この章では皆様が現在のマンションの購入を決めて実際に住むまでに契約された書類の意味を考えます。

皆さんがマンションを購入した時のことを思い出しながらお読みください。

1、はじめから決められている管理会社

分譲マンションの購入を決めた後、引っ越す前には入居説明会が行われます。

一般的に購入手続きは宅建士が主導の不動産売買契約です。

購入手続きが済み、登記上の所有権登録も済ませると購入者に向けた説明会が開催されるのが一般的です。

入居説明会は、管理会社が説明を行うことが多いようです。

マンション管理の方法、理事会、理事、収支報告、管理費、修繕費、集会、総会など必要な情報を一通り説明します。

でも、ひとつの疑問が沸きませんか?

管理会社は誰が決めたの?

どうしてこの段階で管理会社は決まっているのでしょうか?

そこでマンション建設計画~皆さんが区分所有者になるまでの流れを考えてみます。

1ー1、分譲時のシステム

分譲マンションの発売は土地開発会社(デベロッパー)が主導で行われるケースが多いようです。皆さんがマンションを購入するまでの流れは次のように行われます。

マンション建設計画

土地開発会社(デベロッパー)がマンション計画を立て、建設会社を選びマンションを建設する。

分譲会社購入→販売

完成後、マンションの管理を行うための管理会社と契約する。

皆さんが購入

皆さんが分譲会社から購入、同時に管理会社も引き継がれる

お判りいただけましたか?

皆さんが購入した段階ですでに管理会社は決定されています。

この時点で管理会社の選択肢はなく、デベロッパー、分譲会社が決めた管理会社が管理組合を支える会社になります。

このような方法が用いられるわけは、マンションに限らず建物などの不動産は竣工後(完成段階)から劣化が始まり、日々の管理が必要と考えられているためで、皆さんの手元に所有権が移るまでの期間を管理する会社は必要不可欠であると考えます。

その結果として、分譲マンションを購入する際には、おのずと管理会社がセットで購入する必要があります。

これが分譲マンションの管理委託会社が決定している理由です。

1-2、管理会社はほとんどが傘下

デベロッパーは管理会社をどのように選択するのでしょうか?

委託料や契約内容をどの程度、検討するのでしょうか?

デベロッパーの規模が大きい場合は、自社グループに建設会社、管理会社を含みます。

この場合、マンションの建設から分譲、管理をすべてグループ内で行います。

代表的な会社としては三井不動産・三菱地所・住友不動産・東急不動産・野村不動産で総合デベロッパーと言われる存在です。

マンションの規模も大きく、高級マンションなどが多いように感じます。

このような場合、管理会社の選択肢はグレープ傘下の会社が選ばれます。

自ら建てたマンションを自社グループの分譲会社が購入、それを分譲する方法がもっともグループ全体の利益が上がります。

当然ですがグループ内で契約を行いますから委託管理費は高くなる傾向になります。

しかし、悪いことばかりではなく、グループ全体の評価にも影響するため管理会社の質は高いことが多いと言われます。

1-3、独立系管理会社

傘下に管理会社がない場合は、独立系管理会社との契約になります。

分譲会社にとってはいずれ手元を離れるマンションです。

そのため、ある意味無責任になりやすい傾向があるのも事実です。

分譲が終了するまでの管理はそれほど管理会社で差はありません。

業界の評判や価格などを検討して決定されるのでしょうが委託管理費の価格交渉はそれほど精査されることはないと推測されます。

分譲が終了すれば購入者との接点は管理会社になります。

いずれにしても、コストパフォーマンスの良い管理業者の選択を本気で決めることはないのでしょう。

その上、皆さんがマンション購入を検討する時、販売価格は重要な決定要因にしますが、管理費の比較やその内容、評判まで考慮された方は少ないのではありませか?

それは無理のないことで、もともと管理費の比較は非常に困難で比較ができる価格ではありません。

この状況はいずれ区分所有者の皆さんの大きな不満の要因になることは当然に予測できることです。

確認事項

皆さんは管理会社を選択する権利がこの時点ではない。

2、2つの書類の内容と意味

皆さんはマンションを購入した時に2つの書類を受け取ったはずです。

(一冊に製本されている場合が多いようですが)

● 管理規約(使用細則)

● 管理委託契約書

これは皆さんがマンションで生活する上で重要な書類ですが、100%理解して住んでいる方はほとんどいないのではありませんか?

この2つの書類については国土交通省がお手本になる標準規約、標準管理委託契約書を公開しているとても重要な書類です。

それぞれの内容と役目は次のようになります。

種類の名称概要
管理規約(使用細則を含む)マンションを共同で使用する部分についての法律とルールブック
専有部の売買等に関する法的規制
管理委託契約書マンションの共用部の管理に関する委託契約の条件等
重要な2つの書類

2-1、管理規約

管理規約はマンションを共同で使用する部分についての法律とルールブックです。

区分所有者、同居人(家族)、賃借人等の法的な立場が異なる人も含めて居住者全員がこのルールに縛られた生活を行う義務を負います。

皆さんの手元にある管理規約は、国土交通省が指針を示してる「標準管理規約」に則って作成されています。

この規約の根底にある法律が「区分所有法」と「マンション管理適正化法」です。

2つの法律は区分所有者の権利と義務、管理組合の運営方法に関する様々なルールを細かく制定しています。

例えば

● 専有部と土地の権利的な制約(分離処分の禁止)

● 共用部の管理の方法(管理組合の自然発生の考え方など)

● 管理組合の意志の決定方法(多数決)

● お金の管理方法

● 不正防止のためのルール

● 生活上の規制される項目

● 反社会的勢力を否定すること

などなどです。

もっと詳しく知りたい方はネットで「マンション 管理規約」で検索すると専門的な解説を調べることができます。(次章でももう少し説明を加えます。)

2-2、管理委託契約書

管理委託契約書はマンション全員で使用する部分の管理を第三者にお願いする契約です。

管理管理会社がどのような契約に基づいて仕事をしているかが記載されています。

分譲マンションを購入した直後は、デベロッパー会社が契約した管理委託契約を継承する方式を取ります。

これについては冒頭で説明したのでわかりますよ。

管理委託契約書も規約同様に国土交通省が指針している「標準管理委託契約書」に則って作成されています。

この契約書の根底にある法律は「民法」です。

もうひとつは、管理会社の資金管理の不正防止を行うためです。(これについてはせっかめメモ)

管理委託契約書は後の章で詳しく内容を確認します。

2-3、2つの書類の意味

管理規約と管理委託契約は、分譲マンションの購入と同時に皆さんは同意書に記名押印します。

これで、2つの書類に同意したことになります。

これにより誰も住んだことがないマンション内のルール、その管理を第三者に委託したことも併せて受入れたことになります。

ただし、いずれも国が定めた指針に則って作成されているため皆さんに不利益になるような内容はありませんが、初期の規約、使用細則はマンション内の最低限のルールを国が決めていると考えることができます。

管理委託契約も同様で皆さんに不利益になる内容はありませんが、デベロッパーも管理会社も誰も住んだことがないマンションの管理を想定して作成しているため、不具合や不便な点が発生することも十分にあり得る内容であることは知っておくべきです。

そのため、規約や使用細則は後日、住民の協議、採決の上で改正することを認めています。

また、管理委託契約書は、入居後1年未満で契約を見直すことが出来ます。

管理の内容や現状に不満があれば、契約内容を変更すること、他の管理会社に変えること(リプレースと言います)もできます。

手探りで始めるマンション生活の最低限の約束事を決めることで、不要な住民間の争いをなくす意味でも重要な契約になります。

しかし、これはあくまでも一定の期間が過ぎた後にできます。

購入時には重要なルールはすでに与えれている状況にあることは忘れるべきではありません。

確認事項

1、管理規約は生活ルール上、重要なルールを規定している

2、管理委託契約書は管理会社とデベロッパーが締結した契約を継承している

3、いすれも後日、変更は可能である

2つの重要な書類の存在は確認できたでしょうか。

それでは、次章では皆さんがマンションを購入すると適用される区分所有法では管理組合の運用方法をどのように規定しているのでしょうか?

確認しましょう。

お手元に●●管理組合管理規約を準備するとわかりやすいです。

 2章 区分所有法が示す管理組合の運用方法についてに続く

せっかめメモ
不動産、マンション豆知識

売れ残ったマンションは?

売れ残ったマンションは分譲会社の所有物です。

そのため、分譲会社は区分所有者になり管理費や修繕費を支払う義務が発生します。・・・が規約にはちゃんと免除項目が記載されています。

また、分譲会社は不動産取得税を支払う義務が発生します。国に免責は望めません。

6カ月が猶予期間です。そのため、分譲会社は必死にこの間に完売を目指します。

それでも売れ残った専有部は、賃貸会社などに安く販売したり、グループ内の賃貸部門で収益を確保します。

いずれにしても販売営業が必死になるわけです。

最近の土地利用

都内でもマンション建設は盛んに行われています。

古い一軒家が無くなり、更地に代わり、建築計画の看板は設置され、工事が開始する。この流れは普通に生活しているとよく見かける傾向です。

東京オリンピックの影響で建設資材の高騰、作業員不足などと言われている中でもマンション建設はどんどん進んできますが、流石に大型マンションの建設は少なり、40戸以下のマンション建設を中心にまだまだ続くと思います。

建築計画って何?

空地が更地になると白い立て看板を目にします。

あれが建築計画です。建築計画は建物を建てますと周辺住民に知らせる意味があり、建築確認(構造上の安全性等の確認を公の機関で確認して貰う作業)を行う前に設置する必要があります。

ただし、建築計画が設置されたら必ず建物が建築されるわけではありません。あくまでも告知であり、そのまま計画がとん挫するケースもあります。

住民反対運動

建築計画を設置すると住民は計画の存在を知ることになります。賛成者ばかりであれば良いのですが中には反対する方もいます。特に建物の規模が多くなると工事に伴う騒音や振動も大きくなり、期間も長くなるため不安に思う方は多いはずです。

日当たりやプライバシー、治安など安定した生活に何か変化が起こることに不安を抱かく方は一定数います。

また、建築する建物の用途によっては住民の反対運動まで広がることがあります。最近では幼稚園の建設や保護施設の建設に反対された運動が報道され話題になりました。

住民説明会について

一定の規模以上の共同住宅を建設する場合には工事を開始する前に周辺住民への説明会の開催が各自治体ごとに条例等で義務付けられています。

「建築紛争予防条例・指導要綱」

これは自治体ごとに多少内容は異なるようですが次のような項目が規定されています。

  • 近隣の範囲
  • 建築の標識(建築計画の看板)
  • 説明会の開催・説明事項
  • 説明会の結果報告義務
  • 紛争発生時の調停・斡旋の手続き

一般的には住民説明会はデベロッパーが建設会社と合同で行いますが、建築会社が未定でも行われる場合もあります。

反対したら建設は中断するの?

残念ながら法的な手続きを取らない限り建設計画は継続します。また反対者が多くても建築確認(建物の安全性等の検査)に影響することはありません。

ただし、マンション等の建物の場合、購入者や賃借人が建築後に住むことを考えるとあまり反対が強い場合には強行することはあまりないようです。

購入者が後々、周辺住民に受入れられない事態はデベロッパーも望みません。そのため丁寧な住民説明を繰返し、不安を解消していくケースもあると聞きますが、デベロッパーの考え方次第ですよね。

賃貸、分譲マンションなの?

建築計画には分譲マンションとは書かれていません。「共同住宅」書かれています。この時点でデベロッパーは分譲マンションを想定しているケースと初めから賃貸マンションと区別して建築計画を立てますがどちらも建物の分類では共同住宅です。

ひとつの目安としては集会所の表示があるかどうかは確認してください。賃貸マンションに集会場は必要ありません。これで建築計画を立てた段階でどちらを考えているか推測できます。

賃貸、分譲マンションで何が違うの?

各部屋に使用する材料が違います。分譲マンションは高価な素材を使うことも可能ですが、賃貸マンションでは安価で少しでも早く建設費の回収を考える思惑があるためです。

しかし、分譲マンションは景気や社会情勢に左右され、計画を立てた段階では分譲マンションを想定したけど、売れない、売れる見込みがないとわかると販売価格の値下げを試みますが、それでも売れないと判断すれば賃貸マンションに変更します。

ほとんど会社はマンション建設費を金融機関からの借金で作ります。返済期間が長くなれば支払い金利も増えます。その上、売れないマンションは固定資産税の対象にもなります。

会社としては一日でも早い現金回収が必要になり賃貸家賃収入を求めます。そんな事情があって、最近は驚くほど設備が整った高級マンションが賃貸物件として市場に出回ることが多くなっているようです。

床面積40㎡、25㎡の謎

建築計画は行政機関への建築確認と同時に設置されます。建築計画には専有部床面積40㎡以下●戸、40㎡以上●戸と書かれていることがあります。

何で40㎡なの?と不思議ですよね。実はこれは都市計画法と大きな関係があります。

都市計画では低層住宅地域、中高層地域、商業地域や工業地域(実際はもっと細かな設定があります)を用途地域として指定することが一般的です。

この指定は各自治体で独自に決めることもできるため、その地域の将来の計画を見据えたルールが決められています。

地域毎に〇〇m以上の高さの建物は建てられませんなど細かな決まりがあります。

住宅を用途とする建物にも床面積に最小規定があり、小さな家がたくさん建つことを防止するために設定されています。そのひとつが床面積40㎡です。

一般に1DK賃貸マンションの床面積は20~25㎡程度、広い1DKで25~30㎡程度です。40㎡はファミリー向けの2~3DLK以上となります。

賃貸マンションに比べ分譲マンションは一部屋当たりの床面積は広めに設計されています。