区分所有法を基本に運営されるマンション管理組合ですが、区分所有法は区分所有物件を対象に設置された法律です。

分譲マンション管理組合を運用すると解釈等に明確さを欠く部分がたくさんあります。

そこで分譲マンション管理組合を運営するのために国土交通省が指針として公開したルールブックが「標準管理規約」です。

標準管理規約が公開された後は、分譲会社もこれを基本に各マンションに応じた管理規約を作成してルールブックとしました。

管理組合の運営ルール、生活で守る規則、違反した場合の対応など詳細に決められています。

また、標準管理規約は各規定にコメントが掲載されているため、規定文の意味を分かり易く解釈している特徴があります。

中古マンション購入希望者は仲介不動産会社に規約の写しを求めれば閲覧することはできます。

標準管理規約は公開以来、時代に流れに合わせるように、あるいは管理組合から寄せられる疑問に答えるように改正を繰返しています。また、民法の改正の様に他の法律の改正が影響する時も改正しています。

マンションによっては古い規約をそのまま使用し、現在の標準管理規約と異なった規約で運用している管理組合がありますが、区分所有法は法律のため規定に違反することは出来ませんが、管理規約は指針のため運用に問題が発生しない限り改正に沿った変更をしなくても問題になることはありません。

規約の細かな内容は、各自で国土交通省ホームページより最新の標準管理規約を確認してください。

この章では購入前に知っておくべき規約に定められている内容を説明します。

1、規約の重要性を知る

規約は「区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保すること」を目的に定められたルールブックになります。

マンション管理の運用方法、共用部の使い方、規則が細かく定められています。

各マンションの設備状況、共用施設等により内容は異なりますが、規約は国土交通省が公開している「標準管理規約」を手本に分譲会社が作成、公正証書として記録される重要な書類になり、各管理組合は保管義務と利害関係者への閲覧義務があります。

新築マンションの場合は購入者説明会で規約の写しが配布され、分譲会社から説明があり、購入前に管理規約の内容を承諾したことを示す「管理に関する承諾書」の提出を求められます。

中古マンションの場合は、売主が購入時に受取った規約の写し(一般には製本されています)を保管しています。

購入時には規約の写しを売主から受取ります。

中古マンションを購入すると管理組合に「区分所有者変更届」を提出しますが、これはそのマンションの規約を承諾したことも含まれていること忘れてはいけません。

規約に記載される内容はすべてが重要ですが、特にマンション購入希望者の方は次の点は知っておく必要があります。

1-1、用法について

区分所有法は区分物件について定めた法律ですが、用法を住居用に限定していません。

これに対して管理規約は、専有部の用法を限定することが出来ます。

もっとも多い例は「区分所有者が専ら(もっぱら)住宅と使用するもの」と定めているケースです。

この場合、自宅を事務所や店舗代わりに使用することはできません。

将来的に自宅で営業行為を行う計画がある方は、規約の内容を確認してください。

賃貸に貸出すことは住宅として使用する点で可能ですが、民泊等の宿泊施設として利用することも規約で禁止している組合が多くあります。この場合、専有部を利用した民泊営業はできないことも注意してください。

「大丈夫!隠れてやるから」と言った安易な考えでマンションを購入すると後程説明しますが、共同利益違反として使用禁止や競売と言った法的措置の対象になることもあります。

十分注意してください。

1-2、専有部と共用部の違い

マンション建物は共用部と専有部で構成されそれ以外の部分は存在しません。(この大前提を忘れないでください。)

標準管理規約では(専有部分の範囲)として次のように規定しています。

(専有部分の範囲)

第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。
2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。
3 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。

天井、床および壁の専有部とは天井材、壁紙、フローリングが専有部になります。それ以外は共用部になります。

フローリング、壁紙、天井材の交換は可能ですが、例えばエアコン用の穴を壁に開ける場合は、勝手に行うことが出来ず、管理組合(理事会)の承認を受ける必要があります。

マンションによってはフローリングの遮音等級を一定以上の規格に定めている場合もあります。

玄関ドアは鍵は専有部なり、自由に交換が可能ですが、外側の塗装を変更する等はできません。

内側のドア表面の塗装は自由に変えることはできますが、玄関ドアそのものの交換は区分所有者単独ではできません。

窓についても枠を含めてガラスも共用部に含まれ、二重サッシへの変更やガラス素材の交換も区分所有者の判断では出来ない決まりです。

ただし、破損等の特別な事情がある時は理事会に承認を受け交換することが出来ます。(災害時の破損は緊急性があるため、事後承諾でも交換は可能です。)

浴室、便座、洗面台等の設備は皆さんの財産になりますが、給排水管はマンション内の本管から枝管に分岐する部分から共用部と専有部が区別されています。

設備の排水管の考え方

共用部については、各マンションの管理規約に詳細に記載されています。

購入前に必ず確認することが必要です。

1-3、専有部の修繕工事

中古マンションを購入すると同時にリフォームを行うと思いますが、専有部の範囲が決められているため区分所有者が勝手に工事を行うことはできません。

標準管理規約では別添2に「区分所有者が行う工事に対する制限の考え方」を掲載しています。

本「考え方」は、区分所有者が実施する専有部分の修繕等や共用部分の窓ガラス等の改良工事の制限に関する一般的なルールを示したものであるが、階下等の住戸に伝わる騒音・振動、窓の変更が外観に与える影響などはマンションによって異なることから、各マンションの設備水準や劣化状況等の実情に応じたルールを定めることが望ましい。
ここでは、修繕等の工事のうち、建物全体や他住戸に長期的に負の影響を及ぼす可能性のある修繕等については、理事会(理事長)に承認申請をすることとし、下表(標準管理規約別添2を参照)において、部位ごとに、工事の実施主体と制限の考え方、制限の目的、制限すべき負の影響(事象)、理事会承認を要する工事、承認の条件として、一般的に想定されるものを示している。
その他の軽微な修繕等については理事会承認は不要としているが、下表右欄に示すように、工事業者の出入りや騒音・振動が発生する工事で管理組合として事前に把握が必要なものについては、事前届出の対象としている。
一方で、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」(区分所有法§6①)とされていることから、必要に応じて、こうした禁止行為を具体的に記載することも想定している。

特に間取りの変更等で躯体(建物の柱)に手を加える工事は原則禁止していると考えるべきでしょう。(構造強度に影響するため)

また、備え付けの家具等の交換は、工事時に大きな音や振動を伴うため、また住民の日常生活に多少なりとも影響する可能性がある限り、事前に管理組合(理事会)に届出を出したうえで行うことが後の住民トラブル等を防止することにもつながります。

専有部のリフォームについては、工事業者が管理組合に「専有部修繕工事申請書」を工事内容、日程表と共に提出した上で、理事会が確認を行い承諾する方法が一般的です。

標準管理規約には申請書の雛形が示されています。多くの組合はこの雛型を利用しています。添付資料として仕様書と工程表が必要であることがわかります。

リフォーム後、組合員になり共に同じマンションで暮らす住民になるわけですから騒音や材料の搬入搬出時に通路の遮断等を伴うため、周辺住民への根回し等を含めて、優良な工事業者を選ぶべきです。

1-4、専有使用権について

先ほど説明した共用部でも全室に設置される設備については専用使用権が認められます。

玄関や窓枠、ガラスは当然全室にあるため、専用使用権が認められますが、バルコニーは全室に設置されている場合には専有使用権を承認するとしています。コメントにおいて全室にバルコニーが無い場合は、別途使用料を徴収することも可能と定めています。(専用使用権を与えることを否定はしていないため、管理組合の考え方で決定されます。)

サービスバルコニー(エアコン等の室外機を置くスペース)についても同様です。

これに対して1階に庭があるようなマンションでは、敷地の一部の専用使用権を得ることから使用料の徴収をすべきとしています。これは1階に限らず屋上テラス(共用部)を有する場合も含まれます。

(バルコニー等の専用使用権)
第14条 区分所有者は、別表第4に掲げるバルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラス(以下この条、第21条第1項及び別表第4において「バルコニー等」という。)について、同表に掲げるとおり、専用使用権を有することを承認する。
2 一階に面する庭について専用使用権を有している者は、別に定めるところにより、管理組合に専用使用料を納入しなければならない。
3 区分所有者から専有部分の貸与を受けた者は、その区分所有者が専用使用権を有しているバルコニー等を使用することができる。

バルコニーは非常時の避難経路になっている場合は、常設物の放置や工作物設置の禁止、外観変更の禁止を各組合ごとに使用細則を設定することとコメントで示しています。

バルコニーは普段、外部から見えない場所のため居住者が自由に使えると思われがちですが、共用部である以上、管理に必要と理事会が認めれば立入ることもできます。住民が正当な理由なくこれを拒否した場合、結果として管理組合に損害を与えた場合、賠償請求を受けることになります。


バルコニー問題

受動喫煙が問題になり法整備が整うに伴い、バルコニーを禁煙とする規約変更を行う組合が増えています。

一昔前はホタル族が話題になりましたが、現代ではホタル族も許されない環境に変わりつつあります。特に階上に小さなお子さんがいると受動喫煙問題は笑い事ではすみません。

喫煙者には肩身の狭い時代ですが、マンションは共同体です。そのことを理解した上で窓を閉め切った専有部で空気清浄等を用いて利用することに心がけましょう。(換気扇下での喫煙は意味がありません。)

これ以外にもバルコニーでは異臭騒ぎが多く起きます。特に夏になると生ごみを含む可燃ごみを数日~数週間放置するとあっという間に異臭を発し、大量のコバエが発生します。皆さんも十分に気を付けてください。


1-5、駐車場、駐輪場

駐車場や駐輪場はマンションの状況により、規約内容も異なります。

駐車場、駐輪場が全戸分あるマンションでは、区分所有者に最低でも一台の権利がありますが、決して無料で使用できるわけではなく、使用料を組合に収めることが基本になります。この費用は駐車場の維持管理費として使用され、期ごとに使用しなかった残金は修繕積立金に充当されます。(駐車場や駐輪場は共用設備であり、大規模修繕工事の対象となるため)

一般的には十分な保有台数がある管理組合の使用料は、周辺の駐車場料金に比較して割安に設定されてることが多いようです。

また、このような組合では空き駐車場の第三者への貸出しを行う組合もありますが、組合員以外から収益を上げると利益に対して事業税の支払が発生するため消極的な組合もあります。

区分所有者数よりも保有台数が少ない駐車場の管理組合は、1年、あるいは数年に一度抽選により選ぶ方式を採用している組合がほとんどです。この場合、抽選に外れた組合員等の公平性を保つために、周辺の駐車場料金と同額に設定する傾向にあります。

いずれも標準管理規約に例として挙げられていますが、各管理組合が住民の総意によりルールを決めて運用しています。

購入したいマンションの管理組合に駐車場と駐輪場の利用方法を事前に確認する必要があります。

駐車場や駐輪場の使用方法については管理規約以外に使用細則により組合の実情にあった運用ルールを定めてあり、駐車料金や抽選方法以外に利用ルールについても確認すべきです。

駐車場のスペースや構造によっては車の大きさや重量制限があります。その点を含めて確認すべきです。


駐輪場は不足気味

最近は車を保有する人も少なくなっている様で大規模マンションの駐車場は利用率が低下しています。

逆に不足している設備として駐輪場があります。特に若い世代が多いマンションでは、子供用の自転車保有率も高く、保育園の送り迎えに必須の二人乗り用の大型電動自転車が普及しています。

元々設計時に駐輪台数を増やすために、最低限の駐輪スペースで台数を算出するため、幅に余裕がなく大型自転車間でトラブルになる相談も増えています。駐輪場の不足はマンション周辺への不法駐輪や共用部分である廊下に無断駐輪を引き起こし管理組合でも解消に悩むケースは年々増加しています。

特に子供は成長と共に自電車の買換えが頻繁です。買い換えた時に不要になった自転車の処分も出来ず、無駄に放置される自転車が不法投棄されることもあります。ご夫婦共稼ぎ、子供一人で一家族3台にもなる自転車を収納できるスペースがあるマンションは少ないのが現状です。


1-6、使用細則について

管理規約は管理組合の運営を始めとする規則を定めていますが、マンション管理組合には保有する施設の利用方法を定めた〇〇使用細則を定めています。

例えば駐車使用細則、駐輪場使用細則、宅配ボックス使用細則など共同で利用する設備についての規則を定めています。

これ以外にペット飼育に関する使用細則なども定められています。

使用細則も管理規約と同様に住民の同意で成立するため、総会で普通議決(議決権の過半数以上の賛成)で成立します。

内容は各組合の実情に合わせ、他の利用者に迷惑にならないように使用方法を取決めます。

使用細則への違反行為を続け、理事会からの注意を無視していると使用権を停止されたり、抽選機会を失うなど厳正に取締りを使用細則に定めている組合もあります。

駐車場、駐輪場、宅配ボックス、ペットの飼育もいずれもマンション生活では欠かせないことですが、マンションの共同性を考慮すると共同の利益を失うような行為には管理組合として厳格に対応する必要があります。

1-7、ペットの飼育

家族の一員と言えるペットですが、マンション全体でペットの飼育を禁止している管理組合もあります。

購入前に管理組合にペットの飼育の可否を確認すべきですが、禁止されているマンションでは隠れて飼うと発覚した時に法的にペット飼育を禁止されることもあります。

ペット飼育でもっともトラブルになることは騒音になります。特に犬は、犬種や固体の性格によって違うのでしょうが、昼夜を問わず鳴くものだと言う前提でしつけやトレーニングなどを行い、周辺住民に配慮することを忘れないようにしなければいけません。

これ以外に糞尿や臭いの問題もあります。

マンションに限定されたことではありませんが、ペットを飼育する時は買主が責任者であることを自覚した上で行うべきです。

入居時にペット飼育申請書を管理組合に提出します。ワクチン接種等の記録と個体種の写真を添付して提出することを求めている管理組合が多いようですが、一度、提出すると新規ペット購入時の届出や死亡届を出さずになし崩し的に運用されている組合も多くあります。

管理規約でもペットの飼育については許可する場合、許可しない場合を区別して規約への記述内容を示しています。

(ペット飼育の禁止)
第○条 区分所有者及び占有者は、専有部分、共用部分の如何を問わず、犬・猫等の動物を飼育してはならない。ただし、専ら専有部分内で、かつ、かご・水槽等内のみで飼育する小鳥・観賞用魚類(金魚・熱帯魚等)等を、使用細則に定める飼育方法により飼育する場合、及び身体障害者補助犬法に規定する身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)を使用する場合は、この限りではない。

(ペットの飼育)
第○条 ペット飼育を希望する区分所有者及び占有者は、使用細則及びペット飼育に関する細則を遵守しなければならない。ただし、他の区分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、改善勧告に従わない場合には、理事会は、飼育禁止を含む措置をとることができる

規約内にある通り、改善勧告に従わない場合は、理事会単独でその組合員の飼育禁止を決定することが出来ます。

また、最悪、組合員の3/4以上の合意があれば、マンション内全体で規約の改正を行いペットの飼育を禁止することも出来き、その場合は規約を遵守している組合員も飼育を断念することになります。

1-8、管理費、修繕積立金の延滞

1章で管理費・修繕積立金の重要性はお話ししましたが、延滞が続く場合、法的措置を含めた強い措置を取ることができます。

管理費の遅延に関する標準管理規約を抽出した内容が下記になります。

(管理費等の徴収)

2 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。
3 管理組合は、納付すべき金額を納付しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講ずるものとする。
4 理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。
5 第2項に基づき請求した遅延損害金、弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。

年利については組合で自由に設定することが出来、損害金の金利については法的な制限は適用されず、これまでの判例では20%程度は認められたケースもあります。

また、督促、徴収に要した費用については加算して請求することが認められています。

このように規約や使用細則は、組合員の意志によって総会で決定されるマンション生活の規則であることを理解して頂きたいと思います。

次に規約の目的である「区分所有者の共同の利益」に違反した場合について説明します。

2、共同利益違反者への強い権限

規約を定める目的は「区分所有者の共同の利益の増進」であることは説明しました。そのため共同利益への違反者に対して区分所有法、管理規約でも強い権限を管理組合に定めています。

共同利益とは規約に定めた内容に著しく違反することで他の区分所有者の安定的な生活を脅かす行為を行う者です。

抽象的な表現ですが、特に特定の行為を示すものもありますが、管理費の長期な滞納も共同利益違反行為と認められるケースもあり、建物の破壊、共用部への造作物の設置や私物の放置、異臭、騒音も程度と期間によっては違反行為となります。

他の区分所有者の生活が脅かされる事態(日常生活が送れない状態)と理解すると分かり易いと思います。

区分所有法、及び管理規約には違反者への法的措置を次のように定めています。

2-1、行為の停止等の請求(区分所有法第57条)

迷惑行為を行っている者へ行為の停止を求めることが出来る権利です。

理事長が理事会の決定を経て、違反者に行為の停止を申し入れます。例えば「騒音が酷いのでやめてください。」「敷地内に違法に放置している自転車を撤去してください。」など管理組合内で問題を解決する方法です。

注意喚起との違いは注意喚起が不特定多数に向けて「違法駐輪禁止」を行うのに対して、行為の停止は特定の個人に行為の停止を求める違いがあります。

また、理事会の行為の停止に効果が無い場合は、総会で区分所有者の合意(普通議決)により違法行為の停止を裁判所に訴追することもできます。

一般的には管理組合内で解決されます。

2-2、使用禁止の請求(区分所有法第58条)

行為の停止に効果が見込めない(と思える場合も含む)場合に、管理組合として違反者の専有部の使用を一定期間禁止することを裁判所に訴追する権限です。

*使用禁止の請求は必ず裁判所の決定で行われる必要があります。(組合だけで使用禁止を決定することはできません。組合が決定できるのは裁判所に訴えることを決定するだけです。)

かなり強い権限です。そのため訴追を行うためには、総会で区部所有者の特別議決(議決権の3/4以上の賛成)により決定することが必要になります。

判決で認められると裁判所が認めた期間、専有部への立入が禁止されます。

 

 


行為の停止請求を事前に行う必要はない

使用禁止の請求を行う前に行為の停止等の請求を行う必要はなく、いきなり使用禁止の請求を行うことができます。

理事会から何度も注意しても改善されない場合、行為の停止請求をしても改善は見込めないと管理組合の3/4以上が考えれば使用禁止の請求を裁判所に訴えることができます。

これは競売請求も同じで、段階を経なくても組合員の合意さえあれば違反者を排除することはできます。


2-3、競売の請求(区分所有法第59条)

更に強い権限として違反する区分所有者が所有する専有部、共用部、敷地に関する権利を競売することができます。

余程目に余る違反行為で住民が平穏に過ごすことが出来ない場合には、区分所有権そのものを奪うこともできるわけです。

競売請求が確定すれば違反者は住居を失うことになります。

競売によって落札された金額は、違反者が取得しますが住居を奪われたら引っ越す以外にありません。そのため、競売請求になる前に違反者は専有部を売却する方法を選択するでしょうね。(競売より高く売れることも大きな理由です。)

ここまで双方で敵対関係になると、もはや修復は困難になります。裁判の結果に如何に関わらず関係性は悪くその後の同じマンションで生活することは難しいのではないでしょうか。

そこまで住民を追いこんだ責任は違反者にありますが、ここに至る前に何か解決方法はなかったのかを思います。

2-4、同居人、賃借人、占有者も同じ

区分所有者以外の同居人、賃借人、占有者(友人に無償で貸しているなど)が違反行為を行った場合も訴追の方法は異なりますが、同じ内容の権利を行使することができます。

いずれにしてもマンション内の安定した生活を脅かす行為を行い、組合員の3/4以上が「我慢できない!」と判断すれば使用の禁止、競売請求まで行う強い権限を行使することができると言うことは覚えておきましょう。

ただし、社会的ルール内で生活を送っていればこのような事態に遭遇することは稀ですが、マンションの区分所有者になると言うことは権利の禁止・停止・はく奪をする法的措置に一票を投じる権利を与えられていることは忘れてはいけません。

3、マンション

マンションの購入を考える方に生活上で皆さんに関係する内容が規約にどのように定められているかを説明しました。

規約の重要性が理解頂ければ幸いですが、「面倒だな~」と思われる方もいると思います。

しかし、共用部分を含めてマンション内の出来事は住民に直接関係することであり、言い換えれば規則を明確にすることで余計なトラブルの発生を事前に防止し、万が一に起きた時も、事前にルールを決めることで善悪をはっきりしておくことも集団生活では重要なことです。

中古マンションを購入すると言うことは、現在の住民がこれまでに築いてきたルールの中で生活することになります。

規約や使用細則を細かく定めることは住民の生活を窮屈にするデメリットもありますが、どれも一般常識や社会通念的を基本に住民同士が決めた規則です。

それもこれも良好な住環境を維持し、組合員全員の共同な利益(平穏で便利で清潔な生活が出来る環境)を増進することを目的に定められていることを忘れずに購入前に確認すべきです。

特に今回取り上げた項目は、直接生活に関係する内容です。

その上で購入後に描く生活が実現できるかを考えた上で購入の決定を行うことをお勧めします。


3章ではマンションを購入する前に確認すべき議事録についてお話します。

目次

1章 分譲マンション管理組合の仕組みを知る

2章 規約はマンションのルール

3章 マンション管理組合の内情を確認する

4章 購入マンションの設備を確認する

5章 大規模修繕工事と積立金について

6章 その他、購入前に確認すべきことと


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