民法の改定がマンション管理組合に与える影響を理解するには。マンション管理を規定した「区分所有法」と「民法」の関係を理解する必要があります。

皆さんはご存じだと思いますが、分譲マンション土地の所有権、専有部、共用部の所有権が一般の所有権とは異なった考え方をする必要があります。所有権の他に使用権の考え方です。

専有部は皆さんが専有することができますが、建物の屋根、柱、通路、玄関などは所有権がありますが、どの部分を所有している決まりはなく持分として所有権を保有しています。そのため、共用部は誰でも区分所有者、その家族は使用することができます。

これは民法ではなく、区分所有法で規定され、分譲マンションの権利関係のルールを明確に規定しています。

敷地についても同様に敷地の持分は専有部の床面積に応じた権利が与えられていますが、どの部分を所有しているかは決まっていません。

そこで区分所有者は敷地を自由に利用できるように、土地の所有権関係は持分を示す敷地権(登記に記載)の他に敷地利用権を創設し、敷地を利用する権利を与えました。

そのため、区分所有法では共用部の使用権、敷地利用権を専有部と分離して処分することは禁止しています。(一部、長屋タイプは認められている場合があります。)


専有部に必ずついてくる敷地利用権、共用部持分

もし、専有部と敷地、共用部持分を分離処分することを許すと専有部だけを所有する人が出来てしまいます。そうなると外出時に廊下も敷地も利用できない状態になり、生活維持ができません。また勝手に土地だけを区分所有者以外に譲渡すると購入者が好き勝手に利用されては他の人は大変困ります。そのため専有部と土地の分離処分を禁止しています。


同時に区分所有者はマンション購入後に自然発生する管理組合(3条団体)に属し共同で管理運営することが定められています。

ただし、分譲マンション(居住向け)だけに限定した規定ではなく、区分所有物件(オフィスビル等)について規定されています。そのため、分譲マンションの管理運営には向かない点もあり、マンション管理組合向けに実際の運用を想定して標準管理規約があり、詳細なルールが定められています。

では、区分所有法と民法の関係はどうでしょうか。

区分所有法に定められたルールは区分所有法が適用され、それ以外の区分所有法に記載されていないものは民法が適用されることになります。区分所有法と民法が重複する場合は区分所有法が優先します。

そのため、今回の民法改正では、区分所有法に規定されていれば特に影響しないことになります。

しかし、区分所有法に規定されていない契約関係、滞納者(債務者)への対応、相続などは今回の改正民法が適用されます。また、従来の慣例や他の規定の解釈の延長で運用してきた行為が明文化された民法もあります。

そのひとつに組合契約があります。組合員、組合役員の皆さんに関係する項目を説明します。

1、管理組合の運営には影響はない

組合契約に従来の規定はなく、他の民法を解釈で運用していました。そこで今回の改定で明文化されました。

*民法では組合契約全般を対象にしているため、マンション管理組合のように自然発生的に存在する組合を対象していません。例えば脱退はマンション管理組合の場合は区分所有者の権利の譲渡が無かれば勝手に脱退することはできないなどすべてが適用されるわけではありません。

追加された項目は右表に示しましたが、管理組合運営に影響する内容は3、4です。それぞれ次の通りになります。

それぞれ民法670条、670条の2に規定されました。

民法670条1項

組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する。 組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができる。 ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。

従来、管理組合の理事会、総会で議決により議案を決議する普通に実施されてきたことですが、この内容が明文化されました。

管理者を管理会社やマンション管理士にお願いしているケースもあると思いますが、第三者に委任することができると規定されました。これまでの契約で問題ないとわかります。

次は代理について規定されました。

民法670条の2

各組合員は、組合の業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができる。 前項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者は、組合の常務を行うときは、単独で組合員を代理することができる。

理事長や管理者を任命して管理組合の運営を委任することも実施されてきたことですが、この内容が明文化されました。

このように改定によりマンション管理組合の運営は従来通りの方法で問題なく、変更する必要がないこともお判りいただけたと思います。


目次

1章、管理組合運営への影響

 2章、配偶者居住権の影響

3章、法定金利が変わりました

4章、消滅時効の表現が変更になりました

5章、管理委託契約に係る民法の改正

6章、修繕工事契約に係る民法の改正

7章、賃貸借契約に係る改正

8章、組合運営に係る改正


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