長寿命化促進税制についての相談内容 ケース2

FJマンション管理士事務所で毎月開催しているマンションの管理に関する相談会の報告です。

今回の3組みはすべて2023年4月に国土交通省が公開した「長寿命化促進税制」についての相談でした。

相談の概略です。

管理計画認定制度の認定取得についての相談

「長寿命化促進税制」は不適切な管理をしているマンション管理組合へ、国土交通省が提示したご褒美です。

そのため長寿命化工事を行うことを推進するために設けられた税制措置になります。

自治体に取って固定資産税は重要な財源です。

これを失ってまでもマンションの老朽化による将来への弊害が大きいと判断したのではないかと考えています。

次の相談事例です。

2、長寿命化促進税制の対象になるのかを知りたい

杉並区、1棟、25戸、築28年マンション管理組合からの相談

  1、今年3月に修繕積立金の値上を実施した

  2、長寿命化工事は来年に行う予定で検討部会が活動している

  3、管理計画認定制度の認定は受けていない(受ける予定)

  4、機械駐車場はない

アドバイス

相談1でもお話ししたように長寿命化促進税制の適用を受ける条件のひとつに令和3年9月以前の修繕積立金の平均額が国土交通省の修繕計画ガイドラインで示された平均額を下回っていることがあります。

令和3年9月以前は、国土交通省の考えでは、修繕積立金が不足し、不適正な状況にあったマンションが今回の税制の対象となるマンションとしています。

令和3年9月は、マンション適正化法が改正され、修繕積立金のガイドラインが施行された年月日になります。

では、今回のご相談の例を考えてみましょう。

令和3年8月時点の修繕積立金の平均額が国土交通省のガイドラインを下回っていることが必要になります。

相談者のマンションの規模(建築延床面積)は2,000㎡以下になり、ガイドラインに示された額は235円/㎡です。

この額が基準になります。

算出方法は次のように行います。

長期修繕計画立案時の修繕積立金:A 円

期間内の修繕積立金立案期間修繕金総額:B 円

共用部分使用使用料(当年収支計画より):C円

修繕積立金立案期間:Yカ月

専有部分総面積:X㎡

算出された額が国土交通省の示すガイドラインに達していなければ長寿命化促進税制の対象となるマンション管理組合になります。

今回ご相談のマンションは、計算した結果183円でした。

結果、R3年9月時点でガイドラインを満たしていない組合には該当することがわかりました。

次に下記、適用要件を確認しました

適用要件相談マンション判定
築20年以上28年
10戸数以上25戸
過去に外壁塗装、共用部分防水、屋上防水の実施平成22年実施
令和3年8月以前の修繕積立金金額(2,000㎡以下)235円以下183円
令和5年修繕工事(外壁塗装、共用部分防水、屋上防水の実施)令和6年4月予定
自治体の管理計画認定制度の条例制定未定
管理計画認定制度の取得予定あり
自治体の建物固定資産税の減額の条例制定不明

来年実施の修繕工事が令和7年3月31日までの終了すれば、長寿命化促進税制の要件を満たすことがわかりました。

ただし、管理計画認定制度は自治体が条例に定める必要があり、杉並区は相談時点では条例制定について情報はありません。

また、建物固定資産税の減額の条例も杉並区が制定することです。

現時点では管理組合側は杉並区が管理計画認定制度、および長寿命化促進税制の減額割合の条例を制定する時期を待つしかないことをお話ししました。

その上で、管理計画認定制度は管理の適正化を把握するために役立つ制度であり、修繕工事前に取得しておけば杉並区の条例が制定後にすぐに申請でき、長寿命化促進税制の減額割合の条例が出来た段階で速やかに申請を行うことができます。

長寿命化促進税制は修繕工事が終了後、3カ月以内に申請が必要になります。

例えば、令和6年4月から始める修繕工事が7月に終了したとすれば、遅くても令和6年10月までに条例が制定されている必要があります。

区の動きを小まめに確認し、修繕工事の開始を数カ月遅らせることも視野に入れておくことも重要になります。

管理計画認定制度は修繕工事終了までに取得しておくと安心です。

いずれにしても区の動き次第と言えますが、組合としては粛々と計画を推進するべきですと説明しました。

相談者の声

区の条例が障害になるとは思わなかった。

積極的に杉並区に条例の制定を進めるように言います。

管理計画認定制度は、長寿命化促進税制が発表になる前に組合として取得することは決めていたのでアドバイスされたように計画通り進めます。

国が推し進める政策でも区によって速度感に違いがあることを始めて知りました。

行政のやり方次第で、そこに住む人に不公平があることにびっくりしました。

コメント

管理計画認定制度は、国が制度を作り各自治体に条例化を求めた政策です。

区によって速度間の違いがありますが、国土交通省が昨年から今年にかけた発表した管理計画認定制度のインセンティブにより、マンション管理組合からの突き上げの動きが強まっていることも事実です。

2023年4月に管理計画認定制度の条例化を公開した自治体は多くなりましたが、それでもまだまだ動きは鈍いと言えます。

お住みの地域により受けられるインセンティブに違いがでることは本来あってはならないことですが、各自治体の事情もあることも理解できます。

特に今年から令和6年に修繕工事(外壁塗装、共用部分防水、屋上防水の実施)を予定している組合の理事の皆さんには、是非、自治体に対して早く制度の制定を進めるように要請して頂きたいと思います。

要請する組合の数が多くなれば、自治体も動かざるを得なくなります。

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2022年4月から始まった「管理計画認定制度」はこれから徐々に広まります。

これから各自治体の制度運用が始まります。

認定を取得することはマンション管理が適正に行われている証です。

また、認定取得による優遇措置も徐々に公開されています。

自主管理、一部委託管理、全部委託管理に関わらず管理点検サービスを利用して「管理計画認定制度」の認定を受ける準備を始めてください。