流方式、雨水を含め一括で流す合流方式があります。

合流方式では雨水も一緒に下水道を流れます。

ゲリラ豪雨の映像でマンホールから勢いよく水が溢れるシーンを覚えている方もいると思います。

合流方式は汚水も含んでいます。

この状態では市中に糞尿を含んだ水が流れ出していることになります。

冠水の被害が衛生面でも大きなダメージを与えることが理解できると思います。

 

マンションの汚水や雑排水等の排水設備も給水設備同様に異なります。

館内に処理槽が設置されているマンションは、設備が地下に設置されています。

ディスポーザーを完備するマンションでは専用の処理槽があります。

これらの処理槽は下水道に接続されています。

下水道がいっぱいになれば処理槽から流しだすことができません。

それでも館内で使用していると結果、館内のトイレ、風呂、台所に逆流する事態も想定されます。

(臭いや衛生上の問題で汚水系統は密閉されています。)

外部に流れている状況では館内に逆流する危険性もあります。

各家庭で出来る対策があります。

秋田県ホームページより

各自治体のホームページにも掲載されていると思います。

大切な専有部分に汚水を含む水の逆流を防ぎために覚えておきましょう。

浸水時のマンション1階、2階は危険

浸水は地域の排水能力を雨量が超えた時点から始まります。

浸水の程度は床下、床上浸水に大別されますが基準は床です。

床の下まで高さであれば床下浸水、床の上に水が流れ込めば床上浸水になります。

床下浸水で収まれば生活圏は維持できますが、床上浸水は家財を失う可能性が高くなります。

マンションの1階は平屋と同じですが、上階への移動は比較的簡単です。

最近のマンションは1Fに専有部分が無い構造のマンションも多くありますが、規模が大きなマンションでは1Fに居住スペースがあります。

先ほどの書きましたがマンションの1Fに住んでいる方は雨の被害を最も受ける場所に居住していることを認識しておくべきです。

その上で対策をすべきです。

浸水被害に遭った皆さんの体験談では床下浸水を確認してから床上に浸水するまでの時間は、「あっという間だった」と聞くことが多く、床下浸水を確認してから避難の準備をしていては遅いようです。

マンションの1Fは平屋と同じです。

気象予報等や周辺の雨の降り方に危険かもと感じたらすぐに上階(2階以上の知合い、避難所)や避難所に移動することも意識すべきです。

避難する時の持ち物

状況にもよりますが持ち物に拘るべきではありません。

繰返しますが「命が大切」です。

時間的余裕がある時は、お金、携帯電話、着替え(1回分)下着(数日分)です。

雨の災害は体が濡れ、低温症を起こすことがあります。

濡れた衣服の着替えだけは持って出ると良いでしょう。

特に危険なマンション

大雨などの浸水がある地域では滅多に見ることはありませんが、エントランスが地面よりも低い位置のあるマンションは危険が大きいと言えます。

参考に示したマンションは墨田区にあるマンションですが、この周辺の浸水レベルは30cm程度ですが、道路が冠水した場合、マンションに水は流れ込みます。

内部の事情はわかりませんが、電気室の位置は外部から確認できませんでした。

このような構造のマンションの住民は浸水対策を十分に検討しておく必要があります。

マンション上階の住民の危険

マンションの3階以上の住民の方は、台風や大雨による浸水の危険は少ないと言えます。

では対策は必要ないのか?

それは違います。

上階でも起こる浸水があります。

ベランダからの浸水です。

強い風は雨を横や斜めに運びます。

特に腰壁で囲まれたベランダでは吹き込んだ雨を貯めます。

ベランダの作りの違いを確認できるマンション

特に腰壁タイプのベランダは水の逃げ場が排水口に限定されていることがあります。

雨水は排水口から地面に排出されますが、その能力は排水口、排水管の広さによって決まります。

その上、排水管の出口の浸水はマンションの機能を著しく低下させます。

すべてのマンションのベランダが危険な訳ではありませんが、腰壁タイプで隙間がなく配置されている場合は専有部分への浸水の可能性があることを知ってください。(一般的には腰壁の下部に排水できる隙間が設けられていることが多い)

また、ベランダ以外にもサービスバルコニー(エアコンの室外機を設置している)が設置されているマンションでも同様の危険があります。

マンション上階の住民の対策

上階の住民が出来ることは排水溝の清掃です。

ベランダは同階のすべての住民が行わないと意味がありません。

梅雨、秋梅雨、台風の接近や夏場のゲリラ豪雨の時期になる前に確認、清掃を行うことで

空振りを恐れないこと

「だから大丈夫だって言ったでしょう」「避難して良かったね」は紙一重です。

災害にからぶりは付き物です。

「避難訓練が出来て良かったね」ぐらいの意識で空振りを恐れないでください。

住み馴れた場所を離れることに不安が大きいことはわかりますが、「命が一番」です。

空振りを恐れず、危険と思った時は早めの判断をすべきです。

危険な情報と自分の感覚

防災への備えを管理組合として整えているケースは多くありません。

災害への対応は家庭レベルに任されて言えるでしょう。

強い雨が降り始めたら各個人が雨の状況を判断することが重要ですが、その際に役立つの気象庁の情報と皆さんの感覚です。 

台風や大雨の情報を最近は耳にすることが多くなりました。

「記録的短時間大雨情報」は一時間に100ミリ前後の猛烈な雨が観測された場合に気象台から発表される気象情報です。

雨量と私たちが降り方で受ける感覚を気象庁は表にまとめています。

気象庁のHPより

マンションの様に気密性が高く防音も優れた場所では音から外の状況を察するのは難しいかもしれません。

受けるイメージを知っておくだけでも危険を察知する助けになります。

災害時に報道される「命を守る行動を行ってください」を皆さんも聞いたことがあると思います。

この報道があった時点ですでに命の危険があると言うことも知っておくべきです。

特に上階の方は下階で起きていることを確認することに疎くなる傾向があります。

夜になれば尚更、道路の冠水状態を知ることは難しくなります。

マンションは多く人が住むグループです。

危険と判断された方は理事長に連絡、理事長が館内放送等で危険を通知する等のルールを決めておくと良いでしょう。

住民の皆さんへ

1Fに高齢者や障害者の方がいるケースを把握すべきです。

本来災害弱者として管理組合が把握すべきことですがなかなか実行している組合には出会いません。

そこで、住民の皆さんの近所付き合いの中で1F住民の方をサポートする確認をお願いします。

高齢者や障害者は避難や移動に時間がかかります。

危険な状況になる可能性がある時は、「大丈夫ですか?」「避難が必要な時は手伝います。」など一声かけてください。

それだけで当事者の不安は抑えられます。

対策ではなくこれはお願いです。

以上がマンションに住む住民が行える雨対策(浸水対策)です。

次回は風対策編です。


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