皆さんが契約している「標準管理委託契約書」とはどんな内容が記載されているのでしょうか?
契約書の隅々まで確認して契約されている方はそれほど多くないはずです。
この機会に皆さんが管理会社と契約している管理委託契約書のことを知ってください。
1、委任契約を知る
「管理委託契約書」は民法の業務委託契約の準委任契約に分類されます。
そのため、最低限の知識として委託(委任)契約を知る必要があります。
業務委託契約は第三者に仕事を代行してもらう契約です。
せっかめの簡単説明
友達同士で「あれやってくれない」とお願いした経験は誰にでもあるはずです。簡単に言うとあれが委託契約のひとつになります。大抵、無償ですよね。
頼む内容に成果物がある場合は請負契約、成果物がないようなお願いは委託契約に分かれます。「あれ作ってくれない?」は成果物あり、「あれやっておいてくれいない?」は成果物なしです。
でも口約束だけで契約書とかないよと思われるかもしれませんが、請負契約も委託契約も口約束で成立します。(これを民法では諾成契約(だくせいけいやく)と言います。)

お願い事をした場合はお願いする側を委任者、お願いを受ける側を受託(受任)者と言いますが、皆さんの管理委託契約は委任者の立場で契約します。
マンション管理組合の役員も委任契約です。役員は受託者であり、区分所有者は委任者です。わかりますか?
委任契約の基本は無償です。
理事にお金(報酬)を支払っていませんよね。しかし、法律で無償で行うことを義務とはしていません。契約書にお金(報酬)を支払うことを明記すれば報酬を支払う義務が発生します。
ここまでは理解できましたか?
委託、委任、受託、受任契約の違いですが、委託、受託契約はお願いされて受ける業務、委任、受任契約は事務的な処理を依頼することですが、ややこしいですよね。(文中、委託と委任、受託と受任がありますが、同じと考えてください。)
業務委託契約は委任契約と準委任契約、請負契約の分類されます。
委任契約は業務の達成や法的な事務登録などを目的とした仕事を第三者に代行をお願いする契約になります。
準委任契約は業務の遂行などを目的とした仕事を第三者に代行をお願いする契約になります。
よく間違われるのが請負契約がありますが、請負契約は形がある物(成果物)の制作が目的になります。
家を建てる契約は請負契約(達成物が建物)、建てた家の登記への所有権保存登録や所有権移転登録は委任契約(達成が登記登録)になります。
さらに委任契約は法的な事務処理を行う契約とそれ以外の事務の実務処理を行う契約に分類されます。
皆さんが管理会社と契約している管理委託契約は準委任契約に分類されます。
2、(準)委任契約の基本的なルールを知る
(準)委託契約は民法で幾つかのルールが決まっています。全文を理解することはありませんがとても重要です。
必要なことだけをピックアップしました、しっかり理解してください。
民法の条文は理解しにくいので管理組合(委任者)と管理会社(受任者)に置き換えて説明します。
(2021年4月、民法の改定がありました。変更内容は反映されています。)
各条文には付帯的な文章が記載されていますが、「せっかめメモ」で説明を加えますので条文を読んで「おい!!」「えっ!!」って思った時はチェックしてくださいね。
皆さんに提供される管理委託契約は国土交通省が示した「標準管理委託契約」を雛形に管理会社が作成しています。
会社により書式が違いますが、内容はほとんど同じです。
管理会社と締結する委託、準委託契約の基本的ルールは次の項目です。
委託、準委託契約の基本的ルール
1、契約した管理組合と管理会社は、いつでも互いに契約を解除することができる。
2、管理会社は管理組合の承諾があればを第三者に再委託することができる。
3、管理会社は業務を行う上で善管注意義務を負う。
4、管理会社は、管理組合からの要請があった時は報告を行う義務がある。
5、管理会社は、契約上に得た成果を遅滞なく管理組合に引き渡さなければならない。
6、管理会社は、委託管理業務にかかった経費を請求することが出来る。
7、管理会社に過失がなく、業務上で発生した損害は管理組合に請求することが出来る。
8、管理会社、管理組合のいずれかが破産手続きが開始された時、契約は解除される。
9、報酬については特約事項に記載する必要がある。
10、管理会社が業務を遅滞した時は、管理組合は履行を請求した後、相当の期間(猶予期間)を経て契約の解除できます。また、業務遅滞により発生した損害は、契約解除に関わらず請求することができます。
11、管理会社が業務を遅滞した時は、管理組合は履行を請求した後、管理会社が明確に不履行の意志を示した場合は、相当の期間の必要なく解除できる。
いろいろ書いてありますが管理組合の皆さんに知っておいて欲しいことは主に契約の解除についてです。
2-1、解除をするための猶予期間
現在の管理会社の契約をリプレース等で途中で解除する時は3カ月以上(猶予期間)前に相手に伝える必要があります。ただし、猶予期間を短縮するためにはその間の報酬を支払えば可能です。特に契約の解除に理由は必要ありません。この時でも契約を解除される管理会社には次の管理会社への引き続ぎを行う義務があるので安心してください。
また、契約書内に特約事項で契約解除の期間が明記してある場合はその期間が有効になります。
管理会社から契約の解除の申出があった場合も基本は3カ月前の告知、契約書に記載がある場合はその期間が必要になります。
管理会社、管理組合から理由に関わらず解除の申し入れを行い3か月後に解除する方法を約定解除と言います。ほとんどの管理組合がリプレース等で管理委託契約を途中で解除する際はこの方法が用いられます。
これ以外に合意解除と法定解除がありますが、これについてはせっかめメモで説明します。
2-2、管理会社が業務の遅滞をした場合の解除
管理組合に責任がなく、管理会社が契約内容にある業務の履行に遅れが発生した場合は、当然、管理組合は履行の請求を行うことになります。「〇月〇日までに履行してください」と言った請求です。
ここで重要なことは「〇月〇日までに・・・」と一定の期間を与えて請求することです。この請求は当事者間で行うことも裁判所から行うことも可能ですが、裁判所にお願いする場合は最終手段ですからまずは当事者間で請求を行うことになります。
ここからがちょっと面倒な説明になるので注意して読んでください。
遅滞不履行(期限を過ぎても実施されないこと)や債務不可能(履行が物理的に不可能な状態になること)になった場合には、管理組合(委任者)には2つの権利が発生します。
ひとつが解約の解除権です。
契約の解除は先に説明したように一定の猶予期間後に履行がされない場合に発生する権利です。
ここからは民法の改正で変わった点になります。履行請求をされた時に管理会社が「もうやりません!!」と不履行の意思を示した場合には契約はすぐに解除できるように変更がされました。
もうひとつが損害賠償請求権です。
これは損害を受けた時点から権利が発生しています。相手がその後、契約を履行しても遅れによって発生した損害は消えません。そのため、契約の解除とは無関係に賠償請求ができます。
契約を解除する権利と損害賠償を求める権利は異なる権利ですから、関連させる必要はありません。
2-3、委任契約を強制的に解除できる場合
これも覚えると何かあった時に困りません。
委託契約は原則、委任者(管理組合)、受任者(管理会社)から契約の解除をすることができます。
相手に意志を伝えることで初めて権利を主張できることは理解できたと思いますが、ここで説明するのは、意思表示をする必要なく法的に契約を一方的に解消できるケースです。このケースは次の3つです。
2-3-1、管理会社が管理業登録を抹消された場合
管理会社は国土交通大臣の承諾を受けて登録されます。この登録は一定の事態で抹消されます。一定の事態とはいろいろありますが、区分所有者の皆さんはそんな細かなことを覚える必要はありません。登録が抹消された事実がわかった段階で契約の解除を通知すれば契約は終了します。
登録を抹消されたと言うことは国土交通大臣が「管理業を行う会社に相応しくない」と判断したことになります。
当然にそんな会社に大事な資産管理を任せるわけにはいきません。契約の解除と併せて支給、預けているすべての通帳や資料の返却を求めてください。
ただし、ひとつ注意することがあります。登録の取り消しまでは至らない事業停止命令を受けた場合ですが、この場合は契約の即時解除はできません。管理会社からなぜ、国土交通大臣から業務停止処分を受けたのかをしっかり説明を聞いた上で契約の解除の必要があるかどうかを管理組合として結論を出してください。
解除の必要があると結論が出れば、契約の解除の申入れてください。この場合は約定解除(猶予期間3カ月)により解除が可能です。
2-3-2、管理会社が破産、会社更生法、民事再生の申立てをした場合
管理会社が債務超過に陥り、倒産状態にあることは間違いありません。この場合は契約の解除の申し入れをすれば即時解除ができます。
心配になるのは管理費、修繕積立金です。これについては分別管理が義務化されています。法定に守られていて、再建中でもこれらの資産は守られますが、これにも違反していた場合も考えなければいけません。そのため、国は管理費は1カ月ごとに保管口座への移動、修繕積立金については出金ができないような制度を導入しています。
最悪、管理費1カ月程度の資金流失が起きる可能性はありますが、この額についても管理委託契約書内に保全内容が記載されているため区分所有者が預かている資産は守られます。預けている方としては心配ですよね。契約の解除の際に預けている銀行通帳等の返却を受けください。
2-3-3、管理会社が銀行取引を停止された場合
管理会社が銀行を取引を停止された場合とは不渡り等の問題(2回)を起こした場合です。破産前に起きる債務不履行になります。この場合も破産、会社更生、人事再生と同様に委任者(管理組合)から契約の解除を行うことが出来ます。
2-3-4、反社会的勢力への関与
会社役員や従業員が反社会的勢力への関与が確認された段階で契約の解除ができます。これは国が定めるマンション管理適正化法に明記されています。この場合は管理業の登録も抹消されます。
2-4、再委任の契約について
マンション管理業の再委任契約のイメージは右図のようになります。
業務の一部を他の会社にお願いすること再委託、再委任と言います。
皆さんが押さえるポイントは2つです。
1、委任には管理組合の承認が必要です。
2、再委任先が起こした被害の責任は管理会社に求めることができます。
契約段階で再委託先が決定していれば契約書内に記載されます。また途中で再委託先を変更する場合については重要事項説明と契約書の再契約が必要になります。

再委託先が皆さんに被害を負わせた場合、委託先への責任請求ができるのはもちろんですが、管理会社への責任を求めることが出来ます。損害請求も同じです。
2-5、報告義務
管理組合(委任者)から状況の報告指示があった時は、管理会社(受任者)は報告義務があります。また、契約終了時には業務の終了報告を行う義務もあります。
委託契約の報告義務の基本は以上の2つですが、マンション管理委託契約の場合は、契約書内に定期的な報告義務を特約事項として定めるのが一般的です。管理組合の規模によりますが標準委託契約では1カ月毎に報告することを明記しています。
管理組合は各組合の年度末に区分所有者に対して収支決算報告を行う義務があり、管理会社がサポートをします。(実際資料の作成等は管理会社が行います。)
そのため、収支決算報告後に契約書内記載された業務により作成した資料等を管理組合に提出します。
皆さんに覚えて欲しいことは、疑問に思った点があれば管理会社に資料提出の請求や報告を求める権利があることです。
2-6、善管注意義務について
聞きなれない言葉ですよね。
民法第400条にある「善良なる管理者の注意義務」に記載されている条文です。
委託契約では受任者に求められる義務の1つで、債務者の職業や社会的・経済的地位に応じて、取引上一般的に要求される程度の注意のことをいうと記されています。
管理会社に在籍した経験者として言えることは、管理会社はこの義務に非常に神経質です。
理由は義務である以上、履行の義務があり不履行による賠償請求につながる危険性があることにあります。
よく聞く話として「台風の接近」が想定された場合、管理員に会社から「強風による物干しざおや共用廊下の傘等の危険性に関する注意」を掲示するように連絡があります。これは台風の接近が想定できる以上、危険の通知は善管注意義務に入ると考えているからです。掲示をせずに万が一事故等が起きた時の予防線とも言えます。
これは一例ですが、階段に段差がある場合などの事前に想定できる危険については管理会社は善管注意義務があることは住民として知っておくと良いでしょう。
2-7、委任者(管理組合)の義務について
委任者(管理組合)である皆さんにも知っておくべき3つの義務があります。
2-7-1、報酬を支払う義務
契約書に定めた報酬を決められた期日までに支払う義務があります。しかし、実際には管理費を預けているため理事長が「振込指示書」等に記名押印することで報酬は支払われます。
管理費の未納が多く不足するようなことが無いように注意は必要になります。
2-7-2、前払いや必要経費を支払う義務
管理会社から必要経費の支払い請求があった場合や業務で発生した経費が請求された時は、その期間の利息を含めて支払う義務があります。これも管理費を預けているため、その時々で管理会社から発行される「振込指示書」等に理事長が記名押印することで報酬は支払われます。利息が請求されることもありません。
2-7-3、管理会社が過失なく賠償請求を受けた時に保証する義務
管理会社に責任がない(民法では無過失と言います)にも関わらず損害賠償請求を受けるケースがあります。
具体的には理事長でもない人が理事長を名乗り第三者と勝手に契約をしたり、管理会社が手配した修繕工事が区分所有者の過失により業者に被害が発生してしまったケース。また、管理費が不足したため未払いにより管理会社が利息等の請求を受けた場合など特殊なケースですが、管理会社も保護されるべき時には保護する必要があります。
このような場合は、管理組合として管理会社に賠償請求額を代償する必要があります。

ここまで管理組合が管理会社と締結する委託契約について、必要と思われる内容を中心に説明を行いましたか、理解頂けましたでしょうか。
できるだけ分かり易い言葉で説明したつもりですが力が及ばなかった時は「ここがわからない!!」「ここをもっと詳しく説明して!!」などの要望は事務所あてにメールをください。改善します。
では、いよいよもっと具体的に管理委託契約の内容に踏み込んで行きます。
皆さんはお手元に「重要事項説明書」「管理委託契約書」を準備して読んで頂けるとより実感しながら理解できると思います。

契約解除って酷くない!
「やーめた!!」と急に契約を解除されたら迷惑ですよね。そこで解除する場合は、相手に3か月の告知期間が必要になります。
また、解除によって相手に迷惑が発生する場合は損害賠償をする必要があります。もちろん、業務に支障が生じないように引継ぎを行う義務もあります。
簡単に解除はできるわけではありません。
管理会社からの契約解除ってあるの?
ほとんどありませんが管理組合、住民があまりにも理不尽な要求をする場合や社会的常識を大きく逸脱した行為が横行するような場合には管理会社から契約解除の申出がある可能性があります。特に採算割れになるような大幅な減額要求を繰返すと管理会社も手を引くケースはあると聞いています。
追記(2022/3)
最近は契約の更新をしない管理会社も多くなっています。理由は人手がかかる割に儲けがないため、極端な値下げや過度な業務要求をする管理組合は契約をしない流れがあります。
合意解除って何?
合意解除は一方から契約の解除の意思表明があった時に、相手が「わかりました、解除に応じます」と合意する方法が合意解除と言います。
この時は猶予期間の必要はありません。すぐに契約を終了することが可能です。この時でも引継ぎの義務はあります。
法定解除って何?
お手元にある管理委託契約書にある契約の更新について記載がありませんか?
契約期間が終了する前に相手に契約継続の意思を伝えると前契約と期間以外を継続する旨の条文が記載されているはずです。
この継続の意思を伝えずに契約が終了することを法定解除と言いますが、せっかめが知る限りこの方法で解除に至ったケースは知りません。
契約更新の話合いが不調に終わっても1カ月程度のその間の暫定的規約(短期契約)をすることを認める条文も併せて記載している場合がほとんどで契約の解消まで発展しないように配慮がされています。
この時も引継ぎの義務はあります。
契約終了期日を忘れるとか・・・そんな管理会社がある時は契約の見直しをした方が良いかもしれません。
会社更生、民事再生って何?違いは?
どちらも破産手続きのひとつです。どちらも「再建型」と言われ倒産させるのではなく、もう一度負債を処分して債権を行うことを前提にしています。両者の一番の違いは誰が再建を主導するかです。会社更生は大企業を対象にした方法で更生管財人が財産の清算を行います。これに対して民事再生は企業の大きさに関わらず中小企業や個人でも利用でき、裁判所が主導して財産の清算を行う点です。処理期間も全く違います。
再委託って何?
受託した契約を受託者(管理会社)が他の人に仕事の全部、あるいは一部を委託しなおすことです。ただし、勝手に他に人に仕事を委託しなおすことはできません。必ず委任者(区分所有者、管理組合、理事長)の承諾が必要になります。
管理委託契約の再委託の制限
国は管理委託契約で3つの業務を基幹業務としています。
- 会計業務
- 出納業務
- マンションの維持・修繕の企画、実施の調整
この3つの業務の1つでも行っている会社を管理会社としてました。その上で基幹業務のすべてを1社に再委託することを禁止しています。この意味は中間搾取(手数料だけ儲ける行為)を禁止する意味があると考えてください。
会計と出納って何が違うの?
違います。会計は管理組合の資産の管理のこと、出納はお金の動き(金銭と物品の流れ)を帳簿で管理することです。会計管理を行うためには出納業務が必要になります。
管理業って誰でもやれるの?
個人でも出来ます。しかし、社会的信用が高い管理業者になるためには国の登録制度への登録が必要になります。
皆さんも大切な管理費と修繕積立金を預ける以上、信頼できる会社を選びたいですよね。
国の登録制度に認められるには経営基盤や前科、反社会的勢力との関係を一定期間(5年)以上無関係であること、管理業務主任者の配置義務があります。
登録すると毎年国に報告する義務も生じます。その上、何か問題を起こした時には、業務停止命令やもっとも重い場合は登録の抹消までされます。
管理会社の業績はチェックが必要?
出来れば確認しておくべきでしょう。
皆さんが契約している管理会社の業績については管理会社の事務所で営業時間内であれば閲覧を要求できます。この要求を拒否することはできず、閲覧用の資料を常設しておくことを国土交通省は義務化しています。違反すると業務改善命令等の勧告を受けます。
倒産って事前にわかるの?
う~ん、はっきりお答えできません。知る限り従業員であっても倒産をテレビ等で知ることは珍しいことはありません。経営陣も何とか続けられる努力をするため最終的な倒産は決済当日になることが多いと聞きました。
マンションの管理組合が事前に知ることは難しいのかもしれません。
反社会的勢力って名簿があるの?
これについては調べたことがありますが明確な答えはわかりませんでした。ただ、特定の人物が反社会的勢力に指定されているかどうかは警察で相談できるとのことです。
再委託時の責任の所在
管理会社が再委託する時でも管理組合に最終的に責任を負います。
再委託するのは管理会社の都合であり、管理組合にとっては契約書に定めた業務を確実に履行してくれれば良いことです。再委託は認めるけど、責任は契約当事者として管理会社が負うべきと考えます。
再委託先の過失で区分所有者等に損害が出た場合の損害賠償請求は当事者(加害者)と管理会社に行われます。
当事者に支払い能力がなければ管理会社が支払う義務があります。(実際は両者で話合いが行われるのでしょう)被害者に支払った後に当事者に管理会社が請求することも可能ですがそのことは被害者には関係ないことです。
区分所有者からの直接質問について
区分所有者が管理会社に直接質問することは可能か?また、質問があった時にその都度、個別に区分所有者への説明責任(報告義務)があるかと言うとありません。
質問すること自体は可能です。また、理事会や理事長に質問することも可能です。管理会社は質問への回答を理事長、あるいは理事会に回答します。契約の当事者間で行われると考えてください。
理事会や総会では管理会社が直接回答することはよくあることなんですけどね。契約ルールとしてはこのように解釈されます。管理会社によっては個々に対応するケースもあるようですけ。
善管注意義務をもっとわかりやすく
マンション適正化法70条(業務処理の原則)に記載されています。
信義誠実の原則って聞いたことありますか?契約は約束です。約束は当事者が信頼を裏切らないように誠実におこなうことを大原則にしています。そのため民法では契約(約束事)の大原則としています。
「当事者は権利の行使、義務の履行にあたっては、信義に従い誠実に行わなければならない」
このひとつに善管注意義務があります。
善管注意義務を怠ると損害賠償や契約の解除ができるので軽んじてはいけない義務です。
委託契約って無料なの?
委託契約の基本は無償です。また諾成契約と言って口約束で成立します。
「ねーこれやってくれない」「いいよ」って仕事上、あるいは私生活で同僚、友人などに頼みますよね。それが委託契約です。
理事長や理事、監事も委任契約になります。契約書などは作成しませんよね。それでも契約は成立して委任者、受任者にはそれぞれ責任が生じます。また、報酬も一般的には無報酬ですよね。もちろん、有償にすることも可能ですがその場合は契約が必要になります。規約や総会で決定することもできます。
このように私生活には民法で規定されている契約がたくさんあります。中高大学時代にもっと真面目に勉強しておけば良かったと資格試験の時は深く思ったことを思い出します。
せっかめから面白い本を1冊紹介します。
2018年改訂第4版「民法がわかった」著者:田中嗣久、田中義雄
決して読みやすい本ではありませんが、民法の専門書としては比較的簡単に書かれている本で資格試験の時に利用しました。図書館にもある本です。家庭に1冊あると便利だと思いますよ。各章毎に「基本知識チェック」問題があり面白い設問が付いています。「へぇ~」「なるほど」と思える内容がたくさんあります。