マンションの理事さん必見!、善管注意義務を理解しないと大変なことになりますよ。

「善管注意義務」は聞いたことありますか?
民法に定められている委託業務を受けた側が守らなければならない義務のことです。
マンション管理組合が管理会社に管理委託契約をした際に管理会社に自動的に課せられる義務になります。
善管注意義務を理解する
「善良な管理者の注意義務」の略で、受託者が事務等の管理を行う場合には、当該職業又は地位にある人として通常要求される程度の注意義務を払うこととされている。
民法第644条には「受任者は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理すべきである」旨規定されている。
わかるようでわからない難解の文章ですけど、これは非常に重要な定めです。
「通常要求される程度の注意義務を払う」と言うことですから一般的な常識やモラルで判断されるべきと考えることができます。
よく例として扱われる例は、「大型台風の接近が予測されるが玄関脇に傘、置物が放置されている状態を確認したにも関わらず、注意喚起等を行わなかった」時、管理会社に「善管注意義務違反」があったと民事裁判で賠償金の請求をした。
マンションでよく見かける台風や強風に対する住民への注意喚起は、この善管注意義務違反になることを避ける目的で掲示されています。
住民から被害が出た時に「管理会社が注意喚起をすれば避けられた事態ではなっかのか?」と言った疑念を持たれないようにするためです。
フロントは善管注意義務違反には日頃から気を使っています。
善管注意義務のイメージがわかりましたか?
では、ここからが本題です。
理事会と区分所有者の関係
マンション管理組合は理事会制で運営されていることがほとんどではないでしょうか。
総会で理事、監事を選び、理事会で理事長を選ぶ。
当たり前に行われている行為ですが、この行為は民法で委託契約になります。
区分所有法でも管理者は委任契約と示されています。
第28条(委任の規定の準用)
この法律及び規約に定めるもののほか,管理者の権利義務は,委任に関する規定に従う。
また、国土交通省が指針として公開している標準管理規約では以下のように定めています。
第37条(役員の誠実義務等)
役員は,法令,規約及び使用細則その他細則(以下「使用細則等」という。)並びに総会及び理事会の決議に従い,組合員のため,誠実にその職務を遂行するものとする。
管理者=理事長は常識ですから、監事を含めた役職はすべて区分所有者(委任者)と当事者(受任者)の関係が成立していることになります。
と言うことは、先ほど説明した善管注意義務もそれぞれに役員にあると考えるべきです。
マンション管理組合の役員の職を受けた時にこのことを改めて意識する方は多くはありません。
では、実際、どのような時に善管注意義務違反になるのでしょうか。
このテーマを扱ったWEBサイトは多く、特に東京都マンション管理士会、杉並支部が勉強会のような形で行った講義資料は非常面白く、マンション管理士、理事、監事に非常に参考になる資料です。(資料はWEBで公開されています。➡ こちら)
争いになった過去から善管注意義務を考える
善管注意義務は民事で争うわれますが、対象は受任者である管理会社、理事、監事などの役員を区分所有者が組合として訴えるケースです。
修繕積立金等の使い方の是非について
マンションの修繕積立金は多額でもっとも積立額が多い時期には数千万円から数億円になります。
修繕積立金の運用を始め、修繕工事については善管注意義務違反を争った例の報告があります。
〇 修繕工事等の発注時の費用の妥当性を検証しなかった場合
〇 交換周期よりも早い工事の実施
〇 割高なリース契約の更新
〇 修繕工事の優先順位の判断
相見積もり等の比較をしない、修繕工事が計画の時期と前後した、修繕工事費の金額に不満があったなどの理由で訴えましたが、いずれも敗訴となり、理事長の善管注意義務違反は認められませんでした。
それぞれに訴訟で事情は異なるでしょうが、総会の議決を経て行われた修繕工事です。
議決には金額も含めて合意している以上、高い安い、比較が不十分と言った理由だけでは善管注意義務違反にはならないと言うことでしょう。
発言のニュアンスと議事録
総会や理事会の発言の主旨を議事録に残すことは区分所有法に定められています。
発言のニュアンスによっては発言者と議事録作成者では受け止め方に違いがあるケースもあり、そのことで管理会社(議事録案の作成者)が善管注意義務違として訴えられたこともあります。
これについても訴えた側が敗訴しています。
善管注意義務違反の判決を受けた例
法的に大いに逸脱した行為以外、あるいは監事が提出された書類を十分に確認せずに不正を見逃したなどのケースでは善管注意義務違反に問われ、組合に対して損害賠償を認める判決が出ています。
まとめ
善管注意義務は委託契約では自然的に発生する義務です。
相互の確認を含めて契約書に記載するのが一般的ですが、マンション管理組合の役員は委任契約書を取り交わすこともなく規約に基づいて成立します。
規約に善管注意義務を記載しているケースもありますが、その意識をもつ役員はそれ程多くないのが現状でしょう。
幾つかの例を紹介しましたが、善管注意義務違反は裁判になります。
同じマンションに住居する人間同士が争うことになります。
裁判中のプレッシャー、判決に関わらず、その後の人間関係はかなり複雑になります。
役員に任命された方は、このことを十分に意識して業務にあたるべきです。

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