この章では区分所有法の適用を受けるマンション管理組合の管理運営方法を具体的に規定する管理規約について考えます。

管理規約は専有部の取得と同時に区分所有者が取得するマンションの共用部を管理するために定められています。

何期も運営経験のある方にはご存じの内容ばかりになりますが、新しく理事になった方、これから分譲マンションを購入する予定の方には役立つ情報です。

1、管理規約・使用細則とは何?

分譲マンションは建設計画時に住む人のターゲットを絞って計画が立てられます。

マンション計画の基礎要素

  • 開発敷地面積
  • 開発地の都市計画、建築規制等
  • 購入できる価格帯
  • 家族構成
  • 専有部の広さ
  • 間取り
  • 周辺環境
  • 施設

「ファミリータイプ」「最適な子育て環境」など分譲マンション広告のキャッチフレーズで何となくイメージができますよね。

これは、同じ価値観、社会常識を持つ人が集まるだろうと考えて募集を行う目的があるからです。

当然、マンションに必要な施設も異なってきます。その結果、規約・使用細則、委託業務の内容も大きく変わります。

では、分譲後の規約・使用細則とはいつ、誰がどのように作るのでしょうか?確認しましょう。

1-1、管理規約の2つの目的

管理規約内で専有部に関する記載は用法を限定する場合と専有部の売却等による共用部の権利の譲渡等の制限について掲載されていますがほとんどは共用部に関する様々なルールが掲載されています。

国土交通省は区分所有者、マンション管理組合に対して「標準管理規約」「標準管理規約コメント」を指針として公開しています。

これらの資料は、区分所有法が実際のマンションでどのように適用されるべきなのかを具体的な例としてまとめた資料です。

その冒頭、管理規約の目的を次のように定義しています。

★ 管理規約の目的 ★

区分所有者の共同利益の増進

良好な住環境の確保

この目的を達成するために必要なルールとして2つの権利と義務について記載しています。

1、個人(区分所有者)としての権利と義務に関するルール

2、団体(管理組合)としての権利と義務に関するルール

区分所有者が専有部と共に所有権を持っている箇所、その権利の割合、売却する際に規制される内容などの権利と義務についてを明確化しています。

専有部内にも共用部はあります。ベランダは共用部、窓サッシは共用部、玄関ドアは内側の塗装部分と鍵だけが専有部で他は共用部など詳細に設定されています。多くの方がリノベーション工事を行う時に知って驚くと聞きます。

また各共用部、各施設ごとに使い方のとルールが規定されています

併せて、団体として管理組合の運営方法と手順、約束事、また管理組合内の個人の権利と義務が規定されています。

標準管理規約に記載されている内容は次のように分かれています。

管理規約の目的は皆さんが使用する共用部分を健全に管理、運用することが共同利益の増進になり、日々の生活を過ごす環境を維持するために設けられていることが理解頂けたと思います。

標準管理規約は、一棟で形成される単棟型、複数棟からなる団地型、商業施設とマンションが混在する複合型に分かれ、それぞれに標準管理規約が準備されています。

分譲が始まり、入居が始まってもマンションの使い方等で混乱が発生しないように事前に権利とルールが決める方法は理に適っていることはお判りいただけましたか?

このように管理組合の基本となる権利義務、組合の運用ルール、施設設備の使い方を細かく規定していることはわかりますがこの管理規約はいつ誰が作成するでしょうか?

確認事項

1、管理規約制定の目的は共同利益の増進、良好な住環境の維持である

2、管理規約は個人、組合員としての権利と義務が定められている

1-2、管理規約はいつ、誰が作成するの?

せっかめ分譲マンションの分譲前の所有者は土地開発会社、あるいは分譲会社です。

建物を法的に主張するために登記登録が必要になります。

この登録のことを「所有権保存登録」と登記法では言います。

建設中のマンションの壁と屋根が完成した時点で登録を行う会社が多いようですが登録時期について明確なルールはありません。

登録が済むと登記登録の「表題部」に記載されます。皆さんの登記謄本の一番上に記載されているはずです。

分譲する目的の建物の所有者が登記を行う際に公正証書で作成した管理規約が必要になります。

この時点まで管理規約は準備されています。

登記登録に必要な管理規約(原本)は公正証書による登録が必要になります。

公正証書で作成することで法的な書類として扱われます。

一度登録しても最初の区分所有者が発生するまで(分譲され購入者が登記登録をするまで)は分譲会社は何度でも内容を変更することができます。

マンション購入者が登記登録(所有権移転登録)を済ませると区分所有者となり、管理組合が自然に発生します。この時点で管理規約は組合の管理規約になり、分譲会社が勝手に内容の変更が出来なくなります。これ以降、規約に変更を行った場合は、決まったルールで記録を残す必要があり、変更方法もルールが決まっています。

土地開発会社等が作成した管理規約原本は、マンション管理組合に譲渡されます。マンション管理組合には管理規約の股間義務があり、保管者を定めます。これは管理者である必要はありません。管理組合として一名を選び保管します。(区分所有法に規定があります。)

また、規約の保管場所をマンション内の見やすい場所に掲示することも義務になっています。(ただし、掲示しなくても罰せられることはありません。)

このように管理規約は、土地開発会社、あるいは分譲会社が登記登録までには作成し、その後、マンション管理組合に引渡されます。

皆さんは購入時に管理規約を理解したかどうかはわかりませんが、購入時に管理に係る承諾書にサインはされています。これで皆さんは管理規約を受入れたことになります。

確認事項

1、管理規約は公正証書で作成された法的に有効な書類である

2、管理規約は土地開発会社等が作成し、購入者は管理規約を購入時に承諾する

1-3、管理規約の尊守義務

標準管理規約の重要性は理解して頂けたと思いますが、管理規約には次のような文面があります。

(規約及び総会の決議の遵守義務)

第3条 区分所有者は、円滑な共同生活を維持するため、この規約及び総会の決議を誠実に遵守しなければならない。
2 区分所有者は、同居する者に対してこの規約及び総会の決議を遵守させなければならない。

(区分所有者の責務)

第20条 区分所有者は、対象物件について、その価値及び機能の維持増進を図るため、常に適正な管理を行うよう努めなければならない。

皆さんの規約にも記載があると思います、確認してください。

区分所有者の皆さんは管理組合の決定に従い、日々、適切な管理に努める責務を負っていることはお判りいただけると思います。

益々、管理規約の重要性がわかりますよね。

その上、管理組合に所属していないご家族も同様の尊守義務を課せられます。

区分所有者が専有部を売却した場合の購入者、あるいは相続や贈与などで所有権を取得した者については、管理規約内で次のように規定しています。

賃借人については、入居時に管理規約に尊守する同意書の提出を必須としています。これにより賃借人、その家族も含めて管理規約への尊守を担保します。

(規約及び総会の決議の遵守義務)

第5条 この規約及び総会の決議は、区分所有者の包括承継人及び特定承継人に対しても、その効力を有する。
2 占有者は、対象物件の使用方法につき、区分所有者がこの規約及び総会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。

このように管理規約・使用細則は区分所有者以外にも居住する人が必ず守ることが義務になっています。

管理規約が皆さんにとって絶対的なルールブックになっていることを再確認して頂けたと思います。

確認事項

1、区分所有者には管理規約への尊守義務がある

2、区分所有者以外の占有者にも管理規約への尊守義務がある

3、区分所有権の譲渡者にも管理規約への尊守義務がある

1-4、管理規約の変更

これだけ重要な管理規約は、土地開発会社等が作成し皆さんに継承されます。

しかし、よく考えると土地開発会社等の人たちは、お住いのマンションに居住した経験もなく、使い勝手や利便性を実感することもなく、用法等のルールを仮想して作成しています。

そのため、居住後に住民間で暗黙のルールや自然に使い方が決まることは良くあることです。また、新しくルールを設定した方が良いと思えることも発生します。

そのため、管理規約には管理組合の同意があれば変更することを認めています。また、より詳細なルール設定を可能にするために使用細則を準備しています。

管理規約は区分所有者の人数と議決権の各3/4以上の合意、使用細則は過半数以上の合意が条件です。

この定数をハードルが高いと批判的にみる方もいるようですが、管理規約の重要性を考えれば定数が高く設定されていることは当然だと私は思います。

管理規約は公正証書で作成された法的書類です。

安易に変更すべきことであれば、住民間への周知徹底を行うための方法を検討すべきであり、制度に責任を転嫁するのは違うと考えています。

それ程、管理規約は住む人にとっては重要な約束事です。また、その約束事を守る承諾をした意味があると思います。

2、まとめ

管理規約がマンションに住む住民の方関わる重要な内容が定められていることがご理解頂けたと思います。

また、購入時に承認をした重みも感じて頂けたと思います。

初期の管理規約は、土地開発会社等が実際の使用状況を確認していない段階で作成したものであり、区分所有者の方は必要性があれば変更等を行うこともできることもご理解頂けたと思います。

これだけの制度が法的に用意されていますが、マンションの役員の方から話を聞くと「住民が非協力的で困る。管理規約の変更もままならない」と言われることがあります。

分譲マンションの購入目的は居住拠点の取得であって、決して管理組合活動が中心ではありません。この点で一戸建てで暮らす方と何ら違いはないはずです。

しかし、マンションでは住民が日々使用する共用部分に一定のルールは必要ですが、日々の生活を過ごす中で管理はどうしても優先順位も低くなり、出来るだけ負担が少なく快適な生活が維持できる程度の関りに済ませたいと思っています。

そんな思いがあることを十分に理解した上で、最低限の協力を引出すかを考える必要があります。

これを区分所有者だけに依存する、あるいは管理組合だけに求めるのは無理な話だと私は思っています。

管理組合を正しく導く指導的役割を果たす組織の存在は必要です。

本来、この役目は管理会社が請負うべきなのですが、管理会社は契約紙面に記載された内容の履行を行うことだけで済ませて、出来るだけ派生業務が少なくなるように活動しているケースを多く見ます。

これでは、制度が整っていても賢い管理はできません。

では管理会社が請負う管理業務委託契約にはどのような内容が記載されているのでしょうか。

管理規約に定められている管理実務と照らし合わせながら管理委託契約の内容を確認していきましょう。

➡ 4章 管理組合の事務管理(管理委託)とは何?に続く

せっかめメモ

不動産、マンション豆知識

皆さんは今のマンションは何を基準に選びましたか?

マンション購入の決断をした方の多くはお子さんの成長による居住面積の狭さをきっかけに購入の検討を始めた方が多いようです。

賃貸か、家を買うか、買うなら戸建てか分譲マンションか、家族で話合い、情報を集め決断する。

自宅を選ぶときにもっとも重要視するのは調査によって多少順位が前後するようですが、「環境(商業施設、学校、自然環境)」「利便性」「間取り」のようです。

最近では耐震性や災害対策なども選考基準の上位項目に位置するようになりました。

一世一代の買い物ですから悩みますよね。

自己資金はどの程度用意しましたか?

購入価格の2割、とか3割とか、中にはキャッシュで買われた方もいるようですが、逆に頭金ゼロで買う強者もいるとか聞きます。

ファイナンシャルプランナーの教科書では3割が望ましいと書いてあった記憶があります。確かに家を買うと物件価格以外に諸経費や不動産取得税が必要になります。これ以外にも多くの場合、光熱費が大幅に増加します。だって新しい家には新しい家電も増え、お風呂も大きくなりますよね。

適正な自己資金は各家庭で異なるのは確かですが、残業も最大、ボーナスも好景気などの好条件の収入を基本に計画を立てることだけはやってはいけません。後々、大変なことになります。

ちなみに賃貸物件を借りる時に不動産屋は入居者の年収を聞くことがありますよね。あれは実は賃料の目安は年収の25%以内が適正と教わるからです。

新卒者の平均年収が200~250万円だと言われていますが、5万円~6.25万円程度です。

都内ではかなり大変ですよね。

分譲マンションの主流の間取りは?

全国的には3LDK、60~70㎡が平均です。

都内では2~3LDKが多いように感じますね。ご夫婦、お子様2人が基準の様です。

4LDKになると物件数が極端に少なくなります。都内にある物件を知っていますが、かなり人気があると聞いています。

都内の一等地にも4LDK以上のマンションはそれなりにあります。部屋数は少なく、芸能人や社長さんが住むマンションですかね。

ちなみに独身用の賃貸1DKは、20~22㎡が賃貸マンション計画段階でもっとも多い物件です。少し贅沢な広めな物件を想定する場合は25㎡と計算します。

何で管理規約の保管場所を掲示するの?

はっきりした理由はわかりません。推測ですが管理規約は公正証書であり改定を繰返す可能性があります。区分所有者の管理規約の写しは分譲後に一度、配布されますがその後、改定された内容を配布する制度はありません。そのため、区分所有者が確認したい時のためかな~と考えています。

あるいは分譲マンションは売買ができます。その際に不動産業者や買主は物件の規約を知る必要があります。保管場所の記載があれば閲覧の請求をお願がやりやすい?そんな理由かもしれません。

誰が管理規約は保管するの?

区分所有法では管理者が保管すると定めています。管理組合制度を採用している場合は、管理者は理事長が相当します。理事長が保管することになります。

管理者を設置しない場合は、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。と定めています。誰かが保管者を決める必要があります。

専有部にある共用部ってどこ?

サッシはすべて共用部分となり、勝手に交換することはできません。玄関ドアも鍵(シリンダー部分)と内側の塗装部分以外はすべて共用部分です。

ベランダは共用部分で各区分所有者には専用使用権が与えられています。これは避難経路の確保の意味もあり共用部分になった場所です。

この他に排水管は横配管(枝管)は専有部でそれ以外の排水本管は共用部分となります。

詳細は必ず管理規約に掲載されています。

専有部と共用部の区分けってどうなっているの?

マンション建物は専有部と共用部以外には存在しません。必ず、どちらかに属します。

法定共用部分って何?

屋根や柱等の躯体は区分所有者が共同で所有する部分で建物を構成する重要な部分ですが、このような部分を法定共用部分と言います。

これに対して規約にここの場所は共用部分ですと指定することもできます。これを規約共用部分と言います。管理人室などが代表的な例になります。

規約共用部は登記登録する必要があります。

登記って何?

不動産についての登記はなじみがありますよね。しかし登記は不動産に限った制度ではありません。

一般にはある物、あることの権利関係などを社会に公示するための制度で必ず登録する義務があるものではありません。

そのため、登記上の権利は早く登記を行った順番で決定されます。例えば、販売会社が同じ建物を同時にA氏とB氏に間違って販売してしまったとします。

A氏は販売会社に代金を支払いました、B氏は販売会社の承認の上に所有権移転登録を行った場合、B氏は建物の所有権をA氏に主張することが出来ます。

代金の支払いより登記登録の事実の方が優先されます。不動産の権利は登記が何よりも優先されます。(一部の例外を除いて)

表題部って何?

建物や土地の場所を登録した部分です。土地と建物は別々に登記されそれぞれが単独で存在します。

土地は余程のことがない限り消滅しませんが、建物は建てなおしをすれば登記された建物は滅失します。新しく建てる場合は新たに表題部登録が必要になります。

地図上に存在する不動産を場所を記録した情報です。

それぞれの表題部には権利関係の登録する権利部(甲区)と権利部(乙区)記録が紐付いています。甲区には所有権、乙区には所有権以外の権利(抵当権など)が登録されます。

マンションの場合は、建物の表題部に規約共用部分の登記も記載されます。

公正証書って何?

法的に有効な書類として記録を残したいときに使用される書類のことです。資格者が作成する必要があり、一般には公証役場にいる公証人に依頼すると作成することが出来ます。もっとも知られているのは遺言状の作成でしょう。保存期間は20年間、登録した公正役場に保存されます。

登記は絶対にしないとだめなの?

絶対ではありませんが、一定の不動産については登記申請の義務があります。一般には自分の権利を守りたい時に本人の意思で登録します。不動産のような資産は第三者から権利を守るために登記をするのが一般的です。

一般には建物を建てる時は金融機関からお金を借りて購入費や建設費用を賄いますが、その際に抵当権を相手に提供しますよね。その権利も金融機関が権利を守るために登記します。

登記申請の義務がある不動産とは建物を新築した場合に所有者は1か月以内に建物の表題登記を申請する必要があります。

この登記登録から固定資産税等の租税公課の計算が行われます。

マンションの敷地利用権とは?

マンションの登記登録は一戸建てとはまったく違います。

分譲前のマンションの所有者はすべての専有部(部屋)を所有しています。

そのため、区分所有法の対象外です。この建物を登記する時は各部屋を区別して登録する必要はありません。共用部もありません。

しかし、分譲マンションでは個々の部屋を別々に売却するため専有部(部屋)単位に権利の登録が必要になります。また、共用部の権利を明確にする必要もあります。

特に共用部の権利は専有部の所有者全員の所有物であり、特定の領域を指定しない所有権を所有させる必要があります。

マンションの住民であれば誰でも共用部、敷地を自由に行き来できますよね。これを権利化する必要があります。

そこで生まれた制度が「敷地利用権」です。

敷地利用権は区分所有法に定義されて、その考え方を登記にも適用しました。

区分所有者は敷地利用権の所有権を持っているとしたのです。これに対してご家族や賃借人等は敷地利用権はなく、所有者から敷地使用権を与えられていると考えます。

複雑ですよね。

登記登録は所有者が勝手にできるの?

出来る権利と出来ない権利があります。例えばまったく新しい家を新築した場合は、その家の最初の所有者は本人です。不動産が登録する住所に存在していることを証明する書類を用意すれば本人単独で表題部登録と所有権保存登録ができます。

しかし、他人から家を購入した場合は、その家はすでに登記されているため、譲る人の同意が必要になります。そのためその人と一緒に登記所に行って登録を行う必要があります。登記法には旧所有者と新規所有者が同時に登記申請を行う必要があると定めています。これを登記の「同時申請の原則」と言います。

しかし、親の死亡によって遺産を継承する場合は同時申請はできません。そのような場合は父親の死亡届等の相続の事実が確認できる書類が必要になります。

ケースバイケースで同時申請の原則も運用されます。

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