マンション管理組合の理事長さん!!管理費の収支計画案は大丈夫ですか。

昨年から電気代の高騰は、マンション管理組合でも予算額を超え管理費を圧迫する事態を起こしているとお伝えしました。

当事務所にも今期の収支計画案の作成時の注意点を聞きたいと言う相談が多数寄せられています。

電気代に限らず、ほとんどすべての値段が値上がりしています。

予算化の際にはこのような現状を踏まえた予算案の作成が必要になります。

昨年度と同程度では最悪、管理組合運営が出来ない事態になりかねません。

今回は物価高騰に対応する予算案を立案する際のポイントをお伝えします。

1、電気代等の光熱費

昨年から4月以降、電気代の値上は各家庭で2~3割程度上がりました。

政府は今年1月からガス、電気の負担軽減策を行いますが、期間は今年8月まで、9月以降は補助額も半減と限定的です。

4月からの電力会社の値上げ申請は認められる見込みで、負担軽減策は値上げ幅を補充することもできず、実質値上げになります。

現時点でマンション共用部分の電気代、ガス代が補助の対象になっているかは不明です。

*国土交通省に質問しましたが無回答でした。

4月以降の値上げ率は次の通りです。

電力会社値上げ率
東北電力平均32.94%
東京電力平均29.31%
北陸電力平均45.84%
中部電力平均31.33%
四国電力平均28.08%
沖縄電力平均40.93%
報道発表による電力会社の2023/4からの値上げ率

現在価格から2割~4割を超える上昇率です。

これに対応できる予算としては前期実績の30~50%アップは必要でしょう。

特に政府の支援は9月から補助額が半減する計画です。

また、共用設備にガスを使用する設備があるマンションでは更に予算額を上乗せしておくべきです。

2、法定点検費

法定点検は実施周期が決まっています。

勝手に延長したり、省くことはできません。

法定点検費は、前期実績を計上することが一般的です。

管理会社が作成する収支計画案は、法手点検費用を計上していますが、委託契約によっては委託費に含まれるケースと含まないケースがあります。

どちらの場合でもフロントに「法定検査費の値上はありませんね」と確認してください。

3、法定検査以外のメンテナンス費

「配電盤点検」「避雷針設備点検」「目視設備点検」などの法定点検以外のメンテナンスは、毎年行った方が良いとは思いますが、2年に一度、3年に一度でも問題が発生しないケースがほとんどです。

物価の高騰が続いている間は、法定検査以外は先延ばしも検討すべきでしょう。

ただし、注意点としては、計画から省く場合でも過去の検査結果から近々に指摘されて内容を確認した上で緊急性を判断してください。

故障の可能性がある場合は、修理費を予備費に金額を計上する必要はあります。

また、収支計画に計上した計画を立案しておき、実施時期になった時に理事会が収支実績から実施の可否を判断するようにしますやり方もあります。

どちらの方法でも良いですが、組合員から説明を求められた時に答えられるようにしておくことが重要です。

4、設備の故障、部品の交換

故障や部品の交換は予想できません。

なかなか精度よく計画を立てることがむずかしく、

ただし、予算がなく修理が出来なかった事態は住生活の維持の観点から避けなければいけません。

故障時の修理派遣費や部品自体が値上がりしているケースが多く確認されています。

前年度と同額にする場合は、予備費への上乗せを検討してください。

あるいは科目に修理費等を追加して、急な支出に対応できるようにしてください。

避けるべき事態は「お金がなくて修理ができず、マンション生活に影響がでること」です。

5、予備費の考え方

本来収支計画の予備費は緊急事態が起きた時に対応する資金で無暗に多額な予備費を計上すべきではないとされます。

本来の姿は理解できますが、物価高騰は緊急事態に当ると考え、総会で承認を受けていれば問題は発生しないでしょう。

ただし、理事長や理事の皆さんには予備費の意味を理解した上で、使い道を検討してください。

また、監事は予備費による支払いが発生した時は、用途をチェックして額に問題がないこと把握するべきです。

目安としては組合員から用途や支出額を指摘された際に「納得できる回答」の提示ができるかを判断にしてください。

5、収入を超える収支計画

マンション会計は収入は管理費の徴収と共用施設使用料です。

景気によって増えるような事態にはなりません。

限られた収入で支出予算を手てる必要があります。

あらゆる物の値段が上がっている現状では、物価高騰を前提に収支計画を立案する必要がありますが、結果として予算計画段階でマイナスになるケースがあります。

現在の状況では理事会はそれを受入れる必要があります。

6、帳尻合わせはしない

無理に現在の収入に併せた収支計画を立てると、期中に赤字になり、必要なことが出来ずに、住民生活に影響するリスクが高くなります。

収支がマイナスならそれを受入れ、繰越金で賄える範囲内かを確認しておく必要があります。

万が一、繰越金を超えるマイナス額の場合は管理費の値上も視野に入れることになります。

7、組合員に事前に話す

理事会で収支計画案を作成し、総会で組合員の承認を受ける時は、「物価高騰の影響を考慮した結果、今期の収支がマイナスになり、繰越金から〇〇円充当する必要になる可能性がある」ことを事前に組合員に伝えた上で承認を受けてください。

特に毎期の繰越金が少ない管理組合では、現在の状況を組合員の皆さんに理解させる必要があります。

そのためには理事会も最低限必要な支出を考えながら運営を行う姿勢を見せ、その上で想定を超える物価の高騰が続くような場合には管理費の値上も有り得ることも伝えるべきです。

これを怠ると万が一に期中に繰越金も底を尽き、管理費の値上が必要になった時に組合員の理解が得られず運営に支障をきたすことになりかねません。

多少、総会が揉めることになるかもしれませんが、揉めるなら計画段階で意見を出し合ってコンセンサスを得ておくべきでしょう。

無計画に帳尻を合わせた収支計画で総会承認を受けてしまうと万が一に期中に繰越金も底を尽き、管理費の値上が必要になった時に組合員の理解が得られず運営に支障をきたすことになりかねません。

繰返しになりますが、避けるべき事態は「お金がなくて修理ができず、マンション生活に影響がでること」です。

8、理事長の手腕が問われる

マンション管理組合の会計は前期を踏襲することが慣例ですが、昨今の経済事情ではそれはできません。

ひとつひとつの発注の適正を精査する必要があります。

「いま、必要な支出か?」

「先送りができるか、その時のリスクは?」

「住民生活への影響は?」

「もっと安くできる方法はないか?」

これを理事会で話合い、決める、そして記録に残すことが重要です。

ただし、必要な工事はやることも重要です。

その判断を迫られる理事長や理事の皆さんの手腕を問われる期になります。

9、まとめ

電気代の高騰から始まった管理費不足による管理組合運営不全ですが、人件費、部品代を始めとして必要なものの価格は値上がり、ますます組合の会計はひっ迫しています。

このような事態に多くの組合は繰越金で対応をしています。

各家庭の家計も同じように物価高騰の影響を少なからず受けています。

4月から賃上げされるらしいですが、すべての区分所有者が該当するわけではありません。

そう簡単に管理費の値上が認められるとも思えません。

緊急時と割切り、繰越金を上手く利用してこの時期を乗り切る手立てを考えてください。


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