新築マンション購入者の人物像はイメージできたと思います。

次は資金調達について確認しましょう。

新築マンションを購入した人はどんな資金計画で購入に至ったのかは気になりますよね。

今回も国土交通省の令和元年度住宅市場動向報告書からデータをアップします。

その前に近年のマンション価格の推移を見ておきましょう。

新築マンション販売価格推移
新築分譲マンション販売価格推移(2001~2020)
株式会社不動産経済研究所データを参考

2012年から地域に関わらず上昇傾向が顕著になっていることがわかります。

特に東京23区、首都圏の値上がり幅の大きさには驚きます。

今回の調査期間は枠で囲いました。この価格の上昇にどのように対応したのでしょうか。

1、マンション価格と自己資金の実態

調査年度購入価格
(万円)
自己資金額
(万円)
自己資金
比率(%)
平成27年39031,72944.3
平成28年4,4231,72939.1
平成29年4,1921,79642.8
平成30年4,5771,56034.1
令和元年4,4571,75539.4
分譲マンション購入者の購入価格
分譲マンションの購入者の購入資金(年度別)
国土交通省令和元年度住宅市場動向報告書出典
クリックすると大きな表が表示されます

マンション平均価格推移の全国平均と購入価格がほぼ同額です。

23区、首都圏、関西圏にお住いの方はこれよりも多くの自己資金が必要になります。ただし、このデータから知るべきことは自己自己資金比率になります。

ファイナンシャルプランナーの教科書などでは、一般的には2割、諸経費を考慮した場合は3割の自己資金が望ましいと示されていますが、実際の調査ではどの年も40%程度の自己資金を準備していることがわかります。

驚かれたましたか。

自己資金額が1,700万円の金額にもびっくりしますが、物件価格の40%程度を自己資金で支払っていることには驚きます。

ただし、何も落胆する必要はありません。2割でも、それ以下でも、更に言えば頭金がゼロでも実際、マイホームを手に入れた方はいます。

あくまで調査結果として頭に入れておくだけで良いでしょう。

2割は嘘なの?

2割は何を基準に示された目安なのでしょうか。

実はこれにはからくりがあって、昔の住宅ローンの融資制度は住宅価格の80%までしか融資が出来ませんでした。そのため、住宅ローンを組むために最低2割の頭金が必要でした。その考え方が今も引き継がれ「頭金2割が必要」と言われています。

しかし、現在は頭金なしの100%融資(上限額はある)も可能に制度が変更されているため、この考えは通用しません。

ただし、長く伝えられていたため、銀行の融資紹介サイト、ファイナンシャルプランナーの教本でも頭金は2割(諸経費代を含めると3割)が望ましいと公開しています。

2、自己資金の内訳

40%近くの自己資金を準備している方の内訳は気になります。

調査年度預貯金・退職金
有価証券売却
不動産売却
贈与・相続
・その他
平成27年28.5%10.7%5.1%
平成28年25.6%8.3%5.2%
平成29年30.6%3.8%8.4%
平成30年22.7%6.2%5.2%
令和元年23.0%9.2%7.2%
分譲マンション購入者の自己資金の内訳

グラフ中の数値が示されていない場合は、各年の自己資金割合から確認できた数値を差引いて求めています。

分譲マンションの購入者の購入資金内訳(年度別)
国土交通省令和元年度住宅市場動向報告書出典

*グラフ中の自己資金と借入金の括り方に間違いがあり、贈与も遺産相続も自己資金に分類されます。

内訳データから一定の買換えによる物件取得者がいることが明確になります。また、5%程度の方は贈与や遺産相続により得た資産が含まれていることもわかりました。

結果として貯蓄、投資、退職金により所有している現金の割合は5年平均で26.1%でした。

自己資金が2~3割(諸経費を含む)と言う継承されている内容も満更ではないと言える結果にですが、不動産売却、贈与、相続は親等の先祖から財産の継承であり、これが全員に当てはまるわけはなく、このような環境に無い方の方が多いと言うことです。

結果として家族で積み上げた資産が購入物件の25%程度は必要であることが見えてきます。

言い換えれば現在の資金額の4倍程度のマンション価格であれば購入が可能と推測できます。

ただし、実際の購入時に手持ち資金をゼロにする方は皆無で一定額の預貯金等の流動資産(事由に動かせるお金)を保有しています。このことを考慮するとやはり3割程度の現金、あるいは頭金を支払った後に100万円程度の手持ち資金を残すべきと考えるべきでしょう。

3、住宅ローンは当たり前なの?

住宅ローンは当たり前だと考えている方がほとんどでしょうが、キャッシュで購入する方はどの程度いるのでしょうか。

必要ないデータだと思いますよね。でも、国土交通省のデータにはこのような人の結果も含まれています。

お金持ち、富裕層、富豪、成功者などはどの程度いるのかを知る意味でも確認をしましょう。

各年に関わらず20%弱の方が住宅ローンがなく、現金での購入であることがわかります。

お金持ちって意外と多いんだな~って思いませんか。

23区内のマンション価格が1億に近づいても、分譲開始後に一定数が即売する理由も何となくわかります。

スーパーで買い物するように現金でマンションを即買いするって人生に一度くらい経験したいもんです。

そんな妄想をしていても時間が無駄です。60数%の一般人は住宅ローンの利用者です。次のデータに進みましょう。

分譲マンションの購入者の住宅ローンの有無(年度別)
国土交通省令和元年度住宅市場動向報告書出典

4、借入先はどこが多いか

自己資金はだいぶわかってきましたが、不足する資金の調達先についても結果が示されています。

調査年度フラット35
(民間)
それ以外の
住宅ローン
(民間)
公的機関
その他
平成27年29.4%23.1%3.2%
平成28年26.1%31.2%3.6%
平成29年20.5%33.5%3.2%
平成30年25.8%37.4%2.7%
令和元年24.0%32.8%3.8%
分譲マンション購入者の自己資金の内訳

圧倒的に民間金融機関で住宅ローンを組む方が多いことがわかります。

特にここ数年はフラット35以外の利用者が多くなっていることがわかります。

この理由については今後詳細な説明を予定しますが、現時点の分析では政府(日銀も含め)の低金利政策の影響が大きく影響していることです。

フラット35は返済期間中は固定金利で返済が終了するまで金利が変わることはありません。

これに対して変動金利は、半年ごとに金利が見直され、将来的に金利が安くなる可能性が高かった平成29~令和元年は変動金利を選択する購入者が多かった影響ではないかと推測しています。

マンションを購入した人の自己資金について理解できましたか?

では、次章は残金の支払いに住宅ローンを利用された方はどのようなローンを組んだのかを詳しく調べてみましょう。


目次

1章 分譲マンションを買った人とはどんな人

2章 マンション購入の資金調達はどうしたの?

3章 みんなはどんな住宅ローンなの?


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