修繕積立金の変更と規約に関する質問

2022/10月オンライン相談で寄せられた質問です。(相談者の了承を得た掲載します。)

築22年、35戸の理事長です。

昨年から立候補で理事長に就任しました。

今年から始まった管理計画認定制度を取得することを考えています。

理事会で制度の勉強をしていますが、ほとんどの項目は現在でも合格レベルにあります。

多少の規約変更は必要ですが長期修繕計画の基準に適応しています、国交省の指針で示された修繕積立金の値には遠く及ばず、今後数年で何とかそのレベルまで修繕積立金の増額を検討しています。

今回の質問は修繕積立金の値上げの案を上程した時の総会の承認に必要になる数の質問です。

修繕積立金の値上げ動議以外にも認定制度のために規約の変更も同時に行うことを計画しています。

修繕積立金の金額は規約内に記載があり、これまでの修繕積立金の値上げの議案はすべて3/4以上で行い、ハードルが高かったためもあり、数度否決された経験がある組合です。

どのように進めるべきかアドバイスを頂ければと思います。

解説

管理費や修繕積立金を支払うことは各組合の管理規約に記載されていることが普通ですが、その記載方法によって各費用の値上げを行う際の総会議決要件が違うことは多くの管理組合で確認できることです。

総会議決の要件は次のようになります。

議決議決要件
普通議決区分所有者と議決権の半数以上特別議決や民法に関する決定を除くその他
特別議決区分所有者と議決権の3/4以上1.管理規約の設定・変更・廃止(同法第31条)
2.管理組合法人の成立(同法第47条)
3.共用部分等の変更(同法第17条・第21条)
4.大規模滅失における建物の復旧(同法第61条第5項)
5.建物の建替え(同法第62条)
など8項目(条文は区分所有法)
普通議決と特別議決の違い
これ以外にも建替え議決など4/5以上の議決がありますが今回は割愛します

大分簡略化しました。(余計な記載は質問へに無関係です。)

標準管理規約では管理費、修繕積立金の支払義務を次のように記載していますが、この条文で負担金額を示していないことが一般的です。

第2節 費用の負担
(管理費等)
第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
一 管理費
二 修繕積立金

2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。

単棟型標準管理規約より抜粋

この規約の場合、管理費、修繕積立金の値上げは規約を変更する必要が無いため、普通議決による採択で決定することができます。

しかし、規約内に金額を明記しているケースがあります。

第2節 費用の負担
(管理費等)
第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
管理費 190.3円/㎡
修繕積立金  80.0円/㎡

別途資料として添付する場合は規約元本に含まれているかを確認してください。

規約元本に含まれている場合、規約となるケースがあります。

2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。

単棟型標準管理規約より抜粋

上記のような記載が規約に記載されている場合、管理費、修繕積立金の値上げは規約の改定が必要になり、区分所有法で定められた特別議決案件が適応されます。

今回相談の例では次のような違いが発生します。(戸数35戸、議決権は1戸=1票で換算可能)

議決要件区分所有者数議決権
普通議決権18/35以上18/35以上
特別議決権27/35以上27/35以上
普通議決と特別議決の採択要件

やはり、特別議決のハードル高さがわかります。

特に管理費や修繕積立金の値上げは合意形成が得られにくい議案のひとつです。

今後も値上げを段階的に行うことを計画しているのであれば、規約の改定でこの条文を変更する方が良いでしょう。

理事長もそのことを十分理解している方で、どのように改定を進めるべきかを相談しています。

ちなみに相談者の管理組合の現在の積立額は148円/㎡で国土交通省の指針で示された管理計画認定制度は235円/㎡とは87円/㎡の差があります。

専有部面積が60㎡とすると5,220円の増額になります。

理事長は差額の半分を2,610円を今期、1~2年後に更に2,610円の増額を検討しています。

回答

定番の進め方になります。

1、住民へのアンケート調査

定番ですが、修繕積立金の値上げの必要性を説明する資料を添付した値上げ案を住民にアンケート調査をすることになります。

選択肢を「賛成」「反対」にするのではなく、値上げ額は5,220円/戸・月としてこれをどのように値上げするかを調査対象とします。

賛成反対にすると多くの方が安易に反対にします。

反対であればその理由を明記でいるように「意見」を記述欄として準備します。

これで反対者の意見を広く聞くことができます。

2、長期修繕計画(積立)と現在積立額の乖離の説明

アンケートを集計後、規約の変更の可能性を判断します。

例えアンケートで成立の目途が立ったとしても反対者には個別に説得や値上げの必要性を説く必要があります。

理事会は修繕積立金の値上げの説得を行った実績を残すことで今後の組合員への不信感を少しでも払拭する必要があります。

「数さえそろえば、反対者は無視!」では今後の運営に影響するケースがあります。

恐らく反対者には「滞納者からの回収を先にやれ」「使い方を見直せ」「修繕工事費が高い」等の様々な意見が出ます。

その際も滞納者への回収は進めていること、使い方は監事がしっかりと確認していること、修繕工事費は工事直前でもう一度節約等は考慮することを説明します。

今回の値上げの趣旨は、修繕積立金が修繕計画の必要額と大幅に乖離していること、国土交通省が示している指針と大きく乖離していること、このままの状態では大規模修繕時に各戸数十万円~100万円の一時金の徴収が必要になることを避けるために実施することを明確に示すことが重要になります。

3、その他規約変更の必要性への説明

今回の相談のもうひとつのポイントは管理費や修繕積立金の改定を普通議決で行える様に規約の変更をすることです。

また、管理計画認定で要件になっている「緊急時の対応」を加えることです。

「緊急時の対応」については反対する方は少ないでしょう。

問題は「管理費や修繕積立金の改定」のハードルを低くすることを組合員がどう判断するかです。

慎重な方が多いかもしれません。

これについても事前アンケートで確認しても良いかもしれません。

標準管理規約では普通議決で出来ることを前提にしていると説明して理解を求める以外に方法はありません。

「皆さんが将来、役員になった時に困るかもしれません」などの値上げを予想させるようなことは止めておくべきでしょう。

4、理事会の上程方法

規約の改定は改定項目毎に賛否を問います。

すべてまとめた議決案は作るべきではありません。

1号議決・・規約●●条の改定について{管理費、修繕積立金の金額の改定)

2号議決・・規約●●条の改定について{管理費、修繕積立金の金額の削除)

3号議決・・規約●●条の改定について{緊急時の専有部への立入に関する条文の改定)

と言う様に個別議決として賛否を問います。

これで万一、幾つかの議決案が否決されてもすべての議決を否決されるリスクは少なくなります。

5、段階値上げは一度の議決で了承を得ること

相談では2段階の値上げをアンケートで聞いています。

議決案も○○年度〇月以降の修繕費を××円とし、○×年度〇月以降の修繕費を××円とします。

5,220円の増額を前提の段階的に値上げすること議案とします。

この案が可決されれば、今回の値上げ後の次の値上げは総会議決なしに実行することができます。

6、説得には専門家の利用も考える

修繕計画と修繕積立金の関係はなかなか理解できないテーマです。

専門家であるマンション管理士を利用する方法のひとつです。

顧問契約の必要なく、数回の説明会への参加と修繕積立金の組合員向けレクチャーをお願いします。

マンション管理士にもよりますが、1回1万円程度で受けてくれるはずです。


以上がオンライン相談で説明した概略になります。

修繕積立金の値上げはなかなか理解されにくい議案ですが、必要性をアピールして合意を得る以外にはありません。

ただ、管理規約の改定を伴う値上げが必要な組合は、一般的な組合と異なりより多くの労力が必要になります。

値上げとは切り離して、規約の改定だけを先行させることもひとつの考えかもしれません。


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