マンションの台風対策(雨編-2)

内水ハザードマップからご自身のマンションの浸水リスクは確認できました。

浸水0mで安心された方も3mを超えることがわかり不安を募らせた方もいると思います。

この値はあくまでも目安であり、可能性です。

万一の事態を想定して各マンションで出来ることを考える必要があります。

では、浸水によって影響を受ける設備を確認しましょう。

設備の確認

チェックする設備チェックする内容災害時のトラブル/チェック
給水設備のタイプ給水ポンプの使用の有無
ほとんどのマンションはポンプを使用しているはずです。
停電による断水
給水設備のポンプの位置給水ポンプの設置位置
概ね地上からの高さ(地下にある場合はマイナス表示)
浸水高さとポンプの設置高さ
電気設備のタイプ電気室があるかないか
管理者が誰なのかを確認する
浸水のよる停電
電気設備の設置位置電気室の地上からの高さ(地下にある場合はマイナス表示)浸水高さと電気室の設置高さ
浸水想定高の居住者有無床下、床上に関わらず浸水リスク上、浸水の可能性がある住民の有無床上浸水
排水設備のタイプ排水ピットの有無を確認/排水ポンプの有無を確認停電による汚水・雑排水・雨水の逆流
能力不足による逆流
大雨災害を想定した時に確認しておく設備等

災害が発生した時、ライフラインである電気、水が確保されていれば強固なマンション躯体内にいれば安心が得られますが、停電、断水が発生する事態が起きる可能性は知っておくべきです。

表に示した設備を確認すると浸水時のマンションの給排水への影響、断水、停電へのリスクを知ることができます。

電気室の位置

各マンションには電気室が用意されていることが多いと思います。

国土交通省も浸水時の電気設備の対策の必要性を認めて、令和2年に「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公開しています

電気室等の管理は契約電力会社が管理しているため入室はできないことが一般的です。

ただし、電気設備がマンション内のどの位置にあり、どの程度の高さに設置されているかを確認することはできます。

電気室は1階、あるいは地下にある場合は、浸水の影響を受ける可能性が大きくなります。

キューピクル等の設備が外部に設置されているマンションも多くあります。

これらの電気設備の設置高さを知ることが重要です。

電気室の内部は見れませんが、多くの機器は部屋の上部に設置されているようです。

どの辺りまで浸水すると電気の供給が止まるかは、各契約電力会社に確認しておくことをお勧めします。

その結果に合わせて電気室に目安となるテープ等を貼ると「危険の度合いを見える化」することができます。

 

地下に電気室が設置されている場合、建物に浸水があると停電になる可能性が高くなります。

対策は3つです。

対策ポイント
電気室に通じる階段に止水板を設置する大掛かりな工事が必要
取外し可能な装置もある
土嚢を用意する発生前に作る作業が必要
自治体に相談も可能
排水ポンプを用意する浸水があった際の対策
排水能力に疑問
地下に電気室がある場合の対策例

いずれも管理組合として対策を準備する必要があり、費用も発生します。

停電時の影響を確認する

浸水以外にも停電が発生する可能性はあります。

地域全体が停電する場合です。

停電が発生した時は館内は非常灯が一定時間点灯しています。

停電により影響が出る設備は次のような設備になります。

停電時に影響が出る設備初期行動
エレベーター閉じ込まれた人の確認/遠隔警備の対象
共用部分電灯停電範囲を見極まる(地域全体、マンション単独の判断)
給水装置水道水の確認
排水装置特になし/遠隔警備の対象

エレベーター、排水装置は各マンションが管理会社を通して警備契約をしています。

これらの設備については各専門業者に任せる以外に住民にすべきことはありませんが、閉じ込められた人の有無は確認すべきことです。

排水設備(ポンプ)が止めると館内の雨水を外部に排出できなくなり溢れだします。

水位次第では逆流現象を招きます。

排水ポンプの設置個所にもよりますが、場合によっては生活排水や汚水が逆流することもあります。

管理員時代の経験ですが都内でゲリラ豪雨が発生した時、複数のマンションの排水ポンプが能力が追い付かず警報を発したことがありました。

この時、警備会社がマンションに到着したのは警報発砲後5時間以上経っていました。

豪雨や台風の時にはこのような事態が想定されます。

 

給水方式はマンションによって異なりますが、いずれの場合もポンプが浸水深さよりも高い位置にあれば給水に影響がでることはありません。

とは言えどの給水ポンプも電気を使うため、電気室の設置高さはより重要になります。

多くのマンションには地下に排水ピット(排水を一時的に貯める施設)があり、ここに排水ポンプが設置され強制的に下水道等に流します。

しかし、大雨になり浸水すると各ピットに設置されている排水能力が追い付かず、逆流を起こす危険があります。

ゲリラ豪雨が発生すると浸水まではいかないが、ピット内のポンプは排出できずに警報がなる事故は都内でも夏場に多く報告されています。

 

説明したように各マンションの構造や設備によって雨水災害への強さが違います。

雨水災害への強弱は、決してハザードマップだけでは測ることはできません。

そのために理事会は災害に備える必要があります。

管理組合・理事会・住民の役目

マンション管理組合はゲリラ豪雨や台風による大雨が発生した時にマンションがどのような状態になる可能性があるかをシミュレーションする必要があります。

この時、想定される最悪の事態を考えることが重要です。

その上で「出来ること」「出来ないこと」「やること」「やらないこと」を仕分けします。

また、「組合の責任としてやること」、「各自の責任としてやること」を明確化しておくことも必要です。

特に理事会が「出来ること」で「やらないこと」は賃借人を含むマンション住民の総意を確認すべきです。

これを事前に決めておかないと理事会の善管注意義務の怠慢行為と取られるケースもあります。

 

「大丈夫、その時に何とかなるよ」

防災対策を住民任せにする危険性をマンション全体で共用することが防災の一歩です。

「いざと言う時」に強いマンション管理組合を目指して欲しいと切に望みます。

参考に最低限、理事会として決めておくべきこと、周知しておくべきことを示します。

 

管理組合が決めておくべきこと担当
人命の最優先住民名簿の整備、連絡網、声掛け理事会or個人
浸水想定住民の避難避難先の明確化(上階住民の意思確認)理事会
停電発生危険水位の認識水位がどこまで来ると停電になるかを住民に周知する理事会or個人
災害情報と浸水の可能性各水位(災害情報)別、設備への影響の周知理事会
停電時の共用設備へ影響停電発生時の停止設備の周知理事会
エレベーターの使用について理事会
トイレの使用について理事会
災害レベル飲料水の確保理事会or個人
食料の確保理事会or個人
トイレの使用について理事会or個人
浸水想定により取決め事
取決め事はマンションの災害への強弱、設備の配置により異なる

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