マンションすまい・る債の利用価値を考えてみましょう(2)-流動性-

マンションすまい・る債の金利面で利用価値については説明しました。
第2回目として扱うテーマは「流動性」です。
マンションすまい・る債は10年利付債券です。
10年間の利回りは預入期間が長くなるほど年金利が高くなります。
途中で解約すると利回りが極端に悪くなる債券です。
一方、修繕積立金は各マンションの長期修繕計画を円滑に実施するための資金を計画的に積立ているお金です。
基本的には10数年に一度行われる大規模修繕工事(この名称を使うことに抵抗はありますが。)に併せて使われる資金です。
しかし、これ以外にも修繕積立金の用途は、各マンションの管理規約に定められることが一般的ですが、標準管理規約では次のように28条で定めています。
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
三 敷地及び共用部分等の変更
四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
この中で気になる項目は、不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕です。
他の項目は使用時期をある程度、計画できますが、不測の事故は突然発生します。
このような事態になった時、貯えてきた積立金をすぐに利用できる必要があります。
この点についてマンションすまい・る債は対応できるのでしょうか。
現金化までの時間
金融機関に預け入れる定期預金は、銀行に印鑑と通帳を持参すればすぐに現金化できます。
その点で流動性が高い保管方法と言えます。
一方、マンションすまい・る債の途中解約は可能ですが、時間的なタイムラグと解約に幾つかの条件があります。
タイムラグ
買入請求がその月の20日までに住宅金融支援機構に提出された場合、翌月の10日頃に振込まれます。

定期預貯金や普通預貯金と比較して現金化に時間が必要です。
しかし、修繕積立金の用途目的を考えた時、20日以内に工事費の振込が必要になるケースはあるのでしょうか。
一般的に修繕工事等は請負契約を締結した後に、発注、工事、確認、支払の順で行われます。
管理組合が請負契約時に支払期日を決めることも可能と考えれば、20日のタイムラグがマンションすまい・る債の金利メリットを利用しない理由にはならないと考えます。
解約の制約事項
現金化の時間的問題以外にもマンションすまい・る債の解約には次の要件があります。
1、共用部分の修繕以外の用途に使用する場合の解約を認めていない。
2、購入後、、1年以内の解約には住宅金融支援機構の審査・承認の必要がある。
修繕積立金は管理組合で用途を限定して集めているお金です。
共用部分の修繕以外の用途は規約でも使用を認めていません。
その点で解約時の制約事項として、マンション管理組合に不利益を与えるとは言えません。
1年以内の解約についても止むを得ない事情がある時は解約ができるわけで、これについても問題になるとも思えません。
資金流用を防ぐことができる
マンションすまい・る債を購入することで、大切な修繕積立金の違法な使用に規制を設けることもできます。
今でも表には出ませんが、修繕積立金の使い込みはあります。
短期間に修繕工事を繰返し、積立金が無くなった途端、住宅を売却した理事長がいます。
その後、施行会社から多額なマージンを受取ったことが発覚したケース。
管理組合を法人化したのち、修繕工事を行い、金融機関から借入れと修繕積立金を横領、姿を消した理事長。
挙げれば切りがありません。
いずれも理事長の暴走によって起きた例ですが、解約時に住宅金融支援機構のチェックを取入れることでこのような事態の発生を防ぐこともできます。
途中解約時の手数料
マンションすまい・る債は途中で解約すると利回りが極端に悪くなる債券です。
解約時に手数料が発生しては最悪、元本割れを起こすこともあります。
手続き | 手数料 |
保護預かり | 無料 |
残高証明書の発行 | 無料 |
途中換金の手数料 | 無料 |
途中換金・満期償還時の振込手数料 | 無料 |
マンションすまい・る債は途中解約の手数料、口座振込手数料も無料です。
期毎に必要になる残高証明書の発行も無料です。
金融機関では一通に付き700円以上の費用が掛かります。
定期預金の利息を考えると毎年、残高証明書の発行をすると結局、手数料だけで余計な費用を支払っていることになります。
流動性についてのまとめ
マンションすまい・る債の流動性について説明しました。
途中解約時に現金化に20日程度のタイムラグがあること、解約に要件を満たす必要がありますが、いずれも管理規約に定めている修繕積立金の用途から判断すると大きなデメリットにはならないと言えます。
解約要件については、理事長等の暴走により資金の横領にもチェック機能として働く可能性が高く決して悪い制度ではありません。
前回説明した、利回りを考えると普通預貯金、定期預貯金に預けているよりは利用価値が高いと言えるのではないでしょうか。
次回は、マンションすまい・る債の10年積立商品について説明します。
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