既存マンションの排水設備のチェック方法を教えてください(1)

分譲マンションの買手の方からの相談です。
中古マンションの購入を検討しています。
特集記事を読んで排水設備の大切さはよくわかりましたが、いざ、購入したいマンションで自分で確認する自信がありません。
もっと具体的な確認方法を教えてください。
回答
この質問が多いのはうれしいことです。
排水設備の老朽化は購入後のトラブルになるケースが多いため、ひとりでも重要性を理解してくれることは良いことです。
既存マンションを購入する時に必ず確認すべき重要なことが「排水設備の確認」です。
もちろん、これ以外にも修繕計画の有無や管理組合の会計などがありますが、資料だけでは確認できない排水設備は心配になります。
具体的にする確認する方法について構造の話(1)、給排水管の権利(2)、漏水事故(3)、直床、二重床の確認方法(4)、メンテナンスの話(5)、に分けてに分けてお答えします。
床(スラブ)の構造を理解する
マンションの床はスラブと言われます。
皆さんが歩く床のことです。
マンションは上下階の境になるスラブですがその構造は大きく2つに分類されます。
「直床」と「二重床」です。
最近では「二重床」が一般的で「直床」工法が用いられるマンションは皆無です。

直床構造は下階の天井との間にスペースはありますが、上階専有部分にはスペースがないことがわかります。

これに対して二重構造はコンクリートスラブと床の間に空間があることがわかります。
この違いを知ることが排水設備を確認する第一歩になります。
専有部分、共用部分の範囲を知ること
分譲マンションには2つの専有部分の考え方ががあります。
ひとつは不動産登記上の専有部分です。これは壁芯法と言われ躯体構造(壁やコンクリート)の中心線が専有部分とする考えで登記に記載されている床面積数値です。
区分所有法の専有部分の考え方は躯体構造は共用部分として考えます。専有部分は躯体表面を覆う壁紙、床材(フローリングやカーペット)、天井材となります。
この考え方を内法法(ないほうほう)と言い皆さんの議決権の計算の元になる数値で規約に示されていることもあります。
では、直床と二重床の場合の専有部分、共用部分を確認しましょう。
壁芯法では壁の中心で権利が分かれていることがわかります。
内法法では表面の壁床材が専有部分となり構造物は共用部分であることがわかります。
また、共用部分の空間がコンクリートスラブ下にあることがわかります。

これに対して二重床構造の専有部分、共用部分の権利関係は次のようになります。
大きな違いは、内法法でも共用部分になりますが、壁芯法の権利範囲に共用部分の空間があることです。

給排水管経路を知ること
権利関係が理解できたところで給排水管を専有部分に通してみましょう。
直床では2つの方法が考えられます。
壁芯法の専有部分に通す方法です。
この場合、給排水管はコンクリートスラブ内に埋め込まれることになります。

この方法の場合、メンテナンススペースはなく床から水道管が直接飛び出している構造になります。
マンションが流行し始めた頃によくあった工法らしいです。(コンクリートを打設する前に配管を通す工法です。)
もうひとつは、壁芯法で下階の専有部分に含まれ、内法法では共用部分に当る部分に給排水管を通す方法です。

見てわかる通り下階の専有部分(壁芯法)にある共用部分の空間を利用して配管を通す方法です。
天井の上を通りことになり、水が流れる音が下階に響くなどの騒音問題の原因にもなります。
現在のマンションでは採用されることはまずありませんが、築35~40を超えるマンションではよく見かける構造です。
*ちなみにその当時この工法が採用された理由を建築関係者に聞いても定かではありません。
二重床に排水管を通す場合は次のようになります。

壁芯法でも上階スペースの権利範囲に配管設備が収まっていることがわかります。
内法法では共用部分になり、管理組合が管理する部分になります。
その上、下階との間には厚いスラブコンクリートがあり、水が流れる音への防音も可能です。
初回は直床と二重床の構造の違いと給排水配管の関係について説明しましたがお分かり頂けたのでしょうか。
*尚、共用部分の竪管については図を一部略して記載しています。細部までの正確性を求める方からクレームが寄せられることがありますが、今回のテーマはマンションの床の後続を説明するための図です。
次回は、給排水管の権利(専有部分と共用部分)と漏水が起きた時について説明します。
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