民法の改正で新たに配偶者に終身、あるいは一定期間の配偶者居住権が認められました。

分譲マンションをお持ちの方には朗報になった方も多いと思いますが、まずは配偶者居住権について概要を説明した上で管理組合の運営に与える影響、注意点をまとめます。

1、配偶者居住権の概要

配偶者居住権とは、配偶者の一方が死亡した時、残された方がその自宅に住み続ける権利です。(同居が条件ではありません。)

従来から当たり前に繰り返された行為ですが、行為は同じですが相続の手続きが大きく変わり、残された方の生活費を確保する一つの選択肢として注目されています。

これまでの相続は、被相続人(死んだ方)の所有物(自宅)の所有権を相続する方法で権利を譲渡しています。

しかし、自宅の所有権の相続には不動産評価額(自宅の土地や建物)への相続税が課税され支払う必要があります。

手元に潤沢な資産があれば別ですが、自宅を遺産分割することは事実無理で、一方が自宅の所有権を取得すると不足分を現金等の残り財産と合算後に法的に決められた比率により公正に分割されます。

この場合、住み続けるために自宅を相続すると現金が手元に残らない傾向があります。これでは残された方が困ってしまいます。

そこで従来の自宅の所有権の相続を「所有権」と「配偶者居住権」に分けて相続することができるようにした改正です。

一例として全国銀行協会が掲載しているデータを基に作り直した図を掲載しました。

相続評価額2000万円の自宅を自宅所有権1000万円、居住権1000万円に配分して相続した例になります。このように相続することで自宅に住み続けた上で安定した生活を送ることができようになります。(所有権の分配比率は計算式があります。詳細は国税庁ホームページ

配偶者居住権は、生前贈与や遺産分割で行うことが出来ますが、登記を行う必要があります。また、売買の対象にはならないなど幾つかの注意点がありますが、知っていると相続時の選択肢がひとつ増えたことになります。

詳しくはファイナンシャルプランナーが解説するホームページを検索して頂ければすぐに見つかります。

また、相続が確定する遺産分割までの間、配偶者は短期配偶者居住権(最長6か月)が認められました。

では、これがマンション管理組合の運営にどのように関係するのでしょうか。

住宅を相続した際の税金を支払った上で住み続ける必要が相続税が老後の生活を苦しくする原因になるケースもあります。最悪、自宅を売却して税金を支払うと遺族は住み続けることができなくなります。

2、管理組合運営への影響

区分所有法、標準管理規約では組合員である区分所有者は組合に対して名簿の提出が義務とされています。

組合は名簿を管理し記載された情報を元に集会の告知や議決数計算等を行います。この名簿に不備があると正確な組合員の意志を確認することが出来なくなります。

今回の配偶者居住権が認められたことにより、管理名簿が杜撰な管理になる可能性があります。

区分所有者が死亡、配偶者が相続をすると予測されますが、区分所有者が配偶者以外の相続人である場合、マンションに住んでいても区分所有者ではないケースがあります。

配偶者居住権者に区分所有者の権利はありません。所有権を持つ相続人が区分所有者になります。

所有権の変更届は任意ではなく義務です。

このあたりを組合員へ周知徹底することで厳正な管理組合の運営維持を行うことに注意する必要があります。


目次

1章、管理組合運営への影響

 2章、配偶者居住権の影響

3章、法定金利が変わりました

4章、消滅時効の表現が変更になりました

5章、管理委託契約に係る民法の改正

6章、修繕工事契約に係る民法の改正

7章、賃貸借契約に係る改正

8章、組合運営に係る改正


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