今回の改正ではコロナ禍に利用が急増した宅配に関する内容が追加されました。

マンションの共用部は廊下を始めとして専有部以外のほとんどすべてが含まれます。マンションの原則として共用部に私物を置くことは禁止されています。(規約等で認めている場合もあります。)


*私物の放置が禁止される理由は共用廊下が避難経路になっているためです。

自転車や食材の運搬コンテナー等の廊下への放置は禁止されています。特に廊下の幅が狭く通行に支障をきたす場合には管理組合は適切に指導、廃除することが必要になります。ただし、駐輪場の台数不足、バックヤードが無い場合、エアコンの室外機等については避難経路の機能を失わない範囲で規約等で駐輪や設置を認めることが出来ます。


コロナの流行により外出自粛が求められたことにより、ネットショップ等を介した購入が進み購入物の受取りに宅配が急増しています。

一時期は配達員との接触も躊躇われ、玄関先に荷物を置く「置き配」が主流になりました。現在でもアマゾン等では置き配が初期設定になっているようです。

このような中、マンションは専有部の玄関は共用廊下でつながっているため、共用部である廊下に荷物を置く必要がありマンション管理組合も対応に苦慮していました。

一部マンションでは、宅配ボックスが設置されていますが、ほとんどのマンションでは宅配ボックスがなく、共用廊下に荷物を置くことが暗黙の中で認められていました。

そこで国土交通省は宅配ボックスの設備が無いマンションを対象に専有部玄関先に荷物を置く「置き配方式」を認めました。

1、置き配のルール

標準管理規約18条コメント

④ 専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。

新たに追加された標準管理規約18条に関するコメントです。

1-1、宅配ボックスが無い場合等について

宅配ボックスの設備が無い場合、あるいは専有部戸数に対して設置宅配ボックス数が著しく少ない場合が当てはまります。

と言っても実際は、宅配ボックスの大きさやボックス数と戸数の関係は様々で多くのマンションは、宅配ボックスの有無に関わらず「置き配」は行われている行為です。

宅配業者も置き配を行うことで再配達の面倒を減少させることが出来、特にマンションは躯体全体で不審者の侵入を防ぐ機能を有しているため安全な配達先として扱われています。

標準管理規約ではなし崩し的に「置き配」を認めることは適当ではなく、使用細則により置き配を認め、それに伴いルールを作ることが必要だと示しています。

確かに長期不在等により、多くの荷物が積み上げられることにより通行の邪魔になるケースもあります。また悪質な場合、置き配の荷物を装い宅配便以外の荷物を長期で放置する人も想定しておくべきです。

ただ、毎日、廊下の荷物の個数をチェックするような非効率な方法は現実性がなく、あくまでも悪質な使い方をする人が現れた場合に規約や使用細則に違反している事実を明確に指摘できる準備と考え、管理組合は検討すべきです。

1-2、使用細則の必要性

標準管理規約では第4章用途で敷地、共用部分等の用途を定めています。

これは、各マンションの状況によりバルコニー等の専用使用権、駐車場、駐輪場の有無、台数が異なるため決められています、また賃借人を対象にした第三者使用についてが定められています。

皆さんのマンションでも分譲会社が標準管理規約を指針として皆さんの躯体の特徴や施設用法を規定していると思います。

しかし、標準管理規約にも共用廊下に私物を置くことを禁止する記載はなく、上記に示したコメントに記載があるだけです。

そのため、皆さんの管理規約も共用廊下への物品を置くことを規定していない規約を使用している場合もあります。

このような組合では「置き配」を管理組合が認める場合、併せて共用廊下の用途について新しく使用細則を定めることが望ましいと思います。特に最近ではコロナ禍の影響で、食材宅配サービスを利用する住民が増え、共用廊下に配送用のコンテナーを常時置いている方が多くなっています。

また、駐輪場の収容台数不足により共用廊下に置くことが暗黙の了解事項となっているケースも多く見かけます。

収容台数が不足している場合、共用廊下への駐輪を認めるとしても管理組合として運用ルールを決める必要があり、特に駐輪場代金を徴収している組合では不公平感が生じないように共用部の駐輪する場合には一定の使用料を徴収する仕組づくりが必要になります。

これは駐輪場の使用細則とも大きく関わるため、共用廊下の用法の使用細則を決定する時に合わせて行うことをお勧めします。

1-3、使用細則の決め方

共用廊下に荷物等を置くことは禁止されていますが、理由は避難経路の確保です。

使用細則を決める場合もこの点は厳守する必要があります。(近年のビル火災で多数の死傷者が出る原因のひとつに共用廊下や階段に不当な荷物が置いてあったことにより避難が出来なかった点は忘れてはいけません。)

次に高齢化が進む過程で車椅子の通行の障害になることも考慮する必要があります。

車いす利用者にとって通路に置いてある自転車や荷物は健常人では想像できない障害になることがあります。せっかく躯体をバリアフリーとしても障害物を置いては意味がありません。

また、各マンションで廊下の配置も異なり、廊下幅も建築基準法で指定されている幅を基準にどの程度の余裕があるかによって考え方も異なります。180㎝以上の廊下の場合と120㎝の廊下では使用細則の内容も異なります。


廊下豆知識

マンションの廊下幅は建築基準法で両側居室の場合160㎝以上、片側居室の場合120㎝以上と定められています。ご自身のマンション廊下幅を確認しては如何でしょうか。

また、プライバシー保護、居室の床面積を広くする目的でマンションによってはアウトポール構造のマンションがあります。居室側に柱の出っ張りがなく四角形の間取りを作るために用いられます。この構造のマンションでは共用廊下幅は図に示したようになります。

この場合、柱と柱の間は幅に含まれないため、専用使用権を各戸に認めているマンションもあります。また、柵で仕切られた構造(アルコープ構造)のケースもあります。このような場合、エアコンの室外機や子供用の自転車を置くことをできます。

柵の設置が無い場合でも避難経路に含まれないため、柱のラインを超えない範囲で物を置くことを認めているマンションもあります。


共用廊下の使用細則を取決める場合のポイントは次のようになります。

1、常設は禁止する

移動が出来ない倉庫等の構造物を廊下に設置することは禁止します。(当たり前のことです)

共用部は使用権はありますが、占有権はありません。そのことを組合員を含めた住民に周知することは重要です。

また、マンションの構造がアウトポールの場合、エアコンの室外機が竣工当時から設置されているマンションがありますが、これは特に問題ではありません。これ以外に室外機の設置を認めるべきではありません。

2、置き配のルールを決める

置き配は出来るだけ配送日当日に室内に回収することを基本とします。

ただし、1週間以上放置が続く状況が確認された場合は、管理組合に報告後、管理会社を通し注意勧告を行うこととします。

アルコープがある、又はアウトプット内の区分所有者はその内部に置き配を行うこととします。

3、配送用コンテナーにルールを決める

配給サービス(coopなどの食材宅配サービス)等の配送用コンテナーについては、利用者とそれ以外の組合員で意識が異なることが考えられるため、組合員にアンケート等を行い決定することが望ましいと思います。ただし、コンテナを置くことを認める場合でも、避難経路の妨げになることのないようなルール作りをします。

4、自転車、三輪車、キックボードについて

駐輪場の台数が少ない場合、玄関脇に放置する方がいますが、駐輪場は維持管理費がかかるため、使用料を支払う運用が一般的です。

各戸ごとに1台以上の駐輪場がある場合は、複数台を所有した際の駐輪場使用料を高くする配慮をした上で、それでも駐輪場に収まらない場合は、玄関脇に置くことを認める使用細則を作ります。

ただし、この場合も出来るだけ大型の自転車は駐輪場を利用し、子供用に限り認めるなどの工夫は必要になるでしょう。その上で玄関脇に置く場合も駐輪場使用料を徴収することが望ましいでしょう。

これはキックボードや犬の散歩用のキャリアーを含め一台とすべきです。

これにより館内利用者の費用負担の公正性が保たれます。また、子供用の自転車は年齢の成長により買換えが頻繁になるため、不要な自転車は自主処分を行うことを求めるべきです。

5、植木等の設置について

植木等は共用部に置くべきではありません。ベランダ等で育成するように求めるべきです。

また、自然災害時に転倒により通行の障害になることも予想されます。

使用細則には「自然災害等により躯体への損傷、住民の財産、第三者に対して損害賠償が発生する事態が発生した場合は、当事者が責任を負うこと」の一文を定めることを忘れないでください。

1-4、まとめ

置き配を含めた共用廊下の使用細則の定める時の基本的な考え方を説明しました。

日々利用する廊下ですが、通行の妨げになる行為を禁止することを住民に意識させること、いざ発生した時に速やかに解決するための根拠となるルール作りを置き配の承認と共に行うことをお勧めします。

2、感染症により共用部の一時使用禁止措置

国土交通省はコロナのような感染症は今後も起こり得ると考え、共用部の用途について次のようなコメントを改正時に追加しました。

第18条関係
① 使用細則で定めることが考えられる事項としては、動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項等専有部分の使用方法に関する規制や、駐車場、倉庫等の使用方法、使用料、置き配を認める際のルール等敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項等が挙げられ、このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項である。また、マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合において、使用細則を根拠として、居住者による共用部分等の使用を一時的に停止・制限することは可能であると考えられる。
なお、使用細則を定める方法としては、これらの事項を一つの使用細則として定める方法と事項ごとに個別の細則として定める方法とがある。

コロナのような感染症が住民に発生した場合、館内に感染を広げる危険性があります。

特に高齢者や乳幼児がいるようなマンションでは、一人の感染により住民の生命の危機までも考える必要があります。

一般的に感染症が発症した場合、感染者の家族は濃厚接触者となり保健所やかかりつけ医に連絡後に指示を受けることになりますが、この際管理組合にその事実を伝える義務はなく、また、連絡を受けた場合の管理組合は住民に対して、注意喚起を行うことは考えられますが、特定の個人情報を住民に告知することは好ましくありません。(個人情報保護、プライバシーの観点から周知すべきではありません)

国土交通省の改定でも個人情報についての告知や使用制限を行うことには言及していません。

あくまでも市中感染が認められ、国から緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の宣言が出された場合に館内の共用施設(例えば会議室、集会場、フィットネス等)の使用制限を理事会議決で行うことができることを事前に取決めておくことを意味しています。

特に感染の原因になる三密状態になりやすい会議室、集会場に利用については理事会や総会でも開催の延期が実施されていたことを考えても個人使用には制限を行うべきでしょう。

また、使用制限は出来るだけ早く行うことが感染を予防する効果があることから、理事会、あるいは理事長判断で使用制限を行うことが出来る旨の使用細則を策定し、総会等で承認を受けておくべきでしょう。


管理会社も暗中模索

コロナのような感染症を経験したことは管理会社にもありませんが、コロナ禍、管理人等はゴミ出し業務等の皆さんのライフラインを維持するため休まず業務を続けてきた実績があります。特に管理人は高齢者が従事することが多く、管理会社も消毒液やマスクの配給など感染防止対策を実施してきました。

一方でマンション管理組合として出入口に消毒液の設置等の対策を実施した管理組合は非常に少なく、あくまでも個人単位での防止対策が中忍になっています。

管理会社の感染対策は行っており、緊急事態宣言下ではフロントも在宅勤務を行っている会社もあります。しかし、実際にフロントや管理人が感染する事態は全国で発生しています。

マンション従事者が感染者した場合は、管理組合に連絡後、管理室、共用部の手摺等の消毒を行い代行者が業務を行うなどのよりライフラインを確保しててきました。

しかし、住民等に感染者が発生した時の対応マニュアル等を管理組合含めて取決めている管理会社は知る限りありません。

おそらく、一定数の方は感染された方がいると思いますが個人単位(家族単位)で処理しているのが現状ではないでしょうか。


以上が共用部の用途についての改正内容です。

次章では建物等の維持保全関係について改正管理規約について説明をします。


目次

 1章 WEB会議システムを理解する

2章 改定標準管理規約(WEB会議編)

3章 改定標準管理規約(電磁的方法)

4章 改定標準管理規約(理事・役員解任等)

5章 改定標準管理規約(共用部の利用)

6章 改定標準管理規約(維持保全)


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