分譲マンションの一部委託管理、自主管理ってだめなの?④

前回の投稿からだいぶ時間が経ってしまいました。
本題に入る前に先日、愛知県で初めて管理計画認定制度の1号登録をされたマンション管理組合の理事長の話を聞くことができました。
自主管理マンション。
築年年数は45年を超え、住民の多くは高齢者と言うマンションです。
やはり高経年のマンションのため、建て替えか大規模修繕による延命かを組合で話合い、最終的には大規模修繕で生き延びる道を選択されたマンションと言うお話を聞きました。
最近、管理費等の集金と出納を管理会社に委託したそうですが、それまでの45年以上、住民だけで管理運営を行っていたと言うことです。
率直な感想は「凄い」と思いました。
もともと、マンション管理組合の自主管理には肯定的なFJマンション管理士事務所です。
手順を踏んで住民がまとまれば、経費的にも安価にできる自主管理です。
しかし、一方で住民がまとまることの難しさを知っているだけに凄さを感じました。
それでは自主管理はマンションの管理方法としてだめなのでしょうか。
この話に戻ります。
前回は組合員から徴収する管理費等の保管についてお話ししました。
今回のテーマは自主管理マンション管理組合の支出です。
自主管理では管理費等を理事長(理事長がいない場合は信頼できる代表者)名義の銀行口座に預けることはお話ししました。
月に2万円の管理費、1万円の修繕積立金と仮定して100戸のマンションとすると月200万円の管理費、月100万円の修繕費が徴収されます。
管理費はほとんどが予算通りに支出計画に従い支出される為、各月の締め日には繰越金以外は消費されています。
問題になるのお金は修繕積立金です。
このお金は大規模修繕に備えるお金です。
100万×12か月=1,200万円が毎年積立てれら1回目の修繕工事(概ね12年程度)までには1億円を超える額が管理組合は保有することになります。
かなりの高額です。
自主管理ではこれを理事長(責任者)がすべて管理することになります。
管理する側のプレッシャーも凄いと思いますが、預けた側も保管の状況は気になります。
過去にあった理事長の横領
マンション管理適正化法が施行され管理会社の不適切な資産管理は規制されましたが、自主管理マンションは適正化法の範囲外です。
これまでに理事長が管理費等を横領する事件、事故が多く報告されています。
1、修繕積立金を投資に利用
理事長は積立金を少しでも増やしたかったと言い訳をしたそうですが、そんな言い訳が通用するわけがありません。
結局、減らした資金は老後のために貯めていた資金とマンションを売却して補填しました。
刑事民事事件にはなりませんでした。
長年、理事長を続けていたことの弊害で資金管理のチェック機能がほとんどなかったことが原因です。
修繕工事を引き延ばす理事長の行動を不審に思った組合員が保管口座を確認したことで発覚しました。
2、修繕積立金を私的に流用
理事長の私的流用はもっとも件数が多く、このような事故が風評となり自主管理は危険と言われています。
このような事故が起きる組合の共通点は、次のようなことです。
1、理事長の在籍期間が長い
2、権限が理事長に集中している
3、チェック機能がおざなりになっている
4、管理組合活動への関心が低い
やはり10年以上理事長を続けていると組合員にも安心感が生まれてします。
多くの場合は理事長の出来心が原因で、初めは「つい」「すぐ返すつもりで」と一時的な資金の建替えなどが発端になっているようです。
しかし、これがいつの間にか定常化し結局、私的資産と組合資産の区別が曖昧になり、補充しきれず業務に支障をきたし発覚することになります。
新しい組合員の加入や専門的な知識のある方が役員、監事に就任したことをきっかけに事故が発覚するケースがほとんどです。
信頼を寄せている組合員はかなりのショックを受けたことでしょう。
3、理事長と理事の共謀
自主管理でも適正化法を参考に資金管理には十分に注意を払っています。
通帳と印鑑の保管者を分けて保全を図る方法が一般的です。
多くの場合、理事長と副理事長、理事長と監事で保管し必要な時に請求書等を添付して支払いを行います。
しかし、管理を任された2名が共謀してはなすすべがありません。
数年で事態は発覚して二人とも返済、マンションを売却したと聞いています。
総会で選ばれた2人でしたが、なぜ横領したのかの理由はわかりませんが、バレないとでも思ったのでしょうかね。
このような話は尾ひれを付けて話は広まります。
いつの間にか自主管理は「危険」と言う風潮が定着したと言われています。
ほとんどの自主管理組合はまともです
組合員の大切なお金の横領や使い込みがあったのは事実ですが、ほとんど自主管理組合はまともな運営をされています。
役員の方がしっかりしていることと、組合員の管理組合への意識も高いためでしょう。
全部委託の管理組合でさえ、フロントの横領や使い込みは数年に1度は起こり、国土交通省から注意を受けています。(公開されています)
法律で資金流失を規制しているから優秀で、自己ルールは欠点があるような思いが根底にあることが巷の認識になっただけのことです。
知る限り管理組合への意識の高さは、管理会社に丸投げしている全部委託管理組合より自主管理組合の方が高いと感じています。
管理を監視する体制を外部に求める
とは言え、法的な規制がない中で資金管理を行う不安はやはりあります。
そのため、集金と出納について第三者に委託する組合が増えているのも事実です。
特に居住者全体の年齢が高くなると管理組合の業務が負担になります。
負担軽減と資金の適切な管理のために自主管理組合が一部委託管理に変更する方法です。
これにより、出納の管理がよりわかりやすくなります。
言い換えると管理会社に徴収と出納だけをお願いすると想像しやすくなりと思います。
マンションの規模にもよりますが、思ったより安い経費で対応してくれる会社はあります。
監事を外部に求める
これも最近、よく見る方法です。
国土交通省が指針として示した第三者管理のひとつの方法です。
管理業務の自主管理のまま続けます。
ただし、監事にマンション管理士をお願いします。
理事会の運営のアドバイザーと会計の監査を毎月、理事会でチェックすることで資金の流用を防ぎます。
顧問料だけで就任は可能であり、マンション管理の運営のチェックもするため、適正化も見込める方法です。
監事に税理士や弁護士を置くこともできますが、会計や法律の専門家であり、マンション管理の経験はありません。
マンション管理の適正化まで考えるのであれば、マンション管理士が適任でしょう。
自主管理は決して悪い方法ではない
自主管理が危険と言われる大きな理由は、資金管理の脆弱さです。
法的なルールがなく、個人への信頼に依存する部分が多く、そのため時に大きな過ちが起きます。
過去にそういった事故が起きたことが風評の発端になっています。
ただし、脆弱であることに違いはありません。
それを改善するために方法として外部専門家の利用が勧められています。
自主管理は歴史の古い管理組合が多く、組合員の高齢化も進んでいます。
資金管理は管理組合の基本です。
その点を補強すれば自主管理は決して悪い方法ではありません。
次回は、自主管理の管理運用ルールについてお話します。
また、皆さんからのご質問や相談をお受けしています。
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最後までお読み頂きありがとうざいます。
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2022年4月から始まった「管理計画認定制度」はこれから徐々に広まります。
これから各自治体の制度運用が始まります。
認定を取得することはマンション管理が適正に行われている証です。
また、認定取得による優遇措置も徐々に公開されています。
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