本章では基幹業務以外にどんな内容を含んでいるのかを確認します。
基幹事務以外の事務管理業務は標準管理委託契約書にどんな内容が記載されているのでしょうか?
1、基幹業務以外の業務とは
右に事務管理業務リストを表示しました。(標準管理規約より)2
(1)理事会支援業務
(2)総会の支援業務
(3)その他

契約書には3つの項目が定められています。それぞれの項目を確認します。

2、理事会支援業務とは
理事会支援業務には3項目が定められています。

2-1、管理組合等の名簿の整理
甲(管理組合)の組合員等異動届に基づき、組合員及び賃借人等の氏名、連絡先(緊急連絡先を含む。)を記載した名簿を整備する。
(マンション標準管理委託契約書より)
区分所有者名簿と賃借人名簿を整備する業務です。
区分所有者の権利の台帳になるため、非常に重要な名簿になります。特に専有部を複数人で共有する場合は、それぞれの氏名、住所、連絡先の登録と権利執行者を指定する必要があります。
区分所有者は分譲時に作成を行いますが、新しく入居する区分所有者の追加、また売買等で権利を譲渡した場合、変更届出が必要になります。売買期間に転出する場合も区分所有者の権利は有しているため、連絡先の変更届が必要になります。
これ以外に賃借人にも住民名簿への登録が必要になります。また、賃借人は規約、使用細則への同意書、反社会勢力との関係の否定を記名、押印することが義務であり、その書面と合わせて管理されている組合が多いと思います。
いずれも日々の管理項目であり、変更等は遅滞なく行う必要があります。
区分所有者を含む住民名簿については管理組合によって対応はバラバラです。
家族や同居人などの情報は記載する義務はありません。また、区分所有法の範囲外であること、個人情報保護法から組合員、管理会社も積極的でない組合、住民も多いようです。しかし、現在、国が定める準備を進めている管理計画認定制度では住民名簿の整備も要件案のひとつに上がっています。
災害や防犯の観点から、マンション全体の人数の把握、年齢層の把握なども必要になり、管理組合によっては上手にデータを使って生活向上を行っている管理会社もあります。
管理会社は住民の個人情報を管理するため個人情報保護法の対象事業者になります。そのため、従業員を含め全社で積極的な社員教育を実施ています。
2022年4月追記
区分所有者名簿は3種類で構成されていると考えてください。
1、分譲時に提出する区分所有者名簿
2、区分所有者の転出転入による区分所有者変更届
3、賃貸借契約に基づく居住者変更届
分けて、あるいは1冊で管理していても問題はありません。
注意する点は変更があった時に、速やかに変更内容が更新されていることが重要になります。
また、2022/4から実施された管理契約認定制度でも合格要件になっていますが、住民名簿(家族等の個人情報)までは要求されていません。あくまでも区分所有者、賃借人が把握されていることを要件としています。
2-2、理事会の開催、運営業務
一 甲(管理組合)の理事会の開催日程等の調整
二 甲の役員に対する理事会招集通知及び連絡
三 甲の求めに応じた理事会議事に係る助言、資料の作成
四 理事会議事録案の作成
(マンション標準管理委託契約書より)
改正後(2018年)
三 甲が乙の協力を必要とするときの理事会議事に係る助言、資料の作成
四 甲が乙の協力を必要とするときの理事会議事録案の作成
なお、上記第3号及び第4号の場合において、甲が乙の協力を必要とするときは、甲及び乙は、その協力方法について協議するものとする。
コメント追加
ただし、あらかじめ定めた理事会等支援業務の頻度を超える場合の費用負担については、別途、甲及び乙が協議して定めるものとする。
一、二、四は区分所有法、標準管理規約に規定されているルールに則り、理事会開催日を決め、招集通知の発行を行うこと、議事録案を作成、理事長の承認を貰い保管することも含めてマンション管理の基本です。
2-2-1、理事会の開催日程等の調整
理事会も総会に準用されているため過半数以上の理事の参加が成立条件になります。そのため、管理会社は各理事に日程と都合を確認し、成立できる日程から開催日を決めます。成立しない理事会で決めた内容に効力はありません。
2-2-2、理事会招集通知及び連絡
日程が決まると役員全員(監事が設置されている場合)に通知をします。一般には戸別に通知しますが原則書面で行います。開催日を含まず1週間前に連絡する必要があります。理事会までの猶予期間が7日と考えます。例えば25日に実施する場合は17日に投函する必要があります。
多くの管理会社は、数日前までに当日参加の意志を最終確認します。仮に人数が不足する場合は開催日の変更、欠席者への参加の呼びかけを行い理事会の成立を目指します。
2-2-3、理事会議事に係る助言、資料の作成
標準管理委託契約書でもっとも不明確で広範囲の業務になります。管理会社は理事長と事前打ち合わせた上で、当月理事会の決定事項、検討事項、あるいは前月から持ち越された案件について必要な資料の作成を行います。
2022年4月追記
この部分については2018年の改定で改正された内容を示しましたが、あまりにも曖昧で管理会社も管理組合も解釈に苦慮していた部分です。
特にどこまで無料で行うのか?どこまで要求できるのかは腹の探り合いであったとも言えます。
互いの要求は互いで相談して決めなさいと書かれたわけですが、頻度はそれぞれの感覚で判断が分かれるとも思えます。皆さんはどう感じますか。
例えば、改修等の見積の提出や館内で発生したクレームや問題点の解決に関する助言がこれにあたります。他の業務のように決められた業務の報告とは異なり、管理会社、特に担当者の技量や熱意が大きく影響する業務です。
非常に重要な部分なので2つの具体的な事例でその例を説明します。
(ケース1)前月理事会で、設備の一部が故障、修理した結果、交換時期であることが判明し、理事会で管理会社に設備交換の見積依頼がありました。

①は担当者は以前修理を行った会社に見積りを依頼、結果を理事会に提出しました。
②は修理会社とそれ以外に利便性を考慮した近隣に営業所がある会社と設備メーカーに見積りを依頼し、比較表を作成、その結果を理事会に報告しました。
いずれも結果は、工事価格、状況への優位性から以前修理を行った会社に同じでした。
皆さんが理事の立場で報告を聞いた時、どちらが納得感、安心感が得られますか?
(ケース2)先月館内の広場で騒音と子供が自転車で遊ぶ行為にクレームが管理会社に寄せられました。(実際は常駐の管理員にクレームがありました。)このクレームを受けて理事会へ管理会社から経過報告と助言が行われました。

①は管理会社にあるマニュアルに従い、「騒音注意」の注意喚起の張り紙の掲示を提案しました。
②はクレーム当事者から事情を聞き、子供の遊ぶ声の騒音ではなく、住民が往来する敷地内を自転車で走行することが騒音を生む原因になっていることがわかり、館内での自転車の乗車移動を禁止する掲示の提案をしました。
いずれの方法も間違いではありませんが、住民に与える印象、理事等に与える印象は全く違います。
2つの例を示しましたが、助言業務は管理会社、担当者(管理員を含む)の対応により理事や役員、住民へ与える印象は全く違い、管理会社の評価に大きく影響します。
2-2-4、理事会議事録案の作成
理事会の議事録に書式に決まりはありません。多くの管理会社は決まった雛形があり、それに従い記載された議事録が作成されます。議事録は会議の開催日時、開催場所、参加者、前月度月次報告、議決事項、検討内容、持ち越し事項、次回開催日程などが確認することが目的です。
議事録にも決まりがあります。理事長の署名押印、参加役員2名の署名押印を行い、規約と同じように保管する必要があります。この資料は関係者から閲覧請求があった時に開示する義務があり、これを理由なく怠ると罰則があります。
2022年4月追記
国土交通省のコメントに以下の分が追加されました。
(追加文)議事録については、議事の経過の要点及びその結果を記載する必要がある。「議事の経過」とは議題、議案、討議の内容及び採決方法等を指すが、それらの要点を記載することで足り、すべての発言を一言一句記録するものではない。しかし、議事に影響を与える重要な発言は記録することに留意する。
また、理事会議事と同様に管理会社と管理組合の協議が追加されています。
2-3、甲の契約事項の処理とは
甲(管理組合)に変わって、甲が行うべき共用部分に係る損害保険契約、マンション内の専有使用部分の契約、第三者との契約等に係る事務を行う。
(マンション標準管理委託契約書より)
保険会社への請求に必要な書類の作成、区分所有者、賃貸者が使用料を支払う専用庭の契約書等の事務処理、保管業務などを行う契約内容です。
特に問題が発生する要素が少なく、業務内容も明確です。
注意することは、契約内に示されている第三者との契約は、理事会の代表者で理事長が契約当事者になります。理事長が契約した内容は区分所有者にも効果が及びます。
また、共用部に掛けた火災保険、地震保険、損害賠償保険の保険金の受取りについては理事長が権限を有しているが区分所有法に規定され、理事会の承諾なしに支払い請求を行い、受領することができ、管理費に充当されます。この業務も管理会社が手続きを代行することになります。
区分所有法では、これ以外に不当利益による返還金の請求、受領と定めています。この不当利益についてはせっかめメモを参照してください。
3、総会の支援業務とは

基幹業務以外の業務に含まれる総会の支援業務についての説明です。
組合員全員の参加が可能な年一度は行われる総会を支援する業務についての契約です。
契約書には6項目が定められています。この6つ項目については標準管理委託契約書、コメントにも項目以外の説明の記載はありません。(改定で一部コメントが追加されました)それぞれの項目を確認しましょう。

3-1、総会の開催、運営業務
総会は各マンション管理組合の年度末後2カ月以内までに行う必要があります。
ほとんどの組合は年度末翌月には行っているようです。
一般的な総会開催前後の理事会の業務と管理会社の役割を示します。
総会の準備はおおむね開催月の2~3カ月前から始めます。
3-1-1、総会の日程の掲示、次期役員立候補者の募集
総会の日程を館内に掲示します。併せて次期役員の立候補者を募集します。
立候補者がいれば良いのですが、輪番制が導入されいる例も多く、形式的な意味合いも多いようですが組合員の立候補意思を無視はできません。
3ー1-2、次期役員の決定(2カ月前理事会)
2カ月前に開催する理事会では、次期役員の候補所を確認します。出来るだけ組合員の負担を公平にするため、また役員になることにより管理組合の運営を知ってもらうためにも出来るだけ初めての方を選びます。輪番制の場合は各階から1名など各理事会とも工夫をされているようです。
理事会後、管理会社は候補者へ就任の打診をします。併せて次月理事会への参加を要請します。候補者が高齢や家庭の事情で就任を断る場合には理事長がその妥当性を判断して他の方に依頼をします。
2カ月前に次期役員候補を選ぶ理由は、役職の決定、特に理事、監事は総会で選任されるため、事前に意思確認を行い、円滑な総会運営と管理組合の運営をするためです。
3-1-3、議決案件の確認(2カ月前理事会)
議決案件で管理費や修繕積立金の改定、使用細則の改定、追加、廃止など組合員の承認が必要な案件を整理する必要あります。
また特別議決案件は、区分所有法で定められた組合員数、および議決数が3/4を超える賛成が必要になる議決案のことです。「規約の改定、追加、廃止」をはじめ8項目が決められています。この8項目に該当する議決案件がある場合は準備を行う必要があり、時間がかかるため2カ月前の理事会で確認を行います。
もっとも皆さんが多く関与する特別議決は「規約の改定、追加、廃止」でしょう。規約は住民生活のルールを決定する重要な判断です。むやみに行うべきではなく、住民の総意を得られる可能性について事前に確認する必要があります。
そのために住民への意識調査や規約変更箇所の明確など作業も多くなります。そのために総会開催2カ月までには確認をすべきです。
3-1-4、管理委託契約年度末報告(1カ月前理事会)
総会1カ月前は管理組合の会計年度末になります。そのため、管理会社から管理委託契約の年度末報告が行われます。
報告には「事業報告」「決算報告」「長期修繕計画(契約によって異なる)」が含まれます。
管理会社は監事向けの資料を事前に準備します。
監事はこの報告を受けて監査を行い、問題が無ければ監査報告書への記名押印を行います。
3-1-5、管理委託契約再契約打合せ(1カ月前理事会)
併せて次期管理委託契約書の更新、あるいは再契約の事前打合せも行われます。
管理会社から再契約に関する打診や契約内容の確認は契約終了の3カ月前に理事長に書面で提出されます。
翌年の契約については自動更新はありますが、契約期間以外に変更がある場合は、理事長(理事会)に対して重要事項説明を行った後に、総会の承認が必要になります。
特に価格が高くなる場合、管理組合に不利になる契約変更を行う場合は新規契約と同様に組合員への収容事項説明書の配布、説明会の開催を経て総会の承認を得る必要があります。
*管理委託契約の内容とは関係ない情報です。管理委託契約の再契約、更新については別な機会に説明します。
3-1-6、次期役員の役職と引継ぎ(1カ月前理事会)
就任の意思確認が済んだ候補者は理事会に参加をお願いします。この場で理事長や副理事長、監事、会計担当などを決めます。監事は総会決定事項ですが候補者をこの時点で決めてしまいます。
次期役員には理事会から当年度の運営状況の説明や検討中の案件を引継ぐ説明が行われます。
3-1-7、議案書案の作成(1カ月前理事会)
理事会は総会で配布する議案書の作成を行います。
現実には管理会社が草案を作成します。
具体的に議決項目と説明と承認要件は右表に示しました。
各議決書項目は議決案件番号で整理されます。第一号議決・・事業報告などの名称を付け、総会の円滑な進行をするためにいろいろな準備が進みます。
理事会で最終確認を行った後、総会2週間前までに管理会社が最終版を作成、理事長の承認を受け、議案書として印刷、配布準備します。
議案書項目
- 事業報告
- 決算報告
- 特別議決・普通議決
- 長期修繕計画
- 次期事業計画案
- 次期繰り越し案件
- 監事報告
- 管理委託契約
- 次期役員案
3-1-8、監事報告書の準備(総会当月)
1カ月前の理事会で監事の監査は受け承認を得ています。これを書面に残す作業を行います。監事は管理会社が準備した「監事報告書」に記名押印を行います。
3ー1-9、総会議案書、出席票、議決権行使書、委任状の配布
総会議案書は総会開催日の2週間前までに配布します。(3-3、会場の手配、招集及議事書の配布に含まれます)
これに併せて総会への出席票、議決権行使書、委任状の配布の配布を締切日付きで配布します。
*総会の成立要件を確実に把握するために出席票は必要になります。
3-1-10、総会議事進行の打合せ
(3-5、会議議事に関する助言)を含む業務になります。円滑な総会の進行を行うための進め方のレクチャーです。
3-1-11、出席票締切、事前集計、交渉
総会出席票の提出期限後に管理会社は事前集計を行います。総会の成立要件の確認、各議決案件の可否の状況を含めて集計します。
総会要件に満たない場合は、未提出の方への提出の依頼、当日参加意思の確認を行い総会が成立させるために組合員への交渉を進めます。
3-1-11、総会開催
総会開催当日は会場の設置をはじめ、開場後の最終参加者の集計を行います。
総会は理事長の開会宣言で始まります。この際、参加者から2名、議事録への署名押印者をお願いします。(理事や監事である必要はなく組合員であれば問題ありません。)
議事進行は原則、理事長が行いますが管理会社は裏方として総会の進行がスムーズに進むようにサポートを行います。
各議案毎に議案の内容説明、質疑応答、議決を行い、総会は閉会宣言で終了します。
管理会社はオブサーバーとして参加しますが、管理会社自体も管理委託契約の再契約、更新の承認を組合員から得る必要があり総会前に説明会を開催し、総会で承認を得ます。
3-1-11、集会決議報告の掲示
管理会社の仕事は総会後も続きます。会場の後片付け、集会議決報告を作成し当日中に館内に掲示します。
3-1-12、総会議事録案の提出(総会後1週間)
総会の結果は管理会社が総会議事録案を作成し、理事長の最終確認を得た後、理事長、指名した組合員の承認印を受けます。原本は議決行使書、委任状と一緒に保管されます。
3-1-13、総会議事録の配布
承認を受けた総会議事録は管理会社が全組合員にコピーを配布されます。
ここまでが総会開催、運用業務の流れになります。
3-2、次年度の事業計画案の素案作成

議案書には来期の理事会の活動計画が必要になります。
総会開催1カ月前の理事会までに管理会社が作成を行います。併せて活動計画に合わせた次年度の収支予算計画案を作成します。
この業務は基幹業務であり、この予算計画は次年度の事業計画から作成されます。
来年は理事会が何をテーマに活動を行うかを工程表として作成します。各工程で想定される費用を予算化します。これが素案の作成業務になります。
基幹業務でも説明した収支予算計画~収支決算報告までのフロー図を示します。
一般には大規模修繕工事前後年度には大きなテーマがありますが、通常年は前年を踏襲する内容になります。
しかし、総会の議事録に毎年のように次年度案件を繰返すケースを多く見かけます。特に駐車場の利用状況の改善や駐輪場の管理など大きな費用が伴う案件を持ち越す傾向も多くあります。
是非、理事の皆さんには先送りをせずにテーマを明確にした上で上手に管理会社を使いこなす術を身につけて欲しいと思います。
3-3、会場の手配、招集及議事書の配布(3ー1-9)
総会議案書は総会開催日の2週間前までに配布します。これに併せて総会への出席票、議決権行使書、委任状の配布の配布を締切日付きで配布します。
出欠表で総会に参加する人数が把握できれば会場の手配を行いますが、数日前に大きな会場を押さえることは大変です。一般的には前年度の参加実績から会場を予約します。町内会館や区の施設を借りる場合が多いようです。
*総会の成立要件を確実に把握するために出席票は必要になります。
3-4、組合員の出欠の集計等(3-1-11)
総会出席票の提出期限後に管理会社は事前集計を行います。総会の成立要件の確認、各議決案件の可否の状況を含めて集計します。総会要件に満たない場合は、未提出の方への提出の依頼、当日参加意思の確認を行い総会が成立させるために組合員への交渉を進めます。
総会当日も総会の開会宣言前に各数を数え総会の成立を確認する作業になります。議決権行使書は当日持参することもできるため、開会宣言前に最終集計しその結果を報告します。
また、各議案毎に議決を図りますがその集計も管理会社が集計します。
3-5、会議議事に関する助言
総会を開催するにあたり円滑な進行がわれるように管理会社が全般を支援することです。総会の開催について限定的と捉える方もいますが、総会では区分所有者から質疑があり、これに対応することを指していると考えるべきでしょう。
簡単説明
国会で大臣が野党等から質問があり、後方に控える各省の職員が資料を示す風景はよく見かけますよね。大臣が理事長、各省の職員が管理会社、担当者と考えると役割が理解できるのではありませんか。
総会の議長は一般的に理事長が務めますがなかなか人前にしゃべる機会がない人や苦手な方も多く、そのため、総会前は理事長は管理会社から進行表と発言表をレクチャーされます。その中で想定質問も準備します。
また、総会は年に1度の開催が多いため、期中に規約の改正や追加、管理費の増額、修繕積立金の増額など組合員にとっては大事な案件であり質疑も多くなりますよね。
円滑な総会の進行にために管理会社は想定される質問や回答についてレクチャーを行います。ほとんどの資料を管理会社が作るわけですから当然と言えば当然ですが理事長も大変です。
3-6、総会議事録の作成(3-1-12)
総会の結果は管理会社が総会議事録案を作成し、理事長の最終確認を得た後、理事長、指名した組合員の承認印を受けます。
議事録の書式は定めはなく、管理会社毎に雛形を準備しています。
議案毎に質疑応答の概要が記載され、議決集計数と承認、否認の結果を記載します。それ以外に新任理事の一覧表、財務指標(収支決算報告書、賃借対照表、財産目録、口座残高書面)、修繕計画表、来期の収支予算案など必要な書類はすべて添付されます。
以上が総会の総会の支援業務になります。管理会社が担当する業務の多さは理解頂けたと思います。契約書ではこの業務を一文で表示しています。
4、その他に記載された内容とは?
理事会、総会の支援業務以外に次の3つについて契約内容が記載されています。

それぞれの項目について確認しましょう。
4ー1、各種点検、検査等に基づく助言等
管理対象部分に係る各種点検、検査等の結果を甲(管理組合)に報告すると共に、改善等の必要がある事項については、文章をもって、具体的な方策を助言する。
(マンション標準管理委託契約書より)
管理会社は法定検査、自主点検の手配、立会、実施結果の報告の受理のすべてを行います。報告書には、修理が必要な箇所や症状が指摘されています。この結果を受け、管理会社は理事会に報告、改善提案を含めた対策を書面で提出します。

この契約項目にも「助言」が含まれています。管理会社、担当者によっては、報告書に書かれた内容を報告するだけにとどまるケースもありますが、設備や施設、建築の専門的な知識を有する管理会社、担当者であれば効果的な提案を行うことになります。
点検や検査で見つかる情報は、マンション躯体、設備や施設の耐久年数を伸ばすだけでなく、組合員の財産の維持、良好な住環境の確保に重要です。
この部分については管理会社の能力、経験に依存する要素が大きい契約内容と言えるでしょう。
4-2、甲(管理組合)の各種検査等の報告、届出
一 甲に代わって、消防計画の届出、消防用設備等点検報告、特殊建築物定期調査又は建築設備定期検査の報告等に係る補助を行う。
二 甲の指示に基づく甲の口座の変更に必要な事務を行う。
三 諸官庁からの各種通知を、甲及び甲の組合員に通知する。
(マンション標準管理委託契約書より)
4-2-1、法定点検・検査の補助
消防法や建築基準法、都市計画法で示されている検査に関する実施と結果報告に関する契約内容です。具体的には4-1と同じ日程調整、受入れ・立会い、検査結果の受領・保管です。法定点検は実施年数が決められています。
各検査結果は、問題点があれば指摘され、改善が求められます。この結果を受けて改修や修繕提案を理事会に行う業務になります。また、検査結果は保管の義務があります。
4-2-2、口座変更
管理組合(法人格を除く)の収納口座、保管口座はいずれも理事長名義で作られます。そのため、理事長が交代した場合、通帳の名義変更が必要になります。この作業も契約に定めています。
4-2-3、諸官庁からの各種通知の広報
国、地方自治体、出先機関など管理組合には様々な通知が届きます。これを遅滞なく理事会に報告後、必要に応じ掲示や戸別投函などにより広報を行う作業です。
4-3、図書等の保管
一 乙(管理会社)は、本マンションに係る設計図面を、甲(管理組合)の事務所で保管する。
二 乙は、甲の管理規約の原本、総会議事録、総会議事書等を、甲の事務所で保管する。
三 乙は、解約等により本契約が終了した場合には、乙が保管する前2号の図書等、本表2(1)①で整備する組合員等の名簿及び出納事務のため乙が預っている甲の口座の通帳、印鑑等を遅滞なく、甲に引き渡す。
(マンション標準管理委託契約書より)
4-3-1、設計図面の保管
マンション建築では建築確認時に作成した設計図と竣工時に作成する竣工図があります。
一般的には、土地開発会社、あるいは分譲会社が保有、分譲後管理組合に引渡され保管される資料です。
マンション適正化法でも以下のように交付の義務を定めています
(設計図書の交付等)第百三条 宅地建物取引業者(宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第三号に規定する宅地建物取引業者をいい、同法第七十七条第二項の規定により宅地建物取引業者とみなされる者(信託業務を兼営する金融機関で政令で定めるもの及び宅地建物取引業法第七十七条第一項の政令で定める信託会社を含む。)を含む。以下同じ。)は、自ら売主として人の居住の用に供する独立部分がある建物(新たに建設された建物で人の居住の用に供したことがないものに限る。以下同じ。)を分譲した場合においては、国土交通省令で定める期間内に当該建物又はその附属施設の管理を行う管理組合の管理者等が選任されたときは、速やかに、当該管理者等に対し、当該建物又はその附属施設の設計に関する図書で国土交通省令で定めるものを交付しなければならない。
これらの図書は、大規模修繕工事やマンション内の様々なメンテナンスに必要な資料です。かなり大きな図面でかさ張ります。そのため、近年では電子書籍として保存する管理組合も多くなっています。
また設備の取扱説明書なども同様に扱います。この図書の保管を管理委託契約の業務に含めています。
4-3-2、管理規約の原本、総会議事録、総会議事書の保管
区分所有法では規約原本、総会議事録の保管を義務にしています。また、理事会議事録も総会議事録に準ずる扱いとされ保管を行う必要があります。明確な保管期間の指定はないと思いますが、概ね5年間は保管する必要があります。
また、電子媒体による保管も認められています。
4-3-3、引継ぎ業務
管理委託契約の終了に伴う引継ぎ業務を定めています。
引継ぎは図書類全般であり、出納に関する書類、銀行口座通帳、印鑑の返却も定めています。
実際の引継ぎはこれ以外にも管理状況を1つ1つ確認する必要があります。特に共用部の鍵の数や個人情報に管理する書類は確実に返却、あるいは破棄を約束する覚書を受け取る必要があり、契約を解消する時は新規に契約を行う管理会社にしっかりとお願いすることが必要になります。
以上が基幹業務以外の事務管理業務の内容になります。

「マンション標準管理委託契約書」
記載項目
- 事務管理業務
- 管理員業務
- 清掃業務
- 建物・設備管理業務
事務管理業務リスト
1、基幹業務*1
(1)管理組合の会計の収入および支出の調停
① 収支予算案の素案の作成
② 収支決算案の素案の作成
③ 収支状況の報告
(2)出納(原則方式による場合)
① 甲の組合員が甲に納入する管理費、修繕積立、専用使用料その他の金銭(以下「管理費等」という。)の収納
② 管理費等滞納者に対する催促
③ 通帳等の保管
④ 甲の経費の支払い
⑤ 甲の会計に係る通帳等の管理
(3)本マンション(専有部を除く。以下同じ。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
2、基幹業務以外の事務管理業務
(1)理事会支援業務
① 管理組合等の名簿の整理
② 理事会の開催、運営業務
③ 甲の契約事項の処理
(2)総会の支援業務
(3)その他
① 各種点検、検査等に基づく助言等
② 甲の各種検査等の報告、届出
③ 図書の管理
個人情報って何が対象なの?
生存している特定の個人に関する情報に限定しています。死亡した方は個人情報の対象外です。
それの情報だけであるいは複数の情報から個人の特定が出来る情報が個人情報として定められています。
氏名、住所、顔写真などです。
防犯カメラの映像
防犯カメラに残る画像も個人情報に該当します。また、館内の防犯カメラ映像は管理組合の所有物であり管理会社が自己の判断で見ることはできません。必ず理事長の承諾が必要になります。
もちろん、警察からの捜査協力があった場合は理事長が判断します。
名簿の日々更新ってどういう意味
区分所有者や賃借人の移動は月末に限って起きるわけではありません。当事者から申し出があった場合は所定書式への記入を依頼します。提出があれば遅滞なく管理を行います。
また、住民名簿を設置している場合には出産による住民が増える場合も提出をお願いすることになります。同様にお亡くなりになった場合も同じです。
名簿の取扱いは厳重です
管理会社が管理する名簿は個人情報です。そのため鍵付の書棚による保管は必須です。また、むやみに作業机の上に置いたまま離席することも原則禁止です。それほど管理会社は管理に神経を使います。
きめ細やかなサービスに利用
管理会社が独自のサービスとして誕生日へのお花のプレゼントなどがあります。住民皆さんへの平素のお礼として行っていますね。
この時に使われるのが住民名簿です。住民名簿はそれ以外に小学校低学年が自宅の鍵を持たずに外出、帰宅後館内に入れないようなことは日々起きます。この時も住民名簿があれば管理室で保護することもできます。このように住民名簿は管理には非常に役立つ情報になります。
理事と役員の違い
理事会を監督する監事を含めて役員と言います。
監事は総会で選任されます。
独特な日数の数え方
管理業務主任者の国家試験にも出題されたことがあります。標準管理規約では総会の招集について下記のように定めています。
「総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。」
開催日の2週間前(14日)までに・・ですから14日前はNGです。なかなか意地悪な書き方ですよね。
ちなみにこの2週間は、総会や管理規約の変更を行うことも可能ですが1週間より短くすることはできません。
居住していない役員や住民への連絡
区分所有者は総会や理事会開催など理事会から通知を受け取る住所をあらかじめ登録することが出来ます。登録がある区分所有者への登録住所宛に通知を発送します。
登録がない区分所有者は専有部宛に通知を発送します。
理事会活動を住民へ広報する方法
管理規約では区分所有者が理事長(理事会)から報告を受ける機会は年に1回です。しかし、日々の活動を知らせる必要があり、多くの管理会社は理事会議事録以外に毎月(あるいは理事会開催月)に広報誌を発行しています。
この広報誌の作成も管理会社の業務として契約書に定めている管理組は多いようですが、あまりにも形式的で事務的で住民からの評価はそれほど高くありません。
もう少し工夫をすれば良いとは常々感じています。当事務所が理事会に参加した場合は独自の広報誌を発行しています。(ちらっと宣伝です。)
コロナ禍の理事会の開催
法務省ホームページより
区分所有法においては,管理者又は理事が,少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないとされ,集会において毎年1回一定の時期にその事務に関する報告をしなければならないとされていますが(区分所有法第34条第2項,第43条,第47条第12項,第66条),前年の開催から1年以内に必ず集会の招集をし,集会においてその事務に関する報告をすることが求められているわけではありません。
したがって,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,前年の集会の開催から1年以内に区分所有法上の集会の開催をすることができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後,本年中に集会を招集し,集会において必要な報告をすれば足りるものと考えられます。
このように法務省も区分所有法に定めた条文について見解を公表しています。
理事会についても同様に対応すべきと考えますが、理事会の規模が小さい場合(少人数)は換気、マスクの着用など感染に十分注意して開催することも有り得ると思われます。
不当利益とは何?
専用庭を区分所有者が無断で第三者に貸出し、収益を得ていたような場合が不当利益にあたります。各戸1区画の駐車場が提供されている場合も無断で第三者に貸出す行為も該当します。
それ以外にマンションに第三者が被害を加えた場合の損害賠償請求もあります。よくある事例は、引越し業者が養生不良で外壁や壁に傷をつけた場合などは理事長は賠償責任請求を行うことができます。
総会は絶対に開催する必要があるの?
管理者(理事長)を設置している場合は必ず開催する必要があります。
年度を繰り越す案件の問題
初見で管理状況の現状分析を依頼された時によく見ます。数年間に渡り、総会議事録に同じ案件が記載されています。
原因としては、理事長、理事の任期にあります。月に1回行われる理事会だけでは大きな変更を行うことは出来にくく、検討スピードも遅くなります。そのため2年程度の任期ではなかなか議論が進みません。
そのために理事会には専門委員会を設置する権限は与えられていますが、外部の専門家を加える場合には当然に費用の発生が必要になり、前年から予算化する必要があり実現できません。
管理会社も積極的に関わることをあまりしません。「事なかれ主義」「各マンション担当者(管理業務主任者)の業務過多)」など幾つかの要因が指摘されています。
本論でも説明しましたが理事会の議事の助言業務は管理会社の姿勢や担当者のスキルや経験、熱意によって変わります。
定期総会の議長は誰?
規約に理事長と定めている場合が多いようですが、総会で議長を選出することも可能です。
突然「あなた議長をお願いします。」って言われても困りますよね。
臨時総会の開催って大変なの?
臨時総会の開催権は理事長、監事にあります。それ以外にも区分所有者総数、議決権の1/5の合意があれば理事長に開催を要請することができます。
開催手順は定期総会と同じですが、臨時総会を行うには当然に理由があり、その準備が大変な作業になります。
余程のことがない限り臨時総会は開催されることはありません。
代理人の出席は誰でもなれるの?
区分所有法では組合員の委任を受けて総会に出席し、議決権を行使する代理人について特に資格を定めていません。 一方、標準管理規約では代理人となる人の資格を、組合員本人の配偶者または一親等の親族、その組合員と同居する親族、その他の組合員に限定しています。
その上、口頭で宣言することは認めていません。「〇〇さんから委任を受けました」は通用しません。必ず代理権を証する書面を理事長に提出しなければならないと定めています。
総会は誰でも参加することはできるの?
出来ません。事前に理事長へ見学したい意思を伝え承認を受ける必要があります。
賃借人は参加できないの?
原則できませんが、規約の変更により生活に大きな変化を受ける場合は、事前に理事長に参加の申出を行い出席することは出来ますが議決に参加することは認められていません。
大きな影響を受ける場合とは、ペット可をペット不可に変更するや会社事務所として使っていたが用法を住居専用に変更するなどが該当します。
この場合、理事長が許せば意見を述べる機会は与えられることがあります。
管理費の値上げなどは大きな影響とは認められません。
何で管理費の値上げは認められないの?
管理費を支払う義務は区分所有者にあります。賃借人には関係がありません。もし管理費の値上げが賃貸料に影響する場合でも賃貸人と賃借人両者の関係であり管理組合には無関係です。そのため、管理費の値上げは賃借人は影響がないと考えます。
委任状って何?
委任状は議決権を特定の人に委任することを意思表示する書面です。総会の場合は理事長に委任する場合が多いようですが、区分所有者であれば特定の人物を指定して委任することも可能です。
議長は投票できるの?
議長が理事長で区分所有者であれば投票権はあります。
理事長は各議案を提案する立場です。議案に反対することはできません。これは理事も同様です。
ただし、監事は理事ではありませんので自分の意思で賛否を判断して投票することができます。
同票数だった場合はどうなるの?
過半数以上ですから同票数の場合は否決されます。
理事長は提案に反対はできないの?
理事長が理事会の意見に反対であっても理事会で承認された議決には従う必要があります。これは理事も同じです。
もし、どうしても反対意見に議決権を投じたい場合は、理事長、理事の地位を辞職して組合員になり、投票する必要があります。
総会でいきなり新しい議題は議決できるの?
出来ません。議決する案件は事前に告知する必要があります。組合員は配布された資料からそれそれの案件について一定期間考える時間を与えるための配慮です。
ただし、組合員全員が参加していて全員の承認があれば議決することは可能です。
管理費の値上げは突然議決できるの?
管理費は規約の書き方により、特別議決、普通議決のいずれが必要になりますが、必ず総会で承認が必要です。
総会の開催、2週間前(規約で変更可)に議案書が配布されますが、この時に初めて値上げを伝えるような乱暴なやり方では承認を得られません。
値上げ前になぜ値上げが必要なのか?値上げをしないとどうなるのか?削減できる項目はないかなどを理事会が検討した上で行い、その旨を広報誌などで伝え、丁寧に説明した上で事前にアンケート等を行い、組合員の意思を確認する作業を行う方法が一般的です。
修繕積立費の値上げは突然議決できるの?
管理費と同様です。ただし、修繕積立金は修繕計画が示され不足は明確にわかります。
一般的な例ですが、修繕積立金の値上げについては1年程度の検討期間を設ける組合が多いようです。前期に「修繕積立金の不足が見込まれる件について」と言った来期検討議案を提示し、1年間で理事会が検討を行い、広報誌で進捗を伝え、最終判断を行い年度末に議決を問う方法です。
区分所有法で特別議決が必要な項目に8項目が定められています
1.管理規約の設定・変更・廃止(同法第31条)
2.管理組合法人の成立(同法第47条)
3.共用部分等の変更(同法第17条・第21条)
4.大規模滅失における建物の復旧(同法第61条第5項)
5.建物の建替え(同法第62条)
6.専有部分の使用禁止の請求(同法第58条)
7.区分所有権の競売の請求(同法第59条)
8.占有者に対する引渡し請求(同法第60条)
この8項目については規約や集会の議決によっても変更することは認められていません。
項目の中には気になる項目があると思いますが、それぞれの項目に決まりごとがあります。
共用部分等の変更は2つある
共用部分等の変更にも実はいろいろなケースがあります。
「軽微な変更」と「重大な変更」です。
特別議決が求められる変更は「形状又は効用の著しい変更を伴う場合」と定められこれが「重大な変更」です。
意味がわかりにくいですよね。
形状の激しい変更は、共用廊下の一部に書庫室を作るなどの以前の形状と異なる形状に変更する場合や効用の変更が伴う場合です。言ってみれば構造が変わる場合と考えれば良いと思います。
また、「重大な変更」には厄介な判例があって「形状又は効用の著しい変更を伴」うものであっても、「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないもの」については、特別決議事項から除外されていると解すべきである。(札幌高裁平成21年2月27日判決)
多額の定義も不明であり、各マンションでケースバイケースなのでマンション管理士等に相談することをお勧めします。
それ以外の変更については普通議決で変更はできます。
委託契約の更新と再契約の違いは何?
重要事項の説明会の対象が更新の場合は理事長(理事会)だけでも認められているのに対して再契約は組合員全員への説明会の開催が義務になります。
管理委託契約には以前は自動更新に関する記載を認めていましたが改定により現在は認めていません。
契約終了3カ月前までに書面による意思の表示が必要になります。
更新が認められるケースは、従前の契約に期間以外の変更がない場合、あるいは管理組合が優位になる変更であれば認められます。(値下げや同一価格で作業を増やす場合など)
その場合でも全組合員へ重要事項説明書の配布の上、理事長(理事会)に重要事項説明を行う必要があります。(国土交通省は重要な契約なので組合員全員への説明会の開催を推奨しています。)
その上で総会での承認を求めています。
これに対して再契約は管理組合が不利になる契約の変更がある場合は新規契約と同じ扱いになります。
近年は更新の契約の手間のメリットがあまりないため、ほとんどの管理会社は再契約を採用しているようです。
総会成立が満たない場合はどうなるの?
開催しても何も決められないため、延期にすることが一般的です。大抵は事前の管理会社の交渉で成立させます。
しかし、何度か総会開催を計画しても成立しない管理組合もあります。ほとんどは無責任な区分所有者、会社所有の不動産として利用する区分所有者です。その場合、管理組合は機能不全になりますね。
このような管理組合と出会った経験は幸いにありません。
議決過半数の数え方
総組合員の半数ではありません、注意してください。
総会が成立する要件は全組合員の半数ですが、各議案の可決数は参加した組合員数、議決権の過半数です。
例えば区分所有者総数、議決数も50の管理組合では、総会成立要件は25人の参加(出席、議決執行書、委任の総数)以上で成立します。
普通議決は25人の過半数以上の組合員数、議決権になり、13人以上の賛成で承認されます。
議事録には議決権執行書、委任状も保管
総会の議事録には、議決集計が記録されますが併せて、書面で提出された議決執行書、委任状も添付資料として保管する義務があります。
これは後日、組合員から異議申し立てがあった場合に不正がなく実施された証拠にもなる大切な資料になります。
理事長の変更は口座名義が必要
これはマンション管理組合が民法上「権利能力なき社団」とも呼ばれは権利の無い組合とされていることに由来します。また税法関係では、「人格のない社団等」に区分され権利を主張する資格がないとされています。
そのため、銀行口座を所有することができず、代表者として理事長が名義となります。
そのため理事長が交代した場合は、管理組合の銀行口座は変更する必要があります。
竣工図って何?
マンション建設請負契約後に発生する設計変更などを反映し、竣工時点の建物を正確に表した図面のことです。
一般的には「竣工図一式」と言われ、平面図・意匠図・構造図・電気配線図・設備図等を含む図面集のことです。
設計図と竣工図の違い
設計図は工事前に作成される見積りを作るための図面です。実際に工事が始めると机上の計算とは異なるケースが多々発生ます。また発注者の要望、予算との関係で設計とは異なる寸法や設備になることもあります。
竣工図は建設完了後に作成されるため、実際の建物を図面にしています。
*余談ですが皆さんが積立てる修繕積立金の基礎データになっている根拠は、設計図、あるいは竣工図で示されている建材になります。
竣工図がないことはあるの?
残念ながらあります。竣工図は必ず作成される図面ではなく、一般に別発注になります。土地開発会社や分譲会社が必要ないと判断すると作成がされません。また、管理組合に引継ぎを行わないケースもあるようです。
これ外に修繕工事時に修繕会社に貸し出したまま返却されない場合や管理会社の変更時にも返却がされない場合もあります。
是非、皆さんは一度図面の所在を確認しておいてください。
消防計画って何?
消防法で規定されています。マンションもこの法律の対象になります。目的は2つあります。
1、火災を発生させない
2、火災が発生した場合被害を最小限にする
資格者に上記2つを達成するために実態にあった計画をあらかじめ定めることが建物の原権者・管理者(マンションの場合は管理組合)に義務化されています。
この資格者のことを防火管理者と言い、収容人数と面積によって甲種、乙種とわかれ、講習を受講します。
消防計画は所轄の消防署等に提出する義務があります。
注意としては管理組合として防火管理者の設置の義務があり消防計画の提出が必要になります。
消防用設備等点検報告って何?
消防用設備点検報告とは、消火器やスプリンクラー設備、自動火災報知設備などの消防用設備が、火災の際に正常に作動しないと人命にかかわることから、定期的に点検し、管轄する消防署へ報告する制度です。 他にも、自動火災報知設備、スプリンクラー設備、誘導灯などが消防法令に基づき設置されている建物は、点検・報告が必要です。
(東京消防庁より)
各マンションには消防設備の設置がマンションの形状、大きさ、高さによって細かく規定されていますが、普段使うことがないため、火災発生時に正常に作動しないことが無いように一定期間ごとに専門家による確認が義務化されています。
特殊建築物定期調査又は建築設備定期検査って何?
建築物や設備等の異常に起因する人身的・経済的な事故ならびに損失を事前に防ぐための検査です。
土地、躯体、消防設備、昇降機(エレベーター)について毎年もしくは数年に一度、定期的に異常がないか調査・検査を実施し、異常が確認されれば、管轄する機関を経て行政庁に報告する他、所有者・管理者に是正を求め、改善を勧める事で建物や設備の安全を維持し、第三者に調査・検査の内容や安全であることの公表を目的としたものである。(ウィキペディアより)
土地に陥没等がないか、躯体の劣化はないかとかなり詳細な部位を目視により、あるいは検査器具により確認します。報告書を見るとわかりますが、驚くほど詳細な箇所を検査方法を規定して確認します。
点検に異常があった場合はどうなるの?
異常箇所として報告されます。当然、速やかに改善を求められます。
ただし、建築基準法などは一定期間で改正されています。改正前は適合だったが、改正により不適合になるケースがあります。特に耐震基準、昇降機(エレベーター)は大きな改定がありました。
耐震基準は1961年6月に改正があり、これ以前に建てられた多くの建物が不適格建築物になりました。そのため、国は耐震化工事について様々な税制の優遇などを進めています。
また、昇降機は「戸開走行保護装置の設置」が義務付けられました。これは、エレベーターの駆動装置や制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降したときなどに、自動的にかごを制止する安全装置の設置が義務付けられました。
さらに「地震時地震管制制御装置」が義務付けられました。地震時その他の衝撃による加速度を検知して、自動的にかごを昇降路の出入口に停止させ、自動または手動により戸開する装置の設置が義務付けられました。
いずれの場合も不適合設備として報告されますが改善等までは求められていません。
次は管理員、清掃に関する業務です。
⇒ 4章 標準管理委託契約を知る -管理員業務・清掃業務ーに続く