分譲マンションの一部委託管理、自主管理ってだめなの?③

分譲マンションの一部委託管理、自主管理ってだめなの?③
前回は分譲マンション管理の基本をおさらいしましたが、今回はその続きです。
分譲マンションの管理業務の事務管理業務についての説明です。

事務管理業務は「会計業務」、「運営支援業務」、「設備業務」になります。
*「運営支援業務」は委託する管理会社が理事会の運営を支援する業務になります。
自主管理の管理組合では管理会社と委託契約をしていないため、自力で管理組合の運営を行うことになります。
それでは、ひとつひとつ説明します。
会計業務って何?
徴収業務
マンション管理組合では共用部分の維持と管理組合の運営を行う必要があります。
そのため、皆さんはマンション購入時に管理規約を承諾する記名、押印をしているはずです。
その規約には管理費を支払う義務が記載されています。
同じマンションを所有する人たちから管理費を集める必要があることがわかります。
この業務を会計業務の「徴収業務」と言います。
管理費の徴収以外に「共用部分使用料金」「修繕積立金」も徴収業務に含まれます。
支払業務
徴収した管理費を使用して共用部分で使用する光熱費(照明や給排水ポンプやエレベーターの電気代、清掃等に使用する水道代等)の支払や委託管理を行う場合は委託費の支払いを行う必要があります。
このような共用部分の維持管理に発生する支払を行う会計業務を「支払業務」と言います。
出納業務
「徴収業務」と「支払業務」を合わせた業務が「出納業務」と言います。
出納業務には帳簿(出納記録)を作成する必要があり、一般にはマンション管理の会計業務は出納業務のことを言います。
出納業務のルール
出納業務の帳簿の管理には幾つかの方法が定められていますがマンション管理組合には会計基準がありません。
と言っても好き勝手な管理をすることは不正の温床になる可能性があります。
そこでマンション管理組合は非営利団体(利益を出すための組織ではない)とされ、出納管理は公益法人を参考として行われているケースが多いと思います。
元来、会計を行う目的は2つあります。
これを管理組合に当てはめると次のようになります。
① 組合員に対して、使途の説明責任(アカウンタビリティ)ができること
② 組合組合・理事会の意思決定にあたり、適時に有用な情報開示(ディスクロージャー)を行うこと
徴収したお金の使い道については説明ができる記録の管理と使用の決定には情報を開示することを目的とした管理を行うと言うことです。
もう少し、会計業務を行う目的について説明します。
管理組合は皆さんから集めたお金を使って共用部分の管理を行います。
集めたお金は収入として管理されます。
管理費以外にも共用部使用料も収入のひとつです。
例えば、毎日使用している蛍光灯には電気代がかかります。
この費用を管理費から支払います。
支払いには請求書があって、それを支払った後に領収書が発行されることが一般的です。
このような請求、支払の記録を残す仕事が簿記であり、帳簿を付けることです。
日付、誰に何の代金を支払ったかの記録のすべてをまとめた帳簿を総勘定元帳と言います。
この作成業務が会計業務の仕事のひとつです。
一般的なマンション管理組合では期初に年間の収支計画、期末に収支決算が会計で管理する方法が主流になります。
これ以外に賃借対照表や総勘定元帳で管理しています。
詳しく知りたい方は分譲マンション管理組合の会計業務の基本を確認してください。
では、会計業務を自主管理に当てはめて考えてみましょう。
自主管理の会計業務
自主管理の組合口座
一昔前は理事長に毎月、現金で管理費を支払うことが一般的でしたが、近年は自動引落が広まり銀行口座から管理組合の口座に引き落とされることが一般的です。
ところで、管理組合の口座って何でしょうか。
個人が銀行口座を作ることは身分証明書があれば可能ですが、管理組合は口座を作れるのでしょうか。
答えはNoです。
管理組合は法的に認められている組合ですが、人ではありません。
また、法人のように民法的に認められた権利を持っていません。
では・・・どうしているのでしょうか。
皆さんは「屋号」と言う言葉を知っていますか?
○○屋、××店などの個人経営の方がお店につける名前のことです。

あれと同じ方法が用いられます。
口座の名義は個人名(理事長が一般的)ですが、屋号として「○○マンション管理組合」と登録します。
屋号の登録にためには管理規約と理事長を決めた総会議事録、理事会議事録が必要になります。
こうしてマンション管理組合は銀行口座が持つことができます。
ただし、あくまでも個人口座です。
そのため、理事長(管理者)が代わる度に口座の名義変更が行われます。
出金の制限
屋号を使っているとは言っても所詮、個人名義の口座です。
管理組合のための出金であれば、良いですが個人的な流用は絶対に防止する必要があります。
管理委託の場合は、国土交通省が決めたルールがあり、それに従うことで資金の流用を防止しています。
では、自主管理組合ではどのようにしているのでしょうか。
元々、自主管理の理事長(管理者)は住民からの信望が厚い方がなっているケースが多いと思います。
とは言え、多額なお金を管理するプレッシャーは大きいものです。

また、どんなに良心に長けた人であっても、人生では何がある代わりません。
魔が差した・・ちょっと入用で・・が絶対ないわけではありません。
そこで、一人で自由に出金ができない制度が必要になります。
1、通帳と印鑑の保管者を別にする
通帳保管者と印鑑(銀行印)保管者を別々にします。
管理者(理事長)が印鑑と会計担当、副理事長が通帳を保管するなどが一般的です。
支払う時は、2名が銀行に行って行うことになります。
2、キャッシュカードの発行をしない
これも原則です。
単独での入出金ができないことが絶対必要です。
3、ネットバンキングを利用しない
便利ですが、これも単独で出金できるため利用しないことが一般的です。
最近ではワンタイムパスワードを使用する方法があり、この時もワンタイムパスワードを取得する機器とネットバンキングのパスワードを別々に管理することで行っている管理組合もあります。
4、通帳の記帳の確認
理事会が開催時には必ず通帳の記帳を行って役員が全員で金額を確認することも重要なことです。
自主管理ではお金の管理でも独自の方法で管理しているケースが多いようですが、組合員から預かったお金を守ることがもっとも重要なことです。
自主管理が危険だと言われる原因のひとつが管理費の流用を含む、不明瞭な会計が発生しやすいと言う点です。
入金だけを管理しても不正を防ぐことはできません。
次回は、出金についてお話しします。
また、皆さんからのご質問や相談をお受けしています。
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最後までお読み頂きありがとうざいます。
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