標準管理委託契約には清掃業務についても明確に業務内容が記載されています。
清掃業務は日常清掃と特別(定期)清掃を分けて契約書に記載されます。
日常清掃はエントランス等の共用部の清掃で、床の掃き掃除、拭き掃除、ゴミ拾いを中心とします。
これに対して定期清掃は専門会社が行う清掃を想定した契約体系になっています。
また、清掃専門会社に再委託契約する管理会社が多いようです。

1、清掃業務に関する契約
清掃業務は日常清掃と特別(定期)清掃を分けて契約書に記載されます。

日常清掃はエントランス等の共用部の清掃で、床の掃き掃除、拭き掃除、ゴミ拾いを中心とします。
それ以外にポーチや敷地内に発生する雑草の処理も含まれます。
管理員が業務内で行うケースも多く、大規模なマンションでは他に専属の清掃員を毎日派遣する方式が取られます。
これに対して特別(定期)清掃は床面の機械洗浄、ワックスが中心になります。
ポリッシャーや高圧洗浄機やなどの専用器具を使用した清掃と定義され、実施回数も回/年と指定します。
契約書内では日常清掃、特別(定期)清掃共に具体的でかなり詳細に作業内容、回数を定めています。
1-1、ここまで細かい契約条件
日常清掃の契約には右図のような仕様が用意されています。
かなり詳細ですよね。日常清掃は管理員が行う場合がほとんどですが規模の大きなマンションでは専門会社に依頼します。
なぜここまで細かな内容を取決める理由は、管理員や清掃会社は日々、管理会社の点検を受けないためです。
清掃は成果物として「きれい」な状態が求められますが明確性に欠けます。そこで目安として清掃箇所、方法、回数が定められます。
実際、住民の方も回数をチェックすることはありませんが、酷い汚れや何日も同じ場所が汚れていれば清掃が行き届いていないと思われ、クレームの対象になります。
契約例で示されたすべてを実際に行うと恐らく、管理員も清掃担当も就業時間内にすべて終わらせることも無理だと思います。
管理員は清掃以外に管理事務の仕事もあり、館内で何か問題が発生すれば最優先で処理を行う必要もあります。また、ゴミ出しの日や理事会等の行事がある日など日々の忙しさに比較的に差があります。
そのため、契約に定められた回数とは担当者の裁量に任されれています。
長く同じマンションの管理員や清掃を担当すると建屋の構造や風の流れから汚れが発生しやすい場所や箇所も分かってきます。
効率的に清潔できれいな住環境を保つためには同じマンションに長く務めることも重要なことです。
日常清掃箇所(例)
・ポーチ、エントランス
・風除室
・エレベーターホール
・エレベーター籠
・廊下、階段
・ドア(ガラス)
・会議室等
・外周
・駐車場、駐輪場
1-2、特別清掃はプロが行う清掃です
ポーチ、風防室、エントランス、廊下、共用階段、袖壁などは日常清掃で掃除機、ほうき、モップなどで掃き掃除、拭き掃除はしますが、ごみやほこりを取除くことが中心で洗浄などはしません。
特別清掃は専用の掃除具を使い洗う清掃を行います。
事前に住民へ掃除日が周知され共用部分に置いてある私物の撤去が徹底されます。多くのマンションでは年に2~3回行う契約が多いようです。
共用廊下の排水路や階段の滑り止めなども含めて洗います。
エントランスがカーペット仕様、タイル仕様の際はそれぞれに合った清掃方法を選択することが出来ます。同時に窓や網戸の清掃も行うことも契約に付加することもできます。
管理組合が希望すれば屋上や普段掃除をしないような場所も別途契約することも可能です。
1-3、業務実務の様態
清掃業務はその性質上、次のような約束事が契約書に記載されます。
① 日常清掃及び特別清掃は、通常要すると認められる範囲及び時間において作業するものとする。
② 廊下及び階段等常時利用又は使用状態にあり、清掃作業終了後に直ちに汚損する場所又は箇所
については、通常の作業工程を終了した段階で、日常清掃の作業を完了したものとする。
③ 廊下及び階段等常時利用又は使用状態にある場所又は箇所において清掃作業をする場合は、組
合員等に事故が生じないよう配慮する。なお、当該作業を実施する場合は、共用部分の電気、水
道を使用するものとする。
②については「清掃後に汚れた場合には責任はなく完了しているとします」と定めています。
せっかめメモにも書きましたが、落葉や枯葉と言った一日に何度も散らかったり、汚れた場合は清掃業務としては作業が終わったと判断されます。
清掃に使用する電気水道代は共用部光熱費から支払われると定められています。
このような規定は清掃業務の算定とあわせて国土交通省が公表している「建築保全業務積算要領」に詳細な設定値があり、これを基準に各自治体、各会社等が「清掃業務委託料算定要綱」を設定しています。
この資料を確認するとなぜ、詳細な回数まで明記できる理由も理解できます。(必要な資料は検索すればすぐに入手可能です。)マンションの敷地面積、共用部面積、構造などはそれぞれのマンションで異なり清掃が必要な面積も異なり作業量が決定されます。
実際の契約内容は各マンションの事情により決定します。

最近のマンションはきれい
街中を歩くと素敵なマンションが建ち並んでいます。どのマンションのポーチやエントランスがきれいに清掃されていますよね。花壇などの植栽も季節ごとの様々な花が咲いています。毎日、きちんと清掃する人のお陰ですね。
ポリッシャーって何?
床面を洗浄剤で洗う際に使われる専用の器械です。ブラシの装着・脱着が出来て表面の汚れを洗います。ビル清掃ではよく見かけますよね。あれって意外と重量があってやってみると重労働なんですよ。

便利な高圧洗浄機
自宅で所有するには場所を取りますが管理組合でひとつ所有していると大変便利です。必要なときに貸出すシステムですね。何に使うかと言うとベランダや車の掃除です。なかなかベランダの掃除ってしませんよ。排水路に泥や土が溜まっていませんか?年末の大掃除に大活躍です。サッシも網戸もピカピカになります。

枯葉、落葉との闘い!
管理員、清掃員が日々、気になるのは枯葉や落葉です。秋、冬の風の強い日は何度清掃してもすぐに溜まります。
落葉以外にもツツジや椿、桜などもきれいで目を楽しませてくれますが、落ちた後が厄介です。雨にぬれると美観を損なうだけでなく放っておくと側溝などに溜まり流れを悪くし大きな事故につながります。
特にポーチや野外駐車場がマンションでは落葉の掃除だけでもかなりの時間を割かれていします。
建築時に何の木を植えるかによってかなり変わります。植栽を決定するのは設計者でしょうから出来れば落葉樹は止めて頂けると嬉しいと思うのですが。
草取りも植栽管理も清掃業務です
タイルの目地から延びる雑草類ですが、あれを放置するとタイルを浮き上がらせることもあります。そのため、春先から夏にかけて出来るだけ除去する等に管理員等は指導を受けます。除草剤で一気にと思うのですがペットを飼われている方には気になります。そのため除草剤の散布は事前に告知する必要もあります。
掃除は工夫次第
掃除と言えば掃除機、ほうき等ですが格子枠や玄関扉の取ドアノブなど掃除する場所はたくさんあります。
管理員や掃除担当者は、個人個人で色々と工夫をします。割り箸やドライバーに布を巻き付け掃除道具として使ったりしますね。歯ブラシもそのひとつです。
黒くなった腰壁には注意!
開放系廊下があるマンションでは雨水が吹き込み、壁に泥が付着することがよくあります。泥であれば濡れ雑巾で拭けば簡単に掃除できますが、床から上に黒ずみが広がっている場合は要注意です。黒カビの可能性が高いですね。
多くのマンションでは吹付仕上げの外壁塗装で腰壁を処理しています。手で触るとつるつるしていると大抵リシン工法です。ざらざら感があるとスコッタ工法です。
いずれも黒カビは活性する可能性があります。構造上、風通しが悪く湿気が籠りやすい箇所で見かけます。たわし等と洗剤で落ちますが、定期的にチェックすることが重要です。
何より大切な住民情報
管理員の仕事をしていると住民の方から色々な情報を頂きます。掃除についても「玄関の前を子供が汚しちゃったけど・・」「泥が付いたまま入った人がいるよ」「エレベーターなんか臭う!」など色々な情報を頂きます。これらひとつひとつが重要な情報です。
建築保全業務積算要領って何?
国土交通省が建築保全業務の積算をするための標準的な考え方、具体的な資料等を示しています。
直接費として保全技術員、清掃員、警備員の人件費、業務管理を定め、各建物の平均作業回数などを示しています。
この資料を基に自治体や企業が清掃業務の価格を決めています。
⇒ 6章 標準管理業務委託契約を知る -建物・設備管理業務ーに続く