大規模修繕工事サポート

1、イントロ

大規模修繕工事は躯体の規模、管理組合の規模、管理体制などの様々なファクターによって、その方法は無限にあります。

国土交通省が指針として公開している方法もそのひとつですが、それが最適とは言えません。

自分たちに合った最善の方法を理事を始めとした皆さんが区分所有者の皆さんとひとつひとつ決めていく必要があります。

とは言え、初めて大規模修繕工事を行う組合の皆さんにはかなりハードルが高いテーマです。

そこで当事務所では、大規模修繕工事における最善な方法を見つけるためのパートナーを提案しています。

まず、大規模修繕工事とはどのような工事の事を言うのでしょうか。

国土交通省の定義としては次のように示されています。

マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう

主な工事として次の項目が示され実施年度の目安も示されています。

工事内容修繕周期
外壁塗装工事10.4年
鉄部等塗装工事8.2年
屋上防水工事10.3年
給水管工事14.2年
排水管工事14.2年
マンションの改修・建て替え等についてより

給排水管工事については、部分的な不具合の発生を修繕することが主であり、館内のすべてを交換する大掛かりな工事の実施は35年を過ぎた時点で行われています。

特に定期洗浄や定期検査により設備の延命が図られ、この年数は延命される傾向にあります。

これに対して、外壁塗装工事は足場設置を伴いンション全体の住民生活に大きな影響を与えるため、大規模修繕工事と考えられています。

特に修繕周期が同程度である屋上防水、鉄部塗装工事と同時に行うことで経済的な効率性を高める工事になります。

大規模修繕の進め方は、決まった方法はありませんが、進める時期と内容によって局面(フェイズ:Phase)があります。

覚悟発議計画実施未来
大規模修繕工事におけるphase

各Phaseにはやるべき工程がありますが、この工程はマンション管理組合によって順番や方法が異なるため理事会の皆さんは大変苦労します。

まず、組合の皆さんが最初にやるべきことは、自分たちのマンションは現在、どのPhaseにいるかをしっかりと見極めることです。

2、立ち位置を知る

各Paseがどのような状態であるかを表にまとめたので皆さんはどのフェイズにあるかを確認してください。

Phase環境・状況の説明
何も決まっていないが近い将来大規模修繕工事を行う年月が大規模修繕計画上定められている
理事会で大規模修繕工事が来期の活動項目になっている
管理会社から大規模修繕工事の提案を受けている
緊急性はないが管理会社、組合員から劣化事象の報告がある
理事会として大規模修繕工事を行うことを発議している、あるいは計画している
大規模修繕工事に向けた組織作りを行っている(専門委員会の設置、外部専門家の理事会参加など)、あるいは計画している
劣化診断、修繕計画の整合性を計画している、あるいは実施した
長期修繕計画の見直しを計画・実施中
緊急性を含めた安全性の確認の必要に迫られている
修繕工事の範囲を決めた、あるいは検討中である
資金計画を決めた、あるいは検討中である
修繕工事の方式(設計監理方式、責任施工方式、CM方式など)を決めた、あるいは検討中である
緊急性を伴う修繕に迫られている
施行会社を決めた、あるいは検討中である
修繕工事の進め方について施行会社の担当者と打合せ中である
現在修繕工事中である
完了検査を終了した、あるいは検査を待っている
修繕工事に関する書籍を保管している
アフターフォロー中である(1,3,5,10年等)
大規模修繕工事計画の見直しを終了、あるいは作成中である
各Phaseの環境、状況について

組合の立ち位置がわかれば、各Phaseで決めることは自ずとわかってきます。

3、各Phaseと実施すべき項目

各Phaseで行う主な項目は次のようになります。

組合の規模、進め方によってはフェイズに含まれる項目が前後する場合がありますが、決定すべき項目は変わりません。

Phase決定項目1説明・コメント
理事会メンバーが大規模修繕の必要性も含めて大規模修繕計画を行う意志を決める
大規模修繕工事の知識を習得する
組合全体で大規模修繕工事の覚悟(周知)を共用する
理事会が大規模修繕工事の検討、実施を行うことを年間計画に盛込み、組合員の同意を得る
大規模修繕計画にある修繕計画箇所と劣化の度合い、予防保全、効率の観点から実施の可否を判断する
法定点検、管理会社からの報告、自主管理の場合は見た目等の情報から劣化診断の必要性を判断する
*見た目で劣化が判断できれば、劣化診断を施工会社と一体にすることも可能
修繕検討委員会の設置の有無、理事会主体、専門家の必要性、管理会社の協力体制等とマンションの規模等の情報を踏まえて総合的に大規模修繕工事を進めるための体制を整備する
Phase1の結果より大規模修繕工事の箇所を決定する
組合員からの要望を考慮することも検討する
設計監理方式、責任施工方式、CM方式などの方法から修繕工事の方式を決定する
(請負契約の相手を決める、特定会社ではなく管理会社、施工会社、設計会社等を決める)
修繕積立金の現状を踏まえて予算を確定、不足が発生する場合には一時金徴収、借入を事前に決定する
資金計画は予算重視、あるいは修繕重視を判断する必要がある
一時徴収については合意形成、借入については借入先、借入金額、返済計画を立案する
公募により施行会社を選定する
修繕範囲、予算を提示する(公庫を利用する時は支払時期についても了承を得ておくことが必要)
複数の会社からプレゼン・見積りを受けるコンペ形式を導入する
選定理由を明確にすることが重要
施工会社との詳細な工事内容を決定する
予算によって予防保全の一部を延期することも検討する
資材置き場等の調整、ベランダ等の各自整理、駐車場、駐輪場、日常生活への影響も検討する
工事の詳細が決定後に日程調整を進める
修繕工事請負契約内容を精査する
契約不適合責任(旧瑕疵担保)の事項を確認する
民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款契約書関係書式を参考にする
工事の詳細、日程が確定後に説明会を開催する
ベランダ等の各自整理、駐車場、駐輪場、日常生活への影響を説明する
質疑応答を受け組合員のコンセンサスを得る
修繕工事が契約通りに実施されているかを監理する
一般的には監理士が行う
大規模修繕工事の実施の承認を得る
承認後、契約を締結する
修繕箇所を現場で確認する
理事全員、関係者による立会いが良い
施行会社から提出される資料を保管する
リスト化、保管場所、保管責任者を明確にする
請負契約書に従い工事費を支払う
すべてが修了した後に組合員向けに大規模修繕工事の報告を行う
一般的には書面で配布する(報告会の開催も有り得る)
工事後の不備、不良による契約不適合責任がある場合は速やかに報告、改善作業を請求する
次期以降の理事会に引継ぐためにも保証期間、アフターフォローを明確にする
修繕箇所を長期修繕計画に反映させる
施行会社、管理会社に委託することが一般的
不具合発生、保証期間、アフターフォローについて引継ぎを行う
各Phaseに実施すべき事項の一覧

大規模修繕を検討中の役員の方にとってはため息以外なにもでないのではありませんか?

実際、大規模修繕を検討中の組合の方に説明するとあまりの業務の多さにプレッシャーを感じてしまう方が多いのも事実です。

当事者にとってみれば当然だと思います。

Phase0を設定している意味はそこにあります。

中途半端な決意ではなかなかできないことを理解した上で、修繕工事の実施を決心することが如何に大事かを知って頂くことになります。

4、各Phaseに必要なスキル

各Phaseの工程をひとつずつ実施するためにはそれぞれに必要となるスキルがあります。

各Phaseに求められるスキルは次の表になります。

管理会社(フロント、修繕部門)、建築士、マンション管理士の適正について参考として記載しました。

各資格者は一般的にスキルがあるとされていますが、これについては個人的(能力・経験)要素が大きいため資格保有者≠スキル保有者とは限りません。

また、管理会社によっては修繕部門がない会社もあります。

自主管理組合では管理会社のサポートはないと考えてください。

Phase決定項目1求められるスキル
理事会メンバーに大規模修繕工事の意義と必要性を説明するスキル
大規模修繕工事プロジェクトの概要を説明できるスキル
理事会をまとめて修繕工事のGOサインに意見統一を図るリーダーシップ
大規模修繕工事の検討、実施を組合員に説明して合意を得るスキル
専門家ではない理事等をサポートする修繕工事プロジェクトの経験者
(建築士ではない)

劣化診断の必要性を判断するスキル
建物(劣化)診断等結果から長期修繕計画との整合性を判断するスキル
診断実施会社と建築士は区別して考える
あくまでも修繕工事の必要性(優先順位)と工事個所を決定するスキル
大規模修繕工事プロジェクトの進め方を決める重要な工程
理事会主体、専門委員会の設立、第三者専門家の採用、管理会社主体など
組合の規模、管理状況により最善な体制を提案、実施できるスキル
マネージメント能力が高いことが求められる
管理会社フロントや建築士ではない
Phase1の結果より大規模修繕工事の箇所を決定する
建築の知識があれば良いが絶対に必要な訳ではなく、診断結果を重視
積立金総額と現状の必要性のバランスを考慮するスキル
特に危険性を伴う緊急性を優先する必要がある
組合員からの要望を考慮することも検討する
設計監理方式、責任施工方式、CM方式を理事等に説明できるスキル
(各方式のリスク、コスト、メリット、デメリット)
管理組合の立場で複数案を提案できるスキル
注意点は決定権は総会、組合員が納得できる説明が出来ることが重要
修繕積立金総額により方式が選択できない可能性もある
管理会社が施行する場合はリスクヘッジのための専門家は必須
一時金の徴収の合意形成は強いリーダーシップが必要になる
特に不履行になる組合員の存在には注意
事前に滞納者の解消は必須になる
借入も同様。修繕工事の借入は公的制度もあり、制度の知識がある者も必要
公募、工事要件を正しく遂行できるスキル
修繕工事見積を公平に判断できるスキル
(選定方法によっては見積り比較が難しい場合もある)
複数の会社の評価を公平に判断できるスキル
ただし、最終的な選定は理事会案、総会議決であることは忘れない

修繕工事は施工会社、管理会社、理事会の交渉の場である
それぞれの立場で主張があるため、それをまとめるマネージメント能力が必要
管理会社のフロント、特に管理員の意見も重要になる
施行会社によっては独自の契約書書式を用いる場合がある
契約不適合責任の内容を確認できるスキル
保証期間、アフターフォローを確認できるスキル
支払時期と金額にも十分に注意する必要がある
住民説明会をスムーズに開催運営をするスキル
・主催は理事会
・事説明は施工会社の担当者
・合員の不安や疑問への回答
・特に工事中のクレーム発生時の連絡先と責任の所在を明確にする
・管理会社が説明会をバックアップ
工事全体を監視するスキル
・工事の進行、使用部材の搬入、使用量を把握する
(見積りとの差異、手抜き工事、工期の遅れなどを監視する)
・工事の進行状況を報告する
・採用方式によっては設置の必要はない
住民説明会が終了していれば通常の総会と同じ
特別なスキルの必要性はない
特別なスキルの必要性はない
気になる点があればその場で確認することが重要
特別なスキルの必要性はない
管理会社保管、管理室保管を決め、管理会社に依頼
特別なスキルの必要性はない
特別なスキルの必要性はない
特別なスキルの必要性はない
特別なスキルの必要性はない
施行会社、管理会社に委託することが一般的
特別なスキルの必要性はない
各Phaseに必要なスキル一覧

必要なスキルは以上になります。

Phase4以外は専門性の高いスキルが求められることがわかります。

理事会や組合員だけで乗り越えるには非常に高いハードルですが、皆さんの大切な財産を維持・保全するためには避けることは出来ません。

誰かがいつかはやらなければいけないことです。

大規模修繕工事は工事費も大きく、施工会社にとっては魅力が多い工事です。

プロジェクトを達成するまでには選択肢も多く、その上、善人ばかりではない道のりです。

必要だと判断した時は、適切な専門家のフローを受けながら、焦らず、ゆっくりと着実に進めることが成功への道になります。

皆さんの現在のPhaseごとに進め方と注意点をまとめました。

また、FJマンション管理士事務所が提供しているセミナーも紹介しています。

覚悟発議計画実施未来
大規模修繕工事におけるphase

各Phaseをクリックすると説明ページに進みます。

これまでの実績

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実績表をお送りします。

お問合せについて

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後日、担当者からご連絡いたします。

その後、マンションを訪問させて頂き業務の詳細についてご説明させて頂きます。


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