
2021年11月30日、国土交通省が「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」第5条の3に基づくマンションの缶入り計画認定制度に関する事務ガイドラインを公開をしました。
管理計画認定制度の申請方法について公開されました。
自治体が国が定めたマンションの管理の適正化ぼ推進に関する法律に従い、マンション管理適正化指針を定めていることが必要になります。(定めがない自治体では申請ができないと考えられます。)
自治体の単位は市区単位、町村は都道府県単位に指針を定めることになります。
マンション管理適正化指針では管理計画認定制度に管理組合は申請を行うことができますが、任意であり必ず登録をする必要はありません。(これについては、各自治体が2022年4月以降、そのように決めるかは現時点では不明です。)
管理計画認定制度に申請を行うためには大きく2つのパターンがあります。
(公財)マンション管理センターが行う管理計画認定支援サービス(事前確認制度)を利用して申請する方法と管理組合が直接自治体に申請する方法です。
1、管理計画認定支援サービスとは何か?
このサービスは国から認定を受けた(公財)マンション管理センターが受付、審査、公開を一括して行う方法です。申請等をすべてネット上で行うため煩雑な作業が無く申請から合否判定、公開までの時間短縮、作業効率の向上などを目的に構築されたシステムです。
申請後は講習を受けた(公財)マンション管理センターに所属する認定マンション管理士が提出書類を審査、合否を判定します。
管理計画認定支援サービスは誰でも申請(入力)は可能ですが、申請時点でマンション管理に精通した上で、管理計画認定制度の審査基準、提出書類等を理解していないと難しいと考えられます。
2、選択肢は4つ
管理計画申請支援サービス(事前確認制度)を利用する手段は4つあり、管理会社は自由に選択することができます。
各選択肢の詳細は次のようになります。

なかなか複雑な仕組みになります。ひとつひとつ説明を加えますが、その前に(一社)マンション管理士会連合会と(一社)マンション管理業協会についてとそれぞれが行っているマンション管理の評価制度を説明します。
2-1、(一社)マンション管理士会連合会(日管連)
全国のマンション管理士会で構成する組織です。
マンション管理士会は都道府県単位で活動するマンション管理士で構成される組織です。(任意加入)
例えば東京であれば東京都マンション管理士会です。

各マンション管理士会は日々マンション管理の知識の向上とマンション管理のアドバイザーとして独自のサービスを業務を行っています。
代表的なサービスは、「マンション管理適正化診断サービス」です。診断業務研修プログラムを修了した診断マンション管理士を管理組合に派遣し、「マンション共用部分診断レポート」を作成・提供するサービスです。
「マンション管理適正化診断サービス」は管理運営状況、修繕計画状況、法定点検・修繕工事のほか、防犯対策、防火管理、保険事故履歴などマンションの管理状況全般を対象に、目視・書類チェック・ヒヤリングを行い、診断結果やアドバイスを記載した診断レポートを作成します。
このサービスの最大の特徴は、レポートの結果が日新火災海上保険(株)のマンション共用部分用火災保険において割引適用制度を利用することができる点です。
保険料を安くした管理組合などが申し込む例が多いようですね。
「マンション管理適正化診断サービス」の調査内容は管理計画認定制度の基準項目と重複する点も多く、今回の管理計画認定手続支援サービスと同時に行うことができるようになりました。
これが(一社)マンション管理士会連合会(日管連)を利用した申請方法です。
言い換えると「マンション管理適正化診断サービス」を実施する際に同時に管理計画認定制度の申請も行う方法になります。
2-2、(一社)マンション管理業協会
管理組合の皆さんが管理組合の運営を委託する管理会社が加入する協会です。
全国のマンション管理組合の9割と委託契約する管理会社が加入している組織になります。
管理業務に伴う技術、知識の向上を目的に管理会社への有意義な情報を提供すると共に、管理組合からの管理上の様々な相談にも対応している組織になります。
マンション管理業協会は来年2022年4月からマンション管理適正化法に合わせて「マンション管理適正評価制度」のサービスを行うことが決まっています。
管理計画認定制度との違いは不動産売買の評価に利用することを目的にした制度であり、管理計画認定制度より評価項目が広く1年更新でマンション管理の状況を点数制で知ることができる点です。(簡単な比較表を)
マンション管理適正化評価制度 | 管理計画認定制度 | |
運営先 | (一社)マンション管理業協会 | 地方自治体 |
目的 | 不動産売買時の評価 | 管理状況の確認 |
評価項目数 | 30項目 | 約16項目 |
評価方法 | 点数制(6段階) | 合否 |
費用 | 有償 | 有償 |
更新期間 | 1年 | 5年 |
審査員 | 講習を受けたマンション管理士・管理業務主任者 | マンション管理センター(マンション管理士) |
インセンティブ (予定を含む) | 大手不動産ポータルサイトに結果を公開(予定) 損害保険等保険料優遇(予定) | フラット35の金利優遇(新築マンション対象) |
まだ開始されていないサービスであり、不確定な部分もありますが、評価項目を確認すると管理計画認定制度の内容はすべてマンション管理適正化評価制度に含まれていることから同時申請は組合にとって手間が省け、目的が異なるため有効な手段になると考えられています。
また、管理運営業務を委託している管理会社が所属する協会が実施する評価制度になり、契約している管理会社を通して申請することで管理状況が分かり易く、他の方法に比べて手間暇の簡素化ができることが期待できます。
ポイントはマンション管理業協会が実施するマンション管理適正化評価制度と同時申請を行うことになります。
2-3、事前確認講習修了マンション管理士
2022/4追記
管理改革認定制度の実施が近くなり、申請方法が明確になりました。
マンション管理センターに申請を行う際に、事前に一定の資格を持つマンション管理士が申請内容を確認することで申請内容を保証することになります。
一定の資格者とは、
1、認定マンション管理士であること。
2、マンション管理士保険に加入していること。
3、事前確認講習を修了していること。
となりました。
認定マンション管理士とは国家試験であるマンション管理士試験に合格後、日管連が実施する認定マンション管理士研修を受け、試験に合格したマンション管理士になります。
近年のマンション管理組合では理事等の役員不足が問題になり始めていますが、これに対応すべく、第三者管理を想定した講習を受講したマンション管理士であり、日管連が修了者が起こしたトラブルの補償をしてくれます。
事前確認講習は1回目の募集はすでに終わり、すでに1回目の講習は終了しています。
FJマンション管理士では事前確認講習を修了しています。
認定マンション管理士の事前確認講習の全容は公開されていませんが、来年には講習の詳細が公開されると考えられます。(当サイトでも公開され次第、追記を行います。)
マンション管理士会連合会やマンション管理業協会を利用せずに事前確認講習を受けたマンション管理士が直接、管理計画認定支援サービスに申請を行う方法になります。
恐らく、マンション管理士事務所を運営するマンション管理士が認定講習を受けた管理組合から仕事を受ける方法です。
この場合、申請する段階で申請の合否を判断する資格を持つ方と同等の能力があるため、申請=合格になります。
ちなみに、マンション管理業協会に所属するマンション管理士も認定、及び事前確認講習を受けた上で各団体のサービスを利用しても同じように申請=合格になります。

(公財)マンション管理センター
今回の管理計画認定制度で中心的な働きをする(公財)マンション管理センターですが、国から指定認定事業支援法人に指定されています。
各管理組合から提出された申請の合否を決定する組織であり、審査に合格した場合、管理組合が望めばマンション名が公開されます。
申請内容を評価し合否を判断する人は、事前確認講習修了マンション管理士になります。
今回公開されたガイドラインの中で、マンション管理センターに所属するマンション管理士が、申請を行う側に個別にアドバイスを行うことは利益相反関係になるとして禁止するとしました。*日管連に所属するマンション管理士とは違います。
確かに申請と審査が同じ人では公平性に欠けますから当然の判断ですね。
ただし、管理計画認定制度の普及のためのセミナーや講演会は認められています。
2-4、申請代行
各業界団体が行うマンション管理の評価制度を利用せずに第三者に申請を依頼する方法になります。
第三者としては、管理会社(委託契約、管理者受任者)、マンション管理士(個人、法人)が想定できますが、特に申請代行資格が規定されているわけではないため、誰でも申請はできる可能性はありますが、マンション管理の知識がないと難しいため、他の業種からの参入も考えにくいと言えます。
2-4-1、管理会社が代行する
管理会社が協会が運用を開始する「マンション管理適正化評価制度」を利用しない申請を選択することになります。
管理組合からの強い要請が無い限りは難しいと思います。
あるいは、マンション管理業協会に所属していない管理会社ですが、その数は限定的です。
2-4-2、マンション管理士が代行する
現在、顧問契約を結んでいるマンション管理士が申請を代行することは可能性はあります。また、申請代行のためにマンション管理士と委任契約を締結する方法も考えられます。
しかし、マンション管理士に代行を依頼するのであれば、認定マンション管理士、あるいはマンション管理士会連合会(日管連)に所属するマンション管理士を組合側も代行先に選択するのではないでしょうか。
長い間、顧問契約があり管理組合と信頼関係のあるマンション管理士は別にして、新たに管理計画認定制度の申請を目指して契約する以上、この制度自体を良く知り、制度設計から協力してきた日管連に所属しているマンション管理士を選択するのは当然だと言えます。
また、日管連所属であっても認定マンション管理士の資格を有する者が優先されると言えるでしょう。
更に、日管連に所属しているマンション管理士であれば、「マンション管理適正化診断サービス」を無料で受けることができ、結果次第ですが損害保険料の割引優遇を受けることができると知れば、同時申請を希望する管理組合が多くなるのは当然だと思えます。
その意味では、この方法は可能性ですが、2-1で説明した方法に集約されると考えます。
2-4-3、行政書士などが代行する
行政事務の代行と言えば行政書士ですが、管理計画認定制度の申請は難しいと言えます。
マンション管理の知識が無いことが最大のポイントになります。
敢えて、管理組合も行政書士に委託するメリットがありません。
2-4ー4、不動産関係の会社
既存するマンションの管理業務を請負う管理会社の中にはグループ内に不動産開発、建設、分譲、管理までを一括で行う会社もありますが、管理会社がマンション管理の中心にあり、他の事業からの参入は難しいと思います。
ただし、新規分譲マンションについても管理計画認定度の適用は現在検討中ですが、近い将来実施されることでしょう。
実施後は、フラット35の金利優遇がインセンティブと提供されることになれば、分譲会社はこの制度を最大限利用して販売の促進を行うことは容易に想像できます。
その際には、分譲会社も管理会社と共同で管理計画認定制度の申請者になることが想定されています。
現状では管理会社以外の不動産関係の会社が申請を代行することはないと思われます。
3、自主申請
(公財)マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用せずに各自治体の窓口に申請を行う方法です。
管理会社に委託をしている管理組合では考え難いため、自主管理を行っている組合が選択する方法になるのではないかと考えています。
それも修繕積立金等が潤沢であり、管理組合運営に精通している理事長の元、運営が行われている組合以外は難しいと思います。
しかし、最近では理事長がマンション管理士と言う場合も珍しくありません。その意味では皆無とは言えないでしょう。
規約や総会議事録の準備は問題なくできますが、修繕積立金や修繕計画については専門家の手助けは必須になると思われます。
理事長を中心とした管理組合が単独で申請を行うことができればかなり優良な管理組合なのでしょう。
4、申請はPDF
(公財)マンション管理センターの管理計画認定を利用する場合、申請時の資料はすべてPDFで行うことになります。
各資料をスキャナーで電子化後に申請サイトでアップロードする方法です。
準備する書類の一覧は次のようになります。
備考 | ||
1 | 管理規約の原本の写し | 規約を変更した場合はその記録を含む |
2 | 理事長を選出した際の総会議事録の写し | 管理者も同様、規約に理事長・管理者が指定の場合は その者が選任された時の総会議事録 |
3 | 監事を選出した時の総会議事録の写し | 規約に指定の場合はその者が選任された時の総会議事録 |
4 | 申請日を含む直近の議事録の写し | 申請日より1年以内 コロナ等で遅れた場合は、遅れた理由がわかる書類 |
5 | 申請日を含む直近の収支決算書・賃借対照表の写し | 総会承認の議事録も添付 |
6 | 申請日を含む直近の事業年度の月別滞納者リスト | 個人名は黒塗りでも可 |
7 | 長期修繕計画の写し | 必要項目が判れば書式に拘る必要はない |
8 | 上記修繕計画の承認した総会議事録 | |
9 | 長期修繕計画の変更日時が記載された総会議事録 | 計画の見直しが7年以内に実施されていることがわかる資料 |
10 | 認定申請書 | 定型書式(6枚綴り) |
各提出物は管理計画認定の基準を満たしていることを確認するために必要な資料になります。
ただし、各書類の形式が国土交通省が公開しているガイドラインと異なっていても基準を満たしていることが確認できれば問題ないと思われ、特に修繕計画については書式1、2、3、4に揃える必要はありません。
管理組合でスキャナー付きのプリンターを要している組合はすくないと考えられ、提出資料の準備を含めて外部の期間に委託することが必要になると考えられます。
2021年11月30日に国土交通省が示した管理計画認定制度のガイドラインから申し込みに関係する情報をまとめました。
各自治体が制度を実施する時期は自治体の状況で変わりますが、これから数年以内には自治体のマンション管理に対する姿勢も含めて明らかになると思います。
自治体によっては独自の基準を設定することもできるため、上記に示した資料以外に必要な提出物が増える可能性もありますが、最低限必要な資料の概要はお分かり頂けた思います。
➡ 7章、管理計画認定制度の現状に続く
目次(追加分を含む目次)
5章、管理計画認定制度ガイドライン公開1 (修繕積立金の基準値変更)2021年12月6日追記
6章、管理計画認定制度ガイドライン公開2 (管理計画認定制度の申込方法)2021年12月6日追記
7章、管理計画認定制度の現状 (管理計画認定制度の申込方法)2021年12月6日追記