これまでの章でマンション標準管理委託契約の各業務を確認しました。

この章では各業務の委託契約の内容からわかったことをマンション管理士、管理業務主任者の立場から管理組合の皆さんに是非知って欲しいポイントを分かり易く説明します。

「なぜ、管理費会社に不満があるのか?」「なぜ、管理会社に満足感が得られないのか?」「なぜ、管理費を高い!」と感じてしまうのかの理由がわかるはずです。

これまでに確認できた事項をまとめると次のようになります。

それぞれのポイントについて説明します。

管理事務は管理委託契約書では4つの業務について契約をします。

それぞれの業務には国土交通省が定めたルールに基づいて各管理組合の事業計画、収支予算計画に基づいて実施する必要がある業務と管理会社が理事会(理事長)からの要請で助言・支援を行う業務があります。

1、委託する管理会社は決定されている

分譲マンションの発売は土地開発会社(デベロッパー)が主導で行われるケースが多いようです。皆さんがマンションを購入するまでの流れは次のように行われます。

マンション建設計画

土地開発会社(デベロッパー)がマンション計画を立て、建設会社を選びマンションを建設する。

分譲会社購入→販売

完成後、マンションの管理を行うための管理会社と契約する。

皆さんが購入

皆さんが分譲会社から購入、同時に管理会社も引き継がれる。

このように皆さんが購入する時には、管理会社と管理委託契約(契約に類似した場合もある)が締結した状態でマンションを購入します。

このため、皆さんには管理会社を選択する機会はありません。

この契約関係は、管理会社が管理者に就任する方法で導入され、理事会制度が導入されるまで継続します。一般的には購入後、1年程度は維持されることが一般的です。

その後、理事会制度の中で管理委託契約は継続され続けます。

この理由は、初期の管理組合の運営は区分所有者が不慣れであること、他の管理組合との比較ができないこと、最初から当然に維持される為、余程の不満がないと受入れてしまうこと、管理組合全体で不満への合意形成が必要であることなどの複合する要因が原因です。

2、2つのサイクル業務

管理委託契約の事務管理業務は3つタイプの業務から構成されていることはこれまでの確認でわかっています。。

3タイプの管理事務は次のような全体の流れの中で実施されます。

管理会社の実務は契約書に記載された内容を区分所有法に定められたルール、国土交通省の指針、マンション管理適正化法あるいは商法に従って事務的に処理を行い、理事会に報告する実務サイクルとマンション内に発生する様々な問題やトラブルがあった時に理事会の要請、あるいは解決する目的で管理会社が助言、支援を行うサポートサイクルに分類することが出来ます。

2-1、実務サイクル

管理実務のほとんどは実務サイクルで行われます。

各年度の事業計画、収支予算計画で決定された業務を毎月、あるいは該当月に行い、必要な連絡を理事長に行い、承認を受け実行します。

実務サイクルには基幹業務が含まれ、法律で規定された方法で実施する必要があります。

また、当該月に実施した内容は理事会で報告を行います。

実務サイクルで重要になることは次のことです。

この4つが行われていれば実務サイクルは正常に稼働していることになります。

実務サイクルイメージ

1、いつでも管理組合の資産が確認でき、出納記録と一致している

2、管理業務で支出する出納記録が確認できること

3、区分所有法、マンション管理適正化法に違反していないこと

4、共用部の施設や設備が維持管理が出来、良好な住環境の提供が行われていること

2-2、サポートサイクル

サポートサイクルは実務サイクルと異なりマンション内で想定外の事態が起きた時の解決能力と言い換えることができます。

また、実務サイクルを実施する上で理事や区分所有者、住民への安心感、信頼感を得るプロセスに多く関わる業務になります。

想定外の事態とは「管理費等の滞納」「設備や施設の不具合」「住民からのクレーム」「住民間トラブル」など様々です。

サポートサイクルで重要になることは次のことです。

サポートサイクルイメージ

1、理事会の意思を尊重して行われている(理事会の自主性を重要にしている)

2、理事会が納得できる根拠を示した提案、助言が行われている

3、迅速な対応と丁寧な説明が行われている

実務サイクルと違って抽象的な表現になりますが、「管理費等の滞納」が発生した場合の対処方法を例に考えてみましょう。

管理費等の滞納が発生した時、管理会社は訪問、電話、書面等により支払いの請求を行うことが定められています。この業務は契約に定められた実務サイクル業務です。

管理会社は、当事者に書面で期限を提示し支払いをお願いします。同時に戸別訪問や電話連絡を行い口頭による支払いをお願いします。

実はこの業務は非常に難しい業務で「取立て業務」になります。「いつまでに支払って頂けますか?」「前回のお約束が守られていませんが、どうされるおつもりですか?」など相手(債務者)の事情も含めて検討する必要があり、一般的な業務とは異なる仕事になります。そのため、管理組合も管理会社も非常に苦慮します。

法的に移行すれば「弁護士」に依頼して事務的手続きを進めれば良いだけですが、長年一緒のマンションに住んでいた心情的な要素も働き、出来れば穏便に済ませたい心理も働きます。

この時、管理会社は実務サイクル的に事務的に書面等で連絡をするだけでも責任を問われることはありませんが、相手の事情を聞き分割返済の提案を理事会に示す、あるいはこの状態を続けるデメリットと法的手続きまでの流れ、債権者として持つ権利等(先取特権)の説明まで行うこともできます。

この業務は管理会社が自主的に行います。この業務がサポートサイクルになります。もちろん、理事会の要請で説明を行うこともサポートサイクルになります。サポートサイクルを実施しなくても契約違反にはなりませんが理事会は今後の対応方法に困ります。

このようにサポートサイクルが充実していると理事会が次の手をどうするかを判断する時期と方法を知ることが出来、管理会社への安心感、信頼感を得ることができます。

次に交換時期に設備の導入を考えてみましょう。

設備の交換は一定期間を経過したマンションでは適正に維持管理を行っていた場合でも発生します。この際、管理会社は交換の提案を進言します。これは実務サイクルになります。

提案を受けた理事会は管理会社に見積りを依頼することになります。ここからがサポートサイクル業務です。

管理会社は見積りを理事会に提出しますが、ここに大きな差が生まれます。

管理会社は関連会社、あるいは修理会社、メーカーに見積りを依頼することもできます。何社から見積りを取り、比較検討、理事の皆さんが分かりやすい資料を作成して提案することもできますが、1社だけから見積りを取寄せ理事会に報告することもでき、どちらも契約上の違法行にはなりません。

しかし、数社から見積りを取り、メリット、デメリット、価格比較を提案する会社とこの1社からの見積を提案する会社では、例え同じ会社になる結果だったとしても最終的な判断は理事会が行います。その時の理事に与える信頼感、安心感が全く違います。

例えば、テレビやエアコンの買換えをする時は価格、性能、工事費等検討して購入会社を決定しますよね。量販店で案内の方が親切にいろいろ教えてくれ、皆さんはその意見を参考に決めますよね。

これと同じことです。管理会社は案内の方に相当しますが管理会社によって全く異なっています。

重要なことは管理会社は理事会に多くの選択肢とその根拠を示し、意思決定に役立つ情報を分かり易く提示することにありますが、多くの管理会社は結果ありきの業務を行っています。その結果として、無駄な管理費を支出ケースも少なくありません。

これがサポートサイクルであり、充実している会社は信頼感、安心感を得やすくなる理由です。

2つの例を示しましたが、サポートサイクルのイメージと重要性がお分かり頂けたと思います。

2-3、管理員もサポートサイクル業務に参加

日常、マンション内で業務を行う管理員(管理人のことです)もサポートサイクルでは重要なポジションに位置します。

トラブルが発生することはサポートサイクルで対応する必要があります。マンション内で問題が発生した際の業務フローは次のようになります。

トラブルは管理員を通し担当者に報告されます。過去に事例がある場合は担当者から指示があり、管理員が対応しますが、理事会に相談の必要があると判断すれば理事長、理事会に報告が上がり、理事会で検討され注意喚起の掲示物の作成等の指示があり、最終的に管理員が実行します。

この業務を実務サイクルとサポートサイクルに分けると実務業務は「トラブルの報告」「トラブルの解決の実行」、サポートサイクルは「トラブル解決のための助言、情報」になります。

また、この業務の中で理事会が求める業務はトラブルの報告ではなくトラブルを解決するための助言であり情報です。

理事会が解決する方法を決定するための情報が欲しいと望んでいます。

「トラブル解決のための助言、情報」を行うにはマンションの実情をよく知る管理員の存在は重要です。この意味で管理員はサポートサイクルで重要なポジションに位置します。

3、実務サイクルに差はない

これまでの説明で分かるように実務サイクルは作業量に違いはありますが、マンションの規模に依存することはありません。法律で決まった業務をルーティンとして行う仕事です。

そのため、管理会社によって特徴が出にくく、管理会社の優劣が判断しにくい業務と言えます。

webを活用して理事がいつでも自由に閲覧できるシステムを導入するケースもありますが、行っている業務に違いなく利便性が良いシステムである特徴にはなりますが、実務サイクルの評価にあまり関与しません。

4、サポートサイクル

実務サイクルの対してサポートサイクルは管理会社の実力により大きな差が出る業務になります。

これまで説明したようにサポート業務は量的要素はほとんどありません。質が問われる業務です。

質とは理事会、マンション住民にとって有益で分かり易い情報の提供と伝達する能力と言い換えることが出来ます。

サポートサイクルを左右する要因は、担当者(管理業務主任者を含む)のスキル、管理員のスキルと管理会社の総合力で決定されます。そのため、管理会社が優秀でも担当者が能力不足の場合は低い評価につながります。

よく管理会社の優越をコメントするwebサイトがありますが、管理会社でも評価が大きく分かれているケースを見かけますが、これは担当者のスキルがなく、管理会社の総合力を上手く活かせてない場合と推測できます。

サポートサイクルが充実すると理事会、マンション住民には信頼感と安心感が生まれます。何か困ったことや問題が発生しても管理会社が解決する道筋を立ててくれると思えれば当然です。

信頼感、安心感が生まれれば、コストへの意識は一定の許容を容認する感覚も生まれます。

実際、管理会社では実務サイクルで差が出ることはほとんどなく、リプレース等が行われる管理会社は、サポートサイクル、管理員の評価に大きな差がでることを経験で知っています。

管理会社との管理委託契約についてポイントをまとめました。いかがでしたか。

皆さんが契約する管理会社のサポートサイクルは皆さんが満足でいる内容ですか?

せっかめメモ
不動産、マンション豆知識

管理会社がそのまま管理者を続けることはあるの?

はい、少数ですがあります。国土交通省の調査では全体の5%程度の管理組合が理事会制度に移行しないで、分譲時の状態を維持しています。理事になる負担を嫌い区分所有者が多いことが原因のようです。

これについては今後の特集で扱います。

分譲時に理事会制度を導入する場合はないの?

あります。分譲会社が理事や理事長を無作為に選び、入居者にお願いする方法です。

この場合でも初期の管理組合の運営は不慣れなため、管理会社が暫定的な管理者に就任なり、1期目あるいは2期目まではこの状態を続けます。

暫定措置は様々

皆さんの初期に受取る規約のほとんどに「暫定措置」が記載されているはずです。

暫定措置は土地開発会社、あるいは分譲会社によって様々で購入時点で管理委託契約を締結している場合や最低限の業務に限定して請負う方法など様々です。

一定期間経過後に理事会制度に移行する方式は主流ですが、この時に管理委託契約を新規に締結する場合もあります。いずれにして、管理会社に都合の良い方法であるケースが多いと経験上感じます。

理事の適正な数は決まっているの?

特に決まりはありません。国土交通省の標準管理規約のコメントによれば、概ね10~15戸につき1名選出、最低3名程度、最高20名程度、という人数が目安です。

しかし、近年は区分所有者の高齢化などで理事の確保が出来にくくなり、また名前ばかりで活動に参加しない方も多くなり問題になっています。そのため、理事数を少なくする傾向があり、現金の支給などの方式を検討する管理組合もあります。

理事長は必ず一人のなの?

いいえ違います。2名でも3名でも可能です。

理事長はあくまでも対外的な代表者です。管理組合だけの実務で言えば理事長を置かずに理事だけでも運営はできます。逆に全員を理事長にすることもできます。

複数の理事長を設置した場合には、規約や集会(総会)でそれぞれの理事長に代表権を与えることも合議制(多数決制)にすることも全員同意制にすることもできます。

理事長や理事など役員の任期は決まっているの?

いいえ決まっていません。役員の任期も組合で違いますが、1~2年の任期が多いです。ただし、1年交代にすると全員が初心者になる不安があり、理事の半数の任期を重複させるとで事業の継続性を担保するなど工夫しています。

実務サイクルってどこでも通用する表現なの?

いえ、違います。当事務所が勝手に名前を付けた呼び方です。サポートサイクルも同じです。

管理事務は必ず国土交通省のルールが採用されるの?

国に登録した管理会社は守る必要があります。「マンション管理適正化法」に規定されています。

元々、国のマンション管理業の登録制度の導入は、マンション管理組合の管理費等の分別管理による資産保全が目的で始まっています。

違反すれば登録は抹消され公告されます。公告されれば管理組合は契約の解除をすることが出来るので資産保全は確実に行われる制度になっています。

公告って何?

官庁や公共団体が広告・掲示などで公衆に発表することです。官庁では日本国の機関紙では官報があります。

私たちもインターネット等で購入することが出来ます。

実務サイクルは正しくて当たり前!

区分所有法、マンション管理適正化法に定められた手順に従い業務を行う必要があり、正しく実施された当然の業務になります。本編で示した4つの項目をチェックすれば皆さんでも簡単に確認することが出来ます。

実務サイクルに不安がある場合、特に資産確認がすぐに出来ない状況にある、あるいは出納記録と一致しない管理組合は早急に専門家、あるいは専門機関(マンション管理業協会等)に相談すべきです。

管理委託契約の重要事項説明会もチェックしてください

重要事項説明会は区分所有者の方が参加する管理委託契約についての説明会です。この時、説明者は説明前に皆さんに管理業務主任者証の提示が義務になります。何年も同じ担当者でもあってもこの義務は毎回必ず実施することが必要です。

管理会社の最低限のルールとして守られているか、皆さんがチェックできる項目になります。

実務サイクルは区分所有者が検証できる

管理実務に関する書類、図書類は保管義務があり各年度後に管理組合に引渡すことが義務です。何か問題が起きた時はこの書類をチェックすれば実務サイクルが正しく行われていたかはわかります。

作業量が多くなる心配がありますが、チェックするポイントは決まっています。いい加減な管理が行われていればマンション管理士や税理士に依頼すれば短期期間でわかります。

督促時の注意点

督促業務は以前はかなり乱暴に行われていました。近年では賃貸物件の滞納者に対して家賃保証会社が玄関ドアの鍵を勝手に交換する方法がまかり通り、社会的な問題にもなりました。業界団体も自主規制をしていましたがなかなかハードな取立てが行われていました。

その結果、現在では下記の取立て行為は禁止されています。

  • 午後9時~午前8時に債務者に電話、FAX、自宅を訪問すること
  • 債務者の勤務先やその他自宅以外の場所へ電話、FAXを送信、訪問すること
  • 「帰ってください」と退去の意思表示されたにもかかわらず退去しないこと
  • 張り紙や立て看板やその他の方法で債務者の借入れに関する事実や私生活に関する事実を債務者以外に明らかにすること
  • 借入れ等による返済資金を調達するように要求すること
  • 妻や親族へ返済を要求すること
  • 債務の整理を弁護士等に依頼した旨の通知をうけたにもかかわらず、債務者に対して返済を要求すること

管理費等の滞納者の氏名等を理事会資料等に記載することは良いの?

難しい問題ですが事前に管理規約に定めれば公開はできます。

しかし、あまり積極的に公開することに個人的には賛成しません。法的手続きまで進めてしまえば公開も構わないと思いますが、それ以前の段階であれば、理事会内だけで情報は抑えておくべきです。

規約に公開できると定める目的も公開することが目的ではなく、納めないと公開されますよと言う羞恥心による歯止め効果を期待しているためであり、公開すると言って支払うような場合は悪質な債務者でしょう。

誰でも滞納者になる可能性はあり、事情を考慮して出来るだけ穏便に済ませのも組合員の思いやりかもしれません。

先取特権って何?

先取特権とは「法定担保物権」です。担保と言うと皆さんは住宅ローンを組む際に金融機関に担保の提供を求められたはずで、登記にも記録がると思います。

実は管理費は先取特権の対象債務ですが登記の必要なしに債権者に与えられる担保物権です。登記の必要がないと言うことは約束ではなく法律上当然に発生する担保物権です。

先物特権は「一般の先取特権」と「特別の先取特権」があり「特別の先取特権」は「動産の先取特権」「不動産の先取特権」があります。

何が違うの?と思いますよね。担保として差押えることが出来る対象が「一般の先取特権」では総資産に対して行うことが出来ますが、「動産の先取特権」は動産資産(車や家財など)、「不動産の先取特権」は不動産資産を差押えることが出来ます。

管理費は、「一般の先取特権」になり債務者の総資産から先に差押えることができます。

しかし、先取特権も登記された抵当権(担保)には優先順位が劣ります。

少額訴訟制度とは何か?

60万円以下の金銭の支払請求について争う裁判制度です。少額訴訟は私自身経験がありますが、簡単に安い費用で行うことが出来ます。管理費等の滞納額が60万円以下であることが条件になりますが、弁護士費用の必要がなく、債務名義を確定することができる点はメリットの多い方法です。

債務名義とは何か?

仮差押え(少額訴訟債権執行)を行う時に必要なり次の方法で得ることができます。

a 少額訴訟における確定判決
 (確定した少額訴訟判決,給付を命じる少額異議判決)
b 仮執行宣言を付した少額訴訟判決
c 少額訴訟における訴訟費用(又は和解費用)額確定処分
d 少額訴訟における和解調書,認諾調書
e 少額訴訟における和解に代わる決定(確定したもの)

これにより債務者の資産の差押えを請求できます。差押え必要も2~3万円程度で済みます。

差押えは勝手に出来ません

債権者の権利のひとつである差押えは債権者が行うことは出来ません。裁判所に申請後、執行官が行います。勝手に行うと犯罪になる可能性があります。

建築業界の見積りの特徴について

土地活用プランナーの資格を取得する際に痛感したことがあります。それが建築業界の工事見積りの難しさです。

プランナーは幾つかの工務店や代理店から相見積もりを取り、顧客に提案を行いますが、各社から提出される見積りは「工事一式」で書かれていて総工事費金額や内訳を見ても「???」と思うことが多々あります。

明確な比較ができないことが本当に多い!!!

さらに面積単位の工費で算出するような場合は、所属団体によって推奨する見積りに違いがあってある会社は㎡単位、ある会社は坪単位、その上、面積に算出方法も内壁法であったり、投影法であったりとバラバラ。

値引き幅も一定金額上乗せしてあったり、本当に大変で一律に比較するためにはかなりの経験が必要と言われています。

そのため、見積りの書式を提示した上で依頼をすることが必要になります。この辺のテクニックは管理業主任者に求めるのは酷で、管理会社内にいる専門家の手助けが必要になります。

よくある経費削減に用いられる相見積もり

理事会が施設系工事の見積もりを自主で取寄せると管理会社が提案した費用より安く済むケースが多くあります。

特にデベロッパー系の管理会社はグループ内の設備会社や関連会社があり、優先的に進めるように指導されています。そのため価格が割高とよく言います。

当然価格が高くなるには、グループ会社である安心感、責任の明確化にもありますが工事によってはわざわざ高い費用を支払う必要がない思うことも多々あります。

皆さんも一度実行してみてはいかがですか。

皆さんの担当者のスキルは?

大抵の管理会社は各マンションごとに担当者を決めています。管理業主任者の場合が多いと思います。

ところで、担当者は月に何回ぐらいマンションに来ていますか?月に1回の理事会だけですか。

担当者は館内を定期的にチェックしていますか?管理員に任せたままですか?

昔、この業界に入りたての頃にベテラン管理員の方が管理業務主任者に方に話していた印象的な言葉があります。

「担当したマンションを良く知ることが一番大切で、事務所で事務処理ばかりやっていても住民の信頼は決して得られないよ」

本当にそうだと思います。私がマンション管理士の仕事をしながら管理員の仕事を続ける理由もそこにあります。

同じマンション管理組合はありません。1つでも多くのマンションの実務を現場で知り、理事会の運営方法、住民の方の要望を聞き、マンションの老朽の進み方、修繕の在り方を知ることが必要だと思っています。

とは言え、管理業主任者も大変なお仕事なんですけどね。

それでも月に1回理事会に参加した後は、館内を巡回して清掃の状況やマンション全体の空気感を知るぐらいのことはやるべきです。

次章では個々の契約を理解した上で、皆さんが毎年支払う管理費の算出根拠の話に進みます。管理費は委託契約書にも項目別の費用が掲載されているはずです。


⇒ 8章 標準管理委託契約を知る -定期委託業務費ーに続く