ここまで標準管理委託契約書に記載された内容を各業務ごとに確認しましたが、この章では委託業務費はどのように算出されているかを考えます。

標準管理委託契約書には、各業務費の積算する方法が記載されています。

皆さんが支払う管理費になります。気になりますよね。しっかりと内容を確認して損しない価格設定を考えるヒントにしてください。

1、管理委託契約は明朗会計

「標準管理委託契約書」では契約業務ごとに【内訳明示例】の記入例とそれぞれの単価を月額で表示しています。

【内訳明示例1】定額委託業務費月額内訳

事務管理業務費月額基幹業務等の費用
管理員業務費月額管理員さんの人件費等
清掃業務費月額共用部の掃除(日常、定期)
建物・設備管理業務費月額定期点検、メンテナンス費用
ア ◎◎◎業務費月額
イ ◎◎◎業務費月額
ウ ◎◎◎業務費月額
管理報酬費月額管理会社の儲け
消費税月額租税公課

五については戸別に記載せずに各費用に含ませること方法も認められています。

いずれにしても明瞭会計になっていることはわかります。

管理会社としては、ここまで費用の内訳を公開するため、営業的にはやり難いと思いますが、組合員の皆さんには良いことです。

各業務の費用を考えてみましょう。

2、事務管理業務費

事務処理業務は、基幹業務、それ以外の業務から構成されていることはすでに説明しました。

基幹業務の会計、出納に関する業務は、システム管理が主流です。

管理組合の規模により入力作業の手間はかかりますますが、初期の情報の入力が終了すれば日々の運用は出納、報告書等の作成と限定的で管理会社で大きな差がでることは少ない費用であると推測できます。

しかし、管理業には管理業以外にも新規顧客を獲得する営業や経理、総務なども含めてそれなりの人数になります。単純に入力作業は人件費、システム維持管理費だけが加算されるわけでありません。

その上、管理会社は法律に定められた管理業務主任者を雇用する必要があります。(5人以上の30管理組合/人)

委託契約1契約でも1名は必要になります。次は31契約ごとにもう一人を配置する必要があります。ただし、契約数に対しての配置義務になります。マンションの担当者を管理業務主任者にする必要はありません。また、ひとりの管理業務主任者が30管理組合をひとりで担当することは物理的に無理です。

そこで、管理業務主任者とマンション担当者(まだ管理業務主任者の資格を取得していない人)を別に設置することもできます。

無資格の担当者は実務で経験を得ることができ、管理業務主任者は必要な指示を出し、記名押印が必要な業務や理事会に契約当事者として参加する方法です。顧客の規模や重要度で直接担当することもあるでしょう。

管理業務主任者がすべてのマンションの担当者になる方法で管理する会社もあります。

これの確認は理事会は簡単です。担当者に資格の有無を聞けば良いだけです。

無資格の担当者であっても管理業務主任者、管理会社、管理員が優秀であれば問題なく運用することはできます。

このように管理会社の体制や会社の規模、バックアップの体制などで人件費やシステム維持管理が決まると考えて良いと思います。

これに付加契約になる作業量が加算されます。例えば駐車場等の施設利用容料の徴収作業の有無、町内会費の支払い業務の有無、メンテナンスが必要な設備等の件数などが加算されます。

基幹業務の修繕、保全に関する業務は建物・設備管理業務費は別途掲載されます。実施の調整も担当者、現地の立会いなどは管理員業務に含まれます。(支払等は出納で実施)

ひとつの指針として管理会社の支援協会である一般社団法人マンション管理業協会が「マンション管理業務共通見積書式」を公開しています。(参考にご覧ください)

次に理事会、総会の支援業務です。一般的には理事会、総会の日程調整、開催日時通知作業、会場設置、撤去作業、報告書、議事録作成、各種総会提出案の作成が決まった業務になります。

しかし、これ以外に日々発生する様々な問題で発生する派生業務があります。

例えば規約の変更や管理費等の値上げなど住民の意思を事前に確認するためのアンケート等は作成や集計が代表的でしょう。この業務は支援業務の一環ですが、年に何度行うかもわかりません、実施しない年もあります。このような契約に含まれるが確定されていない業務の費用をどのように加算するかです。

管理費には予備費などの用途を決めていない費用は計上されていますが、簡単に使用することはできません。また、理事会側からすれば支援業務に含まれる当然の費用だと言えます。

これらの費用はサポートサイクルで発生することが多く、各管理会社で一定額を計上しています。

基本料金、規模単価は高ければ管理委託費は高くなります。また、施設や設備が充実していれば高くなります。派生業務料金は一般的には問題やトラブルが少ない管理組合は安くなる傾向にあります。

いずれにしても事務管理業務費は、管理会社により価格差がもっともでる費用であることがわかります。

2、管理員業務の費用

管理員の多くは契約社員等の非正規雇用です。費用の基本は管理員に支払われる給与です。

非正規雇用には医療保険、厚生年金の対象ではありません。福利厚生や制服等の支給、教育費、管理費、求人等の広告費等は必要になりますが、これらを含めて管理員費になります。

求人サイト等の見ると多くのところの時給は東京で1,050~1,300円程度でしょう。

午前中だけ、夜間もなど組合の皆さんが希望する時間を管理会社に伝えればそれに合わせた金額の提示を受けることができます。

管理員業務費(人件費)に占める管理員給与の割合を知ると皆さんが契約する管理会社がどの程度の人件費に上乗せしているかがわかります。

派遣会社の例では2~3倍の例などもありますが、2倍を超える様な費用が請求されていたら過剰請求を疑う必要がありますが、契約書内にわざわざ記載する会社はないと思います。注意することがあるとすれば、管理員のスキルでしょう。組合員に海外の方が多ければ管理員には語学スキルが求められます。このような場合は、人件費は一般よりもかなり高額になります。

また最近、高級マンション等で増加傾向にあるコンシェルジュサービスは管理員業務とは別費用になります。

管理員給与=時給×勤務時間×稼働日(1年間)

概ね、管理会社が管理組合に請求する額は次のような式で示すことが出来ます。

管理員業務費(人件費)=管理員給与+管理会社管理費(経費)

3、清掃業務の費用

清掃業務は日常清掃と定期清掃を分けて考える必要があります。日常清掃は、管理員が行う場合には管理員費用に含まれます。

日常清掃に管理員以外の清掃専用の契約されていればその人件費が加算されます。当然に地方であれば時給も安く、相対的に都市部より低額になります。

定期清掃は、専門業者、あるいは関連会社に外注で実施させているようです。

再委託をする契約であれば、契約書に明記されます。(再委託には管理組合の承認が必要であることは委託契約の説明をご覧ください。また、この時、再委託会社名の明記も必要です。)

管理会社は再委託先の発注額に当然ですがプラスαを計上します。これは違法なことではなく、その会社と契約するためには費用は必要になります。その上、再委託業者が不祥事を起こせば管理会社が責任を負います。このようなことを考慮すると清掃費に一定額の上乗せは当然と言えます。

定期清掃の実施回数は契約書内に〇回/年と記載されています。また、清掃箇所も契約書内に記載されています。

清掃方法や仕上がりに不満がある場合は、管理会社に改善要求をすれば良いだけのことです。

清掃費も管理員費と同様に、マンション内で使用する管理員室、電気、水道等の費用は原則、管理組合の負担であり、清掃道具や消耗品もすべて管理組合の負担で行われることです。

この費用は雑費となり、管理組合の会計で処理されるため、管理会社からの請求はありません。

一般的には広い共用部がある場合、高層であるほど清掃費は高くなります。掃除対象床面積に比例すると考えれば良いでしょう。

4、建物・設備管理業務費

建物・設備管理業務費は、法定検査(点検)と自主検査(任意点検)の2つに分類されます。

法定検査は、法律で決められています。(マンションに付属される設備により項目が変わります。)

法定検査目的規定回数
特殊建築物定期調査
(建築基準法)
敷地・躯体3年に1回
建築設備定期検査
(建築基準法)
換気設備
排煙設備
非常用照明装置
1年に1回
エレベーター(昇降機)定期検査
(建築基準法)
昇降機1年に1回以上
消防用設備点検
(消防法)
消防設備簡単な点検は6カ月に1回
総合的な点検は1年に1回以上
簡易専用水道管理状況検査
(水道法)
受水槽受水槽の清掃を年1回以上
専用水道定期水質検査
(水道法)
受水槽毎日、水質検査を月に1回以上、
受水槽の清掃を年1回以上
自家用電気工作物定期点検
(電気事業法)
高圧受電装置月次点検と年次点検
浄化槽
(浄化槽法)
浄化槽
ディスポーザー含む
定期点検を年1回以上

各検査は実施できる機関が決まっています。各会社ににより多少の価格差はありますが、組合員の皆さんが驚くほどの差はないのが実情です。

自主検査(任意点検)はマンションの付帯する設備により変わります。対象とする付帯設備は、自動ドア、宅配ボックス、セントラル給湯システムなど様々ですが、多くの設備は導入時に保守点検契約を締結しています。あるいはサービスとして実施しているケースもあります。

何年か管理業務を更新している場合は、一定額が毎年計上されるはずです。

法定検査の回数と合わせて、3年に一度は少し高くなりますが、管理会社が大きな上乗せをすることは難しい費用になります。

5、警備費用

設備管理業費には、警備契約を含む場合があります。設備に異常が発生した場合に遠隔で警報により緊急に出動する管理方法です。

この管理手段は警備法となり、皆さんがよく見かける警備員とは別に遠隔地から設備の異常を感知して現地に警備員を急行させ、対応する業務に含まれています。

セコムなどの警備保障会社が有名ですが、マンションの規模によって契約状況はことなりますが、多くの場合、設計段階で警備システムがマンション内に設置され、管理員内の配電盤で管理しています。

契約は24時間警備、年間契約になります。管理会社を通して契約するため、管理委託契約書に添付されています。

住民トラブルでも呼ぶことができる場合もあり、管理員室入口に緊急連絡先が掲示されています。

この費用も設備管理業務費に含まれています。

マンション内で何か起きた時の安心の担保の観点から多少の価格差は警備会社であると思いますが一定額は受け入れるべきだと思います。

6、管理報酬費

管理会社が儲けとして加算する費用です。

標準管理委託契約書では管理業務費と管理報酬費を個別に掲載しています。すべての管理会社が報酬費を契約書内に記載すれば比較は簡単にできますが、この表示方法は強制ではなく、管理報酬費を事務管理業務費などの他に含めることを認めています。

そのため、契約書では報酬額を確認できない契約書もあります。いやむしろその方が多いと推測されます。

不動産業に関わらず商売の儲け額の加算方法はそれぞれの考え方で行われるべきであり、国土交通省が指針で示す意義はわかりますが、価格についてはどの会社も工夫していると思います。

管理業は質と量によっても価格は大幅に違います。特に管理組合からの要請量、内容によって評価されるべき費用になります。所謂、管理業務に対する住民の満足度を左右する部分です。

更に最近の管理会社の乱立による価格競争のような状態は管理会社、管理組合にとってもあまり良い傾向にあるとは思えません。

7、管理費の相場

全国平均のデータでは、地域、階数、規模により異なりますが概ね組合員ひとり月額13,000~15,000円程度。

この額は管理費とされていて事務管理業務費、管理報酬費、管理員費、清掃費、建物・設備費管理費の総額で、皆さんが管理費として支払っている額の平均です。

また超高級マンションの管理費も老朽化している小規模マンションも含まれています。

感覚的な話になりますが、月額13,000~15,000円程度はかなり広い共用部を持つマンションです。

8,000~10,000円程度が3LDKファミリータイプ、販売価格3500万円前後の標準ではないかと思います。

一般論として管理費は販売価格と比例して高く、規模とは反比例する傾向があるようです。

更に近年、増額傾向にあることもわかっています。

管理費、修繕積立額などの統計資料は各社発表されていますが、最新2020年の調査ではこちらがもっとも良い報告資料だと思います。参考にされてはいかかですか?

⇒ 東京カンテイ「マンションのランニング・コスト最新動向」

せっかめメモ
マンション管理士、不動産、マンション豆知識

それぞれのマンション組合別に管理することが基本です。

資産の分別管理では、管理会社の運営システムとは別なシステム(データベースを別にする)で管理運用することが求められます。

特に会計や出納は、それぞれのマンション管理組合別に単独で管理する必要があります。

管理会社の契約業績は公開されている

マンション管理適正化法には次の条文があります。

「(マンション管理業者登録簿等の閲覧)第四十九条 国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより、マンション管理業者登録簿その他国土交通省令で定める書類を一般の閲覧に供しなければならない。」

登録名簿は国土交通大臣に公開の責任があり、誰でも地方整備局で閲覧することが出来ます。

また、管理会社の委託数等の情報は、契約している管理会社の窓口で確認することができます。

「(書類の閲覧)第七十九条 マンション管理業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該マンション管理業者の業務及び財産の状況を記載した書類をその事務所ごとに備え置き、その業務に係る関係者の求めに応じ、これを閲覧させなければならない。」

この情報は一般人の閲覧は出来ず、契約者(委任者)の関係者に限定されています。

とは言え、個々の管理費までは掲載されていません。

定期委託業務費って何のこと?

毎月一定に発生する事務管理費用等です。これに対して契約書に書かれていない業務が発生した場合は、別費用を請求することができますが、原則、事前に理事会の承認が必要になります。理事会が収支予算計画以外に出費する場合には総会の承認が必要になります。

そのため、管理会社もある程度の派生業務の発生は定期委託業費に含めています。例えば、規約の変更や管理費等のの値上げなど組合員へのアンケート調査などは派生業務として理事会支援、あるいは総会支援費用として計上しています。

管理業務主任者の担当管理組合数を確認する

理事の方は是非、確認して欲しいです。本当のことを教えてくれるかどうかはわかりませんが、大抵は答えてくれます。管理会社の管理業務主任者への求人広告などを見ると余裕がある契約数で10~15組合です。

もちろん、管理組合の規模にもよりますが大手ほど担当数に余裕を持たせて管理している傾向があるようです。

無資格の担当者でも大丈夫なの?

会社のバックアックの体制と管理業務主任者の能力と担当者のスキルと向上心によると思います。

法的には管理業務主任者が直接窓口を行うことは定めていません。法的な義務は重要事項説明書への記名押印、説明会での説明責任、契約終了時の報告書への記名押印です。

何か起きた時に管理業務主任者がしっかりとサポートしていれば業務に支障をきたすことはありません。

出来れば、資格者に担当窓口(実務)に当って欲しいと思う気持ちはわかりますが、「うちのマンションで担当者を育てやるよ」ぐらいの気持ちでいた方が良いと思います。

また、担当者よりもマンション内の実務は管理員のスキルに依存する方が多く、その意味では管理員が優れていればかなりのマンション管理業は上手くいきます。

管理に使うPCとかどこまでが組合の負担なの?

管理員室やコピー機、FAX電話、防犯カメラ周辺機材、注意喚起等の作成用PC、プリンターなどは管理組合が管理費で購入して無償で管理会社に貸し出します。

光熱費、インターネット代金(プロバイダー)等を含めた通信費も毎月管理組合の管理費から支払われます。

管理組合の懐具合は把握されている

会計を委託する以上、管理組合の余剰金など懐具合は把握されています。余裕があれば値上げもし易いですよね。

逆に言えば、管理費に余裕がない管理組合への値段交渉はしにくくなります。管理会社もその辺は十分考慮しているようです。

話によると社内には資産的な顧客ランク付けがあるとも聞きます。

そのためかどうかはわかりませんが、管理会社でもマンション間の費用に関する情報公開は決してしません。

管理会社は

消耗品の購入先は?

管理会社が決めているようです。管理組合が支払う費用ですから積極的な価格交渉はしないでしょうね。

管理員が購入先を決定することも多く、簡単にアマゾンで購入したり、アスクルなどの事務専門会社で購入しているようです。

本来であれば複数の管理組合で使用するコピー用紙等は一括購入してボリュームディスカウントによる経費削減などを提案すれば良いのでしょうが経験では聞いたことがありません。

この点は、管理費の節約方法のひとつで見直しを実施したことがありますが効果はあります。特に規模が大きな組合では毎月発生する費用が大きいため積算額は大きくなります。長い年月を考えると意外に大きな差になります。

振込手数料は誰が負担するの?

当然、管理組合が負担します。

管理員の社員とパートの違い

社員契約の管理員は優秀な方が多い印象です。特に勤続10年以上になれば、管理会社も単なる管理員ではなく管理業務主任者のサポート役として重宝します。

同じマンションに努める期間が長くなれば管理組合(理事や住民)の方との信頼関係も生まれます。

また、定年等の年齢問題で一般社員から契約社員に変更になる方もいます。いずれにしても長く管理員を続けている方はそれなりのスキルは身についています。

これに対してパート社員は65才の定年を過ぎて職に就く方が多く、管理会社も選考には苦慮されています。

マンションの現場で住民の皆さんに接する業務であり、勤務中の態度だけでも管理会社の評判につながります。

コンシェルジュサービスって何?

クリーニングサービスや食品の販売などを行うサービスが中心です。コンシュルジュが管理員を兼務することはなく別な職種と考えてください。

超高級マンションであれば部屋の清掃やルームサービスもあるなどホテルと遜色ないサービスを提供しています。

意外に持ちだし費用が多い管理員さん

雨天用の長靴やレインコートは自前のことが多いですね。

それ以外にも無くても仕事はできるけどあれば便利と思う小物は以外にあります。100円ショップに行くとついつい買ってしまいます。

わざわざ会社に請求する必要もないと思ってしまいます。

管理員の評価は管理会社の評価に直結する

マンション住民の方と直接接する機会が多く当然です。そのため、管理会社は優秀な管理員を大切にします。

業務評価もひとつですが、定期に住民の皆さんにアンケートなどを取っている管理会社もあります。

管理員へのクレームは管理会社の評価に直結するため、クレームがあるとすぐに担当者から連絡が来て対応策の指示があります。クレームの内容によっては配置換えも行われます。

清掃状況のチェックも管理員の仕事

定期清掃終了後の清掃状態は、本来管理業務主任者やマンション担当者が確認を行うべきですが、管理員が確認しています。これは植栽も同じです。問題があれば上司に報告して対応します。

良くも悪くも管理員への依存度は大きいと言えます。

残業ひとつも許可が必要になります

最近では当たり目になったのでしょうが、残業は事前申告、許可を貰った上で行います。管理員も他の仕事と同じように突発的な業務が発生しやすい仕事です。就業時間直前にトラブルが発生することもあります。そんな時はトラブルの連絡と同時に口頭で残業の許可を取り作業を終わらせます。マンション住民へ迷惑や不便をかけることだけは避けなけれべいけません。現地にひとり出向して業務をしている以上仕方がありませんが大変です。

年間でももっとも多いのはエレベータの点検

ほとんどの設備は年に1回の点検ですがエレベーターは毎月、あるいは最低でも3カ月に一度は点検を行います。これは機械駐車場も同じです。

そのため、エレベーターは独特なメンテナンス契約があります。POG方式(パーツオイルグリース方式)とFM方式(フルメンテナンス方式)があります。

POG方式はパーツ・オイル・グリース・電球・ヒューズ・リード線などの消耗品、オイル等の保守に必要なものを保守料に含み、その他の部品の交換・修理は別途料金となります。割安ですが故障が起きた時は費用の発生が必要になります。

FM方式はエレベーターの各装置・部品の点検・調整をし、故障(人為的でないもの)、劣化した部品の交換、修理を行います。修理費は月々の保守料に含まれており、突発的な修理、部品交換やワイヤー取替え工事代金などの心配がありません。しかし割高であるデメリットがあります。

ほとんどの組合はPOG方式で契約しています。

水道工事関係者は保菌検査まで行う

し尿槽などの浄化槽を設置している場合、年に1回の定期点検が必要になります。検査員にも資格が必要ですが、検査する人は半年に1度保菌検査を行います。

また、給水設備や水道施設に携わる人も保菌検査や検便を行います。

日々の私たちの安全は見えないところで担保されています。

太陽光発電は定期点検が必要なの?

脱炭素化の流れでマンションの屋上利用のひとつとして太陽光発電が注目されています。また、災害時の停電防止の点でも検討を進める管理組合も少しずつ増加しています。

太陽光発電の装置については2017年まで設置した時の点検は必要でしたが、メンテナンスとしての点検は必要ありませんでしたが、改正が行われる次のように変更になりました。

・固定価格買取制度(FIT制度)を適用している太陽光
・50kW以上搭載の太陽光

については定期点検の義務化がされました。

自用の50kW未満の太陽光発電は必要ありません。

警備会社は意外に出動しています

住民の方は見ることはあまりないでしょうが、年に数回は出動しているようです。

築年数が経つにつれ回数も増える傾向にあり、特に最近ではゲリラ豪雨のような想定排水能力を超える場合の発報が原因です。ゲリラ豪雨はここ十年程度でできた言葉です。異常気象の影響はいろいろな場所に影響を与えています。

緊急出動の要請は無料ではありません

警備会社への連絡は設備の発報以外にも住民からの要請でも出動します。ただし、人為的な出動要請は無料ではなく有料です。請求は管理組合に請求されます。

管理費には皆さん敏感なようです

管理費の値下げと言うとリプレースを想像する方が多いようですが実は経費削減は管理会社を変える以外にも方法はたくさんあります。

多くのマンション管理士はサイトで「管理費の見直し」を宣伝していますが、マンション管理現場を知らない人だなと思ってしまいます。

管理費の減額はまず管理組合の中から行うべきです。そのためには現場の実務に精通している必要があり、この点で言えば管理業務主任者でもスキル不足だと思います。

組合員の皆さんの負担が増えることもあれば、生活習慣として取入れるだけで管理費に反映させることもあります。

この辺のノウハウを持っているのは管理員経験が長く、管理業務主任者、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を持つから生まれる発想だと思います。


次に管理委託契約で示されている長期修繕計画について考えましょう

⇒ 9章 標準管理委託契約を知る -長期修繕計画ーに続く

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