いよいよ中古マンションを購入した皆さんの資金計画についてです。
気になりますよね。
他人の懐具合を知るってちょっとワクワクしませんか。
今回の結果からのでーたについては国土交通省の令和2年度住宅市場動向報告書が主になります。(2022年最新です)
1、購入資金計画
分譲マンションを購入する方が一番心配する購入資金計画ですが、実際に中古マンションを購入した皆さんはどのような資金計画を立てたのでしょうか。
1-1、購入額
いったい幾らのマンションを買ったの?
気になりますよね。
平均購入価格は2575.4万円
ここ5年の平均購入価格は2575.4万。各年度で±200~300円の範囲で推移しています。
全国のマンション販売価格は、地域により上昇幅に違いはありますが、新築、中古に関わらず上昇傾向にあります。
令和2年は、コロナの影響で一時期(1~7月頃)に価格の値下がりがありましたが、その後、価格は上昇傾向にあります。
調査では令和2年(2020年)が前年度から500万円近くの下落幅になりましたが、東京でも5万円/㎡程度の値下がりで70㎡に換算すると350万円になります。
令和2年の購入価格の下落がコロナの影響を含んでいることは間違いないと思いますが、価格はその後上昇していることも踏まえると外出制限などの影響は限定的であり、むしろ経済への不透明感によって購入者が購入価格を抑える結果が生じたのではないかと考えています。
来年度以降の結果を確認する必要があります。
購入物件の平均延べ床面積は72.5㎡(調査結果より)でした。平均購入価格より35.5万円/㎡になります。この価格は神奈川、埼玉、大阪の平均購入価格と同レベルです。
中古マンションの全国平均が56.4万円/㎡ですが、これは東京23区の価格が高く大幅に平均価格を押し上げているためです。参考に三大都市圏の2020年6月の中古マンション価格を表にしました。
地域 | 価格(万円/㎡) |
神奈川 | 41.0 |
埼玉 | 32.5 |
千葉 | 29.9 |
大阪 | 37.8 |
兵庫 | 30.9 |
愛知 | 29.7 |

結果としては、限定的なコロナの影響による中古マンション価格の下落により購入価格が押さえられた可能性もありますが、経済や社会情勢の先行き感に不安もあり、購入価格を抑える効果があったのではないかと思われます。
2、自己資金
マンションを現金で一括で購入する方も一定以上いますが、多くの方は長年少しづつ貯めた貯金の一部を頭金にして、残金は金融機関から借入れ住宅ローンにより長い期間をかけて返済します。
また、現在住んでいる自宅を売却して新しくマンションを購入する買換えもありますが、それでも購入額の100%には足りず、ローンで返済する方が多いのではないでしょうか。

国土交通省令和2年度住宅市場動向報告書再編集
消費税増税前後で自己資金比率の低下が確認でき、借入金が増加していることがわかります。このついては消費税が上がる前に多少無理しても購入を決断した駆け込み購入が多かった影響と考えています。(目標貯蓄額前でも購入を急いだ結果、借入金額が増えた)
中古マンション価格の上昇の影響、消費税の増加が大きな原因と考えられますが、購入物件の価格が値下がりしているにも関わらず、自己資金比率はここ数年43%で同レベルにあります。
これは、住宅ローンの低金利を背景に手持ちの資金を多く残し、将来へのリスクを抑えようとする購入者の心理的な要因がもたらした結果ではないかと考えています。

一般的には自己資金は最低2割、諸経費等を加味すると3割が良いと言われていますが、実際には個々の資産状況と毎月の返済額から無理のない返済計画で購入することもが大事でこの割合に捕らわれる必要はありません。
それにしても1176万円とは多いと思いませんか?
調査結果でも自己資金比率が低下していますが、一般的な数値と比較しても2倍以上の40%以上であり、ここまで自己資金を持たないとマイホームの購入はできないと不安になる方も多いのではないでしょうか。

もう少し自己資金の内訳を確認してみましょう。
1-3、自己資金の内訳は?
国土交通省の調査は自己資金の内訳として「貯蓄・有価証券売却・退職金」(現金と表示)、「不動産売却」(売却益と表示)、「 贈与」、「 遺産相続」、「 その他」について金額を示しています。
初めて購入する人と買換えが同じデータとして集計されています。
グラフの見方ですが、各棒グラフ内に記載された数値は自己資金額の購入資金内訳で示している額になります。例えば令和2年であれば預貯金は619万円です。総自己資金額は(中古マンション購入者の購入資金内訳グラフより)各棒グラフの数値を合計しても知ることは可能です。

国土交通省令和2年度住宅市場動向報告書再編集
*簿グラフ中の数値は額(円)
このグラフより預貯金・所有有価証券の売却・退職金などの現金は自己資金額の6割程度でした。
現金だけに注目して自己資金率を計算すると購入価格に対しては3割前後となり、一般的に言われている頭金のが割合と同じレベルになることが確認できます。気になることは現金額が年々減少傾向にあることです。

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これについては先ほども述べましたが、購入後の手持ち資金を残す傾向の表れだと考えています。単純に購入者の預貯金が少なくなっているとは考えていません。
購入時に預貯金から支出する割合が減少して、その分を低金利の融資で賄う結果として現れているのはないかと言うことです。
また、所有する不動産の売却益を利用できる人も含まれた集計であることから賃貸からマイホームを購入する場合(売却益が無い人)は、売却益分を現金の上乗せ、あるいは借入金の増加によりカバーする必要がこともわかります。
贈与は親からの支援が想定でき、相続は親、あるいは祖父母からの死後贈与と考えられます。金額は100~150万円程度の支援を得ていることになります。
その他についてはコメントの記載はありませんでした。
買換えについては別章でまとめます。

4、借入金の内訳は?

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*棒グラフは、中古マンション購入者が利用した金融商品の割合を示しています。複数の商品を利用する場合もありますが、一般的にはローンは一社と契約するケースが多いため、利用した金融商品の利用率としました。


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*フラット35の金利は返済期間21年以上35年以下融資率が9割以下の場合
年度内の最低と最高金利を掲載
住宅支援機構を含めた金融機関からの融資率は93%、ほとんどの中古マンション購入者が金融機関から融資を受けていることが判ります。
会社や親兄弟知人等からの借入で購入する方も7%程度います。
金融機関でも民間のフラット35の利用者が多く、特に平成29年度以降、フラット35の利用者の増加が確認できます。同時にフラット35以外の借入先利用者は減少しています。
この理由としてはフラット35の最低金上限値の引き下げの影響が考えられます。
*フラット35の融資金利は、購入物件の状況、契約者の経済状況、返済期間などで金融機関が設定します。金利の上限値を超えることはないため、下限値が上昇する影響よりも上限値の影響を受けたのではないかと考えています。

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中古マンション購入者の融資率(購入価格に対する借入金額の割合を示します。)が平成30年以降増加しています。
駆け込み購入、低金利政策、先行きへの不安感などの複数の要因によって、借入金額が一時的に増加したのではないかと考えています。(心理的に金利が低ければ借入を増やしても支払う利息は少なくて済むと考えます。)
その後、借入金額は増税前のレベルに戻りましたが、融資率は高い水準で推移しています。
購入者が手持ちの資金を残し、社会情勢に対応できる安心感と低金利がもたらす心理的効果によるものではないかと考えています。


ちなみにローンなしの現金購入した人って・・・。
今回の調査ではローン利用率も実施しています。
新居を購入、新築する時に親から資金援助を受けることは良くありますが、今回の調査では贈与を受けた親の年齢について調査を行っています。
5、返済期間は?

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中古マンション購入者の7割以上は20年以上の返済期間であることがわかります。(フラット35の場合返済期間が21年で金利が変わります。返済期間が短い程、金利は低くなります。)
近3年に注目すると消費税増税があった平成30年は、駆け込み購入の影響で35年以上の返済期間が極端に増加しますが、徐々にその傾向は解消され35年未満の併催期間を利用する方が増えています。特に10~20年未満の増加は顕著です。
マンション価格の値上がり、低金利政策により返済期間を長くして購入する方が多くなったためであり、駆け込み購入の影響も想像できます。
結果として調査期間全体での平均ローン返済期間は26.3年でした。
フラット35とそれ以外の金融商品を利用した購入者では、令和になってから返済期間が逆転する現象が確認できます。フラット35(住宅支援機構を含む)を利用した購入者の返済期間が減少傾向に変わり、フラット35以外の利用者では返済期間はほぼ一定で推移しています。
これはフラット35の金利タイプは固定金利です。金利推移グラフを示しましたが1%程度で推移していることが判ります。特に調査当時の令和2年にかけて金利は大きく低くなっていることが判ります。この結果、利息の総支払額が減少したことにより返済期間が短くなってのではないかと考えられます。
一方フラット35以外の商品利用者が利用する金利は、大きな変動がなく概ね低い状態で安定しています。
この結果、金融機関利用者の返済期間利用者率の推移は、平均に収束する傾向を示していると思われます。
今後の調査で金利の変動による返済期間への影響は、購入希望者にとっても非常に参考になるデータではないでしょうか。

国土交通省令和2年度住宅市場動向報告書再編集

国土交通省令和2年度住宅市場動向報告書再編集
フラット35、フラット35以外の利用者全体での返済期間の利用率


調査結果から考えられることは、いくら金利が低いと言っても35年以上の場合、購入者平均年齢が46.3歳であれば最低でも81.3歳になり、ローン完済の年齢制限を超えます。恐らく、35年以上を利用した人は若い世代の購入者が多かったのではないかと考えています。
全体的な傾向は、返済期間を短くする方の割合が増加していることです。フラット35の挙動の影響を受けたとは言え、コロナ禍の景気の先行き感が見通せなくなっていること、低金利政策の継続への不安もあり、出来るだけ早く返済を終わらせたいと考える購入者が増えたのではないかと推測しています。
金融機関利用者の返済期間の平均は26.8年で±2年程度で安定しています。
購入者平均年齢から考えると73.1歳に完済する計算になりますが、65~70歳の退職金等による一括返済を考慮すると妥当な結果ではないかと思います。

6、年間返済額は幾ら?
ローン全体の借入額、返済期間はわかりましたが、日々の生活に直接影響する年間(月)返済額はどの程度なのでしょうか。

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年間返済額の平均は97.3万円ですが、徐々に減少傾向にあります。
これまでの調査結果から借入額が減少、返済期間も短くなっているに関わらず返済負担率が安定してことには驚きですが、購入した皆さんの収入が増加していること、あるいは負担率を考慮した上で年間支払額を決めていることが推測できますが、いずにしても購入者の多くは堅実な返済計画でマイホームを買っていることがわかります。


新築マンション購入者との比較
同じグラフを示しましたが、中古マンション購入者よりも年間返済額は40万円程度(月3~4万円程度)高くなります。
物件価格が高いわけですから当然ですね。
返済負担率も中古マンション購入者よりも若干高い数値を示していますが20%以下で健全な範囲と言えます。
年収が高いので当然ですが、無理なローンによる購入する方が少ないと考えて良いでしょう。
7、ローンの金利のタイプは?
フラット35は固定金利のため金利の選択はできませんが、それ以外の商品を利用した購入者は変動金利、固定金利選択制を選ぶことが出来ます。また、固定金利選択制も固定期間には幾つかのタイプがあります。

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フラット35以外の住宅ローン利用者の6割が変動金利を利用していることがわかります。
住宅ローン金利の長期的推移を見ても固定金利選択制より変動金利が優位であることがわかり、利用者が現時点で金利が低いの商品を選択していることがわかります。
今後も低金利が続くと判断したのでしょう。あるいは、金利が高くなった時に固定金利への乗り換えや他に対策を持っている等の何らからの準備があるのではないかと思います。(そうあって欲しいと願います。)
次に一定期間、金利変動のリスクを抑えることが出来る固定金利選択型を利用している人は全体の1/4でした。それぞれの金利タイプは、固定金利期間が3、5年の短期型の利用者は近年は減少し令和2年の調査では確認されていません。

全体的に返済期間が長くなっているようにも思えますが、固定期間が5年以下の利用者がが減少していると考えた方が良いでしょう。
だいたい、固定期間が5年以下は、現時点での変動金利の優位性を無駄にしています。近く変動金利が大きく上昇すると判断したのかもしれません。あるいは変動金利の5年ルールを心配しての選択なのでしょうが、少し先見の明が弱かったのかもしれません。
結果として、ここ2年で5年以下の利用者は減少、あるいは利用者ゼロになっていることからも判ると思います。
一方、5年以上、10年以上を選ばれた方は、景気への不安もあり、コロナが落ち着き、経済が回復するまでは、固定金利で安定した支払いを確保したい方が増えているのではないかと考えています。その後の景気によって固定金利への乗り換えを考えているのでしょう。
固定金利利用者ですが、フラット35を利用することが出来なかった方でしょう。
また、固定金利を選ぶことで金利変動のリスクを減らし、利息返済額は多くなっても安定的な支払い計画を選択された方です。利用者は少ないですが、リスクを最低限にする方法も立派な選択だと思います。


どの金利タイプを選ぶかは利用者の返済に対する考え方で、どれが良くて、どれが悪いと言ったことではありません。各家庭の家計状況や職業の展望、会社の成長力など様々な要因を考えて決定すべきです。
8、住宅ローンを試算してみた
金利タイプ | 月返済額(円) |
変動(0.475%) | 55,546 |
固定金利選択(10年固定、年利1.04%) | 59,647 |
固定金利選択(20年固定、年利1.4%) | 62,358 |
固定選択(26~30年固定、年利1.3%) | 61,597 |
シミュレーション条件(三菱UFJ銀行HPより)
条件 | |
借入額 | 1,630万円 |
返済期間 | 27年 |
返済方法 | 元利均等方式 |
年収 | 600万円 |
ボーナス支払い | なし |
他の借金 | なし |

次章ではいよいよ自己資金やローンなどについて確認しましょう。
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