マンション管理組合の理事長さん、管理計画認定制度の準備は出来ていますか?

2022年4月から始まった管理計画認定制度ですが、まだまだ制度を整える自治体は限られ、申請数も限定的な状況です。

昨年11月には、管理計画認定を取得したマンション管理組合にはマンションすまい・る債の優遇利率、長寿命化工事を実施した翌年の建物の固定資産税減額などの優遇措置が発表され、2023年4月から運用をが始まります。

管理計画認定制度の現状

国土交通省は、将来のマンションは管理組合の適正な運営が必須と考えています。

そのため、管理計画認定制度を立上ました。

今年3月で1年が経過しますが普及はこれからと言ったところです。

これまでの流れを簡単にまとめます。

管理計画認定制度は、既存マンションと新築マンション(分譲前)に適用できる制度です。

これまでの実績を見ると、新築マンションを対象にした予備認定は順調に実績を伸ばしています。

この理由は、予備認定を取得したマンションは、購入者が住宅金融支援機構から融資を受ける際に優遇金利で借入できるメリットがあります。

分譲会社としては、融資にメリットが得られるのであれば、予備認定を受けることで販売促進につながると考え積極的に制度に参加しています。

これに対して既存マンションは、当初の管理計画認定制度は管理組合に取得するメリットがなく、国から管理組合運営が適正に行われていると「名誉」が得られる程度であり、管理組合自体もそれ程興味を示していませんでした。

また、管理計画認定制度の運営は自治体です。

自治体が制度の定めるまでは、その地域にあるマンション管理組合は制度に参加することもできません。

各自治体は、それぞれにマンションの実態調査は行っていました。

特に老朽化が心配される築年数が40年を超えるマンションに対しては、自治体ごとに訪問調査を行っています。(現時点でも行っています)

実情を把握しつつある自治体は、管理計画認定制度の必要性は感じながらも制度を条例に制定するまでには至っていません。

例えば東京は、東京都がいち早く町村向けに制度を立ち上げましたが、区市では板橋区、府中市、八王子市、小金井市に限られています。

管理計画認定制度の取得にメリットがないと言う指摘を受けると、国土交通省は、取得組合向けに優遇策を立て続けに公開しました。

それが「マンションすまい・る債」の優遇金利、長寿命化工事による「1年間の建物固定資産税の減額」です。

これ以外にも共用部分の改修工事時の借入利率の優遇もあります。

この公表は、これまで無関心だったマンション管理組合に管理計画認定制度は何だ?と興味を持たせたことは確実です。

FJマンション管理士事務所にも「管理計画認定制度を知りたい」と言う問い合わせが発表後増えています。

メリットを感じた管理組合は、当然地元の自治体が制度の開始を行っているか、まだなら、いつから行うかを気にし始めます。

特に「マンションすまい・る債」は利用している組合も多く、優遇金利を受けられるメリットは不足しがちな修繕積立金を少しでも増やしたいと思う組合員の意向と一致していることもあり、自治体への問い合わせも多くなったと聞いています。

このように国土交通省がマンション管理組合に管理計画認定制度のメリットになる施策を公表したことにより、組合員から自治体への制度の開始要望が増えています。

「マンションすまい・る債」は認定を取得した管理組合に対しては「認定すまい・る債」として今年3月に優遇金利を公表する見込みです。

優遇率によっては、自治体への制度開始の要望が更に強まると見られています。

一方、自治体は制度開始には予算取りの問題もあり。今年3月に行われる議会で承認を受ける必要があります。

時間的にタイトなスケジュールであり、令和5年から制度を始める自治体がどこまで増えるかは不透明と言えます。

しかし、早かれ遅かれ、国土交通省は制度の普及を進め、マンション管理組合からも制度制定の要望が増えれば、自治体も重い腰を上げることになるのは時間の問題です。

事前確認はまだ少ない

このような現状で、既存マンションが認定を取得した数は全国で数十に限定されています。

自治体の制度制定の遅れもありますが、大阪市、愛知市などの都市部がすでに開始しているにも関わらず、申請数は伸び悩んでいます。

幾つか原因は考えられますが、認定取得ののメリットの公開が昨年11月でした。

認定制度の申請には総会承認が必要になり、わざわざ臨時総会を開催してまで申請をする管理組合はなかなかありません。

定期総会のタイミングに併せて申請の準備中である組合があることが理由のひとつにあると考えられます。

管理計画認定を取得するための要件はハードルが高く、取得を目指して申請の準備をする段階で、現状の運営状況では取得が難しいことがわかり現在、改善をおこなっている組合もあります。

特に規約の改定や修繕積立金の金額不足は簡単に改善することは出来ず、早くて数カ月、住民の合意形成に難航すれば1年近く時間がかかります。

その結果、現時点では管理計画認定を取得した組合が限定されていると言えます。

今後の見通し

すでに2月ですが、来期の自治体予算は3月の議会で承認されます。

予算に管理計画認定制度に関わる予算が含まれている自治体がどの程度の数あるかは現時点ではわかりません。

すでに報道されている品川区などは4月の実施が明らかですが、自治体に問合わせてもほとんどの自治体が正確な情報を教えてくれません。

また、管理計画認定のメリットのひとつである建物固定資産税の減額は、自治体が減額率を決めるため、それについてもいつ決定されるか不明と言えます。

不確定要素が多い中ですが、国土交通省は出来るだけ早く、各自治体が制度の運用を始めることを望んでいます。

その上、適正な管理を行っている管理組合も制度への参加を希望しています。

両者から要望を受けた自治体が重い腰を上げるのもそれ程時間は必要としないと考えています。

管理組合が準備すること

管理計画認定を取得するには幾つかのポイントがあります。

1、規約に必要な事項が国土交通省の要件をクリアーしている

2、修繕積立金額が国土交通省の要件をクリアーしている

3、長期修繕工事計画が国土交通省の要件をクリアーしている

4、住民名簿(区分所有者名簿ではない)が整備されている

これ以外にも取得要件はありますが、挙げた4つは、申請前の段階で組合側が苦労している点です。

当事務所が行っている無料コンサルティングの過程で経験しています。

規約の変更、修繕積立金の値上、修繕計画の再作成・見直し、個人情報に関わる住民の合意形成は、なかなか難しい問題を含んでおり、簡単な改善では認定の取得が得られる状況にすることは難しいと言えます。

例えば、規約の変更には組合員の3/4以上の特別議決が必要になります。

変更内容は住民にとっても不利益な変更ではなく、合意形成は難しくありませんが臨時総会の開催が必要になるなど手間暇はかかります。

長期修繕計画は、計画年数と2回分の改修工事計画が含まれていることと国土交通省の長期修繕計画に準拠していることが必要になります。

長期修繕計画は、各組合で立案状況が異なり、特に2回の修繕工事を含むとなると自ずと計画期間が30年を超え、見直しや再作成が必要になるケースが少なくありません。

長期修繕計画の作成は、専門的な知識が必要になり費用も伴います。

ほとんどの組合は、収支計画に修繕計画の作成・見直し費用を計上していないため来期以降に伸ばす傾向があります。

修繕積立金額はもっとも高いハードルです。

一例ですが5000㎡未満で235円/㎡の修繕積立金が最低限必要としています。

70㎡(3LDK程度)で毎月16,450円の修繕積田金額になります。

現在の修繕積立金額と比較して、すぐに値上げができるかどうかを考えてみてください。

組合員からの抵抗は大きいことが予測できます。

このように管理計画認定を取得できる管理組合は、制度開始以前から適正化を意識した運用がされている組合に限定されます。

にわかに、「はい、取得したい」と言ってできるような内容ではありません。

準備はすべき

現在、管理計画認定制度は任意制度です。

別に取得をしなくてもペナルティーがあるわけでもありません。

ただ、メリットの適用を受けることができないだけです。

今後、制度を始める自治体の数が増えた時にどの程度の組合が参加するかは未知数です。

今後の成り行きを見た上で判断しても遅いわけではありません。

しかし、時期が来て申請する以上、確実に認定を獲得できる状態にしておくべきです。

先ほども記述しましたが、ハードルの高い要件を満たすためには一定の準備期間が必要です。

輪番制を採用している組合では、理事任期は2~3年が一般的です。

管理組合として継続性を持たせた運営をしなければなかなか高いハードルを越えることができません。

安易な申請は恥をかく

管理計画認定への申請は、普通議決による総会議決が必要です。

理事長は、組合員に対して取得するメリットと取得ができる説明をします。

組合員にしてみれば、わざわざ申請を行う以上、取得が出来て当然と判断します。

しかし、準備不測の状態で申請を行うと資料の不備や要件を満たしていない項目があり、追加提出や改善後提出を求められます。

結果、申請を断念する組合も出てくるでしょう。

あるいは不合格の判定を受けることもあります。

理事長としては、組合員に対して説明が付きません。

メンツが丸つぶれです。

このような事態にならないためにも理事長は、申請前にしっかりと準備をすることをお薦めします。

最後に

2022年4月から始まった管理計画認定制度についてお話しました。

国土交通省は、今後老朽化が進むマンションの行く末を本当に不安視しています。

その現れが今回の制度です。

他人事と捉える方が多いと思いますが、5年後、10年後、15年後、老朽化は必ず訪れます。

国は、放置される空家や朽ち果てる家屋に毎年のように法改正を行い、規制を強めています。

マンションも例外ではありません。

マンション管理の適正化は、無理難題を押し付けているわけではなく皆さんの住環境と資産価値の維持に必要な制度です。

管理計画認定制度は、適正な運用を行っているマンション管理組合であることを国が認める制度です。

マンションの将来の行く末を考えるのであれば、認定を目指すべきです。


FJマンション管理士事務所では、管理計画認定の取得を目指す管理組合をサポートしています。

そのひとつのサービスが「マンション管理コンサルティング体験モニター」です。

無料で3カ月間マンション管理士のサポートを受けられるサービス|マンション管理士せっかめ|note

FJマンション管理士事務所|マンション管理士せっかめ|note

是非、ご検討ください。

また、FJマンション管理士事務所では電話、メール、オンラインによる相談を受けております。

電話:03-6659-6-9477(受付時間/午後1時~8時)

メール:info@cabcs.website(問合せフォームでも可能です)

オンライン相談:2月オンライン相談

FJマンション管理士事務は分譲マンション生活に係る様々な情報を発信しています。
また、皆さんからのご質問や相談をお受けしています。
お気軽にお問合せください。


最後までお読み頂きありがとうざいます。
記事の内容はいかがでしたか?
「せっかめブログ」はブログ村に登録しています。
  • にほんブログ村 住まいブログへ
  • にほんブログ村 住まいブログへ
  • にほんブログ村 住まいブログ 分譲マンションへ
  • にほんブログ村 ライフスタイルブログへ

2022年4月から始まった「管理計画認定制度」はこれから徐々に広まります。

これから各自治体の制度運用が始まります。

認定を取得することはマンション管理が適正に行われている証です。

また、認定取得による優遇措置も徐々に公開されています。

自主管理、一部委託管理、全部委託管理に関わらず管理点検サービスを利用して「管理計画認定制度」の認定を受ける準備を始めてください。