住民の高齢化が進むマンションで理事会が取組みたいテーマ

マンションが築30年を超えると住民の年齢を高齢化します。
40代で購入すると70歳、50代で購入すると80歳です。
それだけ同じ棟に住めば互いの事情は何となくわかります。
「最近元気ないね」「姿見た?」など住民同士の話題になることも少なくありません。
世田谷区マンション交流会でも「地域の高齢者の見守り」についてセミナーがあったことはブログで報告しました。
高齢化は個人の問題ですが、管理組合の運営に影響します。
役員の成り手不足の問題に代表されるように病気や足腰が弱くなり、どうしても外出の機会が少なくなる。
管理組合の活動自体に活気がなくなると言うお話もよく聞きます。
これ以外にも高齢者には痴呆やアルツハイマーと言った判断力を低下させる病気もあります。
俳諧、孤独死は地域の互助が重要と言う話は聞きます。
マンションもひとつの自治組織です。
高齢化が進む事態に陥ってからあれことと考えより事前に想定して理事会として準備できることはあるのでしょうか。
今回は「高齢化が進むマンションになる前に理事会が準備すること」についてお話します。
高齢者は認めたがらない

「歳を取って最近は体が思うように動かない」
「今日も病院だよ」
世間話ではそんなことを言う高齢者の方が多いようですが、いざ心配して「区の見守り制度を使ってはどうですか?」と言うと「何を言う!!俺はまだボケちゃいない!」と激怒されます。
自動車免許の返還でも周りの家族は心配しますが当の本人は平気と言いますよね。
結果事故を起こして他人を傷つけてしまう。
しかし、当人にしてみれば「他人の助けは借りたくない」と思う気持ちはあってその気持ちもわかります。
特に昔、健康に自信があった方なら「まだまだ、若い者の世話にはなりたくない」、自尊心を傷つけられたように感じるのだと思います。
だからこそ、周りは出来るだけ当事者が苦にならないような環境作りが必要になります。
一人暮らしの高齢者対策
東京都の孤独死件数の推移は増加傾向です。

年齢、性別別では男性が70未満をピークに減少しますが、女性は年齢と共に増加していることがわかります。(平均寿命の影響も大きいと思います)

単身世帯、自宅死亡者数
これらのグラフからもマンション理事会として孤独死の発生を防ぐ、あるいは万が一起きても出来るだけ早く発見したあげることが必要ではないかと考えています。
マンション理事会が準備しなくても自治体に見守り制度があることは知っていますが、自治体の見守り制度はあくまでの当人の自己申告で始めるサービスです。
このような状況に対して東京都では「高齢者等の見守りガイドライン」を準備してます。
実にP900に及び資料です。
この中には地域の地域包括支援センターが近隣住民と協力しながら孤独な高齢者とコミュニケーションを取り、見守りを続けている例が紹介されています。
この中で重要になることが近隣住民の気づきと示されています。
「最近顔を見ない」「郵便が溜まっている」「部屋から異臭がする」と言った事態に住民が気付き、地域包括支援センターに通報したことを起点にするケースが多く、日頃からの付き合いが如何に大切かがわかります。
理事会ができること
理事会は共用部分の維持管理を目的に運営されます。
「理事会はそこまでやる必要はない」とはっきり言われる役員の方もいますが、マンションはそれ自体がひとつの自治体とも言われます。
高齢化が進めば理事会自体の活動も思うようにできなくなります。
一方で何十年も長く同じマンションで生活をしていれば、理事会とは別に住民間のコミュニケーションは自然と形成されるものです。
理事会が前面に出て高齢者対策を進めるのではなく、住民間のコミュニケーションを上手く利用できる流れをマンション住民にインフォメーションする発信地となるべきだと考えています。
具体的には次に示すポイントになります。
1、見守りをマンション住民に周知すること
2、違和感を感じた時の対処方法を周知すること
3、強制を求めないこと
4、管理会社と協議しておくこと
5、自治体と事前に連絡を取ること
1、見守りを住民に周知すること
理事会報を定期的に発行している理事会であれば、誌面内に「高齢者の見守り」を取上げることで住民への周知は進むでしょう。
会報を発行していない組合であれば、「高齢者の見守り」に関するポスターを自治体から取寄せ、館内に掲示するなどの方法も有効です。
2、違和感を感じた時の対処方法を周知すること
高齢者の様子が変わった、最近見かけないなど異変に気付いた時に、「すべきこと、やれること」を住民に周知することが重要です。
気づいたけど何もしなかったと言う事態を招かないためも、「異変=通報」を日常化することに努めます。
これも会報や館内掲示で「高齢者の異変を感じたら××-××-××に相談」を掲示すればいざと言う時に困ることはありません。
もちろん、勘違いのケースもあるでしょうが、「子供の虐待」と同じで勘違いは「良かった」と思える環境を作ることが大切です。
3、強制を求めない
「見守り」は義務ではなく、「思いやり」から生まれる行為です。
理事会が規約や細則に定めるようなことではありません。
理事会はあくまでも情報を提供する側に徹するべきです。
4、管理会社と事前に協議
とは言え、見守りには部外者のマンションの立入許可や個人情報保護法が時に大きなハードルになります。
例えば管理会社から派遣されている管理人さんはマンションの状況を良く知っている人です。
郵便受けがいっぱいになっている。
専有部分から異臭がする。
そういった館内の事情をいち早く知ることができる人です。
このような事態を発見した時のルール化を管理会社と事前にしておくべきです。
1)異変を感じた時のルール
フロントを通して理事長に連絡をする。
管理人から理事長に連絡をする。
誰が地域包括支援センターに連絡をするかを明確にしておくべきです。
この時、地域包括支援センターの方をマンション内に入れる必要があります。
これについても管理会社と相談したうえで対応方法を決めておくべきでしょう。
2)個人情報も明確化しておく
また、センターの担当者が対象者の近況を管理人さんに聞くことについても個人情報に関わります。
すべて「NG」にするのか。
一定の事を伝えることを認めるかも決めておくべきでしょう。
5、自治体と事前に連絡を取ること
もう一歩踏み込んだ対応としては、地域包括支援センターと連携を取ることです。
自治体の支援業務はマンション管理組合にとってもありがたい存在です。
異常に気付き通報をしてもその後まで住民がフォローすることはできません。
そんな時、定期的に訪問してくれる地域包括支援センターは心強い存在です。
理事会に一度参加してもらい、「高齢者対策」の話を聞いておくことは理事会、管理組合にとっても大切なつながりを持つことができます。
「今は誰もいないけど、近い将来を見据えた対応」を理事会にはお願いしたいと思います。
このような活動を管理組合員に周知することで、将来への安心を提供することも理事会の重要な役目です。
誰にでも訪れる「老い」です。
だからこそ、長年ひとつに棟で暮らす住民のコミュニテーを利用した高齢者の見守りは今後のマンション管理に求められることだと思います。
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