2021年9月28日、国土交通省が「マンションの管理の適正化を図るための基本的方針の方針」の策定について公開をしました。

いよいよ管理計画認定制度が正式に実施されることになりました。

公開している資料(PDF)はこちらから入手できます。(➡国土交通省ホームページ

制度の概要

前章までで説明した通りでしたが、確認事項を含めて追加説明を加えます。

認定基準については最終案と同じ内容でした。

基準は基本的に区分所有法、標準管理規約内で修繕、資金計画、関係者への情報公開、緊急時の対応に絞られています。管理会社に委託契約している管理組合であれば、住民名簿以外は特に改めて見直す必要もない内容です。

今回の発表では管理計画認定制度の利用方法や効果について「管理適正化の推進」に加え、マンション売却・購入者に加え、マンション所有者、居住者にもメリットがあるような運営を期待しているとしました。

これは先ほども示した関係者への情報公開も含めた第三者への情報提供が含まれています。


中古マンションの市場に対して国土交通省が実施する管理計画認定制度の認定を受けているマンションであることを公表することで購入者に安心感を提供することになります。また売却者(区分所有者)は市場での価値の向上が期待できるわけです。

その上で、住み続ける人には良好な生活環境と資産の維持ができる管理組合の運営状態である安心感を提供できると考えています。

気になるのはマンション管理業協会が実施する「マンション管理適正評価制度」との関係ですが、今回公開された資料では管理計画認定制度と同時申請が可能となる見込みですが、不動産業界がどちらのどちらの評価を重要視するかは現在不明です。

いずれにしてマンション管理センター、マンション管理業協会でそれぞれの結果は公開されることになり、購入者はひとつの目安として判断材料になることだけは間違いないでしょうね。


管理計画認定制度の認定期間は5年間毎の更新になりました。

本制度の運用は市区単位の自治体単位で実施されますが、市区が実施しない場合、あるいは町村については都道府県が実施するとしました。

各自治体は国の指針(管理計画認定制度)に各自治体の地域性を考慮した独自の管理適正化指針を作成します。

そのため、一部の自治体では国が示した認定基準に地域性が含まれた追加基準があるケースもあります。

制度の施行は2021年6月24日が公布日になります。今回の制度は公布後2年以内に実施されます。

現在の予定では2022年4月からになる予定ですが、自治体のスケジュールは各自治体で決定される見込みです。

国土交通省の改正マンション法の施行に向けたスケジュールが公開されています。

国土交通省 マンション建替円滑化法の改正概要より

ほぼ、予定通り進んでいることがわかりますよね。

申告の流れ

次に事前確認の流れを国土交通省は示しています。

いきなり自治体に申請するのではなく、事前にマンション管理センターに認定申請を行い、そこで事前確認をする流れになります。

以下、イメージ図です。

認定の事前確認・認定申請はマンション管理組合の集会(総会)で普通議決により同意を得ます。

承認が得られた後、マンション管理センター(国土交通省から委託)が受付窓口になり、認定を受けたマンション管理士が審査を実施します。その結果、提出種類等に問題が無ければ、マンション管理センターから事前確認適合通知が発行されます。

この結果を市区の担当窓口に提出して認定を受けます。

認定された結果は、各マンション管理組合の事情により結果をマンション管理センターで公開することが出来ます。


各管理組合から事前申請を受けたマンション管理センターには申請を審査する講習を受けたマンション管理士が提出資料を確認する見込みです。(これについてはまだ、管理センターから正式な資格や講習について発表はありません。)

東京都が現在実施している登録制度の場合、書類提出以外にも実際申請があったマンションに審査官が赴き確認していますが、現状では不明です。

いずれにしても修繕計画や修繕資金の考え方を身につけたマンション管理士が審査にあたることは容易に想像できます。


次に今回、新しく発表された今後、新築されるマンションへの適用についてです。

国土交通省が示したイメージ図です。

今回公開された管理計画認定度では現存するマンション以外にも今後建築されるマンションにも本制度を適用する予定が示されました。

申請者はマンション管理組合が竣工時には存在しないため(区分所有法3条に規定される組合)にマンション分譲会社が分譲後管理を請負う管理会社と連名で申請を行うことで将来的なマンション管理の適切な運営を担保する予定の様です。

また、マンション管理業協会が同じ時期に実施を計画してる「マンション管理適正化認定制度」とは同時申請が可能になる見込みです。


既存のマンションだけでなく、これから建てられるマンションについても管理組合の運営の健全化の対象としていることには少し驚きましたが、マンションは完成した時から劣化が始まっていることは事実ですから、どの時期に建てられたマンションでも適切な管理と修繕は必要不可欠になります。

そのことを見越した国土交通省の考え方は当然と言えば当然なのでしょう。

ただし、この制度が新築マンションまで広がったとしても原則、申請は管理組合の任意です。

分譲会社が販売時に故意に修繕積立金を少なく設定し、階段積立方式を採用することで購入価格を抑える方法が広く使われてる今、新築時に管理計画認定制度の申請をメリットと捉える分譲会社がどの程度あるかはわかりません。


管理計画の認定基準は最終案を同じ内容でした。(本特集の1章、2章参照)

注目していた名簿の件ですが、災害の多発等に対して迅速な対応を行うことが目的であると明確に記載されました。

そのため、従来の区分所有者名簿の他に住民の名簿が必要になります。

賃貸借人を含め、またマンションに住むすべての人の名簿の管理が必要なります。

これにより管理組合は「個人情報の保護に関する法律」(通称:個人情報保護法)に定める個人情報取扱事業者に該当し、その管理に十分な注意をすることが必要になります。

以上が国土交通省が公表した令和4年4月から実施する管理計画認定制度になります。

所管

検討会の最終報告書(案)で示された内容と同じでしたね。

管理会社に委託契約で管理業務を委託している管理組合の多くは多少の資料の整理などは必要になると思いますが、申請を行えば認定される可能性が高いと思います。

問題になる組合は、修繕計画がない組合、修繕積立金がない、あるいは極端に少ない組合は来年4月以降、組合員に「管理計画認定制度」を周知徹底した上で、速やかな対応をすべきでしょう。

今回の制度には2つの面があり、ひとつは不適格な運営を行う管理組合の改善です。この対象になる組合は昭和56年以前に建てられた経年化マンションです。修繕等を適切に実施していれば特に問題にはなりませんし、逆に不動産資産的には運営が健全な組合として市場ではこれまで以上に価値が上がる可能性があります。

これに対して、修繕等を実施していない老朽化マンションは、認定を得るためにはかなりの努力が必要になるでしょう。また、市場での価値も低下することが予想され、所有者にとっては将来(遺産としても)への不安を残すことになります。

平均寿命が80歳を超えさらに伸び、区分所有者の高齢化による収入の低下により、修繕積立金の負担等については、指針の中でリバースモーゲンジー制度の利用を明文化するなど収入面にも考慮していることが伺えます。逆に修繕金等の滞納者へは少額訴訟による対処方法も明記されたことには少し驚きました。

その上、国土交通省も老朽化するマンションにも支援策を準備しています。それが改正マンション建替円滑化法です。耐震だけでなく防火、壁面の剥落、バリアフリーにも支援を広げました。

もうひとつ面は、現在、安定的な運営を行う管理組合も将来への不安があることを前提にしていることです。特に施行後に建設、分譲されるマンションに対しても認定制度を普及させることを準備していると公開したことは衝撃でした。

これに連動して住宅金融機構の貸付金利の優遇までも明記しています。(現在、調整中らしいです。)

このように定期的な認定制度の更新の導入により、将来的な安定運営を担保されたことです。

今後、この制度が普及することで多くの都市では老朽化したマンションは徐々に見かけないようになることが予測されます。

皆さんも他人事とは考えずに、この機会に管理組合の運営状況を確認することをお勧めします。


マンション管理士の活躍の場が出来た!!

マンション管理士資格者の方は今回の制度の施行を心待ちにしていたではないでしょうか。

これまでマンション管理士は、管理業務主任者のような独占業務がありません。そのため、コンサルティング等の業務内容がわかりにくく、資格を生業に出来る人は限られています。

管理計画認定制度によりマンション管理士に認定審査を行う業務が出来たことになり、マンション管理士資格者の仕事の範囲が広がったことになります。

認定を行う者がどのようなマンション管理士になるか?今後注目したいと思っています。

今後も新しく発表される情報は公開する予定です。

➡ 5章、管理計画認定制度ガイドライン公開1に続く


目次(追加分を含む目次)

1章 管理計画認定制度の中身

2章 管理計画認定制度に備える

3章 マンション管理適正評価制度とは?

4章、管理計画認定制度が公開 2021年10月追記

5章、管理計画認定制度ガイドライン公開1 (修繕積立金の基準値変更)2021年12月6日追記

6章、管理計画認定制度ガイドライン公開2 (管理計画認定制度の申込方法)2021年12月6日追記

7章、管理計画認定制度の現状 (管理計画認定制度の申込方法)2021年12月6日追記