委任契約の基本がわかったところで、管理委託契約書を確認しましょう。
マンション管理委託契約書は国土交通省が指針を示し、これを基に各管理会社はそれぞれのマンションに合った業務内容に変更を行う業務委託契約書を作成します。
そこで元の雛形になっている「標準管理委託契約書」の内容を確認することにします。
ほとんどの管理委託契約はこの雛型を利用して作成されています。
マンション管理にはどんな仕事があって、何を管理会社に委託するかを明確にすることで「マンション管理とは何か?」「管理会社と上手に付合うための方法」を知ることができます。重要です。
契約書の隅々まで確認して契約されている方はそれほど多くないはずです。
この機会に皆さんが管理会社と契約している管理委託契約のことを勉強しましょう。
契約書の隅々まで確認して契約されている方はそれほど多くないはずです。この機会に皆さんが管理会社と契約している管理医薬契約書のことを勉強しましょう。
1、契約書は幾つかの項目ごとに分けることができる
「マンション標準管理委託契約書」には管理業務の契約内容を以下に示す4項目としています。
- 事務管理業務
- 管理員業務
- 清掃業務
- 建物・設備管理業務
右図が今後の基本的な管理事務の業務内容になります。管理事務業務とは管理組合が行うべき仕事と考えてください。
これらの業務は毎月一定に発生する業務です。読むだけでイメージできる業務もありますが、漠然とした表現の業務もありますよね。
これらの仕事を管理会社に委託する契約がマンション管理委託契約です。
各業務は契約書内で細かく項目が規定されています。それぞれについて重要ポイントを説明します。

2、事務管理業務、基幹業務とは?
右に事務管理業務リストを表示しました。(標準管理規約より)
事務管理業務は基幹業務と基幹業務以外の業務に分かれます。
この章では基幹業務について説明します。
基幹業務*1は非常に重要な仕事で国土交通省が管理業の登録を受ける管理会社が必ず行わなければいけいない業務と指定しています。
この基幹業務は3つの仕事が含まれます。

基幹業務の内容
(1)管理組合の会計の収入および支出の調停
(2)出納
(3)本マンション(専有部を除く。以下同じ。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
国土交通省は3つの仕事を一括して他の会社に再委託委託することを禁止しています。(再委託の禁止)

なる投げはだめ!ってことです。
これが出来ると「名義貸し」も可能になってしまいます。管理組合は莫大な修繕積立金の管理も業務のひとつです。よからぬ会社の参入を防ぐためにも必要な約束事です。
3、お金の関する管理について
基幹業務には管理組合のお金の管理について(1)管理組合の会計の収入および支出の調停(2)出納を業務として定めています。
3-1、管理組合の会計の収入および支出の調停について
会計と出納の違いはせっかめメモで説明しましたがもう一度簡単に説明すると会計とは資産管理です。出納は現金と物品等の売買記録です。会費等の徴収、支出記録も含みます。
正確な会計を管理するには、厳格な出納管理が必要になります。
「会計の収入および支出の調停」ですが何ともわかりにくい言葉ですよね。特に「調停」って離婚調停は知ってるけどお金の調停って何?と思われますよね。せっかめも最初は思いました。
調停を調べると揉め事を納めることですが、主に法令によって制度化されているものを指す。増々わかりません。
と言う訳でこんなことを想像してください。
簡単説明
この夏、家族4人(ご夫婦、お子さん2名)で夏休みの旅行を計画する話合いが行われました。お父さんはのんびり近場の温泉旅行を希望し、お子さん2名は沖縄旅行が希望です。お財布を管理する奥様は予算として20万円を準備しています。お子さんの希望を叶えるには少し予算が足りません。そこで沖縄より近場で旅行代を節約できる伊豆に行く提案をしました。伊豆には温泉もあり、海もあります。
このように予算に対して希望とその費用などを考え、使い方を相談することも調停になります。奥様を理事長、お父さんとお子さん2名を区分所有者(組合員)と置き換えて理事長の仕事を管理会社が代行すると考えると分かり易いと思います。
組合員から徴収した管理費を共用部管理にどのように使うか、使い道と予算の配分の調整を行う仕事になります。
標準管理委託契約の業務項目①~③には予算案の素案、決算案の素案、一定期間の報告の3つの業務を行うこととしています。これでイメージがわかりますよね。
皆さんの毎年、総会で配布される資料に載っています。確認してください。
ポイントは素案と表現していることです。予算案、決算案の最終決定権は管理組合にあるため、あくまで基幹業務はその叩き台としての資料を作成する業務に限定しています。
予算案の素案(下図の①)、決算案の素案(下図の④)、一定期間の報告(下図③)です。

一定期間の報告(上図③)の収支状況の報告義務は管理組合からの要請があった場合の報告義務を規定しています。
(報告義務は委託契約の基本事項でしたね。)これ以外の定期報告がある場合は、報告期間の設定を契約本文中で両者で取決めます。

3-2、出納
出納は、契約には5項目が定めれています。

5項目は次のように業務内容からグループ分けすることができます。

収入に関する業務は、管理費、修繕積立金、施設使用料を徴収する業務です。
この資産から共用部に必要な経費を支払う業務が支出に関する業務です。収入と支出の記録はすべて通帳と帳簿で管理します。これが記録に関する業務になります。
言ってみれば、管理組合の家計簿を作成する業務と言えます。
皆さんが毎月支払う管理費、修繕積立金の徴収、日々発生する収益(駐車場などの利用代)や経費(共用部の水道光熱費等の様々な費用)の収支を記録する業務です。
3-2-1、管理費、修繕積立金の収入に関する業務
区分所有者の皆さんは管理費と修繕積立金を毎月支払いますが、昔は管理員に手渡しで渡していた時代もあったようですが現金は横領の可能性もあり、煩雑な作業も伴うため、近年は自動引落がほとんどでしょう。国土交通省も自動引落を推奨しています。
マンション適正化法で収入の口座管理が厳しく定められました。これにより管理会社と皆さんが支払う管理費、修繕積立金の分別管理の明確化がされました。マンション適正化法では徴収、管理方法を(イ)(ロ)(ハ)の方法に限定しています。以下国土交通省の資料を参考に説明します。

収納口座は管理費と修繕積立金を集金する口座です。保管口座は修繕積立金と管理費の余剰金(その月に余ったお金)を保管する口座です。
(イ)の方法を選択している皆さんは管理費と修繕積立金が同じ収納口座に引落されます。管理費は当月の委託報酬費、実費を差引かれた後、行く月末日までに保管口座に移し替えされます。
収納口座は管理会社が出納業務を行うために口座通帳と印鑑の保管をさせることも認めています。保管口座の通帳と印鑑の保管を厳しく禁止しているため勝手な資金移動はできない仕組みになっています。
この時のマンション管理組合のリスクは「1か月分の管理費、修繕積立金」が最高額になります。そのため、(イ)の方法で出納を行う場合、契約書の最大保証額は「1か月分の管理費、修繕積立金」になります。

次に(イ)と同様に収納口座は管理費を集金する口座です。修繕積立金は直接保管口座に引き落されます。(ロ)の方法を選択している皆さんは管理費と修繕積立金が別々の口座に引落されます。
修繕積立金を保管する口座の通帳も印鑑も管理会社が保管することを禁止しています。これにより資産の保全ができます。修繕積立金の通帳は理事長、印鑑は会計担当など決して単独でこの口座から出金する行為ができないように対策されます。
収納口座に徴収された管理費は、当月の委託報酬費、実費を差引かれた後、行く月末日までに保管口座に移し替えされます。
この時のマンション管理組合のリスクは「1か月分の管理費」が最高額になります。そのため、(ロ)の方法で出納を行う場合、契約書の最大保証額は「1か月分の管理費」になります。

最後は(ハ)の方法です。もっとも単純な方法です。皆さんから徴収する管理費、修繕積立金は収納・保管口座に引き落されます。すべてを1つの口座で管理します。管理会社は印鑑や通帳等の現金を引き出すことは一切できません。
そのため、管理会社は保証する必要がありませんが、委託報酬や実費の決済(支払い)業務が理事長から支払い指示書等を経る必要があり手間がかかります。安全ですが管理会社にとっては理事長の都合によって時間的制約を受けるため煩雑です。(理事長の処理が遅れればその分、管理業全体が遅れる可能性があります。)
(イ)(ロ)(ハ)いずれの方法も区分所有者の大切な資金を保全する対策が行われていることがお分かり頂けたと思います。
3-2-2、滞納への対応業務
次の管理費や修繕積立金の滞納への催促業務についてです。修繕積立金は予備費的な意味合いがあるため滞納があってもすぐに影響が出ることはありませんが、管理費は日々の運営費です。滞納が運営に大きく影響する可能性があります。
口座引落が主流ですから、延滞でもっとも多い理由は残高不足による引落が出来ないケースです。この場合は、翌月に2か月分を支払うなどして処理されます。
問題は、区分所有者の家計の問題で支払うお金が不足している場合です。管理会社は毎月の収支状況報告で滞納が発生している件数と区分所有者名を報告します。理事会で報告される為、当事者はなかなか恥ずかしい思いをするため滞納行為は出来るだけ避けたい思いが働き抑制すると言われています。
多くの管理組合は3カ月の猶予期間を設定しています。(特に何かに記載されているわけではありませんが、金融業界の慣例なのでしょうかね。家賃も3カ月未払いが連続すると保証会社や保証人に連絡が行きますよね)
ただし、猶予期間を長く設定している管理組合もあるようで「いずれきっと支払ってくれるよ」と思っているようですが、経験でお話しすると一度、家計が苦しくなると立ち直るにはかなりの努力が必要になります。
管理委託契約書内で滞納への請求行為を訪問、電話、書面による支払いの督促、催促と限定しています。この行為は法的に効果はなく、法的な請求前に何とかしてくださいと猶予を与えていると考えてください。
仕事の職種や景気やコロナのような災害レベルの影響により一時的に家計が苦しくなることもあります。また離婚等によって生活自体が変わるなど個人個人にはそれぞれに事情があります。その事情を汲んだ猶予期間です。

皆さんに覚えて頂きたい点は、管理会社は法的な請求まで踏み込んで催告を行うことはできないことです。管理会社はあくまでも集金の代行を行っているだけで当事者ではないことを覚えてください。(催告と督促の違いはせっかめメモで説明してます。)
内容証明による催告は、債権者である管理組合名義で行う必要があり、管理会社からの発行はできません。もちろん、書面の準備や郵送の手続きなどを依頼することはできますが、管理委託契約以外の仕事になるため別途費用も請求されます。
管理費を法的に請求するには裁判所に支払い請求を行う必要があります。管理組合が直接請求する少額訴訟などもありますが、ほとんどの場合は弁護士に依頼することになります。滞納については別な機会に詳細を説明します。
3-2-3、支出に関する業務
この業務は帳簿の作成作業です。管理費から管理に必要な実費は支払う必要があります。コピー用紙、ペンなど管理室の業務で使用する消耗品からすべて管理費から支払われます。これらの購入記録は簿記によって帳簿で管理されます。
契約書中では「甲(管理組合)の経費の支払い」に示す業務になります。
収支の記録をする方法は商法の簿記が用いられます。簿記の帳簿記入方法は、独特のルールがあります。仕訳、科目、経過勘定など商業や経済学部系の学校の出身者、あるいは自営業や会社で経理を経験している方であればわかりますが、その経験がないとわかりにくいはずです。また、賃借対照表と言う聞きなれない書類の作成も求められます。
これらについては別途説明を行います。ここで皆さんに覚えて欲しいことは、管理費等から支払われる実費はすべて記録に残されていることです。後々、何か問題が発生してもすべて履歴を確認できる状態を管理会社は最低5年間は保全する義務があることを覚えてください。
とは言え、昔のように紙の帳簿で管理することは少なくシステムが構築され、作業効率も非常に向上しています。
3-2-4、記録に関する業務
契約書中では「通帳等の保管」「甲の会計に係る通帳等の管理」に示す業務になります。
通帳等とは収納口座の通帳と出納で記録される帳簿のことを示します。これらの記録を保管することが業務になります。この記録はマンション管理組合の年度末毎に管理されます。マンション適正化法では管理会社には5年間の保管義務があります。
以上が管理組合のお金に関する基幹業務の内容です。どの業務も管理組合の資産の保全と健全な運用を求めるために作られた制度であることがわかります。皆さんの大切な資産はこのような方法で管理されています。
しかし、言い換えると管理会社が独自性を出すことが出来にくく、どの会社も個性と言う点では差が出にくい業務とも言えます。
次にマンションの維持管理・修繕に関する企画又は実施の調整について確認します。
4、修繕・保全に関する契約
契約ではマンションの維持管理・修繕に関する企画又は実施の調整は専有部には及ばないことを明確にしています。管理契約の対象が共用部、施設、敷地に限定されていることは是非覚えてください。
これは後に重要な意味を持ちます。マンション標準管理委託契約に記載されている業務内容を以下に示します。
一、乙(管理会社)は、甲(管理組合)の大規模修繕の修繕周期、実施予定時期、工事概要費用、収支予想等を記載した長期修繕計画を作成し、甲に提出する。当該長期修繕計画案は、〇何ごとに見直し、甲に提出するものとのする。
二、乙(管理会社)は、甲が本マンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により乙以外の業者に行わせえる場合の企画又実施の調整を行う。

この内容については追記します。(2022/3)
管理会社によっては大規模修繕の修繕周期、実施予定時期、工事概要費用、収支予想等を記載した長期修繕計画を管理委託契約から除外しているケースがあります。
*国土交通省の「標準管理委託契約書」はあくまでも指針であり記載内容の変更については認められています。
この場合、契約書の内容は以下の様に変更されています。(文章表現は各契約書で異なります。)
一、乙(管理会社)は、甲(管理組合)の長期修繕計画の見直しのため、管理事務を実施する上で把握した劣化等の状況に基づき、当確計画の修繕工事の内容、実施予定時期、工事概要費用等に、改善の必要があると判断した場合には書面をもって甲に助言する。
二、長期修繕計画の作成業務及び建物および設備等の劣化状況を把握するための調査・診断を実施し、その結果に基づいて行う当確計画の見直し業務を実施する場合には、本契約とは別個の契約とする。
二、乙(管理会社)は、甲が本マンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により乙以外の業者に行わせる場合の見積書の受理、発注補助、実施の確認を行う。
このような契約内容の場合は、次の点に注意する必要があります。
1、長期修繕計画の立案義務は管理会社にはない。
2、長期修繕計画の特定期間の見直し業務を行う義務はない。
4-1、大規模(長期)修繕計画立案
大規模(長期)修繕計画の立案義務と提出義務を規定しています。(契約内容によって異なるため注意してください。)
この業務も基幹業務に指定しています。
非常に重要な仕事と国土交通省は考えています。
マンション躯体は建築当初から劣化が進むと考えます。これはマンションに限った話ではなく不動産であれば宿命で、いずれは耐久年数を超え壊れると考えます。耐久年数を出来る限り伸ばすために修繕等を行います。
立地条件や用法の状況はによって〇で示される年数は変わりますが、最長でも5年に一度は見直すことを国土交通省は求めています。(2022/5追記、5年に一度を7年程度に変更)
大規模修繕計画は分譲直後の管理規約にも添付れているケースが多く、この場合、初期の大規模修繕計画は土地開発会社や分譲会社が作成しています。算出根拠は建築仕様書に記載された建材や材料の耐久年数と㎡費用になります。
また、分譲時に大規模修繕計画が作成されていない場合は、管理会社、あるいは専門業者に計画の立案を依頼する必要があります。
管理会社は日々、マンション内の巡回を行い、外壁や水漏れ等の状況を確認できる立場にあり、修繕の必要性をもっとも知る立場にあり、その都度、理事会に状況を報告する義務も負っています。

その上、設備や施設の法定検査やメンテナンスの実施状況もすべて把握する立場です。管理会計でも修繕積立金の積み立て状況を把握しています。このような状況から大規模修繕計画の立案を行うことが管理委託契約内に定めていると考えられます。(契約内容によって異なります。)
多くの管理組合は修繕積立金の実績と合わせて計画案を総会時に配布される資料で確認しているはずです。
修繕積立金の累計額が予定からズレていれば、修繕積立金の値上げの根拠になり、多くに組合員にとっては気になるデータです。
4-2、維持・修繕の企画又は実施の調整
管理会社が自社内、あるいは関連会社が行う、あるいは外注に発注する修繕、実施の調整を行う業務です。
この業務は保守点検を含むため、法定検査、自主検査、修繕対応になります。各検査の時期はそれぞれの検査により一定の範囲内で行うことが義務化されているもの、設備や施設によって一定期間に定期点検がメーカーから提案されているものがあり、管理会社は期初に承認を受けた収支予算計画に従い実施の手配をします。
設備や施設によっては、日常生活に影響を与える点検もあります。その場合は館内に日時、時間、影響を掲示する必要があります。また場合によっては全戸に配布等により周知の徹底をはかります。

ー想定される業務ー
1、法律上、義務化されている検査に関する実施の提案、日程調整
2、機器、設備ごとに必要と判断している(予算化している)メンテナンスに関する実施の提案、日程調整
3、組合員、管理員から要請、報告があった故障、破損などを修復、修繕を目的とした業務に関する実施の提案、日程調整
実施した点検、修繕記録は理事会に報告され、管理室等に記録が保管されます。この点検・修繕履歴が大規模修繕に基礎情報になります。
業務の内容は理解頂けたと思いますが、次のことも重要です。
維持・修繕の企画又は実施の調整は、原則、管理会社が理事会(理事長)の承認を受けて行われ、その都度(月単位)に結果も報告します。ただし、緊急時には理事長への報告を事後に行い、危険回避や資産保全を優先することが認められています。また、この時発生する経費等についても理事長へ請求することができます。
このようにして皆さんのマンションの維持が行われています。
事務管理業務リスト
1、基幹業務*1
(1)管理組合の会計の収入および支出の調停
① 収支予算案の素案の作成
② 収支決算案の素案の作成
③ 収支状況の報告
(2)出納(原則方式による場合)
① 甲の組合員が甲に納入する管理費、修繕積立、専用使用料その他の金銭(以下「管理費等」という。)の収納
② 管理費等滞納者に対する催促
③ 通帳等の保管
④ 甲の経費の支払い
⑤ 甲の会計に係る通帳等の管理
(3)本マンション(専有部を除く。以下同じ。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
2、基幹業務以外の事務管理業務
(1)理事会支援業務
① 管理組合等の名簿の整理
② 理事会の開催、運営業務
③ 甲の契約事項の処理
(2)総会の支援業務
(3)その他
① 各種点検、検査等に基づく助言等
② 甲の各種検査等の報告、届出
③ 図書の管理
管理会社が倒産したらどうなるの?
契約書内に保証機関の名称が記載されます。
本来契約前の重要事項説明書に記載され、説明を受けますが、契約時、入居前の説明会で説明があったはずです。
- 保証する第三者の名称
- 保証契約の名称
- 保証契約の内容
この契約内容に従い皆さんに返済されます。
管理費等(修繕積立を含む)額は国土交通省が示す3つの方法の中から1つを選び実施されます。各方法毎に管理会社に預ける額の最高額が異なります。そのため、最高額を保証機関が担保することになります。
多くの管理会社は国土交通省を示す(イ)の方法を選択しているようです。この場合、制度上は保証額は管理費の1ヵ月であることが多いようです。
国は管理会社を監視しているの?
直接国に報告義務は課していませんが、マンション管理適正化法に「マンション管理業者は、管理受託契約を締結したつど、法第七十五条の帳簿に次に掲げる事項を記載し、その事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備えなければならない。」としています。
更新、新規契約、再契約を含めて管理受託契約が締結された時には事務所に帳簿を作成しておくことを義務化しています。さらに管理組合の年度後、5年間の保管義務を課しています。
その上で管理会社に問題がある場合は指導、勧告、業務停止、登録抹消の権利を執行できることを法律で定めています。
マンション管理の会計について
マンション管理組合は非営利団体です。
法的に営利団体(株式会社)にように会社法の規制を受けてはいませんが、指針として公益法人に準拠した会計処理が要請されます。公益法人も会計は営利団体の会計ルールを原則にしています。そのためマンション管理組合も一般の企業会計と同じ会計の一般原則に基づいた方法で行うことが必要になります。そこで一般原則を守りながら公益法人の原則も取り入れる特殊な方法が採用されます。
会計の一般原則って何?
企業会計の一般原則は7つの原則が規定されています。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本・損益取引区分の原則
- 継続性の原則
- 重要性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
これに対して公益法人の会計基準は次の項目が規定されています。
- 予算準拠主義の原則
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 継続性の原則
- 重要性の原則
この両者を取入れマンション管理の会計は次のように規定しています。
- 予算準拠主義の原則
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 継続性の原則
- 重要性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
分かりにくいですよね、各原則は以下の項目に示しますね。
予算準拠主義って何?
マンション管理組合の収入及び支出は、活動(事業)計画に基づく収支予算に基づいて行わなければなりませんと規定しています。
予算は区分所有者の合意で認められるため、理事長は予算で決めた内容に従って執行を行う義務があり、予算以外の支出がある場合には、その都度、総会を開催して同意の承認を得る必要があります。
真実性の原理って何?
管理組合の資産状況を確認する財務諸表は、資産、負債及び賞味財産の状況並びに正味財産増減の状況に関する真実な内容を明瞭に表示するものでなければならない。
賃借対照表を用いて管理しなさいと言う意味です。
正規の簿記の原則って何?
管理組合の資産状況を確認する財務諸表は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳された会計帳簿に基づいて作成しなければならない。
また、帳簿の記載は発生主義の原則により記帳されます。
簿記のルールは守ること!!
発生主義って何?
家賃の支払いを例に説明します。多くの皆さんは家賃は前家賃制度で支払いますよね。来月分を前月月末までに支払う方法です。
一般会計では当月の経費に前家賃として計上します。
マンション管理会計では当月に支払った額は前払金(先払いした家賃)として計上して、実際に家賃が支払われた時期は翌月に賃料として前払金を相殺する帳簿の記載方法を採用します。
仕訳をすると次のようになります。

マンション管理組合の会計では次のようになります。

継続性の原則って何?
会計処理の原則及び手続並びに財務諸表の表示方法は、毎事業年度を継続して適用して、みだりに変更してはならない。
収支決算報告書や収支予算報告書は一度作成した書式をむやみに返納してはいけません。毎年度同じ書式で表示して継続性を持たせなさいと言う意味です。
重要性の原則って何?
重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに財務諸表の表示方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができる。
重要じゃない資料の作成は厳密性は求めませんと言う意味です。
保守主義の原理って何?
理組合の資産状況に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならないとする考え方です。
単一性の原理って何?
帳簿は一つで管理しなければいけませんと言う決まりです。二重帳簿はだめです!!ってことですね。
会計区分って何のこと?
マンション管理組合には共用部を管理する管理費の会計とと修繕積立金の会計があります。
これを一緒に管理することは認められず、分けて管理することが求められます。
また、機械駐車場を所有する管理組合では機械駐車場の経費の総額が大きくなるため別会計で管理することも認められています。
最初の年の予算案は誰が作るの?
分譲後に皆さんが入居する前にはすでに初年度の予算計画が出来ていましたよね。これは土地開発会社や分譲会社が作成したものです。(管理会社が作成するケースもあります。)過去の同等のマンションの実績から作成されますが、かなりアバウトな予算案になります。
次年度からは昨年の実績に基づいた予算案が作成され、精度がアップします。
初年度の管理運営費はどこから支出するの?
分譲後に皆さんが入居する前に一時金の徴収があったはずです。これが初年度の管理費の原資になります。入居月の当月から管理費は徴収されます。一定の余剰金がある状態で運営が始めると考えて良いでしょう。
初期の管理費は誰が決めるの?
土地開発会社や分譲会社が決定します。入居時に配布された管理規約に記載されているますよね。
一般論としては高めに設定されていることが多いようです。管理組合が運営直後から管理費に不安があるようでは皆さんも心配になりますよね。
とは言え、新築のマンションは修繕費はほとんど必要ありません。実費として掃除や管理員の駐在費を含む管理委託費がほとんどになります。
委託先の管理会社は土地開発会社や分譲会社が決めます。何となくですが高くなるのもわかる気がしませんか?
委託契約と受託契約って違うの?
同じです。業務委託は依頼する側からすると業務委託契約になります。業務委託を受ける側は業務受託契約になります。立場によって契約書の名前は違いしますが同じ内容です。
印鑑、通帳、キャッシュカード
管理会社や管理者、理事長が単独に銀行からお金を引出したり行為を禁止するために印鑑と通帳を個別に保管します。
キャッシュカードの発行は許可されません。特に(ハ)については管理会社が印鑑も通帳も保管することを禁止しています。印鑑を管理会社に預けた場合、通帳紛失を装い通帳の再発行を行い、資金の横領が行われることを防止するための措置です。
むかしむかし・・・
余談ですが、この制度が法律化されるまでは、横領や管理会社の資産と区別化できない状態がたくさんあり裁判になる事例も多かったそうです。(この背景から法整備されました。)
管理費等の表現に注意
皆さんは毎月、管理費と修繕積立金を支払っていますよね。管理費等とは、この両方のお金とマンション内で発生する使用料金の収入をすべて合わせた金額のことを示します。また管理費の余剰金を保管しておくと利息が発生します。利息も収入になります。
支払指示書は大切です
管理者や理事長が管理会社に組合口座からお金を引出す、あるいは振込を許可する書類で理事長が銀行への届出印を押印することで管理会社が支払いを代行できます。
ただし、理事長も仕事をしている方がほとんどです。そのため指示書の処理が遅れることもあります。
理事長の責任はとても大きいのです。
催告状と催促状の違いは何?
催告状は内容証明による督促のことです。期日を指定しその期限を過ぎると法的手続きに入りますと伝える行為を含むと考えてください。これに対して督促状は滞納金の支払いを促す通知です。
管理室の電気代や水道代は誰が負担するの?
管理組合が負担します。これは管理委託契約書に明記されています。もちろん、管理室も無償提供です。管理室内にある備品もすべて管理組合の所有物です。
管理会社はそれを借りている立場です。
管理費ってどんな支出項目があるの?
代表的な支出項目を以下に示します。
- 共用部電気料金
- 共用部水道料金
- 通信費(電話代等)
- 管理組合運営費
- 修繕費
- 雑費
- 委託報酬費
各組合で異なるケースもあります。また名称も管理会社によって異なります。
管理組合運営費って何?
理事会、総会開催時の資料コピー代やお茶代、ネームプレート作成費用など管理組合が運営するのに必要な費用がすべて含まれます。複写機をレンタルしてればその費用もこの経費になります。
修繕費は管理費?それとも
設備や装置が故障した時に発生する費用は管理費になります。修繕積立金とは別に管理します。修繕積立金は大規模な修繕を行うための費用であり、想定外の修理費は含まれません。
火災保険や地震保険の保険料の会計は?
保険料は管理費として計上されます。一般的に火災保険に特約として地震保険を契約します。これ以外に共用部で管理組合が加害者になった場合の保険として損害賠償保険を契約することが一般的でしょう。
大規模修繕はいつ頃行うの?
日々の管理状況や躯体の立地条件(海沿い、寒冷地などは劣化が早い)、用法によっても異なりますが概ね5年程度で鉄部(手摺や鉄部、保護塗装防水)~15年程度(外壁)と言われています。
どこを修繕するの?
大規模修繕には計画時に対象とする部位が明確に示されています。
建築工事と設備工事に大きく分類されます。
建築工事の対象となる部位は防水(屋上、ベランダ、開放廊下など)、外壁塗装(タイル補修を含む)、浴室等の専有部水回り、昇降機(エレベーター)、鉄部塗装、外構舗装部です。
設備工事の対象は照明器具、給水設備、防災設備、空調、排水設備です。この他にマンションの付帯設備により異なります。
自主点検って何?
国が定めた検査以外に設備や施設ごとに提供メーカーがメンテナンスを推奨する設備があります。特に安全面からエレベーターや自動ドアは定められた検査以外にも消耗品の確認等が重要になります。また、住民が日々の生活でよく使う設備は故障や不調は利便性に大きく影響します。そこで理事会は自主的に定期点検を行います。これを自主点検と言い、法定点検(検査)と区別しています。
以上が国土交通省が雛形として公開している標準管理委託契約に定められている基幹業務の契約内容です。
次は、基幹業務以外の業務についてです。
⇒ 3章 標準管理業務委託契約を知る -基幹業務以外の業務ーに続く