管理点検/管理業務改善を行う必要性について
皆さんは、若い頃、健康診断なんて必要ないと思っていませんでしたか?

ところが年齢を重ねると定期健診で隠れた病気が見つかったりすることはよくあることです。
マンションの躯体も同じで竣工時(発売当時)は、しっかりと検査がなされ、導入されている設備も新品です。
しかし、5年、10年と時間が経つにつれ、いろいろなところに竣工時には確認できなかった不具合や問題点がみつかります。
「大丈夫!」「築年数もそれ程だし」と思って放置すると思わぬ事態を招くこともあります。
そのような事態に陥らないように国は、躯体の検査や設備に法定点検を義務付けています。
これにより早期発見、早期修繕・改善はマンションを正常に保ち、躯体を老朽化を遅らせることができます。
一方、マンション管理組合はどうでしょうか。
マンション管理は自主管理、全部委託管理、一部委託管理が主流ですがどの方法であっても第三者に管理状況を点検されることはありません。
特に自主管理は、指導的立場のマンション管理会社のサポートも得ずに運営される為、一見問題がないように見える管理も会計が不明瞭であったり、予算収支に危うさを含んでいたり、出納が不正確であったりと様々な不安材料があります。
また、基幹業務を委託する管理方法であっても各社が独自のシステムで管理する会計は、統一性がなく、会計知識に疎い区分所有者ではその細部までを読みとることができない問題点があります。
その上、管理報告を行う管理会社のフロントも会計には疎く、その多くは会計の内容までを説明できるスキルを身につけていない現状があります。
このような状態が5年、10年と続くとマンション管理自体が形骸化してしまい、区分所有者の興味も薄れてしまいます。
その弊害として突然に管理費や修繕積立金の値上げに驚き、急に会計等を見直した結果、杜撰(ずさん)な管理が行われていたことが発覚して管理会社のリプレース(管理会社の変更)に至ったケースは多々あります。
このような事態にならないために行うのが管理点検です。
言わば、マンション管理組合の健康診断と言うべき点検作業になります。
躯体や設備については法定点検やメーカーのメンテナンスを行いますが、マンション管理実務や生活上の問題点については管理会社に任せているのではありませんか。
管理会社がマンション適正化法に違反する管理を行っているケースはほとんどありませんが、管理手法が組合員にとって適している(わかりやすい)方法で管理を行っているかどうかはまったく別な問題です。
管理点検ではこの点にも重きを置いて作業を実施します。
以下、マンション管理の点検が必要な理由を説明しました。
管理会社の仕組み
これまで多くの管理組合を見てきましたが、ほとんどの管理組合の管理状況は健全です。
特にマンション管理に伴う法整備が整い、管理会社もいい加減な管理はできなくなり、管理組合も賢くなりました。
一方、個々の組合員の皆さんは「特に気になることもないし、理事会に任せておけば大丈夫だと思うよ」と考えている方がほとんどです。
確かに理事長や役員にでもならない限り、マンション管理を日々の中に実感する時は、管理人と挨拶を交わす時ぐらいではないでしょうか。
管理会社から提示される管理費を支払っていれば、何事もなく生活環境は安定していると感じてしまう。
ここに皆さんが不利益を受けている可能性があることに気づけない仕組みがあります。

仕組1、管理会社は決まった状態で購入する
分譲時にすでに管理会社は分譲会社により管理委託契約が行われた状態で売買されます。そのため、管理委託費の契約内容や委託費は分譲会社と管理会社で決められます。皆さんは管理方法や管理費の決定プロセスに係れないままに成立します。
仕組2、不慣れな組合員を管理会社が主導する
管理組合は分譲開始後に発生しますが、不慣れな区分所有者を管理会社が主導する形で運営されます。
組合員はそれを受入れ、これが一般的なマンション管理だと感じます。

厳正な法的ルールがある「基幹業務」に管理会社による差はほとんどありませんが、それ以外の「理事会、総会への支援業務」については、同じ管理会社でも組合によってサービスが大きく異なることは良くあることです。
「規約」で定めている良好な住環境を提供するための業務は業務内容が煩雑で手間暇がかかる業務です。
例えば規模も管理委託料もほぼ同じ管理組合では理事会の内容を「マンションだより」を配布して住民に知らせる管理会社もあれば、館内の掲示で済ませる管理会社、一切知らせない管理会社もあります。
管理事務を開始した時から導入されれば組合員も「これが普通なんだ」と思い込んでしまいます。
誰かが「理事会の内容を知らせる方法がおかしくない?」と声を挙げると管理会社は変更に応じます。
このように管理会社は、管理実務を最低限の業務量に抑え、組合員からの要請があれば対応する方法で、都合よい管理ルールを知らないうちに定着させる傾向があります。(管理会社担当者は数カ月に一度、理事会で会うがそれ以外は何の連絡もなく、書類だけが送られてくる経験はありませんか)
仕組3、現場を軽視した管理を行う
マンション管理組合や区分所有者の皆さんは、管理委託料を始め、他の管理組合がどのように管理されているかを知る術はありません。
知らないことは比較することが出来ないため、管理会社は法律の範囲内で事務ルールを決めることが出来ます。
皆さんは友達や知人のマンションを訪問した先に「このマンション綺麗!」「雰囲気がいいな~」「暗いな~」「汚れが目だつ」など様々な雰囲気を感じることがあると思います。
管理組合の事務管理(会計を含む管理の状況)の実情を知ることはできませんが、肌で感じるマンション全体の雰囲気は実はとても重要なことです。
代表的な例としては注意喚起の掲示文を見ても管理会社の管理の一端を確認することが出来ます。
ボロボロになっても貼り続けられている注意喚起文はみっともないですよね。
この状態を放置している管理会社はとてもマンションの良好な環境を提供しているとは言えません。
館内に貼られた告知文も日付を見ると2年も3年も前の掲示がそのまま残っている。
フロントは元より、管理員も館内の環境に目を配らせているとはとても思えません。
このような管理会社の多くのフロントは月に1回理事会に来て、巡回もせずに帰る程度の意識しか持っていないことがわかります。(あるいは、気づいても住民からの指摘がないから放置している)
当然、管理はマニュアル化され、住民からの要請がない限り積極的なサービスの提供はしません。
現場を軽視した事務管理が中心の管理を行っていると言えます。
しかし、これも「この程度が当たり前と思ってしまう初期の管理委託契約の定常化」が大きな原因です。
*これは住民に聞いた話ですが、その程度をいちいち指摘するのもどうかと思ってしまうと考える方もいるようです。
仕組4、多忙なフロント担当者
管理会社のフロントが交代することは良くあることです。
理由の一つに同じマンションを担当させることで会計等の不明瞭な流用等を防止することです。(理事長と共謀して管理費等の流用を起こす事件が過去にあったことも影響しているようです。)
これ以外に業界の慢性的な人材不足と人材流失があります。
マンション管理業法では管理業務主任者の在籍を委託契約マンション数30組合に対して1名の設置義務が定められています。
でもよく考えると30組合を一人で担当すると理事会だけでも月に30回あることになります。(もちろん、2~3か月に1回の組合もありますが。)
これではとても丁寧なマンション管理を提供できるとは言えません。
おそらく事務作業だけで忙殺されて現場まで気を配ることはできないでしょう。
最近では管理会社も1名の管理業務主任者に10~15棟の管理組合を担当させているようですが、それでもかなりの業務負担です。
結果として受身のマンション管理業の提供となり、提供できるサービスも低下しています。
結果として館内に起きている駐輪場不足、違法駐輪、騒音トラブル、モラルトラブルなどのトラブルも本質的な改善提案までに至らず、注意喚起を貼る、当事者への電話連絡と言ったマニュアル的な対処をする程度に終わってしまい、丁寧な対応ができないケースが目立ちます。
弊害はこれだけに留まらず、フロントのスキル獲得の機会を失わせ、本来持つべき知識やコミュニケーション能力が育たず、変にプレゼンだけが上手くなるフロントが多い傾向にあるようです。
また、多忙な業務耐えられず、転職、業界を去る人材も多く、マンション管理業は慢性的な人材不足と言われています。
仕組5、フロント担当者のスキルの欠如
フロント担当者の典型的なスキル不足は、収支予算計画の科目の名称、科目の設定は代表的な例になります。
例えば予備費はどの管理組合も計上する科目ですが、予備費の目的は何のためでしょう。
フロントに聞くとある者は「突発的な支出に対応できるように」「設備系のトラブルを想定している」「一般的に予備費を計上するのが一般的だから」など様々な答えが聞かれます。
では、その金額の算定根拠は?
これに明確に答えられるフロントは僅かでしょう。
実際にはマンションの状況で予備の必要性、金額も変わるため正解はありません。
一例ですが管理費等の滞納が慢性的に起きているマンションでは、予備費に滞納回収費を計上する場合や別途専用の科目を設置する組合もあります。(予算科目も管理会社で名称も内容も大きく異なります。)
では、なぜフロントはスキル不足になるのでしょうか。
多くの場合は管理会社がシステムを導入しているため、領収書や銀行口座記録からフロント以外の担当者がシステムに入力することで自動的に収支報告書が作成される仕組みになっています。
そのため、フロント担当者は会計の知識が無くても報告書の作成に困らない仕組みになっています。
*一度でも総勘定元帳から収支報告書や賃借対照表を作成する経験があると良いのでしょうが、その必要性がありません。もちろん、管理会社も社員教育の一環として指導はしていると思います。
これは設備も同様で、法定点検や設備のメンテナンスも管理組合の期初にすべて実施時期が決まっています。
また、フロントは各点検内容や設備に詳しくなくても社内の専門部門が実施するため、各検査内容に知識がなくても問題が起こることはありません。
マンション管理は生き物であり、毎年マンションの状況は居住者を含めて変化するものであり、これに柔軟に対応できるだけの管理組合単位の状況把握が求められますが、
理事長と管理会社のフロント(管理業務者)とのコミュニケーションの取り方も各マンションで大きく異なります。

マンション内のトラブルは住民間だけで起きるわけではありません。
例えば、理事会議事録の作成業務は行う、これを区分所有者に周知する業務は依頼が無い場合には行うことはしません。(契約書を確認してください。)同じようなことは管理業務だけでなく、マンション内の日常生活でも見ることができます。
そのため、トラブル等をどう解決するかは、管理会社の手腕によって大きく異なります。(担当者のスキルによってと言った方が良いかもしれません。)
しかし、他の組合の実情を知らなければ「この程度か」「これが普通なんだ」と思い込まされてしまいます。
結果として管理組合ごとにサービスの内容が異なり、もし、この事実を住民が知ることになれば不満につながります。
このような状況は長く行われ、平穏で何事もなく、契約の更新を続けることを一番と考えている管理会社が多く存在しマンション管理業業界は内向き姿勢の業界と表現されます。
このような3つの仕組みによって管理会社は、自分たちが楽に管理できる体制を提供する環境を作ります。
管理定期点検サービスは、基幹業務が適正に実施されているかを確認するだけでなく、住民生活への良好な住環境を提供する体制についても改善点や支援・指導を行うことが最大の特徴と言えます。
その必要性は管理会社の変更を行った管理組合の原因からもわかります。
リプレースの原因からわかること
管理組合が管理会社に不満があり、管理会社を変更する(リプレース)ことがあります。
管理会社をリプレースした理由については、NTTコムが全国の管理組合にアンケートを実施した結果を公開しています。(表1参照)
リプレースの多くは管理費の高額を理由としています、この額については、管理会社の仕事状況と価格の問題で住民のコスト感覚が管理会社の思うコストと一致しなかったと言うことです。(委託費は絶対的な価格はなく、あくまでも区分所有者のニーズと価値観により決定されると言え、同じ食事でも高級店と大衆店の価格の差と考えると判ると思います。)
これ以外の理由としては、住民の感覚的に感じている管理会社(管理業務主任者である担当者)の対応の悪さが原因ですが、マンション内で作業を行う管理員(管理人)、清掃員等への不満も多く挙げられていることがわかります。

当事務所ではこの点に注目しており、委託契約で実施される管理業務が正しく実施されることは当然として区分所有者の方々は、マンション内での日々の生活の中で感じる要望とのギャップに不満を抱いており、この点を指摘、改善することが皆さんの生活向上に直結すると考えています。(他を知らない、管理会社のルールに従っていることが原因)
当事務所のマンション管理士は、マンションの管理員の経験が長いため、日々のマンション内の日常業務に精通しており、特に管理員として住民本位のサービスを提案、実行してきました。
その中でマンション居住者の皆さんが管理会社(管理業務主任者、管理員、清掃員)に何を望んでいるのかを肌で感じ、実践してきた経験と知識があります。
この経験を生かして管理定期点検サービスは、委託業務の適正化を確認することと同時にマンション内の管理状況(整備、清掃など)を合わせて評価するサービスです。
会計の健全性を確認する
区分所有者はマンション所有者である限り毎月、管理費を支払う義務があります。
しかし、その用途の健全性を完全に理解している組合員はどれほどいるのでしょうか。
年に一度、総会で報告される収支報告書、賃借対照表を読み切ることは会計の経験がある、あるいは個人的に勉強された方以外は難しい現状があります。
皆さんに報告する管理業務主任者は、会計の知識は乏しく、会社のシステムが自動的に作成した資料を添付して問題がないことを示す程度の説明しかしていない現状があります。
また、収支報告書、賃借対照表の書式も各管理会社が独自に作成しているため、決して皆さんに見易いように工夫されているわけではありません。
帳簿上の金額と預金残高が一致していることだけが安心の目安になっているマンション管理組合が多いことに驚きます。
このような現状は改善されるべきです。
リプレースの要因のランク6位にある「会計が不明瞭」は管理会社
管理会社のルールの変更

管理会社に委託している多くの管理組合は、管理会社主導で管理業務が遂行されますが、果たしてその方法は皆さんにとってより良いサービスになっているのでしょうか。
皆さんは他の管理組合と交流する機会は限定的です。他の組合でどのような管理方法が行われているかを知る術はほとんどありません。
特に初めて分譲マンションを購入した方は、管理会社から提示されるままに受入れていることが少なくありません。
しかし、実際のところ、管理会社はやりやすい方法で管理を行い、結果として区分所有者の皆さんが知らない間に不利益を受けているケースは数多くあります。
例えば総会や理事会の内容を区分所有者の皆さんに知らせる議事録の広報の実態調査が国土交通省のマンション総合調査で示されています。

データ編集

データ編集
マンションの戸数や築年数により傾向は異なりますが、全体(調査1668組合対象)の6.8%が総会議事録の広報活動を行っていません。また、実施している組合でも方法はまちまちです。
数百戸のマンションで各戸配布を行っていればその経費は組合員の大きな負担になり、回覧板で広報活動を行えば迅速性が失われる結果になります。
この広報の方法がどのように決まったかはわかりませんが、もし、管理会社の都合で区分所有者に不利益を与えているのではあれば改善する必要があります。
これを改善するためには多くの管理組合の管理状況を知り、区分所有者の立場でアドバイスができるマンション管理士の存在が重要になります。
館内の管理が改善
組合のマンション管理業務が正しく行われていても館内の管理がいい加減に行われていれば、住環境が良いとは言えません。
共用部分に清潔感があり、きれいに管理されていることは、住民生活に直接影響することからも管理委託業務の重要な項目になります。

皆さんの管理委託契約では管理員、清掃員を個別に契約する場合、兼務する場合、また、勤務時間も各組合が希望する内容で契約されていると思います。
例えば、規模が小さな管理組合では、午前中の2~4時間を勤務時間として、その間にゴミ出し、館内清掃などを契約する組合が多いのではないでしょうか。
しかし、管理員と清掃員の業務は内容も目的も異なり、時給も異なります。
管理員が清掃を兼務することは良くありますが、清掃員が管理員を兼務することはないと言えるでしょう。
管理員や清掃員の現場(マンション内)の管理状況はゴミ室、駐輪場の状態、壁や床の汚れなどマンション内を巡回すると比較的簡単に確認することが出来ます。

また、管理業務の中には資料の整理整頓も重要な業務のひとつになります。各年度ごとの総会・理事会議事録、収支予算計画、収支決算報告の整理も重要です。特に竣工図、大募集修繕工事の記録、法定点検、エレベーター等のメンテナンス記録、共用部分の修繕履歴は将来の大規模修繕工事の基礎データとなります。
これらの書庫が年度ごとに時系列、項目単位で整理され保管されているかを確認することで管理会社の管理状況の適正化を知ることが出来ます。
この点検は、本来年度単位で専門家が確認を行うべきですが、管理委託が複数年度になるにつれ、確認を行うことが疎かになり、いざ何か問題が発生した時になって杜撰な状況が露呈するケースはよくあります。
このような事態を招かないためにも専門家であるマンション管理士に一定期間ごとに確認を依頼することで、管理会社も緊張感をもって管理業務にあたることになります。また、問題や改善点があれば、契約更新前に改善を求めることもできます。

当事務所では管理員経験が長いマンション管理士が経験に基づいて作成した独自の現場チェックリストを使用して管理状況をチェックします。
清掃、ゴミ出し=管理員と誤解している方も多い中、管理員の仕事はもっとも住民の皆さんと接する機会が多く、管理業務主任者が普段気づかない皆さんの日常に寄添って行われます。
だからこそ管理員の業務はちょっとした気遣いで住民の方が感じるイメージは大きく変わることを、長年の勤務の中で実感しているからこそできるチェックリストになっています。
事務管理や経費削減にばかりに目が行きがちですが、管理員や清掃員の質をアップすることは住環境の向上に直結します。
管理員の経験を長いマンション管理士の目線でチェックすることは非常に重要になります。
担当者の対応を見直す

管理組合の方々とお話しすると「うちの担当は対応が遅くて。」と聞くことが多々あります。
担当者は委託契約書に署名、押印をした管理業務主任者です。国家資格者で彼らの役目は管理委託契約書の内容を契約者の方に保証、説明することです。
マンション管理の管理実務を遂行するためには特に資格は必要ありません。
そのため、管理業務主任者の資格を保有していてもマンション管理の実務経験が豊富とは限りません。
マンションの管理実務には、会計管理、書類の整備の他にマンション内で発生する様々な事態に適切に、かつスピード感をもって対応することが求められます。しかし、多くの担当者はマンションに月に1~2回、来館する程度であり、役員以外の住民の方は年に1度の総会で会う程度ではないでしょうか。
このような状況下では、担当者の経験とスキルによって管理組合ごとに大きな差が生じてしまいます。また、管理業務主任者の忙しさは業界では有名であり、ひとりの管理業務者の担当管理組合の数は10団体は少ない方と言われています。その結果として事務所で作業を行うことが中心になり、現場を疎かにすることになります。
特に月に1度の理事会だけの意思疎通では業務は停滞しがちで結果として、案件の解決がなかなか進まず、問題の棚上げ、長期化と言った区分所有者には不満を抱く大きな原因となります。
当事務所でも3年以上駐輪場の問題を停滞させていた管理組合を担当したことがあり、業務に係った後、半年後には解決できた例もあります。
このように委託契約者同士だけでは進みにくいこともマンション管理士が適切にアドバイスを行うことで管理会社の担当者の怠慢や未熟さをフォローすることができます。
無駄な経費の見直し

管理会社に支払う委託料は契約時に1年分の費用が決まっています。委託費用の値段については皆さんが納得して契約を行っていると思われるため、特に評価を行う対象とは考えていません。
ここで取上げる経費は、それ以外に管理費から支出される実費についてです。
管理委託契約中で別途支払うと決められた項目が対象になります。
多くは突発的に発生する修理・修繕工事です。修理の必要がある工事については、管理会社が工事会社から見積りを取り、理事会に提示、承諾を得た上で発注を行います。
多くの場合は管理会社がこれまで取引があった会社へ見積りを依頼しますが、この価格の適正を気にする管理組合が少ないことに驚きます。
例え数万円の工事代金でも複数の業者から見積りを取り比較した上で業者を選択することは、長い管理期間を考えると非常に重要で経費の削減にもつながります。
また、相見積もりを習慣とすることで備品購入も経費の削減ができます。今はネットで簡単に価格を調べることが出来ます。数千円の単価で数百円であっても安く入手することを積み重ねることは長い期間ではそれなりの額になります。
先程も示しましたが総会議事録の広報活動でも各戸配布の印刷代だけで年間10万円以上もかかるようでは方法の改善も考えるべきです。
このように管理費を大切にする気持ちを管理会社、区分所有者とその家族に浸透することは重要です。

1年に一度、管理業務を見なすことで区分所有者の意識改革、管理会社を第三者が監督することで適度な緊張感を与え、安易に管理会社のルールに従うのではなく、皆さんの住環境の向上と経費削減を始め、管理組合への参加の意識を高めるサービスになります。
現状の顧問契約
マンション管理士との顧問契約について調査結果があります。(国土交通省調査:平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状)
マンション管理組合の専門家利用率は高く42%です。一方で顧問契約による継続契約は19%でした。
特定の問題を短期で契約する手法を採用する管理組合が多いことが判ります。また、特定の問題としては大規模修繕、管費滞納者への法的措置であり建築士、弁護士が45%を占めていることもわかります。
管理組合は困らない限り専門家を必要していない実態がわかります。
継続契約をしなかった理由については報告書には記載がありませんでしたが、当事務所の調査では費用対効果(コストパフォーマンス)の悪さが原因にあります。問題が解決した後は、必要性がないと感じている、あるいは必要性があると思っていてもコストに見合う支援が得られないと判断しているようです。
マンション管理の本質
マンション管理事務には3つタイプがあり、「事務管理」(基幹業務)、「企画・助言」(基幹業務)「住民サービス」(基幹業務以外の業務)が重なって行われています。

この事務は大きく2つの流れで運用されています。
(当事務所では基幹業務を主とする実務サイクルと様々なトラブル等の場面で必要になるサポートサイクルの名称で呼んでいます。)

この業務が管理会社との委託契約の中に盛込まれています。
他方でリプレースの原因は、マンション内で起きている様々なクレームに多いと言う事実があり、「基幹業務」(実務サイクル)には不満が無いが、快適なマンション生活を過ごす環境(住民サービスを主としたタイプでサポートサイクルで運用される業務)に不満を持つ区分所有者が多い結果が示されています。
これは委託契約で「基幹業務以外の業務」に該当する項目で、本来、理事会を円滑に動かし、住民の意見を反映させるアドバイザーの存在がいないことが大きな問題として浮き上がってきます。
言い換えれば良好な住環境を支援する適切な相談者の存在であり、本来、管理会社がサービスとして提供する部分(管理会社によっては契約外と主張しますが。)になります。
当事務所の管理点検サービス/管理業務改善サービスは、一般的な顧問契約と違い、サポートサイクル業務を円滑に行う契約であり、管理会社担当者のスキル、管理員業務、清掃業務についてもチェックを行う点がもっとも多いな違いになります。
これが出来るのは長年、管理員としてマンションの現場で多くの問題点に立会い、多くの提案や改善点を管理会社や理事会に行って来た実績があるからできることです。