前章で管理計画認定制度の中身はご理解頂けたと思います。
この章では、来年4月以降に施行される認定制度に各組合はどのように備える必要があるかを説明します。
是非、お手元に管理組合規約を準備してください。また最新の定期総会議事録、管理委託契約書も準備してお読みください。
特に昭和58年(1983)以前に完成したマンションにお住いの皆さんは是非確認してください。
もしかすると国や市から行政指導を受け、最悪「マンション要除去認定」に指定される危険もあります。
また、昭和59年以降に完成したマンションでも年々、躯体は老朽化が進みます。今回の制度で国も本気でマンション管理組合の運営内容に指導を含めた強い意志をもって監督することがはっきりわかりました。
将来に備えることも考えてマンション管理の現状を見直す良い機会にしてください。
1、修繕の管理計画をチェック
修繕の管理計画は6項目がチェック項目になります。
チェック項目 | 内容 | 注意点 | 合否 | |
1 | 修繕計画の決議 | 修繕計画は組合総会で承認を受けている | 議事録に記載はあるか? | |
2 | 見直し期間 | 5年間ごとに見直しを行い承認を受けている | 7年に変更になりました | |
3 | 30年2回の原則 | 修繕期間は最低25年間であり、その間に2回以上の修繕工事を予定している | 新築は30年以上です | |
4 | 計画書の仕様 | 国土交通省が示す修繕ガイドラインの書式に合わせた仕様で作成されている | 長期修繕計画総括表(仕様書式4-1) 収支計画(仕様書4-2) 長期修繕計画表(仕様書4-3) 3点がセットで用意されている | |
5 | 工事の具体性 | 修繕工事個所、工事内容が明確に示されている | 設置された設備等が含まれている | |
6 | 時期と費用 | 具体性から算出された工事費用が計上されている | 竣工図等に基づいて算出されている |
1については、総会議事録に長期修繕計画が添付されている、あるいは議題とし上程され承認を受けていることが確認できれば合格です。
2、3については、新築時(組合が創設された時点)で30年以上、これを5年ごとに見直し、あるいは修繕、大規模修繕前後で見直しを行い25年以上の計画が立案されていれば合格です。
4については、計画の仕様書が国土交通省の示す修繕ガイドラインと同じ仕様で作成されていれば合格です。管理会社や修繕計画を立案した会社によって多少違いがあると思いますが、縦軸と横軸に書かれている項目が類似してれば合格となる可能性が大きいです。



5については、躯体と設備で異なりますが、躯体は各マンションで形状は異なりますが構造は同じでしょう。屋上防水、外壁、防水塗装、鉄部塗装と設置してある設備、施設の修繕計画は立案されていれば合格です。
マンションの部位ごとの修繕周期については、立地環境、使用状況、マンションの構造などにより影響を受けるために一概には言えませんが概ねの目安を示します。(国土交通省のガイドラインに合わせてあります。)
部位:屋上防水
修繕工事項目 | 対象部位 | 工事区分 | 修繕周期(参考) |
屋上防水(保護) | 屋上、塔屋、ルーフバルコニー | 補修 | 12年 |
修繕 | 24年 | ||
屋上防水 | 屋上、塔屋 | 修繕 | 12年 |
撤去・新設 | 24年 | ||
庇・笠木など防水 | 庇天端、笠木天端、パラペット天端・アゴ、架台天端等 | 修繕 | 12年 |
部位:床防水
修繕工事項目 | 対象部位 | 工事区分 | 修繕周期(参考) |
バルコニー床 | バルコニー床(側溝、巾木含む) | 修繕 | 12年 |
開放廊下・階段等床 | 開放廊下・階段の床(側溝、巾木含む) | 修繕 | 12年 |
部位:外壁等
修繕工事項目 | 対象部位 | 工事区分 | 修繕周期(参考) |
コンクリート補修 | 外壁、屋根、床、手すり壁、軒天、庇等(コンクリート、モルタル部分) | 補修 | 12年 |
外壁塗装 | 外壁、手すり壁等 | 塗替 | 12年 |
除去・塗装 | 36年 | ||
軒天塗装 | 開放廊下・階段、バルコニー等の軒天(上げ裏)部分 | 塗替 | 12年 |
除去・塗装 | 36年 | ||
タイル張補修 | 外壁・手すり壁等 | 補修 | 12年 |
シーリング | 外壁目地、建具周り、スリーブ周り等 | 打替 | 12年 |
部位:鉄部、非鉄部
修繕工事項目 | 対象部位 | 工事区分 | 修繕周期(参考) |
鉄部塗装 (雨掛かり部分) | 開放廊下・階段、バルコニーの手すり、屋上フェンス、設備機器、 立て樋・支持金物、架台、避難ハッチ、マンホール蓋、隔て板枠、物干金物等 屋外鉄骨階段、自転車置場、遊具、フェンス | 塗替 | 4年 |
鉄部塗装 (非雨掛かり部分) | 住戸玄関ドア、共用部分ドア、メーターボックス扉、手すり、 照明器具、設備機器、屋内消火栓箱等 | 塗替 | 4年 |
非鉄部塗装 | サッシ、面格子、ドア、手すり、避難ハッチ、換気口等 隔て板・エアコンスリーブ・雨樋等 | 塗替 | 4年 |
部位:備付施設等
修繕工事項目 | 対象部位 | 工事区分 | 修繕周期(参考) |
建具関係 | 住戸玄関ドア、共用部分ドア、自動ドア 窓サッシ、面格子、網戸、シャッター | 点検・調整 | 12年 (交換36年) |
手すり | 開放廊下・階段、バルコニー、防風スクリーン | 交換 | 36年 |
屋外鉄骨階段 | 屋外鉄骨階段 | 補修 | 12年 (交換36年) |
金物類(集合郵便受け等) | 集合郵便受け、掲示板、宅配ロッカー等 | 交換 | 24年 |
金物類(集合郵便受け等) | 屋上フェンス等 | 交換 | 36年 |
金物類(メーターボックス扉等) | メーターボックスの扉、パイプスペースの扉等 | 交換 | 36年 |
以上の表を参考にしてください。
6については、管理組合が単独で算出することは難しいと言えます。そのため、ほとんどのケースは専門家(設計士や建築士)に依頼していると思われます。
算出には専門的な知識が必要になり、管理会社でも建築部門や修繕工事部門を持つ会社であれば可能ですが管理だけを専門に行っている会社は難しいと思います。
ただし、一度修繕工事を経験している組合は、概算額は実績から判断できるでしょう。
管理計画認定制度では、実績の会社が作成していること、計画の仕様が国土交通省の指針に合っていることが確認できればクリアーできるはずです。
それでは、各マンション管理組合の状況によってどのように対応すべきかをお話しします。
1-1、すでに修繕計画がある組合
すでに修繕計画をお持ちの組合は提出されている計画の中身を確認するだけで良いでしょう。
修繕計画の確認ポイントを説明しましたが、国土交通省の修繕計画に関するガイドラインが公開された後は、管理会社もそれに準じた書式で作成するようになっています。
そのため、組合に提供されている長期修繕計画もそのまま管理計画認定制度に利用できます。
もし、異なる書式であっても内容が準じていれば認定を受けることができます。
恐らく、認定制度は不備があれば訂正して提出することも可能な制度になると思われます。一度、提出して判断を受けることも考えても良いのではないでしょうか。(マンション管理士等の事前確認で指摘されると思われます。)
実際、管理組合によっては管理委託契約に修繕計画の見直しを5年ごとに取入れているケースもあります。また、大規模修繕工事の前後に修繕会社(設計事務所を含む)に修繕計画の見直しを含めるケースもあります。
皆さんが修繕の管理計画で実務を行うことはほとんどくなく、管理会社等の修繕計画を立案した会社からの説明を受け、内容を確認することで管理計画認定制度に対応することは可能でしょう。
1-2、修繕計画が5年以上放置されている組合
新築時に作成された修繕計画がそのまま見直しをされずに放置されている組合です。恐らく、新築後10年未満でしょう。(12~15年程度で大規模修繕が必要になるため)この場合、管理会社、あるいはマンション管理士協会等に相談することをお勧めします。
管理会社と管理委託契約を締結している場合でも、修繕計画の立案や見直しは標準管理委託契約では基本業務に含まれていません。(国土交通種が示す標準委託契約では別契約としています。)
良心的な管理会社であれば、5年ごとに見直しの必要性を提案し、国土交通省の指針に準じた運営を促していると思います。もし、提案も行わないような管理会社であればリプレース(管理会社の変更)を検討すべきです。
管理計画認定制度では放置した状態で認定は受けられません。見直しは必要になります。
ある程度の費用は必要になりますが、管理委託契約した管理会社があれば業務依頼することを前提に交渉することになります。
この制度が施行後は、マンション評価のツールのひとつになる管理計画認定制度です。不動産資産としての価値にも大きく影響すると予想されています。是非、認定を受け良好な管理組合が運営するマンションであることを示す必要があります。

どうしても気になるのは費用ですよね。修繕計画のために幾ら準備する必要があるのか?
相場は発注先でかなり変わります。マンションの修繕履歴は管理会社が管理しているケースがほとんどでしょう。管理会社に委託することがもっとも良いと思えます。ただし、契約している管理会社の規模や組織体制によって判断が変わります。
大手デベロッパー系の管理会社であれば、組織内に修繕工事を受注する部署もあり計画作成に問題はありません。また関連会社に同様の会社もあります。しかし費用は高くなることが一般的です。(元々の人件費等が高い)
独立系の管理会社(ゼネコン以外の会社)でもほとんどの会社は問題ないでしょうが、自社で修繕計画立案が難しいケースがあります。このような場合に多額の委託料を取る会社もあると聞きます。
新築時の修繕計画がある以上、見直しだけであれば高額な費用になりません。業者に依頼するといは複数の会社から見積りを取り比較して適正な価格で発注すべきでしょう。
また、自治体によってはマンションの修繕事業を支援する制度があります。また、マンション管理士協会やマンション管理業協会にも相談窓口があります。これらを利用することも検討してください。
1-3、修繕計画がない組合

管理計画認定制度が導入されると指導を受ける可能性が高い組合です。
新築時に組合がなかった、あるいは組合がずさんな管理を行ったため、修繕計画もなく、大規模修繕も行われず躯体の老朽化が進んでいるマンションと考えられます。
国土交通省の調査結果でも10%強の組合が修繕計画の見直しを実施していない実態が分かっています。
このような組合に適切な管理を実施させることを目的としている管理計画認定制度です。国が直接指導を行うことも出来る制度です。現状のままでいることは出来ないと考えた方が良いでしょう。
このような組合が最初に確認することは竣工図の有無です。竣工図がない場合は一から修繕計画を作成することになります。
数十万円単位の支出は必要になりますが、良好な住環境の維持と資産保全を一度見直す機会と捉え管理組合が一丸となって修繕計画の立案を実施する必要があります。
ただし、このような組合は管理組合が健全な運営が出来ていない可能性が高く、単独では実施ができないことも多く、専門家への協力要請が必要になると思います。
先ほどもお話ししましたが、行政を始め修繕計画の立案には協力体制を整えています。またマンション管理の支援団体であるマンション管理士協会、マンション管理業協会も相談窓口を設置しています。
1-4、耐震化は別問題

管理計画認定制度では認定基準になっていませんが、耐震化も大きな問題であり、修繕計画とも大きな関りがあります。
国土交通省の調査結果(平成30年)を示しましたが、旧建築基準法の元で建てられたマンションで耐震診断を実施した組合は34%でした。実に63.7%の管理組合が実施していないことがわかります。
また、診断を行ったマンションの中で耐震性に問題がある既存不適格建築物に相当した割合は40.8%、詳細な調査が必要とされた組合と併せると半数以上が耐震性に問題があるマンションと言う結果が出ています。
さらに、耐震性がないと診断されたマンション中で38.1%が耐震工事を実施する予定がないことが判ります。
このような事態は、近年の震災の多発と予知のよる危険性を考えると倒壊を含む人命の危機と住居への損害が心配されています。
そのため、国土交通省は老朽化したマンションの外壁等が地震により落下する危険を防ぐ目的とした修繕計画の適性な運用を監理する管理計画認定制度と併せて、震災いより倒壊、廃墟化、救援時の障害になる可能性がある既存不適格建物を要除去認定基準制度を施行することで危険なマンションの廃除を行うことにしました。
修繕計画を作成しない、あるいは見直しを実施しない組合と耐震工事を実施しない組合の関係はわかりませんが、耐震工事を実施しない組合の中には修繕計画もおろそかになっている組合があることは容易に想像できるのではないでしょうか。
いずれにしても修繕計画、耐震化工事を実施していない組合は、管理計画認定制度の実施により赤裸々になり、市場に情報が公開になれば資産価値の低下を招くことは忘れずにおくべきです。
2、修繕の資金計画
修繕の資金計画についても国土交通省の修繕積立金のガイドラインに明確に記載されています。
ガイドラインは管理組合の状況に合わせた5種類の書式が用意されています。表を選択後、項目に各組合の状況(金額等)を記入します。

- 様式5号(新築マンション)
- 様式5号(既存マンション)
- 様式5号(既存マンション、一時金あり)
- 様式5号(既存マンション、借入あり)
- 様式5号(均等、階段併用)
左表には既存マンションの3例を示しました。
横項目(入力する)を確認してみましょう。
① 長期修繕計画により算出された金額をAに入力します。(必要な費用になります)
② 現在の修繕積立金の残金をDに入力します。
③ 毎年会計に計上される専用使用料、駐車場等の共用部使用料を入力しますが、これは年度の合計を数年間平均化した値をEに記入します。
④ スマイル債などを購入して金利を得る場合は運用益としてFに計上します。
⑤ 修繕工事実施時に一時金を予定している組合は金額をGに記入します。(一時金なしの場合は斜線になります。)
⑥ 現在から次回修繕工事予定年度までの年数をJに記入します。
⑦ ⑥の期間に積立てる総額J’を記入します。
⑧ 各専有部(販売タイプ別)の負担割合があれば、管理規約からその数値Lを用意します。
⑨ 専有部の床面積の総面積N(㎡)を記入します。
⑩ 総戸数Pを記入します。(複数所有者は無関係に住居数をカウント)
以上が必要な数値の概要になります。各数値を表に入力すればO、Qは算出できます。
修繕計画と異なり専門的な知識が無くても修繕積立金の資金計画を算出することが判って頂けたと思います。
難しそうな表ですが複雑な計算式はありません。数値さえ準備できれば理事等でも計算はできます。(エクセルで値を入力するだけで計算できる無料ソフトもあります。)
管理会社等から修繕計画を提供されている場合は、必ずこの計算表が添付されていることを確認してください。
2-1、積立金の精査
次に現在の修繕積立金が国土交通省が示す全国平均に当てはまるかを確認します。
管理計画認定制度の可否はこの点にあると思われます。十分な検証をすべきでしょう。
管理計画認定制度の評価が数値をどこまで精査して認定するかはわかりませんが、算出された数値が国土交通省が示す㎡別、階数別修繕積立金の専有床面積当たりの数値の2/3に包含されていれば問題ないと考えています。

国土交通省の表よりご自身のマンションの専有部床総面積と階数を当てはめれば平均値が判ります。
万が一、現在の修繕費と左表の数値が大きく異なっている場合、何か理由があると思われ、認定制度ではこの理由を専門家のコメントを添付する必要があるとしています。
このような場合、適正な修繕積立金への決定を組合全体で承認する必要があります。
基準値が変更になりました。(2021年12月)

国土交通省が2021年11月30日に公開した管理計画認定制度ガイドラインから掲載しました。
青枠で囲まれた数値が基準値になります。
かなりの値上げになります。
修繕積立金の変更は総会の承認が必要になります。
管理計画認定制度に申請を行う予定の管理組合は延べ床面積から算出された金額を最低値にして修繕積立金の見直しが必要になります。
2-1、要チェックの資金計画

国土交通省が推奨する均等方式を採用されている組合では修繕の資金計画は合格を受けやすいと考えています。
これは、修繕の資金計画に対して一定額を納付するため、生活(家計)の影響を受けても比較的吸収す安いと考えられるためです。
これに対して階段式を採用する管理組合では新築時の修繕金が低く見積もられその状態が長く続き、5年ごとの増額を放置している組合には国土交通省の示す値とは大きくかけ離れた修繕積立金額であるケースを多く見かけます。
2-1-1、階段積立方式の問題点
階段積立方式には2つの大きな問題点があります。
問題点1は、修繕金が5年程度で増額する点です。高度成長期のような経済状況がない社会情勢とリーマンショック、コロナ流行、自然災害など多くの不安要因を含む中で10~20年先の増額を受入れるだけの経済成長を見込めるかは不安です。
問題点2は、増額の度に普通議決の合意が必要になる点です。問題点1でも述べましたが積立金の増額は毎月の家計への負担です。修繕計画では数1,000円程度の計画とされていても実際に見直しを行うと2~5倍もに増額される組合もあります。そのような事態になると家計への負担も大きくなり、滞納者の増加につながります。また、組合員の同意が出来ず、修繕金が不足するケースもあります。
このような問題点から管理計画認定制度では、増額の額と時期をはっきりと明示することとその修繕計画に組合員が同意していることが求められます。
2-2-2、一時金採用の問題点
一時金を採用することも修繕積立金のガイドラインでは想定されています。修繕工事の前に組合員から一時金を徴収する方式です。
毎月の修繕積立金を低額に抑え、不足する部分は各組合員が責任をもって都合する方法ですが、毎月各家庭で積立てる方もいるでしょう、また潤沢な資産がある人はその時に支払うことも可能でしょう。しかし、中には家庭の都合で準備が出来ず借金をする方もいます。戸建ての所有者も外壁や屋根の吹き替えにローンを組む方はいますが、それと同じ考え方になります。
一時金の徴収にも、階段方式と同様に総会による普通議決が必要になります。
一時金を含む修繕計はが組合員の同意が求められます。これにより同意に反対できない環境を作ることができます。
2-2ー3、借金がある(予定を含み)組合
借入金を前提にする修繕計画はお勧めの方法ではありませんが、修繕の必要に迫られた状況の中で積立金が不足している場合に金融機関から借入れを行う方法があります。
この場合も組合員が借金をすることに同意していることが必要です。
管理計画認定制度でも借入金があっても認定は可能であるとしています。ただし、借入金が現在ある場合、あるいは将来借入金を前提とした場合のいずれでも返済計画を修繕計画に加味することと借入金の返済完了までの期間が含まれていることの2点を条件としています。
借入金の借入先は住宅支援機構や銀行系金融機関でマンション共用部の修繕工事向けにローンを受け付けています。
現時点で修繕積立金が不足している状態でも修繕の必要が大きいと判断できれば、組合は前向きにローンによる修繕工事や耐震工事を進めるべきです。
このような状況にある管理組合は是非、自治体やマンション管理士協会などの相談窓口に相談してください。専門家の派遣を支援してくれます。その上で、管理計画認定制度を利用し、健全な組合であること認めたもらい、市場での資産価値を担保すべきでしょう。
2-3、その他の基本事項のチェック
管理計画認定制度において資金計画には次の基本事項をクリアーする必要があります。
確認項目 | 内容 | 合否 | 備考 | |
1 | 区分会計の実施 | 管理費と修繕積立金を別会計で管理している | 機械駐車場の別会計は可能 | |
2 | 流用の監視 | 修繕積立金を管理費に流用していない | 臨時もNG | |
3 | 滞納者への滞納 | 滞納額が年間修繕積立金の10%以下である | 対象は3か月以上滞納者 |
以上の項目に問題がなければ基本項目は問題ありません。
マンション管理組合の基本です。ほとんどの組合は問題ないでしょう。
3か月滞納者が存在する管理組合は平成30年国土交通省の調査で23.4%にもなり、築年数が長い程その傾向は顕著であると言う調査結果があります。今回の認定制度では、滞納者数ではなく年間修繕積立金予定額の1割以上の滞納金額がある組合がチェック対象になります。
3か月以上の滞納が発生した場合には、速やかに解消する対応を組合として立てておくことが重要になります。また、年間修繕積立金の滞納比率も確認しておきましょう。
3、管理組合の運用状況
最後のチェック項目は、管理組合の運用状況です。区分所有法、標準管理規約に従っていれば問題になることは生じません。
次の表でチェックしましょう。
確認項目 | 内容 | 合否 | 備考 | |
1 | 理事長、管理者の存在 | 理事会制、管理者が任命されている | 管理会社でも可能 | |
2 | 監事の任命 | 総会で選出されていること | ||
3 | 総会の実施 | 毎年総会があり理事長から報告がある | ||
4 | 住民名簿の常設・更新 | 住民内の名簿がある | 家族、賃貸者を含む | |
5 | 専有部立入り条項がある | 規約に理事長、委任者の立入が権限が規約に記載されている | 標準管理規約23条 | |
6 | 修繕履歴の管理 | 規約に修繕履歴の管理と利害関係者への情報提供が記載されている | 標準管理規約32条、64条 | |
7 | 管理情報の情報提供 | 規約に管理情報の利害関係者への情報提供が記載されている | 標準管理規約64条 |
番号4の住民名簿の常設・更新については、検討会でも区分所有者名簿で十分なのではないかと話合いが行われた様で、議事録に記載が一度消え、最終案で記載された項目です。
区分所有法でも標準管理規約でも区分所有者名簿の常設と更新は必須項目です。賃借人も契約者が誓約書を提出することを義務にするように記載されています。今回の管理計画認定制度では居住するすべての名簿を整える必要があると思われます。
また、1年に一度区分所有者の名前と居住確認を行うことも記載されています。これは、変更届けを出さずに所有者変更を行うケース、賃借人の情報を提出しないケース、親類や知り合いを長期で滞在させるケースなど本来のマンション管理組合の運営に適さない使用方法が増加する傾向にあるためと思われます。
また、高齢化が進み孤独死などが現実に起きている状況に対応できるように各専有部の居住者状況を把握し、理事や住民の声掛けや自治体の福祉課などとの連携により改善するためとも思われます。
個人情報を含むため管理会社、理事会等も名簿の保管には十分注意する必要がありますが、認定制度の趣旨を理解した上で対応すべきでしょう。

以上が各組合で管理計画認定制度に向けた準備になります。
皆さんがお住いの市区により認定制度の適応範囲がどのようになるかはわかりませんが、少なくとも昭和56年以前に建てられたマンション管理組合は義務化されると推測されます。
認定制度は令和4年4月からと言われています。その後、各市区が制度を決定した上で実施されると思われます。
次章では同時期にマンション管理業協会が中心に実施する「マンション適正化評価制度」との違いについて説明します。
紛らわしい呼称ですが、全く異なる制度です。
管理会社から制度の利用を勧められるかもしれませんが、その時に参考にお読みください。
➡ 3章、マンション管理適正評価制度とは?に続く
目次(追加分を含む目次)
5章、管理計画認定制度ガイドライン公開1 (修繕積立金の基準値変更)2021年12月6日追記
6章、管理計画認定制度ガイドライン公開2 (管理計画認定制度の申込方法)2021年12月6日追記
7章、管理計画認定制度の現状 (管理計画認定制度の申込方法)2021年12月6日追記